Round 3
JAPAN SPECIAL GT Cup in FUJI Speedway

Special Report


GT300クラス・エントラントにきく
「GT300は今後どうあるべきか」


 シーズンも半ばを過ぎ、GT300クラスのエントラント数が増加するとともに勢力分布も大幅に変わってきた。ラップタイムも上がり、全体のレベルアップは著しい。ただ、そうしたなかで一部のエントラントからはレギュレーションその他に関する不満も聞かれる。各エントラントは現状をどう考え、今後どういう方向に進むことを望んでいるのか、GT300関係者に話を聞いた。(掲載順不同)


25 つちやMR2

土屋春雄代表
「GT300クラスは今のところチームどうしの隠しごともないし、いい雰囲気だと思いますよ。ウチもなにも隠してない、すべてオープンにやってますから。そもそも、ウチのクルマはなにも特別なことはしていないんですよ。カーボンなんかリヤウィングだけで、ほかに高価な素材を使っているわけじゃないし、すべてアルミとスチールですから。GT300クラスまでおカネのかかる方向にいってしまうのは反対です。だから、そういうおカネのかかる部分だけはしっかり規制して、あとは自由というレギュレーションがいいんじゃないかな。その枠内で速くするのは、それはチームの技量ですから。競争をやっているわけだから、ムリに抑えつけてしまうことはない。ただ、特認車という制度はちょっとどうかと思います。特認さえ通ればなんでもOKというのでは、レギュレーションでしばる意味がないでしょう。まあ、ウチはずっとGT300を続けるつもりはありませんから。ボクは新しいことにチャレンジするのが好きなんですよ。勝って当たり前のレースになっちゃったら続ける気はありません」


70 外車の外国屋アドバンポルシェ

石橋義三
「できるだけ均一化を図ってほしい。現状ではメーカー色が濃く見えるチームが有利になっているように思える。確かに今年、ポルシェも勝ってはいるが、予選タイムをみれば差は歴然としている。プライベーターの『神聖なる花園』(笑)は守ってほしい。外国車に対する規制が厳しすぎると海外から反発されるよ。通産省あたり、圧力がかかるかもしれないよ(笑)。規制緩和しなくちゃ。ポルシェというベーシックなクルマ、いわば参考書があるのだから、それを中心にして、ほかを合わせていけばいいと思うんだけどね。底辺からの盛り上がりがレースを支えているんだから、そういうプライベーターのことを考えた、バランスのとれた規制を望みます。リミッターというのもひとつの手じゃないかな。ウェイトハンデというのは、クルマのバランスや安全性を考えるとあまり賛成できない」


81 ダイシンシルビア

大八木信行
「台数は去年よりも多少増えてきたけれど、もう少し出てきやすいレギュレーションにはならないものでしょうか? GT300クラスもターボ車ばかりなので、NAの形でも、もう少し出られたりしたほうがいいですね。NAでもターボ車と一緒に走れるような、もう少し細かなレギュレーションにしてほしいと思います。GT300もGT500も、プライベーターでは同様のことが起きているでしょう。もっと細かく重量なり規定してほしい。ル・マンなんかもそうでしょうから」


19 RS☆Rシルビア

福山英朗
「エンジン性能を揃えていかないとダメでしょう。リストリクターにしても『遅いからリストリクターなし』なんてやると、コーナーは遅くてストレートはバカッ速いマシンになってしまい、我々がワリを食う。足回りがノーマルでリストリクターなしで速いようなチームがあるでしょう。できれば、そういうのはないほうがいい。それよりもGT300クラス全体の人気が出ることが優先だし、ガタガタ言うつもりはないですね」


21 ダンロップ-BP-BMW

一ツ山 康
「一概には言えないけれど、ポルシェはこういうコースは本来速いし、シルビアやMR2も安定してきた。ウチらはどこへいっても同じようなクルマですから(笑)。ある程度の見直しは必要でしょう。No.25のMR2はダントツで速いですからね」


71 シグマテック911

星野 薫
「あまりにもしょっちゅうレギュレーションが変わりすぎて、去年から今年にかけてはとくにそのスピードが早い。今回もフェラーリが急に速くなって『なんだ?』って思う。だいたい一緒のレギュレーションにしてくれないと、せめて去年のルールぐらいにしてくれないと厳しい。国産車はグリッドがみんな前でしょう。GT500クラスと同じような緩和措置がほしいです」


72 WAKO'S BMW M3

牧口規雄
「毎回毎回見直してもらって、2戦ごとぐらいにイコールにできるようなレギュレーションに変えてほしい。日本のレースだし、外車をしめ出したい、勝たせたくないというのはわかるけど、ある程度は考えてほしい。ウチは2.5リッター1台だけで少数派なんですが、リストリクターが不利になっている。JAFに言うと、『2リッターでやれば』と言われちゃう。大きくしたものは小さくできないですよ。最初から2.5リッターで出ているのに、去年勝手に50kg重くなって、嘆願書で1トンになったと思ったらリストリクターでしょう。ターボにしようかと思ったけど1台ではなかなかむずかしい。来年、予算が取れればクルマを替えたいと思っている。ポルシェではやらないけど(笑)。我々が遅いわけではなく、回りが急速に進歩してるんですよ」


55 Castrol SF RX7

長島正明
「GT500とGT300が混走しているわけですが、ドライバーのなかには横柄な人がいるんですよ。『こっちから抜いて』と手で合図すると、ベテランドライバーは手を挙げてマナーよく抜いていくんです。ところが、なかには幅寄せしてくる元F1ドライバーなんかがいて、走りながらカーナンバーとピットナンバーを把握して、後で弱小チームに怒鳴り込んできたりします。この動体視力はさすが元F1ドライバーと思いますが。GT300でも堂々と走れるレースにしてほしい。富士は上限のタイムが1分37秒ぐらいにしてほしいですね。35秒はもうGT500クラスのタイムですよ」


910 ナインテンポルシェ

袖山誠一
「噂で聞いたGT500とGT300でレースを分けるのは、同日開催ならいいかなと思う。GT300に、自分たちでクルマを造っている人たちがもっと増えれば、本来のGTレースの主旨ににあったものになると思う。初年度でプライベートのGT-Rが2位になるとかあったでしょう。参加しようという気になるレース内容にしてくれないと。MR2にしても、ああいうクルマにメーカーが本腰で力を入れたら後ろのほうからエントラントがいなくなっちゃう。ポルシェはあまり速さは変わらないというか、やりようがあまりない。チューナーが日本にはいないのも理由のひとつで、ボクらも買ったままのマシンです。ターボ車は、最高出力は300馬力だとして、特性を途中でトルクを太らせたりできます。ポルシェのリストリクターも考えてほしい。重量かリストリクターのいずれかで制限をかけるわけですが、この辺は検討してほしい。だんだんつまんなくなっちゃうと困るから。RE雨宮はプライベーターで成果が出ているんで、あの辺のレベル、我々よりちょっと上ぐらいのポテンシャルで戦えればいいんじゃないかな」


26 タイサンスターカードRSR

新田守男
「今まではポルシェが速いから規制してきたわけで、今度は国産勢が速くなったんだから同じことをやってほしい。対応は国産車よりむずかしいし、パーツなんかもポルシェから人が来てもコンピュータはいじれなかったりするんです。エンジンの仕様はリストリクターの径に合わせて向こうから来ている。また、テレビなんか見ていてもメインはGT500。だったら、もうGT500だけでやってくれても構わないと思っちゃう。みんな平等にテレビなんかのメディアで取りあげてくれないと。インタビューしてオンエアされないならまだわかるんですけど、現状は取材に来てもくれなかったりしますから」


91 バーディークラブ・MR-2

松永雅博
「レギュレーションはいいところまで来ていると思う。土屋さんのところは異常に速いけれど、他はレベル的には差はない。ただ、ホントの意味の実力でいえば、土屋さんのところが本来の姿で、みんなが頑張らなきゃいけないのかもしれません。でも、そうするとリスクが大きくなりますよね。速いほうを落とすか、遅いほうが速いほうに合わせるか、リストリクターを変えれば追いつくとは思いますが…。GT300クラスもレースとしてはおもしろいと思います。N1耐久も4クラスのほうがおもしろいですから。ただ、GTはたとえGT300クラスとはいっても全日本選手権なんで、GT500と同じように扱ってほしい。決勝でGT300とGT500に分けて2つのレースをやるのも見ているほうにはおもしろいかもしれないですね。今は誰もGT300クラス見ていないし、順位もわからないでしょう。テレビの放映にしても3分の1ぐらい分けてもらえれば、前のほうを走ったら一瞬でもちゃんと映るでしょう」


6 ワイズダンロップBPMR260 ワイズダンロップBPキャバリエ

平岡寿道エンジニア
「現状は盛り上がっていいんじゃない? GT500クラスみたいなワークス化はないでしょう。AグループとBグループに分かれてしまっている感じはありますけど。去年と比べたらGT300クラスのレベルアップがすごいから、去年は手抜きレースでも表彰台に上がれたりしたけれど、今年は完璧なレースをやらないと勝てない。まあ、やり甲斐はありますけれどね。レギュレーションの公平不公平はしょうがないでしょう。GTはJTCCと比べたら、あやふやな灰色の部分があるわけで、やりやすいと言えばやりやすい。情報さえ早くもらえれば、レギュレーションは今のままでいいと思います。JTCCみたいに厳しくなったらおもしろくないでしょう。緩和にしても、パワーが大きくなるとカネがかかるわけで、費用は抑えてもらって、カネのかからない範囲で自由にできればいいんじゃないでしょうか。解釈の違いはどの世界でもあることです。つちやMR2の速さはオヤジさんのレース経験の差でしょう」


7 RE雨宮SuperG RX7

雨宮勇美代表
「GT300クラスは見た感じつちやMR2だけが速い。ドライバーの差はあるかもわかんないけど…。イコールかって言われても、あまりにも差がある。37秒台には6〜7台いて、おもしろいレースだけど、トップとはかけ離れている。レギュレーションの問題は、とくにはないでしょう。BMWもある程度速いクルマはいるし、フェラーリもたまたま1台速いだけでしょう」


20 アイ・オートGABポルシェ

須賀宏明
「現在のGT300クラスは、やはり純粋なプライベーターが上位に加われる状態ではないですね。ただ基本的に、イコール・コンディションにする気があるのなら、レギュレーション的には納得できると思います。もちろん希望を言えばポルシェに有利なようにしてほしいですけど、言い出せばキリがないですからね。ただプライベーターのポルシェ・ユーザーは発言力が弱いので、なかなか自分たちの思うところが伝わりにくいところがあります。我々としては、やはりもう少し多くのチームがダンゴ状態で上位を争えるようなレースになってくれるといいなと思っています。そのためには、ある程度遅いマシンに合わせるような規定、それも重量を軽くするのではなく、リストリクターを小さくする方向でレギュレーションを考えてもらいたいというのが望みです。たとえば同じポルシェでも、タイサンさん、ナインテンさんなどが使っているGT2ベースのNAマシンと、我々のようにRSから改造をしているクルマとでは根本的に違うんです。だってGT2のNA版は室内でスタビ調整ができるシステムまでついているのに、RSではエアジャッキすら自分たちでつけなくてはいけないんですから。もちろんおカネをかければいいマシンを手に入れることもできますが、それではこのクラスに出場する意義がわからなくなりますからね。ですから基本的には、おカネをかけずに多くの参加車が上位を争えるような方向が理想です。とにかく参加台数が増えて、いいレースができれば、お客さんも増えるし、スポンサーもとりやすいという好循環になるんですから」


27/28 チームFCJフェラーリ

兼子監督
「GT300クラスの参加車のなかでもウチは特殊な存在でしょうね。まったく1からクルマを造らなければいけないうえに、一つのパーツが他車より何倍、何十倍という金額になりますし、しかもそれだけかけたおカネに見合うものが得られるわけではないんですからね。これはもう情熱だけでやっているといっても過言ではないと思います。我々はプライベーターですから、ステップ・バイ・ステップでクルマをよくしていかなければいけないわけです。ところがレギュレーションに関して変更の要望やお願いを提出しても、レスポンスが悪くて大変困ることがあります。例えば我々のマシンは、5バルブという特殊な機構を持つエンジンなために、リストリクターで高回転を絞られると非常に苦しい部分がある。それでシーズン開幕前に、なんとか5バルブという構造に対して考慮してほしいという旨の要望を出していたのです。それが今回のレースの直前になってようやく回答がきたわけです。しかもそのレスポンスの悪さもさることながら、内容が『リストリクターの0.7mm拡大を認めるかわりに100kgのウェイトを搭載せよ』というものだったんです。シーズン前は確かに重量が重かったのですが、すでに開発がかなり進んでいて、今は1100kgを切っていますので、もうこの規定では意味がなくて、結局No.27のほうはこれを採用しませんでした。もう1台のNo.28のほうはこれを今回適用しましたが、決して有利な条件とは言えないですね。この件に関しては、私はいわゆる特認として個別のクルマを救済するのではなく、構造上の違いを細かくきちんとレギュレーションに反映してもらいたいと思っています。例えば5バルブ、4バルブ、3バルブ、2バルブでそれぞれなんらかの違いを設ける、といったことですね。それらを踏まえた上でイコール・コンディションにしてほしいと思います。私は、現在のGT300クラスは、実際に戦ってみて、非常におもしろいと思っています。GT500クラスでやっても一緒だったかな、とも思いますが、ここまで来たからには、来年チャンピオンを狙うくらいの活躍をしたいと思っています。まあレースですから参加車両に性能差があることは仕方ありません。MR2が速いのもわかっていますし、ポルシェでやればもっと簡単に勝てるかもしれません。でも我々は、フェラーリでやることによって夢を語れると思うんです。フェラーリ・ファンの声援を感じながらレースをしているんです。このクルマでレースをしたい、というクルマがあるからレースをやる。私はレースというのはそういうものだと思っているんです」


16 YB BMW 325iクーペ

関根基司
「現在のGT300は決していい状態にあるとは思わないですね。というのも、メーカー主導型のクルマが出てきて、レースが明らかに変わってしまったものですから。GT300はプライベーターが盛り上げてきたカテゴリーです。GT500がメーカー主導になるのはしかたがないと思いますが、GT300にメーカーの力が及ぶのはちょっと違うと思うんです。もちろん我々にも努力は必要だと思いますが、このままではプライベーターはまったく上位入賞が望めなくなってしまいます。ですから今のうちになんらかの方策を考えなければいけないと思うんです。たとえば、分けかたはむずかしいとは思いますが、純粋なプライベーターとセミワークスは区別するとか、シーケンシャルは禁止するとかによって、なるべくおカネがかからない方向で、より性能が近づくことが望みですね。プライベーターでも、トップとほぼ同じスピードで走れて、そのうえで勝ち負けが決まるような、努力に見合った結果が得られるようなレースが理想だと思っています。たとえば、国産メーカーが今我々が使っているBMWと同じような価格でマシンを放出してくれるのならそれも魅力ですが、仮にそうなった場合でも、メーカー直系のチームのマシンはどんどん進化しますからね。これも問題があると思います」