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2001-07-28
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■レースプレビュー
真夏の富士はハラハラドキドキがいっぱい?!
夏本番の8月4、5日に、静岡県の富士スピードウェイで全日本GT選手権(JGTC)第4戦「JAPAN SPECIAL GT CUP」が開催される。
この8月の富士GTと言ったら、モータースポーツ夏の定番といえるイベントだ。真夏の気候は、マシンにもドライバー、そしてメカニック達にも過酷な状況をもたらす。それゆえか、この8月の富士はトラブルやアクシデントなど思わぬ波乱が必ずと言っていいほど発生する。約1,400メートルのメインストレートを持つこのサーキットは、世界的にもトップクラスのハイスピード・コース。さらにパッシング・ポイントも多く、バトルを堪能できる。
このように、第4戦富士は、ドライバーやチームにとっては難しいレースだが、ギャラリーにとってこれほど見応えのあるレースはそうそうない。レースがスタートしたら最後まで目の離せない、ハラハラドキドキ満載のGTレースになること間違いなしだ。
このJGTC第4戦が行われる富士スピードウェイは、東名高速・御殿場インターから約20分。公共交通機関なら、JR御殿場駅からバス(レース開催日にはスピードウェイ行きあり、平日は富士霊園行で、終点から徒歩10分)またはタクシーで約20分。決勝日の午前中は、御殿場インターや周辺道路が大変混雑すると予想されるので、十分余裕を持って来場するようにしてほしい。
スープラ独走は許さない!逆襲を狙うNSX、GT-Rに秘策あり?
さて、参加チームの直前情報はどうなっているかというと。まず、この富士で本命視されるのが、高速コーナーとストレートで強さを見せるスープラを擁する各チームだろう。同じ富士で開催された第2戦をポール・トゥ・フィニッシュで制したNo.6 エッソウルトラフロースープラ(脇阪寿一/野田英樹組)が、その最右翼と思われる。やはり酷暑のマレーシア・セパンGTでも勝利しているだけに夏の富士も不安要素は少なそうだ。唯一の問題はウエイトハンデの60kgがどうマシンに響いてくるかという点だ。そして、さらに気になるのがNo36 カストロール・トムス・スープラ(黒澤琢弥/土屋武士組)とNo.37 マツキヨZENTトムススープラ(山路慎一/W.ガードナー組)のトムス勢。このチームが使うミシュランタイヤは暑いコンディションに強いと言われるだけに、この富士は狙いどころとしてくるだろう。
前戦SUGOでNo.37が優勝し、チームとしても選手権タイトルを意識してくるはず。速さでNo.36が、勝負でNo.37という役割分担でどんな状況でも勝てる可能性を秘めていそうだ。そして、速さという点ではピカイチのNo.38 auセルモスープラ(竹内浩典/立川祐路組)も忘れてはならない。ただ、No.38はウエイトハンデ70kgとかなりの重量増を強いられいるだけに、勝負の選択肢が限られそうなのが痛いところだ。だが、地力はあるだけに優勝候補からは外せないだろう。
これらスープラ勢に対し、開幕戦TIサーキット以来後塵を浴びているNSX勢はどうだろう。7月24、25日にツインリンクもてぎで行われた合同テストでは、無限×童夢が新開発の排気系とリアディフューザーを持ち込んでいる。ドライバーの評価も「レスポンスが向上した」と上々。ただ、富士で間に合うのがNo.1 ロックタイト無限NSX(道上龍/光貞秀俊組)とNo.18 TAKATA童夢NSX(加藤寛規/S.フィリップ組)
の2台のみと言うところが痛いところか。だが、もてぎテストでは先の2台に加えNo.64 Mobil 1 NSX(D.シュワガー/松田次生組)もトータルタイムではスープラに引けを取っていない。また、現在未勝利ながら3戦で2位2回という高い入賞率で選手権ランキングトップにつけるNo.8 ARTA NSXの土屋圭市/金石勝智組のレース巧者ぶりも見逃せない。“荒れる”ことが予想される第4戦富士だけに、彼らの勝負強さは武器となりそうだ。このようにレースの展開次第では、NSXが上位を占めることもあり得るだろう。
一方、今季いいところを見せていないのが、スカイラインGT-R勢だ。とはいえ、NISMOのNo.22 ザナヴィヒロトGT-RのM.クルム/田中哲也組が3戦中2回の表彰台で選手権ランキング6位につけている。先のもてぎ合同テストでは、特別参加のテスト専用車を参加させ空力系のテストを行うなど、シーズン後半での巻き返しを図る秘策を準備しているようだ。このテストではNo.22とNo.12 カルソニックスカイライン(星野一義/本山哲組)がセッションによってはトップ4に食い込むパフォーマンスを見せている。
ただ気になるのは、GT-RのエースであるNo.23 ペンズオイル・ゼクセルGT-R(E.コマス/影山正美組)のコマスがフィジカル練習中に右手首を負傷し、7月7月24、25日の合同テストを欠場していること。チームでは、富士までには復帰できるだろうとしているが、これまで名実ともにチームの絶対エースと君臨していたコマスだけに、ここで欠場となるとコマスのチャンプ奪還だけでなく、NISMOのシーズン戦略自体が大きく変わりかねない。NISMOにとっては正念場の富士となりそうだ。
波乱の使者になるか!? マクラーレンF1 GTR
そして、7月のもてぎテストで、何よりも国産GTチームを驚かせたのが、No.30 綜警McLaren GTR(岡田秀樹/A.クート組)のパフォーマンスだった。最終日最後のセッションでは、No.36のスープラに次ぐ2番手となり、この2台だけが1分47秒台を記録した。チームでは剛性が不足してきたモノコックを再度強化し、リアサスペンションもほとんどをスペシャル化するなど、この第4戦を前に大規模な改良を行ってきた。もとから、ル・マン・スペシャルであるマクラーレンにとって、この富士は十八番のコース。そこに課題だった足回りのパフォーマンスもアップしたことで、一躍富士のダークフォースと言える存在になってきた。また、No.21 イエローコーンマクラーレンGTRは、96年にラークマクラーレンで活躍した服部尚貴がステアリングを握るだけに楽しみな存在になりそうだ。
GT300はチーム・オリジナルのエアロ勝負に注目!
GT500以上に大混戦なのが今季のGT300だ。開幕はNo.31 ARTA・アペックスMR-S(新田守男/高木真一組)が、第2戦がNo.81 ダイシンADVANシルビア(大八木信行/青木孝行組)、第3戦がNo.7 雨宮マツモトキヨシアスパラRX7(山野哲也/松本晴彦組)と勝者も車種もすべて違う状況。さらに常にトップ争いに食い込んでいるNo.3 ユニシアジェックスシルビア(井出有治/柳田真孝組)やNo.77 クスコスバルインプレッサ(小林且雄/谷川達也組)などもおり、まさにどこが勝つかはゴールするまで分からない状況だ。
この中で、本命視されるのはやはり、トップスピードに秀でるシルビアのチーム。第2戦の勝者No.81 ダイシンもいいが、今回要注目なのが、No.3 ユニシアジェックスだろう。今季からGT300に挑戦する長谷見昌弘率いるNo.3のドライバーはともに20代の井出と柳田。第2、3戦ともに終盤までトップ争いをしながらマイナートラブルで脱落し、勝てそうで勝てなかった。それが6月のセパンGTではパーフェクトな勝利を手にした。「勝利が格好の薬」と長谷見監督が言うように、若いコンビだけに本当に“勢い”がついたら、ひょっとしたら手のつけられない存在に化けるかもしれない。
また、この第4戦富士では、この上位陣にさらなるニューフェースが加わりそうな予感がする。まずは、No.19 ウェッズスポーツMR-S(田中実/後藤聡組)。チームでは、セパンGTをキャンセルしてまで、富士で走り込みを行い、シリーズ後半戦に賭けてきた。もてぎ合同テストでは、その成果が現れ、2日間すべてのセッションで最速タイムを叩き出した。シルビアやモスラーなど高速に強いマシンが有利とも思われる富士だが、このNo.19は予想から絶対に外せない存在だろ。この他にも第3戦でポールを獲ったNo.71 シグマMR-S(Guts城内/田嶋栄一組)も一発の速さはあるだけに、レースでの“ツキ”をたぐり寄せられれば、上位に食い込む実力は十分なはずだ。
今季、マシン・パフォーマンスが発揮できないポルシェGT3R勢でも、ここにきてわずかながら期待が出てきた。もてぎテスト2日目では、No.24 JCMタイサンGT3R(松田秀士/西澤和之組)がクラス3番手のタイムを記録。“荒れる”レースになれば、ポルシェのドライバビリティや耐久性がモノをいうはずだ。
そして、外国GTで要注意なのが、No.900 MT900Rだ。セパンGTではドライバーに、デイトナ24時間でクラスポールをこのクルマにもたらしたバルボーザを迎え、予選2位を獲得。この富士でもバルボーザが引き続きステアリングを握ることが決定した(パートナーはD.マラガムワ)。ストレートスピードは国産GTに勝るとも劣らないこのモスラー900R。ひょっとしたら、GT300にさらなる混戦を呼び込むかもしれない。
Reported by Team GT InsideReport
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