■レースプレビュー テクニカルコースの美祢では混戦必至!? 4月から始まった2001年のAUTOBACS CUP全日本GT選手権(JGTC)も、ついに最終戦を迎えた。新世紀のJGTCでもチャンピオン争いは最後までもつれることになり、決着は11月10、11日に山口県・セントラルパークMINEサーキットで行われる最終戦CP MINE GT RACEということになった。 セントラルパークMINEサーキットは、美しい山陰の山間にある。全長3.23kmのコースには1本の直線とテクニカルなコーナーが配置されている。コーナーはタイトな中低速がほとんどで、トリッキーなテクニカルコースだ。このためJGTCではコーナーでの接戦も多く見られ、周回遅れの処理に手間取ると、すぐに後続が追いついてくるという、独走しにくいレース展開となりやすい。 メインスタンドの上段からはサーキットのほぼ全般が見渡せる。また、コースと観覧場所の距離が比較的近いので、コースサイドに陣取れば迫力あるシーンをたんのうできる。 セントラルパークMINEサーキットへのアクセスへは、中国自動車道を利用すると便利。美祢西インターを出れば案内看板があり、約10分ほどで到着する。このルートなら、広島からは約120分、福岡からも約90分で行くことができる。 公共交通機関を利用するなら、JR山陽新幹線で厚狭駅へ。ここからタクシーで約25分か、JR美祢線に乗り換えて厚保駅で下車し、やはりタクシーで約10分。 前戦鈴鹿では、混乱の後方集団を後目に、ARTA NSX(土屋圭市/金石勝智組)とロックタイト無限NSX(道上龍/光貞秀俊組)がマッチレースを展開。見事に逃げ切ったARTAが優勝し、ロックタイト無限とともランキング2位タイとなった。一方で、鈴鹿時点でランキングトップだったauセルモスープラ(竹内浩典/立川祐路組)がは、100kgものハンデと乱戦状態に悩まされながらも、巧みに走りきって貴重な6ポイントを稼いで、トップの座を守った。 また、他車との接触などトラブルにはまってしまったザナヴィヒロトGT-R(M.クルム/田中哲也組)はわずか1ポイントしかとれず、マツキヨZENTトムススープラ(山路慎一/W.ガードナー組)も同様でなんとか8ポイントを挙げてともにかろうじてチャンピオン争いに踏みとどまった。 さて、最終戦が行われるMINEは超テクニカルコースと呼ばれるほど、タイトなコーナーが続く。こういうコースはNAでミドシップのNSXが有利と言われている。だが意外なことに、NSXは過去MINEでは1勝しか挙げていないのだ。このMINEのリザルトを振り返るとmなんと1994〜99年まですべて優勝車種が違う。そして1999、2000年と最近はスカイラインGT-Rが連勝した。スカイラインと言えば、速さではなくしぶといレースが持ち味の車種。つまり、MINEで勝つにはコーナーの速さより、荒れたレースを生き抜く強さがキーポイントといえるだろう。 そしてランキング2位に付けているARTA NSXは80kg、ロックタイト無限NSXは70kgのウエイトハンデを積んでMINEに臨む。NAのNSXにとってハンデは40kgを越えるとてきめんに効くという。そう考えるとNSXにとって決してMINEは有利ではないのだ。 一方で、ランキングトップのauセルモスープラは、第5戦もてぎで80kgのハンデを積んで2位入賞を果たしたり、テストで100kgオーバーを積んでもトップ5のタイムを出すなど、ハンデに対する強さは抜群だ。ただ、MINEのコース特性は決してスープラ向きとは言えないのも事実。 このランキングトップ3車のポイント差はわずかに2。3車共に優勝すればもちろんだが、5位以上でライバルより前でゴールすれば、ほぼチャンピオンを決められる。それだけにこの3車は互いを強烈に意識しながらのレース展開をすることになりそうだ。 そして、まだチャンピオンに可能性を残すチームはまだある。特に要注意なのは、ザナヴィヒロトGT-R。ウエイトハンデはわずか20kg。先に挙げたようにここ2年スカイラインがMINEを連覇しているように、"強い"ところを見せて優勝すれば、ランキング上位3チームは4位以上というかなり高い難関を越えないとチャンピオンになれない。レース巧者のNISMOがザナヴィを勝たせるために、いかなる戦略を編み出してくるか。興味深いところだ。そして、もう1台マツキヨZENTトムススープラも優勝すれば、ランキング上位陣が下位に沈めばという条件付きでかすかな可能性がある。 数字上には、ランキング6〜8位のエッソウルトラフロースープラ(脇阪寿一/野田英樹組)、Mobil 1 NSX(W.シュワガー/松田次生組)、ペンズオイルゼクセルGT-R(E.コマス/影山正美組)にも可能性はあるが、自らが優勝した上でトップ3がノーポイント、それ以外の上位も3位以下というかなり厳しい条件となっている。 チャンピオン争い以外では、昨年の勝者カルソニックスカイライン(星野一義/本山哲組)やTAKATA童夢NSX(S.フィリップ/B.トレルイエ組)、RAYBRIG NSX(飯田章/伊藤大輔組)のNSX勢、イエローコーンマクラーレンGTR(中谷明彦/服部尚貴組)などが優勝争いに絡み、チャンピオンの行方を左右しそうだ。 ■2001 GT500シリーズチャンピオン・ポイントシミュレーション
GT300クラスは、ランキング上位2チームが変わらずで最終戦を迎えることになった。特に予選2位から順調なスタートを切ったランキングトップのダイシンADVANシルビア(大八木信行/青木孝行組)にとっては、GT500車の無理なパッシングによるアクシデント、そしてリタイヤは泣くに泣けないものだったろう。一方、ランキング2位の雨宮マツモトキヨシアスパラRX7(山野哲也/松本晴彦組)も混戦の中でマシンを壊してノーポイント。鈴鹿を得意と言い切った雨宮RX7にとっても、この取りこぼしは悔いるものだ。 また、ユニシアジェックスシルビア(井出有治/柳田真孝組)は優勝を目前にして、ピット作業違反のペナルティで2位に甘んじた。この作業違反も接触が元でエアジャッキがちゃんと作動しなかったためで、ここにも乱戦のツケがあったのだ。ともあれ、優勝していれば、トップのダイシンとわずか2ポイント差まで迫れたのだが…。 このように、ランキングトップ3は最終戦をその差7ポイントの中で闘う。1位のダイシンは2位以上なら、自力で優勝決定となる。つまり、雨宮とユニシアは優勝しても、ダイシンが2位ならアウトだ。とはいえ、ダイシンが7位以下に沈んだ場合は、表彰台圏内で互いの前にいればチャンピオンとなれる。 混戦が必至のGT300では、油断すればすぐに2つ3つは順位が下がる。ダイシンも決して有利とは言い切れない。GT300のチャンピオン争いは、ライバルはもちろんだが、いかにトラブルを避けて生き残るかという部分でも闘わなくてはならない。 また、RX7はタイトコーナーが得意ではないからMINEは不利と言われるが、2台のシルビアも80kgのハンデを積んでいるだけに、後半のタイヤやブレーキには不安があるだろう。一方、雨宮マツキヨRX7は50kgとわずかだが軽いハンデで済んでいる。GT500同様、GT300のチャンピオン争いもさまざまなファクターが絡み合い、単純に有利不利を出せない状況だ。 数字上では、910アドバンロディオドライブポルシェ(和田久/砂子智彦組)、シェルタイサンアドバンGT3R(福山英朗/余郷敦組)にもチャンスはあるが、優勝した上で、上位3チームすべてが6位以下となる必要があるだけに、正直圏外と言ってもいいかもしれない。 チャンピオン争い以外の面では、MINEのコースを考えて、MR-SのウェッズスポーツMR-S(田中実/後藤聡組)や鈴鹿で優勝したプロジェクトμエスペリアMR-S(松田晃司/長島正興組)、チャンピオ争いから脱落したが実力十分のARTA・アペックスMR-S(新田守男/高木真一組)が面白い存在になりそうだ。また、雨が降ればR&DスポーツダンロップGT3R(柴原眞介/密山祥吾組)などダンロップタイヤ・ユーザーが活躍することも考えられる。 ■2001 GT300シリーズチャンピオン・ポイントシミュレーション
泣いても笑っても、新世紀最初のJGTCチャンピオンがこのレースで決まる。ドライバーと、チームスタッフと、そしてファンと共に、感動できるフィナーレを味わおう。 Reported by Team GT InsideReport
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