2002 AUTOBACS JGTCRound8
SUZUKA GT300km
11.16,17 SUZUKA CIRCUIT
RACE RESULT 2002-11-17

決勝レースレビュー


64 NSX
Mobil 1 NSXがハードバトルを制して優勝!
だが、チャンピオンはエッソウルトラフロースープラの手に

 11月17日、三重県の鈴鹿サーキットで2002 AUTOBACS全日本GT選手権最終戦SUZUKA GT300km RACEの決勝が行われた。この決勝レースではNo.64 Mobil 1 NSXが優勝し、今季3勝目を挙げた。だがドライバーズチャンピオンは、決勝3位となったNo.6 エッソウルトラフロースープラの脇阪寿一/飯田章組が手にすることになった。GT300はめまぐるしく順位が変わる激しい展開の中、No.81 ダイシンADVANシルビアが今季初勝利を挙げた。GT300のドライバーズチャンピオンはNo.31 ARTAアペックスMR-Sの新田守男/高木真一組となった。


 この日の鈴鹿は11月中旬にしてはしのぎやすい好天に恵まれた。決勝レースの開始時の14時前には気温16度、路面温度19度、路面はドライと好コンディションとなった。
18 NSX
 チャンピオンの掛かるこのレース。GT500ランキングトップのNo.6 エッソウルトラフロースープラ(飯田章)がポールだが、優勝をして逆転チャンピオンを狙うNo.18 TAKATA童夢NSX(ライアン)がその隣から、そして直後にはNo.64 Mobil 1 NSX(ファーマン)いる状況でスタートする。1コーナーではターボの加速を生かしてNo.6エッソがキープするものの、No.18 TAKATA、No.64 Mobil、そしてNo.37 ZENTトムススープラ(黒澤琢弥)が激しくアタック。No.6エッソの飯田は必至に抵抗するが、チャンピオンが掛かっているだけに無理はできない。その結果、相次いで3台に抜かれ、4番手まで順位を下げる。
 3番手のNo.37 ZENTは7周目にペースダウン。エンジントラブルで後退し、序盤の首位攻防はNo.18とNo.64のNSX対決になる。ともに優勝しないとチャンピオンの獲得が難しくなるだけに、激しい攻防となる。
 一方、予選6位のNo.8 ARTA NSX(金石勝智)が2周目でランキング2位のNo.1 auセルモスープラ(竹内浩典)を抜き、さらにダートに片輪を落としてペースの乱れたNo.6エッソも抜いて3番手に。No.6は予選8位のNo.39 デンソーサードスープラGT(デュフォア)にも抜かれ、5番手に落ちる。

 激しい首位攻防は、13周目に決着がつく。ヘアピンで姿勢が乱れたトップ18の隙を64が突き、2台はスプーンまでサイド・バイ・サイドのまま意地の張り合いとなる。スプーンでもまったく引かない2台はマシンを震わせながら、スプーンに突っ込んでいく。ここでアウト側につけ、かぶせたかったNo.18だったがオーバースピード気味だったか姿勢を見出してコースアウト。サンドトラップに捕まったNo.18は、これで大きく後退し、事実上レースを終えた。
 これで、トップ64Mobil 1、2番手8 ARTAと2台のNSXに3番手39デンソー、4番手に6エッソ、5番手1auと3台のスープラ、そしてまだチャンピオンの権利があるNo.100 RAYBRIG NSX(加藤寛規)、そしてNo.23 カストロールコクピットGT-R(コマス)までがトップ6となる。
8 NSX
 21周目に上位勢の先陣を切ってNo.100 RAYBRIGがピットイン。さらに22周目にNo.6エッソウルトラフローもピットに。飯田から脇阪寿一へと交代。23周目にトップの64Mobilもピットに入り、松田次生へとステアリングを繋ぐ。そして、64を追う8ARTAと39デンソーが26周目に同時にピットイン。8ARTAは金石から土屋圭市へ、39デンソーはデュフォアから織戸学と代わる。
 8ARTAは事実上のトップである64の前でコースに戻る。だが、まだタイヤの温まらない8ARTAはペースが上がらず、64Mobilはあっさり8をパスし、首位をキープ。この後、64Mobilは8ARTAに2〜1.5秒の差をキープして、後半戦へと進む。

 チャンピオンを狙う6エッソは、39デンソーを抜き3番手に浮上。これの順位をキープすれば、64Mobilが優勝してもわずか1ポイント差でチャンピオンとなるポジションだ。これ以外のチャンピオン候補は、100RAYBRIG(光貞秀俊)が5番手、6番手に16無限NSX(道上龍)、7番手1auセルモ(立川祐路)という順位。これではチャンピオンの目はないが、上位陣との差はもう20秒以上開き、上位の脱落を祈る以外は手はなしだった。
 ここで16無限NSXが急遽ピットイン。もし、ファステストラップの1ポイントを16が取れば、エッソのポイントがひとつ減り、Mobilと同点ならば優勝回数の差でMobilのチャンピオンとなるのだ。

 そして、終盤。周回遅れに詰まった64Mobilの背後に、2ARTAと6エッソが急接近。エッソの脇阪には無限の状況が伝えられ、これで脇阪は2位を狙って8ARTA、それどころか64Mobilまで抜こうかというハードアタックを開始。ラスト3周になって、また激しいトップ争いが始まった。
 だが、Mobil 1 NSXの松田は、何とかARTA土屋とエッソ脇阪の攻撃をしのぎ、今季3勝目を挙げた。これでARTA NSXは2位、果敢なアタックを繰り広げたエッソだが、こちらも順位を上げられず3位で終わる。これで、Mobilとエッソのチャンピオン争奪の決着は後続の結果待ちとなった。やや遅れて、無限NSXもゴール。結局、無限はファステスト3位以内には入れず。これで、エッソウルトラフロースープラの脇阪寿一/飯田章組の2002ドライバーズチャンピオンが決まった。


81 SILVIA
ダイシンADVANシルビアが今季初優勝
ユニシアは無念の涙!チャンピオンはARTAアペックスMR-S!

 GT300のチャンピオン争いもこの最終戦までもつれ込んだ。同ポイントでランキングトップに並ぶNo.3 ユニシアジェックスシルビアがポール。一方のNo.62 Vemac R&Dダンロップ320Rは予選5位、ランキング3位のNo.31 ARTAアペックスMR-Sが予選6位からスタート。

3 SILVIA
 決勝スタートはポールのユニシア(柳田真孝)が順当にトップをキープ。だが、7周目に2番手のNo.5 BANPRESTO CAR倶楽部マッハ号MT(三船剛)がユニシアをパスして、トップとなる。チャンピオンを目指すユニシアは、ライバルのVemac(密山祥吾)、ARTAアペックス(新田守男)が7番手、11番手と出遅れただけに、表彰台圏内キープの状況となる。
 これで、ユニシアのチャンピオンは有力かと思われたが、13周目になんと突然スローダウン。そのままピットに入り、マシンはガレージの奥へ。ユニシアはファステスト分の1ポイントを加えたが、これで事実上のノーポイントとなった。
5 MOSLER
 トップのマッハ号は順調に逃げる。それをディフェンディングチャンピオンながら今季はすでにチャンピオンの権利がないNo.81 ダイシンADVANシルビアが追いかける展開。一方で、チャンピオン争いは混沌となる。No.31 ARTAもNo.62 Vemacも10番手前後。互いに前に出た方がチャンピオンとなり、ともにノーポイントなら、すでにリタイアしたユニシアのものとなる。

 各車ピットイン後もトップ争いは5マッハ号(玉中哲二)が一歩リード。これをピットインを非常に短くこなしたNo.19 ウェッズスポーツMR-S(田中実>後藤聡)がダイシン(大八木信行)をかわして2番手に。トップのマッハ号は初優勝が目前に迫った残り10周ほどで、なんとコースアウトし、戦線を離脱。トップはNo.19 ウェッズとダイシンが接戦を繰り広げるが、残り7周ほどで両車が接触。これでウェッズがコースアウト。これでトップはダイシンとなる。このままダイシンADVANシルビアは走りきって、今季初優勝となった。2位には予選12番手からしぶとく上がってきたNo.24 EndlessタイサンアドバンGT3R(木下みつひろ>福山英朗)が入った。
 チャンピオン争いは、終盤No.31ARTAアペックス(高木伸一)が順位を5番手まであげ、Vemac(柴原眞介)も8番手まで浮上。ともにあと1つ順位を上げればチャンピオンとなれるだけに、周囲も見なくてはならい緊迫した状況に。

 終盤ARTAアペックスはミッションの調子が悪く、時にコースアウトすることもあったが、なんとか走りきり4位でゴール。Vemacは7位で終わり、これでNo.31 ARTAアペックスMR-Sの新田守男/高木真一組がチャンピオンを決定した。新田はGT300で3回目の、高木は初のチャンピオンとなった。GT300のチームチャンピオンはNo24 Endlessの2位入賞で、チームタイサンが獲得した。

 今季から始まったエンジンチューナーチャンピオンは、GT500が無限、GT300は戸田レーシングが獲得した。


GT500
No.64 Mobil 1 NSX(GT500優勝)
ラルフ・ファーマン「1点差で(シリーズチャンピオンがとれなかったのは)残念だったけれど、チームはとてもいい仕事をしてくれた。クルマもホンダがいいものを用意してくれた。今シーズンは3つ勝っているから、まあ仕方ないよね」
松田次生「ちょっとペースを落としたのは、最終コーナーにオイルや砂が出ていたからです。チャンピオンが獲れるのかどうなのかが走っているときはわからなくて、なにがなんでもミスは許されない状況だったので、(マシンを降りた)今でも手と足がふるえてます。こんな怖いレースははじめてですよ」
GT300
No.81 ダイシンADVANシルビア(GT300優勝)
青木孝行「金曜日から決勝日のウォームアップまでエンジンにトラブルが出ていて、決勝レースも本調子ではない状態でしたが、トラブルは直っていて大八木さんが後半良い走りをしてくれたんです。リタイヤばっかりの1年で完走は3回しかしていなくて、4回目の1回だけ表彰台にあがれたというシーズンでした」
大八木信行「最後はいっぱいいっぱいで、タイヤも(他車との)接触からトラブルが出ていた。(No.19と)少し当たってしまったのは悪かったけれど、勝負するところが少なかったから、最後は勝負させてもらった。最後のチャンスやったんでね」



2002 SERIES CHAMPION
6 SUPRA
GT500ドライバーズチャンピオン
No.6 エッソウルトラフロー スープラ
脇阪寿一「レース前半、苦しい状態になるのは読めてました。それは章が乗ろうがボクが乗ろうが同じです。傍目には章が乗ると遅くてボクが乗った後半は速いっていうふうに見えたかもしれませんが、章がそこでガソリンをセーブしながら走ってくれるおかげでボクが最後にガンガンいけるっていう、そういう戦い方を1年間してきたんです。『寿一はがんばったね、章は情けないね』っていう人がいるんですけど、それだけは勘違いしないでほしい。ボクがガンガンいけるのは章がセーブしてくれるおかげなんです。そういう方針のもとで1年間戦ってきた結果として、1ポイント差としてチャンピオンが獲れてひじょうにうれしいです」
飯田 章「(全日本タイトルは初だが)是が非でもほしかったんです。というより、チーム・ルマンに移籍して、チームのためにも今年は獲ろうと。去年までNSXではまったく違うレースをやってきて、イケイケでいって終わってみるとアレ? っていうレースが多かったんですが、最近のGTのレースはそういうのではタイトルを獲れないですから。ひとつ大人になったというわけじゃないんですけど、チャンピオンを獲るためにチームを移ったわけですからね。今日のレースも序盤はすごくつらかったんですが、自分のペースで走ろう、と。第1戦、はじめてスープラで走ったとき、タイヤはタレてくるし足は火傷するし、つらい思いをしながら『ここで1ポイントでも獲らないとチャンピオンを目指せないだろう』と思ってがんばったんですが、(今日のレースで)終盤、No.16がベストラップ(の1ポイント)を取らなかった瞬間、(そのことを思い出して)泣けてきましたね」



31 MR-S
GT300ドライバーズチャンピオン
No.31 ARTAアペックスMR-S
新田守男「今だから言えるけど、テストでも予選でもドライブシャフトを折っちゃっていて、対策部品がなかったんですよ。だから折らないようにいたわって、いたわって走るしかなかった。何度もコースアウトしそうになるし、考えてもいなかったポルシェに抜かれたり、とにかくきびしいレースでした。ユニシア(No.3)がスローダウンしたのはわかってたんだけど、そんな状態だったのでタイトルが獲れるとは思ってませんでした。結果的にですけど、獲れたことはホントにうれしいです」
高木真一「無線が通じなくなっちゃって、チャンピオンがどうなっているのか、戻ってくるまで全然わからなかったんですよ。自分のポジションはピットサインでわかってたんだけど、ヴィーマック(No.62)がどうなってんのかとか、わからなかった。ゴールしたときに新田さんがコースに飛び下りてたんで、もしかしたら…とは思ったんですけどね」



GT500チームチャンピオン
無限×童夢プロジェクト
熊倉淳一監督「われわれのプロジェクトとして、当初はチームチャンピオンというのではなく、ドライバーズチャンピオンを目指してきたんです。でも16号車は初戦から(道上龍の負傷欠場で)理想としていたラインナップでは闘えなかったということが悔いになっています。(道上龍の代役の)ドミニク(シュワガー)もよくやってくれたことで、道上が復帰したときには(伊藤大輔がタイトルを)ねらえるところまできてたけれど、クルマのトラブルが出たりと噛み合わなくて、こういう(ドライバーズタイトルを逃す)結果になってしまった。18号車に関しては、1人が今年初めてGT選手権を走るということで、力はあると思うけれどうまくまとめきれなくて、落としてしまったところが多かった。GTのレースは2人のドライバーのコンビネーションが重要だと思ってますので、初年度のドライバーはそのへんが理解できないところがあって、それがドライバーズチャンピオンに届かなかった理由でしょう。ただ、(ドライバーは)みんなスピードはあるんで、それがチームチャンピオンにつながったと思います」

GT300チームチャンピオン
TEAM TAISAN ADVAN
千葉泰常監督「去年のMINE(のチームタイトル会見)ではちょっと酔っぱらって『私は来年はもう(JGTCを)やめます』と言いましたが、なぜここにいるんだと言われれば、それがGTの魅力だから(笑)。予選やファステストに1ポイントだというので、これはポルシェ勢には絶対取れない、イジメだなぁと感じて、まあ娘もチャンピオン(ミス・ユニバース・ジャパン)になったことだし、オヤジはもういい(笑)、『もう止めた』と言ったんですが、でも、エンドレスさんやヨコハマさんなど、みんながやりましょうと言ってくれたので続けたことで(チャンピオンが取れて)ホントによかったです。残念だったのは、MINEで木下みつひろ君が『エンジンから(異)音がする』と言ったので開けて全部見たんですがわからなくて、レースでいっちゃったんですよね。あれがなければ、ここに新田くんじゃなくて、福山と木下が座ってたんですけどね(笑)。でも、それがひとつの人生だし、新田くんもウチに2年間いたし、(GT500チャンピオンの飯田)章もル・マンで乗っているし、みんながハッピーで、(JGTCは)ホントに楽しいレースです」






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