2003 Round8
SUZUKA GT 300km
11.15,16 - SUZUKA CIRCUIT

RACE RESULT 2003-11-16
決勝レースレビュー


2003 AUTOBACS JGTC 第8戦『SUZUKA GT 300km』 11.15予選, 16決勝/鈴鹿サーキット


大激闘を制し、カルソニックスカイラインが今季2勝目!
ザナヴィニスモGT-Rが3位で、逆転でチャンピオンを獲得
TAKATA童夢NSX、道上の執念の追走報われず...
12 Skyline
No.12 CALSONIC SKYLINE

 11月16日、三重県・鈴鹿サーキットで2003 AUTOBACS JGTC最終戦「SUZUKA GT 300km」の決勝レースが行われた。最終戦に相応しく激しく、めまぐるしい展開の中、カルソニックスカイラインが今季2勝目を挙げた。ドライバーズ・チャンピオンは3位に入賞したザナヴィニスモGT-Rの本山哲/ミハエル・クルム組が獲得。GT300クラスは、ウェッズスポーツCELICAが今季2勝目。ドライバーズ・チャンピオンはハセミスポーツ・エンドレス・Zの木下みつひろ/柳田真孝が獲得した。


 昨晩、雨が降ったことでコンディションが心配されたが、昼過ぎには青空ものぞいて晴れとなった。決勝レースは好コンディションとなった。気温は23度、路面温度25度。
 朝のフリー走行で電装系にトラブルがあったNo.17 Kosei SPILIT CERICAがピットスタートとなった以外は、ダミーグリッドにつき最終戦に臨んだ。
 スタートでは、ポールのNo.25 ADVANスープラ(デュフォア)がトップをキープ。これにNo.38 auセルモスープラ(立川祐路)、No.23 ザナヴィニスモGT-R(本山哲)、No.16 TAKATA童夢NSX(フィリップ)が続いていく。ランキングトップのNo.1 エッソウルトラフロースープラ(飯田章)は、スタートでNo.12 カルソニックスカイライン(トレルイエ)で抜かれ、7番手とポジションを下げてしまう。一方、スタートラップからアグレッシブに攻めるザナヴィは、3周目のシケインでauセルモをパス、2番手となりチャンピオンへの可能性を広げていく。この後、トップADVANとザナヴィの差は、1から2秒でこれから本格的な攻防戦になるかと思われた。だが、9周目のS字でNo.55 ECLIPSEタイサンADVANバイパー(山田英二)がスピン。コースの真ん中にマシンを止め立ち往生。ここに後続集団が突っ込み、大混乱となる。そこでさらにGT300車がスピン。直後につけていたトップのADVANスープラはそれを避けきれずにコースアウト。クラッシュこそ避けたが、グラベルにはまり順位を大きく落として優勝戦線から脱落した。これで、この混乱を辛くも避けたザナヴィがトップとなり、これをTAKATA童夢と、auセルモを抜いてきたカルソニックが追う展開となる。
 ADVANが脱落したことで、再度6番手となったエッソだがペースが思うように上がらず、背後にはNo.8 ARTA NSX(土屋圭市)とNo.100 RAYBRIG NSXが接近。エッソは18周目の1コーナーでハーフスピンを喫したところを、ARTAに突かれ再度ポジションダウン。さらにRAYBRIGに攻められる。1人のドライバーの最低規定周回数に達したこともあり、ここでエッソはピットイン。後半の巻き返しを脇阪寿一に託す。


 2番手はTAKATA童夢とカルソニックが激しく争う。これに後目にトップのザナヴィは差を広げに掛かる。そして、22周目にザナヴィもピットイン。燃料給油にやや時間が掛かるものの大きなトラブルなく、クルムをコースに戻す。24周目にはカルソニックもピットイン。この作業は40秒を切る速さで、代わった井出有治を事実上のトップでコースに復帰。次の周にはTAKATA童夢もピットイン。かなり素早かったが、道上龍がコースに戻ったときはカルソニックに先行されていた。
 これで、実質的な順位はカルソニック、TAKATA童夢、ザナヴィ、モチュールピットワークGT-R(影山正美>ライアン)となる。カルソニックの井出は、タイヤを温存するために無理にペースを上げなかったが、思いの外にTAKATA童夢の道上のペースは速かった。カルソニックが40周過ぎには周回遅れに詰まったせいもあり、一時8秒近くあったマージンはなくなり、残り5周でカルソニックとTAKATA童夢はテール・トゥ・ノーズ状態にとなった。ここから井出と道上の激しいバトルが展開されている。そして、48周目にシケインで井出がコースアウト。何とかポジションを下げずにコースに戻る。だが、ストレートでの加速でTAKATA童夢にパスをされる。今度は1コーナーでのブレーキング勝負となり、TAKATA童夢はポジションを守るため、やや無理なラインを取る。これに対し、カルソニックはレコードラインでコーナーに侵入し、TAKATAのインサイドを狙った。ここで、ややTAKATA童夢の姿勢が崩れ、そこにカルソニックのノーズが微かに当たる。これでTAKATAがスピン状態となり、コースアウト。道上は速やかにマシンをコースに戻し、ポジションは下げずに済んだが、これでバトルには終止符が撃たれた。しかし、ウォールにヒットしリアウィングが歪んだマシンを道上は執念で操り、カルソニックを追うがさすがに残る周回はわずかに1周。このままカルソニックスカイラインは逃げ切って今季2勝目を挙げた。TAKATA童夢NSXが2位。


No.23 Xanavi NISMO GT-R

 そして3位にはザナヴィニスモGT-Rが入り、レース前のポイントリーダーであるエッソのゴールを待つ。エッソの寿一も懸命な追い上げを見せたが結局7位に終わる。これで、ザナヴィ組が86ポイント、エッソ組が83ポイントと逆転して今季のチャンピオンを決めた。今季でJGTC参戦を終了するスカイラインGT-Rにとっては、最終戦勝利、年間3勝、ドライバーズとチーム(NISMO)のチャンピオンと、まさに有終の美を飾るエンディングとなった。今季で現役を引退する土屋圭市のNo.8 ARTA NSX(土屋>金石年弘)は6位でゴール。レース終了後の引退セレモニーで土屋は、暗くなっても残っている数千のファンにあいさつ。土屋を慕う多くのドライバーたちとともに感動的なラストランを行った。



ピットワークで優ったウェッズスポーツCELICAが優勝!
GT300チャンピオンは2位の木下みつひろ/柳田組が獲得
19 CELICA
No.19 WedsSport CELICA

 GT300クラスは、ポールからスタートしたNo.3 ハセミスポーツ・エンドレス・Zの木下みつひろが逃げ、No.19 ウェッズスポーツCELICAの青木孝行が追う展開。青木は、自分たちよりソフトなタイヤを選択したハセミZの様子を見ながら、2秒ほど後方から追走する。木下はなんとかトップを守り、ルーティンのピットイン。ウェッズも後ろについたまま、ピットへ。これで、ピットでの競争となるが、給油時間の短いウェッズがわずかに速く飛び出し、トップを奪う。これで自分のペースで走れたウェッズの田中実が、このまま逃げ切って今季2勝目を挙げた。一方、ハセミZの柳田真孝は優勝よりもチャンピオン獲得を優先し、無理に追い上げずに2位キープの作戦に出る。
 レース前のポイントリーダーのNo.26 PLUS eタイサンアドバンGT3Rは予選10位から5番手までポジションを上げたが、他車との接触でリアタイヤを壊してしまい緊急ピットイン。その後9位まで追い上げる。また、ランキング2位だったNo.31 RECLESS MR-S(佐々木孝太>後藤聡)もスピンを喫し、11位でノーポイント。No.71 シグマDUNLOPセリカ(黒澤治樹>澤圭太)も3位になる。だが、しっかりと2位となったハセミスポーツ・エンドレス・Zに届かず、これでハセミ組の3年越しのGT300制覇を達成した。


No.3 HASEMISPORT ENDLESS Z


WINNER INTERVIEW

GT500 優勝
No.12 カルソニックスカイライン
ブノワ・トレルイエ「今日はスタートポジションが良くなかったが、かなりいいスタートが切れた。タイヤもソフトだったので、クルマにも無理させずにいきました。18号車のNSXもいいペースだったので、ピットで抜くことを考えました。結果的に、ピットストップが上手くいって、井出選手に優位なポジションで渡せました。スカイラインの最後のレースで勝てて本当に良かった。満タンでも安定したクルマを作ってくれたスタッフに感謝したい。星野さんも経験豊富で良い戦略を考えてくれた。ユウジとも良いコンビを組めたと思う。チームオーダーですか? それはなかった。僕もスタートからベストを尽くすことだけ考えていた」
井出有治「ブノワから受け取って、アウトラップから攻めていった。18号車との差は8秒近くあり、タイヤが後半厳しくなるだろうから、無理にペースを上げるより、後半残すことを考えてセーブした。残り10ラップになって周回遅れにも絡んで、シケインやヘアピンで止まりきれない状況もあった。最後の1コーナーは、当たってないと思います。道上選手は外から行って、自分はレコードラインを通ってました。ブレーキングか、アクセルでミスしたのかもしれません。ラインの外側はグリップが低くて滑りやすかったですし。チームのオーダーはなかったです。自分は乗ってから勝つことだけしか考えていませんでした。チームも無線で応援してくれましたし。星野さんのカルソニックスカイラインに憧れてレースを始めたから、スカイラインGT-Rの最後のレースで、カルソニックで勝てたことは嬉しいです。チャンピオンは獲れませんでしたが、走りはアピールできたと思います。終盤タイヤがきつい時、日産の旗があちこちで見えて、なんとかトップでゴールしたいと思いました」

GT300 優勝
No.19 ウェッズスポーツCELICA
青木孝行「最後に勝ててホッとしました。Zがソフトのタイヤを使っていたのは分かっていたので、しばらく様子を見て抜こうかと思いました。ピットインは、坂東さんからZが入ったら一緒に入ってこいという作戦を言われていたので、一緒に入ったんです。メカニックが本当にいい仕事をしてくれました。前に出てしまえば、ウチの方がタイヤが保つので後半ペースアップできるから、これで大丈夫だと思って実さんの走りを見てました」
田中 実「最後に勝ったことで、来年までクリスマスも正月も楽しく過ごせます(笑)。ピットでは燃料もカツカツにして時間を短縮して、前に出たんです。実は、ウチの前のセルモのピットでauが斜めに止まってまして、普通ならいったんクルマを押し下げて出さないと出ない状況だったんです。だけど、坂東さんは「そのまま行け!」って(苦笑)。上手くホイルスピンしてクルマが動いてくれたからぶつからずに出れた。この瞬間「勝った!」って思いましたね(笑)。もしぶつかったら、お互いにかなり壊れたと思いますから、セルモのバテさんにも怒られて、坂東さんにも怒られて大変だったかも(笑)」


SERIES CHAMPION INTERVIEW

GT500 ドライバーズ・チャンピオン
No.23 ザナヴィ ニスモ GT-R
本山 哲「(ゴール直後は涙ぐみましたか?)いや、それじゃ済んでなかったかも(笑)。これまでも優勝やチャンピオンも経験しましたが、なんか夢みたいですね。こんな感じになったのは始めてです。ここ数年、スカイラインはつらい時期もありましたが、みんなの努力の結果で速くなってきた。だから、本当に欲しいタイトルでした。今週末は流れも良くて、レースも順調でした。クルムの走りも安定していたんですが、ゴールするまで心配で、最終ラップ入ってから喜んでいいかなと思ったくらいです。(クルムが本山をつつく)ホント信頼してたんですよ(苦笑)。でも、モニターで見てて「もっと安全に走れ」とか「タイヤも大事に」とか無線で僕が言いたかったですよ。今年はいろいろありましたが、今日のレースと結果が一番嬉しいです。オートポリスでは、ああいうことでエッソと6ポイント差になり、これで可能性があると感じました。そこから特にタイトルを意識しました。最終戦に向けて総合力で上回ればいいと、自分の勝手な考えですけど、思いました。それで、落ち着いて力を出し切ろうと。(Wタイトルですね?)最高の形でシーズンを終われるとは思っていませんでした。ホントすごく嬉しいです。今後ですか? 僕の中でも日本を卒業したいと思っているし、大きなステージに行きたいと思う。そこで活躍するために今がんばってます。F1です、目標は」
ミハエル・クルム「本山選手には早くF1に行って欲しいですね。もう日本でこれ以上勝つことないじゃない(笑)。レースですが、1位で引き継いでクルマはいい感じでした。僕は固いタイヤで出て、長いスティントを走りました。タイヤもバランスもいい。今日のスカイラインは素晴らしい状態でした。僕は失敗しないよう集中するだけでした。あとはクルマが最後まで元気でいて欲しいというだけでした。1号車とのタイム差はサインボードで見てました。スカイラインの最後に勝てて本当に良かった。コーナーでも、赤旗…じゃない(笑)、ニッサンの旗がいっぱいでファンのみんなには感謝してます」

GT300 ドライバーズ・チャンピオン
No.3 ハセミスポーツ・エンドレス・Z
柳田真孝「最初、ピットストップのときに(No.19の田中)実さんに逆転されて、追いかけようか迷ったんですけど、追いかけるのはやめて、リスクを背負わずにいきました。ボクたちが完全に優位だってことがわかってたんで、ペースを落としてクルマをいたわりながらゴールしようと、それだけを考えていました。クルマを大事にいたわることがボクの一番の仕事だと思ってましたから」
木下みつひろ「勝ってチャンピオンを決めたかったですけど、自分もチームも全部力を出しきってのチャンピオン獲得だったんで、すごく納得しているし、満足しています。今週末はやることを全部やりつくした結果としてチャンピオンが獲れたんですごくうれしい。最高です」

GT500 チーム・チャンピオン
NISMO(No.22 モチュールピットワークGT-R/No.23 ザナヴィニスモGT-R)
柿元邦彦監督「チャンピオンを獲得でき、本当に嬉しいです。2001年の(タイトル獲得)時にはなかった大きなカップ(大臣杯)を渡されて、つくづく良かったなぁと思いました。スカイラインGT-Rでの参戦は今年で終了となるので、何らかの証(あかし)が欲しかったんです。(前戦)オートポリスで(エッソスープラが2位でゴールして)11ポイント差だったら不可能だったと思いますが、それが6ポイント差と彼らに待ってもらえたことで、チャンスが出てきた。ウチのチームは素晴らしいチームだと思います。その実力がドライバーズタイトルにも貢献できたんだと思います。
 今年のスープラはエンジンが優っていました。これに対抗するために、スカイラインはコーナリング性能で勝負した。そのためちょっとでも(想定を)外すとタイヤが厳しくなった。その面では、ドライバーに無理を強いてしまいました。それだけに本山君たちが獲ったドライバーズタイトルは価値があります。この2人はベストでした。そして、他のドライバーたちもよくやってくれました。GT300もハセミの2人が獲ってくれました。柳田選手は、お父さんの春人さんが『Zの柳田』と言われる名ドライバーだったから、僕がぜひ今年も乗せてやってくれと薦めたんです。それだけに、ちゃんと結果を出してくれて嬉しい。木下選手もS耐でも(GT-Rで)チャンピオンを獲ってれくたし。彼らもよくやってくれました。
 クルマ的には富士で強かったのですが、今年は幸運にもその富士で3回もレースがあってありがたかった。でも、来年はそれが1つもないんですから、これまで通りではつらいでしょう。来年はご承知の通り、GT500もフェアレディZで行います。4台を投入します。GT300にもZが、台数は未定ですが参戦すると思います。クルマが変わることで難しいでしょうが、連覇に向けて努力します。とてもチャレンジャブルな1年になるでしょうね」

GT300 チーム・チャンピオン
TEAM TAISAN ADVAN(No.26 PLUS e タイサン アドバン GT3R/No.55 ECLIPSE タイサン ADVAN バイパー)
千葉泰常総監督「まずは、GT300のチャンピオンになった木下みつひろ選手におめでとうと言わせてください。彼は昨年ウチのチームで走ってましたから、人ごととは思えず嬉しいんです。我々のドライバーズタイトルは、レース中に26号車が他車に当てられてしまい、逃すことになってしまいました…。今年は欲しかったんです。何度も言いましたが、JGTCは今年で10周年。その10年で7回、GT300は4年連続でチームタイトルをとれて嬉しい。それに、今年は支援してくれたアドバンの25周年にも花を添えられました。今季は、いろいろと苦労してポルシェもワークス級のエンジンを載せることができました。若いドライバーの浅井選手を起用して開幕で勝て、さらにベテランの山路選手たちが2戦目。そして7年苦労して続けてきて、今年新車にすることができたバイパーでも勝て、3勝もした。本当に良かったです。
 チームタイサンとして、タイサンの千葉としては今年が最後になると思います。チームタイサン・アドバンとしてはケリをつけます。ただ、若い人たちの夢を叶えてあげたいという気持ちもありまして…。今の時点では来年はまったく未定です」





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