『マレーシア・ラウンド、公式戦化の意義を訊く』
過去2回スペシャルイベントとして開催されてきたマレーシア・ラウンドが、今回から選手権に組み込まれ、公式戦として行われることになった。その意義について、GTアソシエイションの加治次郎事務局長とセパンサーキットのゼネラルマネージャー、ムスタファ氏にに訊いた。
■加治次郎GTアソシエイション事務局長
「日本の選手権の公式戦を国外で行うのは日本のレース史上初めてのわけです。これには日本の側とマレーシアの側、両方にとって大きな意義があります。まず日本のレース関係者にとっては、国境を越えて日本のレースが発展できる第一歩になる。日本のレースのしくみそのものが海外に踏み出すという意義があります。
マレーシアの人にとっては、やはりチャンピオンシップとエキジビジョンでは違う、という見方があるようです。やっている側の意識に違いはないんですが、こちらの人はチャンピオンシップのほうを本物と見ています。今回の公式戦で、外側から日本のレースを見たときの見られ方というのが変わったと思います。
JGTCはこれまでマーケットに合ったレース、ということをつねに念頭においてきました。アメリカ(合衆国)やヨーロッパのマネではなく、世界に向けて胸を張って『われわれのレース』としてアピールできる存在であろうとしてきました。今回、選手権になったことで、これまで以上に世界的な注目が集まります。そういう自覚を持って運営していく必要があると思います。
また、公式戦化はマーケットを海外に広げるという意味でも意義が大きいと思います。私たちが海外進出を目指した最初の目的はむしろこちらにあります。チームの活動やJGTCを支援してくださるメーカーやスポンサーのメリットを大きくしようということです。公式戦化することで観客も増加するでしょうし、メディアの注目度も高まります。マレーシア国内だけでなく周辺国からの取材陣も増えています。
企業の宣伝費というものは市場が成長していくところに落とされます。日本やヨーロッパの市場はすでに成熟していて大きな成長は望めませんから、これからはASEAN地域、中国、ロシアなどに企業の目が向いていくことになります。人に観てもらうプロのレースとしては、どうしてもこれらの市場を対象にした企業の支援を獲得しなければならないと考えており、今回の公式戦はその基礎となるものと考えています」
■セパン・サーキット(SIC)ゼネラルマネージャー、アーマッド・ビン・ムスタファ氏
(公式記者会見より)
−−マレーシアで過去2回JGTCのレースが行われているが、その印象は?
ムスタファ氏(以下略)「 F1のようなフォーミュラレースとは対極にあるものと考えています。すでに大きな反響を呼んでいますし、ビジネス面に関してはアフターマーケットに活性化を呼ぶものだと思います。レースの運営も組織化されていて、レギュレーションも興味深いものがあります」
−−今回から選手権化されたことに関してはどう感じているか?
「SICとしては、このサーキットで日本の選手権のレースが行われるのはたいへん名誉なことだと思っています。マレーシアの国としても、F1によって始まったスポーツによる観光をよりいっそう活性化させるものだと思います。エキジビション・レースだったときと今回との違いは、以前はドライバーは楽しんでいましたし、運営上のきまりもゆるい面がありました。選手権化されたことでひじょうに真剣になっていますし、ルールも厳密に適用されています」
−−JGTCの開催がマレーシアのモータースポーツに与える影響は?
「とうぜん、マレーシアのモータースポーツには大きな影響があると思います。本日も4つサポートレースが入っていますが、それに参加する台数も以前に比べて2倍に増えています。JGTCを観ることがモータースポーツを志す人にとってたいへんな刺激になっていることはまちがいないと思います。観客にとっても、市販のクルマによるレースということでひじょうに身近に感じるものだと思います。残念ながらまだドライバーの知名度は上がっていませんが、ドライバーの人気が高まればさらにその影響は大きくなると思います」
−−JGTC開催に関する今後の予定は?
「現在の契約では2003年もここでレースがあります。それ以降に関してはいま話し合いに入っています。私たちとしてはこのレースの人気を考えるとこの先も開催していきたいと考えていますし、GT-Aとしても関心を持っていただいていると思います」
−−JGTCのレギュレーションがマレーシア・スーパーシリーズなどに影響するか?
「スーパーシリーズのレギュレーションはFIAの規則に準拠しており、このシリーズだけの特別規則というものはありません。JGTCのレギュレーションで興味深いと思ったのはタイヤの抽選とか燃料の指定などです。スーパーシリーズはJGTCほどレースのレベルが高くないのでまだ独自の規定というのは必要としていないのかもしれませんが、JGTCのレギュレーションはコンセプトとして興味深いものと思っていますので、この先なんらかのかたちで参考にすることはあると思います」
−−セパン・サーキットの今年後半の予定は?
「JGTCのあとの大きな大会としては、8月31日にモータースポーツカーニバルを行います。12時間耐久レースが行われ、各クラスを総合して60台くらい参加する大きなレースになります。海外からの関心も高く、JGTC参加チームからも2台の参戦があると思いますし、オーストラリアから5台、イギリスから1台、それから南アフリカからも1台参戦する可能性があります」
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