今季からワンステップアップしたレースを目指しJGTCは『AUTOBACS SUPER GT』として改まった。その2005年シーズン開幕戦の決勝レースが、3月27日に岡山県・岡山国際サーキット(旧称・TIサーキット英田)で開催された。曇り空ではあったが、ここ数日の冬のような寒さは遠ざかり、新シリーズは穏やかな暖かさの中、スタートした。そして予選3位のNo.25 ECLIPSE ADVANスープラが前評判の高かったフェアレディZ勢を退け、JGTCを通じて初のGT500勝利を挙げた。GT300クラスは、No.13 エンドレスアドバンZが混戦を巧みに抜け出し、GT300でのZ初勝利を手にした。(観衆:59,100人)
決勝レースのフォーメーションは14時開始。上空は昼過ぎから雲に覆われはじめ、風も強まるなかでのスタートとなった。開始時点での気温は17度、路面温度は19度。
No.34 BANDAIスープラとNo.72 FK/Massimo ADVANポルシェはマシントラブルのためダミーグリッドにつけず、ピットスタート。また、No.21 ノマド フェラーリ550GTSはダミーグリッド上でエンジンがかからずいったんピットに押し戻され、そこからのスタートとなった。さらにフォーメーションラップ中、No.47 CCI・リカルデント・ADVAN Zがスピン。隊列最後尾からのスタートとなった。
フォーメーションを終えたコース上の隊列は、ほぼ予選順位どおりに1コーナーに殺到していくが、そこでポールのNo.22 モチュールピットワークZ(柳田真孝)をNo.1 ザナヴィ ニスモZ(本山哲)、No.25 ECLIPSE ADVANスープラ(織戸学)がパス。さらにその先でNo.32 EPSON NSX(アンドレ・ロッテラー)もNo.22をかわす。その後、No.22は行き場を失ってスピン。クラス最後尾までポジションを落としてしまう。1周を終えて戻ってきたときのトップ3は、No.1、No.25、No.32の順となった。
7周目、GT300クラスの中位で多重クラッシュが発生。これにNo.12 カルソニック インパルZ(ブノワ・トレルイエ)が巻き込まれ、車両後部を大きく壊してピットに戻り、そのままリタイアとなってしまう。
9周目、No.25がNo.1をパスしトップを奪取。2周後には1秒8までその差を開く。No.25が履くヨコハマタイヤは温まりが早く、序盤にはパフォーマンスを発揮しやすいようだ。
しかし、この2台は18周を過ぎるころから再接近。22周目のアトウッドカーブで横に並ぶと、No.25が立ち上がりでGT300のマシンに詰まったのをうまく使い、No.1がトップを奪い返す。その後この2台の差は徐々に開いていく。
20周を過ぎたあたりで、タイヤのグリップダウンが始まったのか、上位陣のペースに徐々に乱れが見え始める。25周目にはNo.38 ZENTセルモスープラ(高木虎之介)がレッドマンコーナーでスピン。27周目にはNo.22がNo.100 RAYBRIG NSX(セバスチャン・フィリップ)に接触してしまう。
No.38は31周目にルーティンのピットイン。これを皮切りに上位陣が次々とピットに戻り始める。33周目に35周目にはNo.25(織戸>ドミニク・シュワガー)、37周目にはNo.1(本山>リチャード・ライアン)と、トップ2もピット作業を終える。作業時間はNo.1のほうが短く、コースに戻ったとき両者の差は5秒ほどに開いていた。
全車のピット作業を終えて、上位の順位はNo.1、No.25、No.36 DYNACITY TOM'S SUPRA(土屋武士>ジェームス・コートニー)、No.32(ロッテラー>松田次生)の順に。No.32はピットインのタイミングでNo.36にパスされた後も今ひとつペースが上がらず、46周目にはNo.3 G'ZOX・HASEMI・Z(金石年弘>エリック・コマス)の先行をも許す。
50周目、トップのNo.1が突如スローダウン。足回りに異常を感じたようで、ピットに戻ってタイヤ交換。いったんコースに戻るが、数周後ふたたびピットイン。そのままレースを終えてしまった。
これでNo.25がトップを逆転。No.36が追いすがるが、その差は容易に縮まらない。その後方、3番手のNo.3もNo.36との差を詰めきれず、トップ3の争いは膠着状態に。4番手争いは依然としてペースの上がらないNo.32を、68周目にNo.8 ARTA NSX(伊藤大輔>ラルフ・ファーマン)がパス。4番手に上がった。残り10周、No.36のジェームス・コートニー、No.3のエリック・コマスの追撃をしり目に、No.25のドミニク・シュワガーが最後の力走。2番手との間隔を図りながら無理をしないみごとな走りで、表彰台の頂点をゲットした。No.25 ECLIPSE ADVANスープラの土屋春雄監督にとって、GT300時代は多くの勝ち星を重ねていたが、GT500クラスでの今回が優勝は初めて。土屋監督はヨコハマタイヤをはじめライバルまでも含め多くの関係者に祝福され、感激の涙を浮かべていた。しかも、2位に入ったNo.36 DYNACITY TOM'S SUPRAの土屋武士は土屋監督の息子。武士もNo.25のピットを訪れ、親子でのワンツー・フィニッシュを共に祝っていた。3位はZでしぶとく生き残ったNo.3 G'ZOX・HASEMI・Zとなった。
チーム一丸となった巧みなレース展開
エンドレスアドバンZがGT300初勝利!
EBBRO NSX、雨宮アスパラRX7はわずかに届かず
GT300クラスは序盤、ポールスタートのNo.19 ウェッズスポーツセリカ(谷口信輝)が逃げ、予選3番手だったNo.13 エンドレス アドバンZ(木下みつひろ)、4番手だったNo.43 ARTA Garaiya(新田守男>高木真一)が追う展開。やがてNo.43の後方に予選5番手のNo.7 雨宮アスパラドリンクRX7(山路慎一>井入宏之)が迫り、18周目にはNo.7がNo.43をパス。2番手を走っていたNo.13も20周過ぎからペースが落ち、No.7にパスされる。No.43はさらに28周目のアトウッドカーブで痛恨のコースアウト。すぐに復帰しピットに戻るが、ここで時間がかかり、ポジションを大きく落としてしまう。また、No.13も後退をつづけ、ポジションは5番手まで下がってしまった。
一方のNo.7は快調に飛ばし、30周目を過ぎるころにはトップNo.19の背後に迫る。35周目、ついにNo.7がNo.19を抜き、トップを奪取。No.19はその周にピットインして加藤寛規に交代する。No.7のピットインは39周目に行われたが、このとき燃料補給にやや時間がかかり、ポジションを下げてしまう。
上位陣のピット作業が終わったところでトップにいたのはNo.13(影山正美)。33周を終えてピットに戻ったNo.13は作業をすばやく済ませ、温まりの早いヨコハマタイヤの特性を生かしてアウトラップも速かった。40周を過ぎたところでは、2番手のNo.19(加藤寛規)とのあいだに5秒近いマージンを築いていた。
一方、ここで3番手に上昇してきていたのがNo.0 EBBRO M-TEC NSX(黒澤治樹>細川慎弥)だった。予選6番手からのスタートで、序盤はタイヤ温存策かポジションキープに専念していたが、その後追い上げ。さらにその後方には、予選で幻のポールタイム(スタート時の違反でタイム抹消)をたたき出していたNo.30 RECKLESS MR-S(佐々木孝太>山野哲也)が迫っていた。No.0は43周目にNo.19を攻略し2番手に上がるとさらにペースアップ。46周目にはNo.13までも攻略し、ついにトップを奪った。
さすがディフェンディングチャンピオン、このまま逃げ切りかと思われたNo.0のペースが狂い始めたのは64周あたり。「燃費の計算がまちがっていました」(熊倉淳一監督)とのことで、ラップタイムを落とさざるをえなかったのだ。66周目にはNo.13が難なくトップに再浮上。No.0はさらにNo.7にもかわされ、3番手まで下がってしまった。No.7は、その前、No.19、No.30にNo.31 APEXERA MR-S(田中実>中嶋一貴)も加わえた4台での争いを制し、3番手に浮上してきていた。この争いのなかで、No.19は64周目にスピンを喫して脱落していた。これでトップ3はNo.13、No.7、No.0の順になる。
逃げるNo.13、追うNo.7。その差はついに1秒弱にまで詰まる。しかし、経験豊富な影山正美はさすが冷静。最後まで隙をみせることなくNo.13エンドレス アドバンZを勝利に導いた。フェアレディZとしてはこれがGT300クラス初勝利。2位はNo.7 雨宮アスパラドリンクRX7。3位はNo.0 EBBRO M-TEC NSX。最後まで省エネ走行を強いられながら、No.30とNo.31、2台のMR-Sをかろうじて抑えきった。