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2005 AUTOBACS SUPER GT Round2
FUJI GT 500km RACE
5.3 4 / Fuji Speedway

RACE REVIEW

2005-05-04

2005 第2戦 決勝レースレビュー

新生・富士、初のビッグレースはスープラの手に

立川&高木&ZENTセルモスープラの"最強トリオ"が完勝!

モチュールピットワークZがスープラの表彰台独占を阻む

 5月4日、今年新装なった富士スピードウェイ(静岡県)で2005 AUTOBACS SUPER GT第2戦「FUJI GT 500km RACE」の決勝レースが行われた。ゴールデンウィークの最中、好天に恵まれた富士には5万2400人の大観衆が来場し、真新しいコースで行われたSUPER GTの熱戦を楽しんだ。このレースで、GT500はNo.38 ZENTセルモスープラが、GT300ではNo.0 EBBRO M-TEC NSXが、ともにポールポジションから実質的にトップを譲ることのない完勝によって、新・富士の初ビッグレースの勝利を彩った。(観衆:52,400人)

 決勝レースは13時50分スタート。この日は朝からさわやかな好天がつづき、開始時点での気温は24度。日差しに照らされた路面の温度は42度まで上昇した。
 1周のフォーメーションラップの後、500kmにわたる長丁場の幕が切って落とされた。スタートでは、ポールのNo.38 ZENTセルモスープラ(立川祐路)が絶妙のスピードコントロール。トップをキープして1コーナーに飛び込んでいく。その後方では、4番グリッドのNo.8 ARTA NSX(ラルフ・ファーマン)がポジションダウン。その後もペースが上がらず、徐々に順位を落としていく。No.35 イエローハットYMSスープラ(脇阪薫一)もギアが抜けるトラブルで、4周目に15番手まで順位を落としてしまった。
 一方、着実にポジションを上げていったのがNo.39 デンソーサードスープラGT(アンドレ・クート)。10番手スタートから10周目には5番手、27周目には3番手にまでジャンプアップする。この間、19周目にはNo.36 DYNACITY TOM'S SUPRA(土屋武士)がコースアウトしてポジションダウン、No.20 McLAREN F-1 GTR(田嶋栄一)は右後輪が脱落してリタイアを喫している。トップをいくNo.38は快調に飛ばし、後続とのあいだに少しずつマージンを築いていく。

 30周を過ぎて、No.8、No.32 EPSON NSX(アンドレ・ロッテラー)、No.18 TAKATA童夢NSX(道上龍)などNSX勢から1回目のピット作業に戻り始める。この3車はいずれもタイヤ交換と燃料補給のみでドライバー交代はなし。36周目に戻ったNo.3 G'ZOX・HASEMI・Zも、エリック・コマスが2スティント続けての走行に出ていく。次の周、4番手だったNo.37 DYNACITY TOM'S SUPRA(片岡龍也)が左前輪にスローパンクチャーを生じ、スロー走行でピットイン。こちらは山本左近に交代して出ていった。
 トップのNo.38は39周を終えてピットイン。タイヤ交換と燃料補給、高木虎之介へのドライバー交代を終えてピットアウトしようとするが、エンジンがかからずタイムロス。これでポジションを落とすかに思われた。しかし、次の周にピットに戻ってきたNo.6 エッソウルトラフロー スープラ(脇阪寿一>飯田章)、No.39(クート>ロニー・クインタレッリ)も同様にエンジンがかからず、この2台のロスはさらに大きかった。
 この結果、上位陣の1回目のピット作業が終わった時点でのトップはNo.38がキープ。一時4番手まで下がっていたNo.22 モチュールピットワークZ(ミハエル・クルム>柳田真孝)が2番手に上がり、3番手にNo.1 ザナヴィ ニスモZ(本山哲>リチャード・ライアン)、4番手にNo.12 カルソニック インパルZ(井出有治>ブノワ・トレルイエ)と、フェアレディZ勢が上位に進出してきていた。No.1とNo.12はZどうしのバトルとなるが、46周目の1コーナー、No.1のアウト側にNo.12が並びかけると、ぎりぎりまでブレーキングを我慢したNo.1が姿勢を乱し、No.12が3番手に上がった。
 その後方で確実に失地を回復しつつあったのがNo.35だった。42周目、1回目のピット作業に戻り、服部尚貴に交代して出ていった直後には7番手。61周目にはNo.3、次の周にはNo.32をパスし5番手に上がる。
 72周目、上位グループの先陣を切ってNo.1が2度目のピットイン。ドライバーはライアンのまま、タイヤ交換と燃料補給だけでコースに復帰する。次の周に戻ったNo.12も同様に、トレルイエが2スティント続けて走行する作戦を採る。2台とも作業タイムにロスはなかったが、No.12はフロントウインドウの捨てシールドを剥がし切ることができず、ゆがんで張り付いたままという視界を損なった状態での走行を強いられることに。このためアウトラップでNo.1の先行を許してしまう。

 76周を終えて、トップをいく2台、No.38、No.22が同時にピットイン。それ以前、No.38が自分のペースをキープしつづけたのに対し、No.22は周回遅れに出会うたびにラップタイムを落とし、その差は30秒ほどに開いていた。NISMOは迅速なピットワークでNo.22をNo.38より10秒近く早くコースに戻した。これで、トップNo.38と追うNo.22の差は20秒に。それぞれ最終スティントを走るドライバー、立川祐路とミハエル・クルムに勝負を託した。
 80周目、ほぼ全車が2度目のピットストップを終えた時点での上位陣はNo.38、No.22、No.1、No.12、No.35の順。No.35は79周目の2度目のピット後も服部が続けて走行。83周目には視界不良に苦しむNo.12をパスし、4番手にポジションアップを果たす。
 その後も服部のパフォーマンスはすばらしかった。1分34秒台のラップを連発。93周目には1コーナーでNo.1のインをずばり攻略し、ついに表彰台圏内をゲットする。
 その後方で、やはり目覚しい走りを見せていたのがNo.6だった。1回目のピットで13番手まで落としていたポジションを、飯田章が8番手まで回復。もう一度脇阪寿一に代わってからさらにペースアップし、82周目には6番手に上がる。

 97周目、5番手を走っていたNo.12がガス欠症状を起こして緊急ピットイン。9番手でコースに戻るが、このとき燃料を補給しきれず、103周で再度ピットに戻ってレースを終えることになってしまった。
 残り5周、トップのNo.38は2番手No.22とのあいだに30秒ほどのマージンを築き、ほぼ独走状態。No.22は周回遅れに出会うタイミングに恵まれず、トップを追うどころか、No.35の急追を許すことになってしまう。
 ファイナルラップ、No.22とNo.35の差は0.7秒。逃げるクルムを、服部はさらにじりじりと追い詰め、最終コーナーでテールに触れんばかりに接近する。だが、抜き去るにはわずかに距離が足りなかった。500kmを走り終え、2台の差はわずか0.1秒だった。
 この2台をしり目に、No.38 ZENTセルモスープラは悠々とトップでフィニッシュ。立川祐路にとっては昨年の第2戦SUGO以来、高木虎之介にとっては初のGTレース優勝となった。
 2位はNo.22 モチュールピットワークZ(ミハエル・クルム/柳田真孝)、3位はNo.35 イエローハットYMSスープラ(服部尚貴/脇阪薫一)。NSX勢では、No.32 EPSON NSX(松田次生/アンドレ・ロッテラー)の8位が最上位だった。


予選、決勝、最速タイムとすべて1番

圧倒的な速さでEBBRO M-TEC NSXが優勝

ARTA Garaiyaの1ストップ作戦も不発…

 GT300クラスは、ポールスタートのNo.0 EBBRO M-TEC NSX(スタートは黒澤治樹)が序盤から後続をどんどん引き離していく展開。2番手はNo.46 Dream Cube's ADVAN Z(同・星野一樹)、No.43 ARTA Garaiya(同・新田守男)、No.27 direxiv ADVAN 320R(同・密山祥吾)の争いとなる。スタートではNo.46、No.43、No.27の順だったが、6周目にはNo.43がNo.46をパス。11周目にはいったんNo.27がNo.43の前に出るが、16周目にはNo.43が再逆転。一方No.46はNo.11 GPH FERRARI DUNLOP(同・田中哲也)にもパスされる。

 上位陣のなかでNo.11とNo.46は41周を終えてピットインするが、No.0は44周終わり、No.27は46周終わりまでピットを我慢。No.43はさらに引っぱり、52周を終えるまでピットに戻らなかった。この間、スピンを喫する場面もあったが摩耗したタイヤで我慢しつづけた新田は、後半を高木真一に託す。一方、No.46はピットアウトの際にピットレーンの規制速度を超過。ドライビングスルーペナルティを受け、上位から脱落してしまう。
 これに対しNo.0は、黒澤からステアリングを受け継いだ細川慎弥が安定して速いペースをキープ。クラスで唯一1分40秒台のベストラップをたたき出してみせる。72周を終えてふたたび黒澤にバトンタッチしたときには、トップからポジションを落とすことなくコースに復帰することができた。

 No.43はピットストップを1回に留め、最小限のタイムロスでこれに追いすがろうとするが、No.0のペースはあまりにも速かった。けっきょくその差を縮めることはできないままフィニッシュ。No.0 EBBRO M-TEC NSXが悠々と独走優勝を飾った。2位はNo.43 ARTA Garaiya。3位には、No.43と同じく1ストップ作戦を採ったNo.30 RECKLESS MR-S(佐々木孝太/山野哲也)が入った。

GT500 WINNER

No.38 ZENT セルモスープラ

立川祐路「まずは、開幕戦のあと1ヶ月しかない短い時間の中で、クルマをここまでしてくれたトヨタ、TRD、チーム、そして今日のレースでも素晴らしい仕事をしてくれた高木選手に感謝します。もう気持ち的には本当に言うことない。(新しくなって)最初の富士で勝ててうれしいです。スタートは2年ぶりなんで、緊張しましたね。でも走り出したら、クルマは非常に順調でした。ただ、気温が暑くなって、40ラップ近くを走るからタイヤが心配でしたが、後ろとマージンがあったのでコントロールできて楽にはなれました。ただ、ピットでトラブルが出たことも不安でした。それに僕がぶっちぎっていると何かあるんで(笑)、それも不安で…。最後はよけいな落とし物を踏まないように(笑)、注意して走りましたね。今年は、頼もしいパートナーも得られました。本当に"最強コンビ"だと実感できましたね。今後もミスなく、取りこぼさないように、勝てるときはしっかりと勝って、チャンピオン目指してがんばります」
高木虎之介「(今日の勝因は)立川選手がいいスタートをしてくれたことですね。優勝できましたが、トラブルもあったし、はじめから無線もほとんど聞こえなくてヒヤヒヤしました。GT300との接触もありましたし、壊れなくて良かったです。こんなに早く優勝できるとは思いませんでした。開幕戦が終わってからクルマを良くしてくれたチームとトヨタに感謝します。1ヶ月でここまでできたというのはさすがメーカーの力という感じです。ここで勝てたからと喜んでいても、ライバルもまた(クルマを)開発してくるでしょう。チームがドライバーにあったクルマを作ってくれれば、今回みたいに勝つことができるわけです。GTは優勝するとオモリを積むんですが、僕はこういうのは初めてなんで、いろいろ体験していきながらタイトルを獲りたいですね」

GT300 WINNER

No.0 EBBRO M-TEC NSX

黒澤治樹「本当にうれしいです。昨日からずっとトップだったんですが、そのリズムを崩したくなかった。流れをつかんで2人ともがんばれて、チームもミスなくやってくれたし、クルマが乗りやすかったからプッシュもできたし。すごくうれしい時間でした。はじめに僕が出てマージンを作る役でしたから、一生懸命プッシュしました。そのあと細川君が短いスティントを2回やってプッシュするということで、彼も大変だっただろうけどミスなく速かった。それで勝てたし、チームもスポンサーもみんな喜んでくれて良かったと思います。セパンもそのあとも、ひとつでも順位を上げられるように、常にチャンピオンを獲れるようなポジションにつけて、最終的にチャンピオンを獲れるようがんばっていきたいです」
細川慎弥「今回はチームと話をして、完全に勝ちにいくレースと決めていて、チームも僕らも勝ちにこだわっていました。サーキットに入ってからもずっと調子が良かったんで、それが結果に繋げられてよかったです。勝てて安心しましたし、チームやスポンサーに感謝しています。レースはタイヤが厳しめだったんで、ペースを上げても(タイヤを)いたわっていくようにしました。勉強になりました。あとは他のクルマとの接触と自分のミスは絶対しちゃいけないと、気を付けていきました。今回の優勝でセパンでもオモリを積んで行くと思うんですけど、ひとつでも上の順位で目指していきたいとも思います」