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2005 AUTOBACS SUPER GT Round5
MOTEGI GT 300km RACE
9.3 4 / TWIN RING MOTEGI

RACE REVIEW

2005-09-04

2005 第5戦 決勝レースレビュー

NSXがホームコースで1-2フィニッシュ!

RAYBRIG NSXが巧みな戦略で6年ぶりの勝利!!

ARTA NSXは不運なトラブルで脱落……

 9月4日、ツインリンクもてぎ(栃木県)で2005 AUTOBACS SUPER GT第5戦「MOTEGI GT 300km RACE」の決勝レースが行われた。予選から強さを見せたNSX勢が決勝でも快走。中でもピット作業時間を短縮する作戦に出たNo.100 RAYBRIG NSXが6年ぶりのGT勝利を挙げた。GT300ではNo.46 Dream Cube's ADVAN Zがポール・トゥ・フィニッシュの完勝だった。(観衆:52,000人)

 決勝レースは14時スタート。開始時点での気温は35度、路面温度は42度。朝から上空をおおっていた雲は昼前にやや厚みを増し、わずかに雨がパラつく場面もあったが、さいわい降り出すことはなかった。その後は雲の切れ間から日差しものぞき、ドライコンディションでのレースとなった。
 1周のフォーメーションラップの後、No.8 ARTA NSX(ラルフ・ファーマン)を先頭にスタート。No.18 TAKATA童夢NSX(道上龍)、No.100 RAYBRIG NSX(セバスチャン・フィリップ)は予選順位どおり2、3番手に続くが、その後方ではNo.3 G'ZOX・HASEMI・Z(金石年弘)がNo.38 ZENTセルモスープラ(高木虎之介)をパスして、4番手で1コーナーに進入していく。さらにその後方ではNo.32 EPSON NSX(アンドレ・ロッテラー)がNo.22 モチュールピットワークZ(柳田真孝)とNo.12 カルソニック インパルZ(ブノワ・トレルイエ)の2台をかわし、6番手に浮上。1周を終え、No.8、No.18、No.100、No.3、No.38、No.32の順でグランドスタンド前に帰ってくる。

 5周を終えたあたりで早くも周回遅れが出始め、そこに引っかかるタイミングで上位陣の間隔にばらつきが出てくる。先頭のNo.8は比較的スムーズにかわしていくが、No.18はNo.100の接近を許し、9周目にはこの2台がテール・トゥ・ノーズに。10周目にはNo.100がNo.18をかわし、2番手にポジションを上げる。
 12周目のV字コーナー、周回遅れもまじえて混雑するなかで、4番手争いをしていたNo.3とNo.38が接触し、アウト側にいたNo.3がコースアウト。No.38も破損したカウルの修復のためピットインし、ともに大きく順位を落としてしまう。さらに、このレースから「ダメージを伴う接触があった場合は故意、過失を問わずペナルティの対象となる」という規定が運用されることになったため、No.38にはドライビングスルー・ペナルティも科された。
 これで4番手にはNo.32が浮上。NSX勢がトップから4番手までを独占する格好になる。
 その後方で激しさを増していたのがNo.6 エッソウルトラフロー スープラ(飯田章)とNo.39 デンソーサードスープラGT(アンドレ・クート)の8番手争い。18周目には、一度No.39に抜かれたNo.6が抜き返すなどスリリングなバトルを繰り広げるが、けっきょくはNo.39が前に出ることに成功する。じつはこのときNo.6は不具合を抱えていたらしく、19周目の90度コーナーでスピン。コースアウトを喫し、さらにポジションを落としてしまう。
 20周を過ぎるころから、今度は3番手のNo.18と4番手No.32が接近。23周目にはNo.32がNo.18を攻略し、3番手に上がった。

 この周回あたりからルーティンのピット作業に戻る車両が出始める。GT500上位ではNo.35 イエローハットYMSスープラ(ピーター・ダンブレック>服部尚貴)、No.6(飯田>脇阪寿一)が25周終了時にピットインしたのがもっとも早く、No.22(柳田>ミハエル・クルム)、No.36 TOM'S SUPRA(土屋武士>ジェームス・コートニー)らがこれに続いた。
 26周目、トップのNo.8がピットインしているところに隣接するピットのNo.18が戻ってくる。No.18はルーティンのピットだったが、No.8はシフトリンケージのトラブルを抱えての緊急ピットイン。混乱したところにさらに隣のGT300車両も戻ってきて、小暮卓史に交代したNo.18は、ピットから出るのに若干てまどることになってしまった。
 27周を終えてNo.100もピットイン。タイヤ交換を後輪2本だけにとどめて作業時間を短縮する作戦で、すばやくジェレミー・デュフォアをコースに送り出す。次の周にはNo.12(トレルイエ>井出有治)も作業を終える。
 この時点で、まだピット作業を済ませていなかったNo.32が暫定トップとなるが、黄旗区間での追い越しによりドライビングスルー・ペナルティ。32周を終えてピットインし、松田次生に交代して戻ったときには5番手になっていた。
 上位陣のピット作業が終わった時点でのトップはNo.100。以下、No.18、No.12、No.22、No.32、No.35が続く。トップをいくデュフォアは、グリップダウンしたタイヤをいたわりながらも着実に速いラップを重ね、2番手小暮とのギャップを徐々に開いていく。3秒ほどだったその差は、40周を過ぎたあたりで6秒あまりにまで広がった。

 52周目、序盤のスピンでポジションを落としていたNo.6がNo.36をパス。8番手に上がる。ところがその2周後、飯田と同じ90度コーナーで脇阪もスピン。No.36とNo.37 TOM'S SUPRA(片岡龍也>山本左近)の2台が一つずつポジションを上げる。
 終盤に差しかかって、ラップタイムが安定していたのは5番手、No.32の松田。前をいくNo.22にジワジワと接近していき、60周目の90度コーナーでこれをかわすと、3番手のNo.12にも迫り始める。
 残り2周。トップNo.100と2番手No.18の差は若干縮まるが、テール・トゥ・ノーズにまでは至らない。その後方、3番手No.12と4番手No.32も似たような状況。そのまま最終ラップを迎え、トップ3はチェッカーフラッグをくぐり抜けていく。しかし、No.32はガス欠症状が出て、最終コーナー手前でスローダウン。ピットロード入口でついにストップしてしまう。フィニッシュまでほんの数百メートル分、ガソリンが足りなかった。これで4位にはNo.22 モチュールピットワークZが上がった。
 優勝したNo.100 RAYBRIG NSXは、チームとして1999年5月の富士以来、6年ぶりの優勝。NSX勢としても今季初勝利となった。2位にNo.18 TAKATA童夢NSXが入り、ホンダNSX勢がワン・ツー・フィニッシュを実現したが、これは2002年最終戦鈴鹿以来。また、3位のNo.12 カルソニック インパルZは今季初の表彰台ゲットとなった。


まさに完璧な週末

Dream Cube's ADVAN Zが初勝利の美酒

苦しみながらもARTA Garaiyaはランキングトップに

 GT300クラスは、1周目の1コーナーで、6番グリッドからスタートしたNo.77 クスコスバルADVANインプレッサ(谷川達也)が他車にプッシュされスピン。リアバンパーを破損しポジションを落とす。クラスポールのNo.46 Dream Cube's ADVAN Z(星野一樹)以下、5番手までは予選順位どおり1周を終えるが、その後、ここからNo.7 雨宮アスパラドリンクRX7(山路慎一)が徐々に遅れだし、クールスーツのトラブルに苦しむNo.19 ウェッズスポーツセリカ(谷口信輝)も少しずつポジションを落としていく。いっぽう、4番手スタートのNo.2 Privee ZurichアップルRD320R(渡辺明)は快調なペースで飛ばし、5周目には2番手に上がる。また、予選9番手だったNo.10 MACH-GO FERRARI DUNLOP(三船剛)も着実にポジションアップ。23周目には4番手につける。
 これらをしり目に、トップをいくNo.46は着々とマージンを築いていき、28周目にルーティンのピットイン。青木孝行に交代してピットをあとにする。

 この時点では、ピットインを後まで引っぱったNo.2がトップ。他車のピットインでポジションを回復したNo.7が2番手、徐々に上がってきたNo.10が3番手、重いウエイトに苦しみながらも着実に走るNo.43 ARTA Garaiya(新田守男)が4番手というかたちになるが、これらのピットインが終わってみると、No.46がトップに復帰。2番手は加藤寛規に交代してからクールスーツのトラブルも解消したNo.19、3番手はピット作業の速かったNo.43(高木真一)、4番手にNo.10(松田秀士)と変わっていた。
 No.46の快調なペースは後半も衰えることはなかったが、2番手から4番手は徐々に接近。50周を過ぎ、終盤に入るころにはこの3台がお互いの姿を間近に確認できる距離に近づく。53周目、V字コーナーでNo.43に追いついたNo.10がパッシングを仕掛けるが、抜ききれず接触。No.43はスピンし、順位が入れ替わる。しかし、No.10にはドライビングスルー・ペナルティが科され、No.43は3位を回復。No.10は5番手に下がることになった。これで4番手を得たのは、予選13番手から着実にポジションを上げてきていたNo.13エンドレス アドバンZ(木下みつひろ>影山正美)。その後、フィニッシュまでこの上位陣に変動はなく、No.46 Dream Cube's ADVAN Zが初勝利を挙げる結果となった。星野一樹にとって、これはSUPER GT/JGTC初勝利。2位はNo.19 ウェッズスポーツセリカ、3位はNo.43 ARTA Garaiya。No.43は、これでシリーズランキングトップを奪った。さらに、4位に入ったNo.13 エンドレス アドバンZが、これまでランキングトップで今回8位だったNo.30 RECKLESS MR-S(佐々木孝太/山野哲也)と並んで、ランキング2位につけている。



GT500 WINNER

No.100 RAYBRIG NSX

セバスチャン・フィリップ「今日は、決して簡単なレースではありませんでした。それだけに幸せな気分です。今日の作戦としては、まずスタートから3ラップ目までは自分たちのポジションを守ることでした。その後、トラフィック(混雑)が起こったところで、道上さん(#18)がちょっと戸惑ったので、追い越すチャンスができましたあと、注意としては、フロントタイヤをいたわって走ることを心がけました。なぜかというと、私たちはフロントタイヤを替えないで1レースを走る予定だったからです。
 これまで優勝したときは、僕は最後のドライバーだったんですけれど、後半はピット中で待たなきゃいけないわけでした。ずっと緊張していましたよ。もちろん、ジェレミーはやってくれると思っていましたが、やっぱり自分が運転しているのとは違って、最後までドキドキしてました。ジェレミーは本当にすばらしい仕事をしてくれたと思います。
 レースが終わって(高橋)国光さんもチームのスタッフもみんなうれしそうでした。実は、今年の開幕の前に食事に行ったとき国光さんにはっきり言われたんです。『今年こそ優勝をしよう』と。やっとこの日がやってきました。この後もまだレースがありますから、さらに勝利を目指したいです」
ジェレミー・デュフォア「とても、とてもうれしいです。僕にとっても特別な優勝でした。(前戦の)SUGOでもトップを走って、優勝するチャンスがあったのですが、問題が生じてああいう結果(リタイア)になってしまいました。それもあって、今回は僕らは勝てる実力があるんだと証明したかったので、うれしいです。
 18号車とは4秒、5秒の差をとっていれば大丈夫だと思っていました。実は100%プッシュしていたわけではなく、タイヤのこともありましたから、そこを大事にコンスタントに走っていました。ただ、18号車の後ろにどういうクルマが走っていたかは分かりませんでしたから、そこは少し心配でしたね。
 タイヤの2本交換は、ここに来る前から考えはありました。そこで金曜日に実際に試してもみました。もちろん、気温やコンディションも考えてなければいけませんから、そういう意味ではギャンブルでもあったかもしれません。でも、ブリヂストンのタイヤもNSXもとても良かったと思います」

GT300 WINNER

No.46 Dream Cube's ADVAN Z

星野一樹「もてぎは事前のテストから調子が良くてZとの相性も良かったので、開幕前からチームのみんなと勝とうと言ってきました。でも、そういう中で本当に勝つというのは難しいことです。今日はピットも良かったし、僕もマージンを作れたし、青木さんもすごく安定して速く走ってマージを更に広げてくれたし。ホント、チームみんなの力で勝てたので、うれしいですね。僕としては、ピットに入る前に少しミスしたんですけど、それ以外はほとんどミスなく、最初の1周目に『今日はいける』とクルマの手応えも感じましたし。スタートしてから5周くらいはプッシュしてマージンを作って、ピットストップの分のマージンを築いてからはタイヤと相談しながら(走って)、無線でギャップを聞いたら少しずつ離れていきました。ウチは(燃費の問題で)ピットストップが長いので、10秒くらいのマージンを作って青木さんに渡せればいけると思っていたので、それを一番に考えていました。
 ピットで待っているのは、こんなに長いとは思いませんでした。体感では1周5分くらいに感じましたよ(笑)。モニター見てるとアゴがガクガクしちゃって、それで(ピットの)いろんなところをウロウロしちゃって、みんなに落ち付け落ち付けって言われたんですけど、もう落ち着いてられなくてね(苦笑)。親父(No.12 星野一義監督)や他の人の(終盤トラブルに遭った)昔話も聞いた時は、そんなに心配しなくてもと思っていたけど、いざ自分がその立場になってみると、もうドキドキでしたね。でも、表彰台はホントすがすがしい気分でしたね。応援してくれたみんなも下で見ているし、うれしかったです。
 勝ってからチームのみんなと喜んでいたら、親父が来たのが見えたんですけど、(涙で)前が見えなくなっちゃって(苦笑)。親父と握手したときは、言葉はなかったんですけど、良くやったという感じで肩をたたかれて、僕も言葉でなくて…。今後は作戦とかそうじゃなくて、一戦一戦を100%の力を出しきって諦めずに食らいついていこうともいます」
青木孝行「まず、これだけ高いパフォーマンスのクルマに仕上げてくれた、ミスもなかったチームのみんなに、そしてZは燃費が他に較べて悪いんで、そのための十分なマージンを築いてくれた一樹、みんなにありがとうと言いたいです。
 ここ何戦かいけそうなレースを落としたりして、(チーム)全体的に、ドライバーも含めネジが緩んでいるなと感じてました。そこで、自分にプレッシャーをかける意味でも、ここに来る前に自分のホームページに『今回はいきます!』と書いてきちゃったんです。さすが『勝ちます』とは書けなかったんで、『いきます』っていうビミョーなニュアンスですが(苦笑)。まあ、勝という意味ですから、金曜からレース終わるまで、気を抜かないでいけたのが結果につながったかなと思います。
 僕のスティントが長くなってタイヤがちょっと厳しくなりそうと無線で一樹から聞いていたんで、その辺を考えながら走りました。あとは、もしドライブスルーのペナルティをもらってもトップで戻れるくらいの、30秒くらいのマージンを稼いで、あとは後ろとの差を見ながら走ればいいと思ってました。それはうまくできたと思います。表彰台の一番上は久しぶりだし、気分いいですね」