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2005 AUTOBACS SUPER GT Round8
SUZUKA GT 300km
11.5 6 / SUZUKA CIRCUIT

RACE REVIEW

2005-11-06

2005 第8戦 決勝レースレビュー

雨中の快走! ZENTセルモスープラが快勝!!

そしてSUPER GT初代タイトルも立川/高木組の手に

ザナヴィニスモZは最後の猛追、わずかに及ばず……

 11月6日、鈴鹿サーキット(三重県)で2005 AUTOBACS SUPER GT第8戦(最終戦)「SUZUKA GT300km」の決勝レースが行われた。雨で周回数が減らされるほどに状況が悪い中、GT500はポールポジションのNo.38 ZENTセルモスープラ(立川/高木組)が作戦も走りも見事に決め、今季3勝目を挙げ、さらにドライバーズ・タイトルもその手中に収めた。GT300はピットインタイミングを見事読み切ったNo.11 JIM GAINER FERRARI DUNLOP(田中/モンティン組)が今季初勝利。また、3位に入ったNo.30 RECKLESS MR-S(佐々木/山野組)が、ドライバーズ・タイトルを獲得した。(観衆:33,500人)

 決勝レースは当初14時スタートの予定だったが、昼前から雨脚が強まったため、コース確認のため15分間の練習走行が行われ、予定より10分遅れの14時10分となるとアナウンスされた。確認走行では各チーム、ヘビーウエットに対応したセッティングで出ていくが、それでもコースアウトするクルマが続出。走行中にもさらに雨量は増え、風も出てきて横殴りの雨という状況になったため、スタートは延期されることに。フラッグタワー上では『スタートディレイ』のボードと赤地に『10』と書かれたボードが提示され、10分間の延期。だが、10分後にも情況は好転せず、ふたたび10分間延期。これが数回繰り返されたのち、14時43分に緑地に『10』のボード。ここから10分後、すなわち14時53分にスタートが切られることになった。ラップ数は当初予定の52周から39周に変更。ただし、一人のドライバーが運転できる最大距離の35周はそのままとされた。また、スタートしてから少なくとも3周はセーフティカーが先導することになった。

 けっきょく、セーフティカーは4周走行したのちピットロードに入っていくが、このときNo.100 RAYBRIG NSX(セバスチャン・フィリップ)、No.1 ザナヴィ ニスモZ(本山哲)、No.22 モチュールピットワークZ(柳田真孝)がピットイン。すでに4周を終えているため、残りはちょうど35周。ドライバー交代しても最大周回数を超えることはない。このタイミングで交代を済ませてしまおうという作戦で、No.100はジェレミー・デュフォア、No.1はリチャード・ライアン、No.22はミハエル・クルムに代わって出ていく。しかし、No.100はアウトラップでエンジンが不調となりスローダウン。そのままレースを終えてしまった。また、No.18 TAKATA童夢NSX(道上龍)は加速途中でスピン。すぐに復帰できたがポジションを落としてしまう。
 次の周、今度はトップのNo.38 ZENTセルモスープラ(高木虎之介)と2番手のNo.6エッソウルトラフロー スープラ(飯田章)がピットイン。それぞれ立川祐路、脇阪寿一に交代する。ともに作業は早く、ピットロードでは接触寸前となるが、ピット出口ではNo.6が前。ところがNo.6は、1周して戻ってきた最終コーナーでハーフスピンを喫し、ふたたびNo.38が前に出る。

 8周を終えたところでのトップ5は、No.37 OPEN INTERFACE TOM'S SUPRA(片岡龍也)、No.8 ARTA NSX(ラルフ・ファーマン)、No.32 EPSON NSX(アンドレ・ロッテラー)、No.3 G'ZOX・HASEMI・Z(エリック・コマス)、No.36 OPEN INTERFACE TOM'S SUPRA(ジェームス・コートニー)の順。この後ろには、クラス最後尾からスタートしたNo.12 カルソニック インパルZ(ブノワ・トレルイエ)がライバルより2秒から3秒も速いラップタイムで追い上げていた。
 11周目、No.36がNo.3をパス。4番手に上がる。No.32はピットに戻って松田次生に交代する。No.3は2周後にピットイン。金石年弘に交代、タイヤも換えてコースに戻る。このころから西の空がやや明るみはじめ、15周を過ぎるころには雨が弱まってくる。
 17周目に入ったところでセーフティカーがコースイン。この数周前にGT300クラスの車両がスプーンカーブの先でクラッシュしており、ドライバーの搬送と車両の撤去のために入ったのだった。この時点でのトップ3はNo.37、No.8、No.36。ピット作業を終えたチームではNo.38の7番手が最上位で、No.1が8番手、No.6が9番手でこれに続いていた。
 20周目に入ったところでセーフティカーが退避。ここでNo.8がピットに戻って伊藤大輔に交代する。次の周にはNo.37が片岡から山本左近に交代。これでトップ3はNo.36、No.12、No.18の順となる。この3台はしだいに接近していき、22周目にはテールトゥノーズ状態に。No.18は23周を終えたところでピットイン。小暮卓史に交代する。このころには雨は完全に上がり、路面を流れる水も減少。浅みぞのウエットタイヤが使える状態になってくる。

 28周目、11番手を走行中だったNo.8にドライビングスルーペナルティの判定。S字コーナーで周回遅れの車両との接触があったためだが、これでポジションを落とし、タイトルが遠のいてしまう。
 31周を終えてこの時点で2番手だったNo.12がピットイン。井出有治への交代を済ませる。トップをいくNo.36はぎりぎりまで引っぱり、35周を終えてピットイン。土屋武士に交代する。これで全車のピットが終了。トップ3はNo.38、No.1、No.6の順となる。No.36はこの後ろでコースに復帰するが、その直後にはNo.3が迫っていた。

 残りは4周。トップをいくNo.38はこのまま優勝すればドライバーズ・タイトルを獲得できる。追うNo.1はこれを抜きさってトップを奪えば逆転でタイトルだ。いずれにしても勝ったほうがタイトル獲得という劇的な展開。夕闇迫るスタンドを埋めた3万3500人の観衆が固唾を飲んで見守るなか、No.1のライアンはNo.38立川との差をじわりじわりと詰めていく。No.38が周回遅れに引っかかるタイミングが悪かったこともあり、最終ラップに入ったところで、その差はわずか1秒あまりに。No.38が逃げきるか、No.1が逆転するか。サーキットにいる全員が手に汗を握るなか、最終コーナーをトップで駆け下ってきたのはNo.38だった。
 立川祐路/高木虎之介は今年3勝目。優勝かノーポイントかという波の大きいシーズンを送ってきたが、最後にシリーズタイトルという大きな栄冠を手にすることになった。あと一歩およばず2位、シリーズランキング3位となったNo.1 ザナヴィ ニスモZだが、NISMOはチームタイトルを獲得。表彰台に上がった本山哲/リチャード・ライアンは、全力を尽くしたあとのさわやかな笑顔を見せていた。3位はNo.6 エッソウルトラフロー スープラ(脇阪寿一/飯田章)。No.8 ARTA NSX(伊藤大輔/ラルフ・ファーマン)はけっきょく12位に終わり、シリーズランキング2位で涙を飲んだ。




的確な状況判断でJIM GAINER FERRARI DUNLOPが優勝!

RECKLESS MR-Sがしぶとい走りでタイトルを手にする!!

ARTA GaraiyaとEBBRO M-TEC NSX、善戦するも……


 GT300クラスは、スタートから4周目でセーフティカーがコースから離れたとき、No.2 Privee ZurichアップルRD320R(高橋一穂>渡辺明)、No.19 ウェッズスポーツセリカ(谷口信輝>加藤寛規)、No.30 RECKLESS MR-S(佐々木孝太>山野哲也)の3台がピットイン。ドライバー交代を済ませてしまう作戦を採る。序盤、ポールスタートのNo.31 吉兆宝山MR-S(中嶋一貴>田中実)はポジションを守り、2番手にはNo.0 EBBRO M-TEC NSX(黒澤治樹)が上がる。No.30、No.0とタイトルを争うNo.43 ARTA Garaiyaは7周を終えてピットイン。新田守男から高木真一に交代して、後半に追い上げる作戦を採る。対するNo.0は10周を終えたところでピットイン。細川慎弥に交代し、No.43の前でコースに戻る。

 トップをいくNo.31は16周を終え、事故処理のためにセーフティカー・ランとなった時点でピットイン。2番手に上がっていたNo.13 エンドレス アドバンZ(影山正美>木下みつひろ)も同時に戻る。しかし『隊列が行き過ぎるまではピット出口は閉鎖』というレギュレーションがあるため、コースインを長く待たなければならず、この2台は大きくポジションを落とすことになった。一方、この時点で2番手となっていたNo.11 JIM GAINER FERRARI DUNLOP(田中哲也>パオロ・モンティン)は1周待ってからピットイン。このときはピット出口は青信号となっており、トップで復帰することができた。この時点で2番手はNo.0、3番手はNo.43。

 この間、じわじわと順位をあげてきていたのがNo.30。序盤、ヘビーウエットの難しいコンディションのなか山野がたくみにマシンコントロール。中盤から水の量が減ってきてからはさらにペースアップし、15周を終えたところでクラス15番手、上位の多くがピット作業を終えた20周目には6番手、次の周には5番手に上昇。26周目には4番手と、No.43の背後にまで上がってくる。ここで3番手のNo.43は、このままではタイトルの可能性がなくなるため、ピットに戻ってタイヤ交換。フレッシュタイヤで追い上げ、トップを狙うというギャンブルに出る。しかし、この作戦は効を奏さず、かえってポジションを下げる結果に終わってしまう。

 トップのNo.11 JIM GAINER FERRARI DUNLOPは終盤もペースを守り、悠々と逃げきり。今季初優勝を飾った。2位に入ったNo.0 EBBRO M-TEC NSXは、シリーズランキングではあと一歩およばず2位。3位で表彰台に上がったNo.30 RECKLESS MR-Sが、シリーズタイトルを手にすることになった。



GT500 WINNER

No.38 ZENTセルモスープラ

立川祐路「こういうコンディションでレースがどうなるかはわかんなかったんだけど、ま、作戦もうまくいった。今回、とにかくクルマが速かった。でもね、大変なんですよ、乗ってるほうは。怖いしね。最後は雨も少なくなってよかったんだけど。ただ、正直ボク、自分が何位を走ってんのか途中までわかんなかったんですよ。最後無線を聞いてわかったんだけど、周りの状況があるから、ゴールするまでチャンピオンを獲れたんだかどうだかわかんなかったんですよ。ゴールしてから聞いてわかったんです。無線で『抜かれちゃダメよ〜』と言われて、そんな、わざわざ抜かれるつもりはなかったですけどね(笑)。でも、ほんとうれしい! これで(GT500)最多勝にも並んだし、サイコー!! トヨタ勢みんなの協力もあったし、スタッフも速いクルマを作ってくれたし、パートナーも速かった。GT1年目であんだけ速く走ってくれたら、申しぶんないです。ありがとうございました」
高木虎之介「(実質)1周しか走ってないですからね。ま、いろいろあったからね。ピットに入るタイミングがみんな違ったりして(見かけの順位と実際の順位が)バラバラな状態だったからねぇ。でも、計算ではトップに立っているのがわかってたし、余裕もあったので安心してましたよ。あと(タイトル獲得)はほかのチームの順位しだいだったのでね。結果的に勝って、チャンピオンになれて、よかったと思います」

GT300 WINNER

No.11 JIM GAINER FERRARI DUNLOP

田中哲也「今年最後のレースで勝ててよかった。今日はピットというか、伊与木(監督)さんが『あと一周待て』って言ってピットインのタイミングを遅らせたのがすごくよかったんです。今日の勝因はコレに尽きますね。この判断のおかげでした。この時点で3位だったので、もしピットインのタイミングがずれていたら、どうなったかわからないですね。チーム一丸となって勝ててよかったと思います」
パオロ・モンティン「ほんとうにタフなレースでした。今日のレースは、どのドライバーにとってもデンジャラスなコンディションでしたから。最初のスティントで哲也はいい仕事をしてくれたし、伊与木さんは、ピットストップのときにセーフティカーがコースに入るのを待って、いいタイミングを見計らってくれた。これがいい方向にいったんです。この作戦で前のクルマをパスすることができました。(自分に交代してから)数周は、とにかくがんばってプッシュして走りました。こういう状況で走るのには自信があったし、最後10周くらいは2位との大きな差を作っていたし、いいレースができました。今年は中盤にちょっとツキがなかったのですが、今回はラッキーでしたね。ボクたちにとってもいい勝利だった。みんなにお礼をいいたいです」