8月23、24日、鈴鹿サーキット(三重県)で2008 AUTOBACS SUPER GT第6戦「International Pokka 1000km」が開催される。SUPER GT最長の1000kmレースであり、時はまさに真夏。マシンもドライバーも、スピードだけでなく耐久力、戦術眼を問われる、難しいレースである。昨年も独走状態のARTA NSXに対し、後方から着実に順位を上げてきた宝山TOM'S SC430が終盤でマッチレースを展開。夕闇迫る鈴鹿を突然の雷雨が襲い、この時のタイヤ交換、そしてドライビングが勝負の分かれ目となり、大逆転でSC430が勝利を挙げている。昨年に負けない、また新たなドラマが訪れそうな今年のPokka 1000kmを見逃してはいけない!
全9戦で行われる2008年のSUPER GT。そう考えると第6戦は中盤戦の最後のレースとなる。チャンピオンを狙う各チームの状況により、戦い方が分かれると思われる。
No.23 XANAVI NISMO GT-R
中でも気になるのが、GT-R勢。特にNISMOだ。鈴鹿での開幕戦でセンセーショナルなデビューをし、No.23 XANAVI NISMO GT-R(本山哲/ブノワ・トレルイエ)が第1、2戦を連勝してみせた。だが、その後は特別性能調整を受けたこともあり、GT-Rに向いているセパンでNo.24 WOODONE ADVAN Clarion GT-R(J.P.デ・オリベイラ/荒聖治)が優勝しているものの、苦手コースの第3戦富士、第5戦SUGOでは惨敗状態と出入りの激しい成績だ。
それだけに、彼らにとってこの鈴鹿は狙いたいレースになるはず。特に前戦までの特別性能調整80kgが、このレースで60kgに軽減される。耐久要素の強い1000kmだけに、レース巧者のNISMOの2台、No.23とNo.22 MOTUL AUTECH GT-R(ミハエル・クルム/柳田真孝)の巻き返しに注目だ。
No.1 ARTA NSX
そして、悔しいレースが続くという意味では、今季のNo.1を付けるARTA NSX(ラルフ・ファーマン/伊沢拓也)も、ここに賭けてくるはず。昨年もこのPokka 1000kmで優勝争いを繰り広げるなど、ARTAにとって鈴鹿は得意コース。ルーキー伊沢は、光る速さを見せながらも、経験不足からのミスで勝てるレースを逃してしまった。それだけにレーシングスクール時代から走り込んでいるホームコース、鈴鹿で結果を残したいはず。一方、前戦優勝のNo.18 TAKATA童夢NSX(道上龍/小暮卓史)は110kgのウエイトハンデを背負う。それだけに、着実に完走して1ポイントで多くポイントを得るレースとなりそうだ。
No.36 PETRONAS TOM'S SC430
SC430勢では、昨年のPokka 1000km覇者、No.36 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー)に今年も注目だ。ここまでのシリーズ、着実にポイントを挙げているTOM'Sだが、まだ優勝はない。ここでぜひ表彰台の一番高いところに上がり、ポイントリーダーとなって、正念場の後半戦を優位に戦いたいはず。「今年のTOM'Sはウエイトとか関係なくガンガン行くよ!」と脇阪が明言しているだけに、彼らにとっても勝負の一戦となるだろう。SC430でもう一台挙げるならNo.39 DENSO DUNLOP SARD SC430(高木虎之介/アンドレ・クート)か。耐久レース、鈴鹿1000kmで数々の実績を残しているSARDの手腕で上位に入り込みそうだ。
またPokka 1000kmのお楽しみは、レースの勝敗だけでない。1000kmレースだけに特別に認められる第3ドライバーも要チェック。今年は、F3で活躍するカルロ・バンダム(No.36 PETRONAS TOM'S SC430)。SUPER GT初挑戦で今季はユーロF3で2位2回と活躍の塚越広大(No.17 REAL NSX)。そして昨年までインディで活躍していた松浦孝亮(No.100 RAYBRIG NSX)。GT500初挑戦の嵯峨宏紀(No.39 DENSO DUNLOP SARD SC430)が気になるところ。今季No.1 ARTA NSXに抜擢された伊沢も、昨年のPokka 1000kmでの第3ドライバーとしての活躍がきっかけだった。そういった視点で観戦できるのもPokka 1000kmならではだ。
No.2 プリヴェKENZOアセット・紫電
GT300の要注意チームと言えば、No.2 プリヴェKENZOアセット・紫電(高橋一穂/加藤寛規/吉本大樹)だ。昨年のPokka 1000kmでも優勝している紫電だが、その原動力となったのが第3ドライバーの吉本大樹。フォーミュラ・ニッポンにも参戦する実力派だけに、このレースでも強力な助っ人となるだろう。チームとしてもこのところ勝てそうで勝てないレースが続き、悲願のチャンピオン獲得に落とせない一戦として臨んでくるのは間違いない。
また、前戦SUGOでポールポジションを獲り、中盤までトップを快走していたNo.19 ウェッズスポーツIS350(織戸学/阿部翼/関口雄飛)もこのレースに勝ちを意識して挑むであろう。こちらも第3ドライバーとして、昨年同チームで戦った関口雄飛が登場。今季は海外のフォーミュラレースで武者修行を続ける若手有望株の走りも楽しみだ。この他には、ヴィーマック遣いが3人揃ったNo.62 WILLCOM ADVAN VEMAC 350R(柴原眞介/黒澤治樹/密山祥吾)や、前戦は最後尾から2位入賞の快進撃をしたNo.81 ダイシンADVAN Z(青木孝行/藤井誠暢)も優勝候補に挙げたい。
前戦優勝のNo.43 ARTA Garaiya(新田守男/高木真一/峰尾恭輔)はウエイトハンデ85kgと上位進出は厳しそうだ。それだけに1ポイントでも多く着実に走ってくるだろう。
さて、GT300クラスでは期待のニューマシンが、この鈴鹿から登場する。ベース車両はBMW Z4M CoupeのNo.808 初音ミク Studie GLAD BMW Z4(菊地靖/田ケ原章蔵)だ。チームは、BMWショップとして著名なStudie、外国車パーツメーカーのGLAD JAPAN、これにグループAやJGTC、F3でも実績があるアサダレーシングがジョイントする体制だ。Z4Mは、元々レース使用を前提にBMWが用意した車両で、これをSUPER GT仕様に大改造。エンジンはM5(E39)にも搭載されるV8、5リッターのS62/B50に換装されている。このマシンはまだ注目点がある。それはボディに描かれる美少女キャラクター"初音ミク"だ。"初音ミク"とはパソコンで稼働するボーカルソフトの名称で、昨年夏に発売されるとネットや音楽界で大ヒット。まさに"電子の歌姫/バーチャル・アイドル"のSUPER GTデビューだ。こちらのコラボもどう展開するか、楽しみだ。
なお、No.95 ライトニング マックィーン apr MR-Sの平手晃平が、8月10日のフォーミュラ・ニッポンでクラッシュし、全治1ヶ月のケガを負ってしまった。このため、平手は第6戦を欠場。代わりにこのマシンを駆って昨年GT300チャンピオンになった大嶋和也が、国本京佑、坂本雄也と共に第6戦に参戦することになった。今季はユーロF3で戦う大嶋の走りにも期待したい。