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2016.11.25
【SUPER GT 2016 総集編】GT300クラス第1回「シーズン前半戦」

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熱戦の続いたAUTOBACS SUPER GTの2016年シーズンも、先日の最終戦「MOTEGI GT GRAND FINAL」で幕を閉じた。次のレースへの“ワクワク”はしばらくお預けとなるが、年が変わるまではこれまでの“余韻”を楽しんではいかがだろうか? そこで、2016年の両クラスを振り返る「SUPER GT 2016 総集編」を6週に渡って、お送りしたい。まずは、GT300クラスから。第1回は開幕前からシーズン前半4戦の模様と分析をお送りしよう。

 

 

■欧州FIA GT3勢とプリウスが2016年に新型車を導入

 2016年のGT300クラスは、年間エントリーは30台(実際の出場は29台。他にタイ大会のワイルドカードが2台)となった。新規参入チームや2台参戦チームもあったものの、前年度と同数となった。その中で最大の話題は、FIA GT3車両の欧州車6車種が新型車(2016年型)に改められたことだ。FIA GT3車両でも昨年新型が投入された日産GT-R NISMO GT3は前年型のまま。また、従来型のメルセデスSLS AMG GT3も2台参戦した。
 新型の6車種は、いずれも海外のレースでは結果を残している。だが、気候や路面、そして何よりタイヤがワンメイクではないSUPER GTとは条件があまりにも異なる。その結果がそのまま通用しないのは、過去の例からも明らか。各チームによるセットアップがどう進むかが、鍵となった。

 

 

 一方、JAF-GT300車両は昨年同様のプリウスとBRZ、そしてマザーシャシーの86とロータス・エボーラが参戦。そのうち新車を導入したのは長年プリウスを走らせてきたaprで、前年より1台増の2台体制とし、それぞれで若干違う仕様を持ち込んだ。一番の違いは蓄電システムで、31号車(上記写真は岡山テスト時のもの)は世界耐久選手権(WEC)で昨年のトヨタTS040 HYBRIDにも搭載されたキャパシタを使用し、30号車は従来通りのリチウムイオン電池であること。他のJAF-GT300車両は大幅な変更はなく、マイナーチェンジや信頼性の向上をはかった。

 

 

 ベース車の個性/素性が違いすぎ、GT500クラス車両のようにオフにまとまったテスト機会がないGT300クラスだけに、事前の情報は少ない。各車両の実力を推しはかる機会となったのが、3月半ばに行われた岡山での公式テストだった。ここで驚速タイムをマークしたのが、新型車ランボルギーニ・ウラカンGT3のNo.88 マネパランボルギーニGT3(上記写真は岡山テスト時。ドライブは平峰一貴)だったが、このタイムはBoP(性能調整)のウエイトを積んでいないことが後日明らかに。とは言え、1週間後に富士で行われた公式テストでも総じてFIA GT3勢が速く、2016年も猛威を振るうものと思われた。

 

 

■VivaC 86 MCが存在感を示すもFIA GT3勢が活躍の序盤戦

 

 

 実際、その印象が特に強かったのが、開幕戦岡山と第2戦富士だった。決勝結果から言えば、開幕戦ではNo.65 LEON CVSTOS AMG-GT(黒澤治樹/蒲生尚弥)を筆頭に、トップ5をFIA GT3勢が独占。特にメルセデスAMG GT3は岡山にマッチしていたのか、No.4 グッドスマイル 初音ミクAMG(谷口信輝/片岡龍也)が2位、No.11 GAINER TANAX AMG GT3(平中克幸/ビヨン・ビルドハイム)が4位と、デビューレースであわや表彰台独占の活躍。JAF-GT300勢では、6位にNo.25 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允)がつけた。ただし、No.25 VivaC 86 MCはポールポジションを獲得しており、車両の熟成が着実に進んでいることを感じさせた。

 

 

 そして、第2戦富士ではNo.55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/小林崇志)との激しいバトルの末に、No.3 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ヤン・マーデンボロー)が優勝を飾る。
 ただ、この時、No.25 VivaC 86 MCが予選2番手で、決勝も3位に入った。コースの特性から岡山での健闘は予想通り(決勝はAMG GT3が良すぎたか)だったが、富士はパワーのあるFIA GT3勢の優勢が前評判だっただけに、意外に思われた方も多かったはず。その印象が実像に結びつくのは、また後の話だ。
 そして、オートポリスで行われるはずだった第3戦は、熊本地震の影響で中止となり、代替レースが最終戦と併せてもてぎで開催されることが発表になる。当初の予定どおり行われていれば、オートポリスともてぎは好対照なコースレイアウトとあって、シリーズもまた違った展開になっていた可能性もあっただろう。

 

 

■最後までGT300らしい好バトルが続いた第4戦SUGOと第5戦富士

 そして、第4戦の舞台、SUGOはエンジンパフォーマンスに優れるFIA GT3勢より、旋回性能に優れるJAF-GT300勢の方が有利というのが定説。それにあらがうように、タイヤ無交換作戦が功を奏したとは言え、レース後半はNo.88 マネパ ランボルギーニGT3(織戸学/平峰)がリード。だが、速さに勝ったNo.31 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一)が逆転して優勝。2位はNo.25 VivaC 86 MCが、そして3位にはNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)と、結局JAF-GT300勢によって表彰台が独占された。
 特に終盤に見せたNo.31 中山のごぼう抜きは切れ味に優れ、さらにハイブリッドシステムによるモーターアシストの威力を、改めて実感させることとなった。

 

 

 続く第5戦、2回目の富士ではNo.55 ARTA BMW M6 GT3がリベンジを果たす。FIA GT3勢の中で最もウェイトハンディを背負っていたことが影響し、No.3 B-MAX NDDP GT-Rが予選で中団に沈む。そこで対抗馬となったのは、No.21 Hitotsuyama Audi R8 LMS(リチャード・ライアン/藤井誠暢)だった。ここまでは目立った成績を残せずにいた彼らが、躍進したのはダンロップのタイヤ開発がSUGOから一気に進んだこともひとつの要因であろう。序盤は高木と藤井が、そして終盤は小林とライアンが激しいバトルを繰り広げ、ゴールラインでなんと0.106秒差という決着に。健闘むなしくNo.21 Hitotsuyama Audi R8 LMSは逆転ならず。3位にもダンロップユーザーのNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORTが入った。
 ちなみに前半4戦のタイヤウォーズでは、ヨコハマ勢の開幕2連勝の後、ブリヂストン勢が2連勝と星を分け合う。だが第5戦でダンロップ勢の進化が著しいことを感じさせ、後半戦へとさらに激化していく。

 

 

■No.25とNo.3 GT-Rの安定感が目立ち、混戦模様だった前半戦

 

 

 激しいと言えば、2016年はチャンピオンシップ自体も例年以上の激戦で、毎戦上位入賞が入れ替わる混戦となった。それは有力チームに取りこぼしが多かったという証明でもある。特にその傾向が強かったのが、開幕戦を制していたNo.65 LEON CVSTOS AMG-GT。その後の2戦は連続で追突され、第5戦ではサスペンショントラブルが。まるで、開幕戦で一気に運を使い切ったようであった。またNo.55 ARTA BMW M6 GT3も開幕戦はエンジントラブルで、第4戦はクラッシュで得点ならずと、この時点のランキング1位ながら決して順風満帆ではなかった。No.31 TOYOTA PRIUS apr GTに至っては、デビューとなった開幕戦こそ入賞まであと一歩の11位ながら、勝った第4戦以外はトラブルに見舞われ、ポイントを獲得できずにいた。

 

 

 

 この中で、安定感のあった2チーム。まずはNo.3 B-MAX NDDP GT-R。前半の4戦で全戦入賞できているのは彼らだけ。苦手なコースでは確実に稼ぎ、得意なコースでは勝負に出て、また重い状態でも稼いでいた。また、No.25 VivaC 86 MCも取りこぼしは、前半4戦で1戦のみ。66kgものウェイトハンディを積んだ状態での第5戦富士が無得点はいたしかたなし。だがこのレース、無線の故障でタイヤの内圧調整をピットに伝えられず、しかも土屋がエンジニアを兼ねながら走るというチームの事情もあって、必要な時に重大な決断をできないという彼らだけの“問題”も浮かび上がった。

 

 

 またシリーズが進むにつれ、今季はFIA GT3車両が決して優位ではないということが明らかになってくる。むしろ逆とも思われた。FIA GT3車両は、最低重量がJAF-GT300勢よりマシンによっては100kgから200kg以上重く、しかも改良は許されない。さらに給油に時間がかかる。これはFIA GT3車両の全体の課題で、JAF-GT300車両のいない海外GTレースでは起きないことだ。そこで第5戦富士からJAF-GT300車両は最低地上高が5mm上げられ、給油装置の燃料リストリクターも(給油速度が遅くなるよう)33φから27.5φへと絞られた。その第5戦でも、No.61 SUBARU BRZ R&D SPORTは3位に入ってみせた。No.61 井口は「奇跡の表彰台」と語っていたが。
 このように、2016年前半戦はFIA GT3勢が4戦中3勝を挙げたが、後半戦では様相が変わっていった。

 

※次回、GT300クラス第2回「シーズン後半戦」は12月1日(木)掲載予定です。

 

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