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2016.12.01
【SUPER GT 2016 総集編】GT300クラス第2回「シーズン後半戦を振り返る」

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GT300総集編第1回では、2016年の開幕前から第1戦岡山、第2戦富士、第4戦SUGO、第5戦富士までの4戦を振り返った。第2回では第6戦鈴鹿からチャンピオン決定となった最終戦もてぎまでの後半4戦を思い返してみたい。こうして改めてみると今シーズンのGT300クラスは確かに名勝負、激戦の多い1年であった。

 

 

■第6戦鈴鹿は「勝負の女神」に助けられたSUBARU BRZ R&D SPORTが勝利

 

 

 シリーズ前半戦はFIA GT3勢が4戦3勝と、優勝回数ではJAF-GT300勢を上回っていた。第5戦終了時点でシリーズランキングのトップはNo.55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一/小林崇志)ながら、No.25 VivaC 86 MC(土屋武士/松井孝允)が4ポイント差で、さらに1ポイント差でNo.3 B-MAX NDDP GT-R(星野一樹/ヤン・マーデンボロー)が続いていた。当初、FIA GT3勢が有利と予想されていた状況において、JAF-GT300車両(マザーシャシー車両含む)がトップ3に食い込んでいたのも驚きだったが、4戦を経過しているにもかかわらず、30ポイント超えはこの3チームだけと、いかに2016年の前半戦は混戦だったかが分かる。
 シリーズ後半戦の緒戦となったのは、鈴鹿サーキットでの第6戦「インターナショナル鈴鹿1000km」、45回の歴史を誇る伝統の一戦である。このレースの前には大きな話題が。昨年のFIA-F4選手権において、あと一歩のところでチャンピオンを獲得できなかったものの、高評価を得て全日本F3選手権にステップアップを果たした牧野任祐が、No.2 シンティアム・アップル・ロータス(高橋一穂/加藤寛規)の第3ドライバーとして出場となった。彼は7月の鈴鹿公式テストにルーキーテストを兼ねて参加、この時も加藤と遜色のないタイムを記録して大いに話題となった。

 

 

 実際に、牧野は鈴鹿で魅せてくれた。予選はQ1でアタックを担当すると、いきなりそれまでのトップタイムをコンマ5秒も上回ったばかりか、1分57秒811のコースレコードを叩き出す。決勝でも加藤の後を受け、ミスなく走って仕事をしっかりこなす。残念ながらシンティアム・アップル・ロータスはクラッシュしてリタイアとなり、牧野は入賞という結果を残す事はできなかった。だが、このレースでGTカーへの適性を認められ、なんと次戦タイではGT500のNSX CONCEPT-GTのドライバーに抜擢された。
 鈴鹿に話しを戻そう。Q2ではNo.18 UPGARAGE BANDOH 86(中山友貴/山田真之亮)がトップになって、ポールポジションを獲得。決勝でも前半をほぼ完璧に支配し、折り返しの頃に起こった2号車のクラッシュによるセーフティカー(SC)ランがなければ、勝利していた可能性も高い。このSCランはGT300クラスの勝敗を大いに左右した。それまで築き上げたマージンが失われるとともに、この大会で義務づけられていたピットストップ5回のうち、3回目を済ませていたかどうかも、その後の展開に大きく影響した。3回のピットストップを済ませたチームにとっては、序盤の遅れも取り戻せることとなった。この幸運を引き当てたのが、No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)で、序盤のスピンからのコースアウトによる遅れも挽回。SCラン前にピットインを2回しか済ませていなかったNo.18 UPGAREGE BANDOH 86は、あと3回ピットに入らなくてはならず、そのロスが致命傷となった。
 これほど「勝負の女神」に翻弄されたレースは近頃なかった。優勝したNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORTは先の通り。2位のNo.31 TOYOTA PRIUS apr GT(嵯峨宏紀/中山雄一)もスタート時のタイヤ選択ミスで早々のピットインを強いられたのが、帳消しになった。そして昨年優勝のNo.0 GAINER TANAX GT-R(アンドレ・クート/富田竜一郎)が3位入賞。結局No.18 UPGARAGE BANDOH 86は4位と表彰台を逃した。

 

 

■タイに強い B-MAX NDDP GT-Rをチーム一丸でVivaC 86 MCが逆転

 

 

 続くタイのブリラム、チャン・インターナショナル・サーキットでの第7戦は、No.25 VivaC 86 MCの松井孝允が自身初、チームとしては今季3回目のポールポジションを獲得。しかし、決勝ではスタート直後にこのコースを得意(昨年、一昨年と連勝)とするNo.3 B-MAX NDDP GT-Rに、その後No.0 GAINER TANAX GT-Rにも先行を許してしまう。だが今季No.25 VivaC 86 MCの決め技となっているタイヤ無交換作戦で再びトップに立つと、松井が終盤まで好走してポジションをキープ。
 ところがゴールを目前にしてNo.25 VivaC 86 MCはトラブルに見舞われる。ガス欠症状と思われ、このまま走って優勝かノーポイントのギャンブルか、それとも緊急ピットインしてポイント狙いか、の選択を余儀なくされる。後方1〜2秒差にNo.3 B-MAX NDDP GT-R(マーデンボロー)が迫る中、エンジニア兼任の土屋は勝負を決断。燃料系の別系統を使う機転と松井のがんばりで、迫ってきたNo.3 B-MAX NDDP GT-Rを僅差で抑え、“今季3度目の正直”で優勝を飾った。3位はNo.55 ARTA BMW M6 GT3が入った。

 

 

■ランキング上位が総崩れ!? Hitotsuyama Audi R8 LMSがチーム初勝利

 

 

 そして迎えたのは、ツインリンクもてぎでの最終2連戦。この大会は、オートポリスで行われるはずだった第3戦の代替レースを含む2戦を土曜・日曜の2日間で行うSUPER GT史上初の試みとなった。第3戦、第8戦ともに午前に15分間1本勝負の予選、午後に250kmの決勝を行うハードスケジュールとなった。また、土曜の第3戦はウェイトハンディが前戦から半減、日曜の第8戦はノーハンディ(参戦数が規定に達しない場合は別)となる。それだけにウェイトの重いランキング上位の車両は、金曜に行われる公式練習でのセッティング&タイヤ選択が特に重要となるはずだった。だが、この日は雨に見舞われ、各チームはぶっつけ本番で運命の2連戦に臨むこととなった。
 土曜日午前、第3戦の予選は前日の雨の名残で路面はセミウェット。この条件にダンロップのウエットタイヤがマッチしてNo.11 GAINER TANAX AMG GT3(ビヨン・ビルドハイム)のポールポジションを筆頭に、No.21 Hitotsuyama Audi R8 LMS(リチャード・ライアン)、No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人)とトップ3がダウンロップユーザーとなる。
 だが、雨は上がっているだけに午後はドライコンディションに転じた。決勝では、ポールからNo.21 Hitotsuyama Audi R8 LMSが逃げ切ってチームにとっての初勝利を獲得。2位はNo.33 Excellence Porsche(山野直也/ヨルグ・ベルグマイスター)が、3位はNo.88 マネパ ランボルギーニGT3(織戸学/平峰一貴)と、ポルシェとランボルギーニのユーザーが久々の表彰台。
 21号車以外のランキング上位陣は軒並み低迷。この結果トップはNo.25 VivaC 86 MCの土屋/松井組、9ポイント差でNo.3 B-MAX NDDP GT-Rの星野/マーデンボロー組とNo.21 Hitotsuyama Audi R8 LMSのライアン/藤井誠暢組、11ポイント差のNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORTの井口/山内組、14ポイント差でNo.31 TOYOTA PRIUS apr GTの嵯峨/中山組までが最終戦に実質的なタイトルの可能性を残した。No.55 ARTA BMW M6 GT3の高木/小林組もチャンスを残したが、この第3戦の序盤での大クラッシュでマシンを大破。一晩での修復は難しく、55号車はここでシリーズを終えることとなった。

 

 

■作戦とは言え薄氷の展開を制してVivaC 86 MCが優勝でタイトル獲得!

 

 

 翌日曜の第8戦、ポールポジションはNo.31 TOYOTA PRIUS apr GTが奪う。決勝でも逃げ続ける中、ポイントリーダーのNo.25 VivaC 86 MCは予選6位からズルズルとポジションを下げ、入賞圏ギリギリを走行。このままならNo.31 TOYOTA PRIUS apr GTの大逆転チャンピオンもあり得た。
 だが、No.25 VivaC 86 MCの土屋にとって、低迷はある程度折り込み済み。またもタイヤ無交換作戦でポジションアップして、タイトル獲得を松井に託す。一方、大逆転を諦めないNo.31 TOYOTA PRIUS apr GTも対抗してタイヤ無交換を選択。レース終盤はトップで逃げるNo.31 TOYOTA PRIUS apr GT(中山)をNo.25 VivaC 86 MC(松井)が猛然とプッシュ。やはりタイヤ無交換作戦においては、No.25 VivaC 86 MCに車両的にもノウハウでも利があった。そして、このレースも松井は非常に切れた走りを見せる。ついにはトップ奪ったNo.25 VivaC 86 MCが今季2勝目を挙げるとともに、悲願の王座を獲得した。
 2位でゴールのNo.31 TOYOTA PRIUS apr GTは、ランキングでも2位を獲得。3位はNo.4 グッドスマイル初音ミクAMG(谷口信輝/片岡龍也)で、第1戦以来となる表彰台に上がることに。また、このもてぎ2連戦で優勝、4位と最も多くの得点を獲得したNo.21 Hitotsuyama Audi R8 LMSは、もてぎ連戦前のランキング8位から3位まで大躍進を遂げている。

 

 

■JAF-GT300とFIA GT3の微妙なバランス。開発力がタイトルをたぐり寄せる

 

 2016年のGT300クラスを振り返ってみると、やはりオートポリス大会の中止により、もてぎで代替レースが行われたことが、少なからずの影響を及ぼしたようだ。中でも影響を受けたのがGT-R勢だろう。特にNo.3 B-MAX NDDP GT-Rは、それまで続けてきた入賞をもてぎの第3戦でストップさせてしまい、第8戦も6位に留まり、ランキングを2位から4位に落としてしまった。実はもてぎとGT-Rの相性は過去の戦歴を見てもあまり良くなく、一度も表彰台に上がったことがない。ストップ&ゴーのレイアウトが、車重の重いGT-Rには不利のようだ。しかも練習日が雨となり、タイヤ選択も難しかった。もしオートポリスで第3戦が行われていれば、彼らの運命も変わっていただろう。昨年、オートポリスでは優勝を飾っていただけに。

 

 

 そのGT-Rを含むFIA GT3勢は今季8戦4勝を挙げ、対するJAF-GT300勢は86マザーシャシーの2勝を含み4勝と、優勝回数では互角だった。しかし、トータルで言えば、ランキング1位、2位を獲得したことから明らかな通り、JAF-GT300勢に軍配が上がったシーズンだった。昨年のような絶対的なパワーより、今季は各戦で大きくセットを変えることが可能で“進化”ができるメリットを持つJAF-GT300が優位であった。中でも、チームとしての開発力に定評があるNo.25 VivaC team TSUCHIYAがドライバーズとチームのダブルタイトルを獲得したのは、当然ではないだろうか。逆に新型車1年目のNo.31 TOYOTA PRIUS apr GTは、トラブルも相次いだ中でのランキング2位は大いに評価に値する。熟成も進んで、より精度も高まるであろう来年への期待が大きくなる。

 

 

 一方、FIA GT3勢のトップがNo.21 Hitotsuyama Audi R8 LMSになるとは、シリーズ前半に誰が予想しただろうか。苦しい前半戦もコツコツとポイントを稼ぎ、なによりダンロップタイヤの進化とともにチームと車両がマッチングを高め、後半戦で急速に戦闘力を上げたことは見逃せない。セットアップも含め、外しの少なさがランキングでの躍進につながったと言えよう。もちろん、これも結果を見たからこそ言えることで、FIA GT3とJAF-GT300のバランスは拮抗しているので、来季もこの争いが楽しみだ。
 タイヤメーカー間での戦いは、ヨコハマユーザーがランキングでワン・ツーになるとともに、最多の4勝をマーク。ブリヂストンとダンロップが2勝ずつとなった。GT300全体のシェアではヨコハマが大多数を占めることを考えれば、ほぼ互角の戦いといえるだろう。この競争の激しさも、今後変わらないであろう。

 

 

 次回12月8日(木)掲載予定、総集編GT300クラスの最終回では見事チャンピオンに輝いたNo.25 VivaC 86 MC、VivaC team TSUCHIYAの戦いを中心に2016年シーズンを振り返ってみたい。

 

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