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2024.12.26
【2024プレイバック】第3回 GT500クラス総集編その1「“Nissan Z NISMO GT500”の2024年」

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Nissan Z NISMO GT500勢の2024年
2人のGT500ルーキーが活躍&結果を残すシーズンとなる
第2戦は三宅の安定性が3号車の優勝に結実、第7戦は24号車の名取がポール獲得

 

 2024年のNISSAN陣営は前年に続き、4台のNissan Z GT500をGT500クラスに送り込んだ。結果は第2戦の1勝、ポールポジションは第7戦での1回で、タイトル争いも最終戦前に終わるという厳しい結果となった。一方、今季加入の20代ドライバー2人の好走が光り、新たに装着したタイヤとのマッチングも進み、今後に繋がる成果もあった1年だった。
 熱戦が連続した2024シリーズを振り返る総集編「2024 シーズンプレイバック」。第3回からはGT500クラスで、その第1弾はNissan Z NISMO GT500の4台の活躍を振り返ってみたい。

 

 

■2023年から変革の年となったNISSANの2024年シーズン

 2022年から2023年は8名のドライバーを変更しなかった日産の4チームだが、2024年は大きなシャッフルを実行した。前年までGT300クラスを戦った三宅淳詞(当時25歳)、名取鉄平(同23歳)という2人の若手をGT500クラスに抜擢。またNISMOのエースカーである23号車でロニー・クインタレッリと組むこと10年の松田次生が、24号車KONDO RACINGへ移籍。23号車には3号車から千代勝正が移籍した。体制を変えなかったのは12号車のTEAM IMPULで、平峰一貴とベルトラン・バゲットが継続となった。
 また陣営の大きな変化としては、ミシュランタイヤがGT500クラスへの供給を休止したことで、3号車と23号車が2012年以来12年ぶりにブリヂストンタイヤを装着することと成った。これで日産陣営も4台中3台がブリヂストンユーザーとなりデータ量が増えることで、Z用タイヤの開発も一気に進むと予想された。
 さらに開幕戦直前に日産系チーム総監督が松村基宏氏に代わり木賀新一氏が就任。松村氏はエグゼクティブパートナーとして木賀総監督をサポートすることとなった。

 GT500車両のベース車は、今季もNissan Z(フェアレディZ)ではあるが、前後バンパー形状の異なるZのNISMOバージョンを採用した。これでノーズは40mm長くなりフロントの開口部も横長となり、シャープな印象に。さらにフリックボックスからフロントフェンダーへのデザインも変更され空力面での改良がなされた。
 もちろん今季の目標はタイトル奪回ではあるが、24号車では松田の加入によるヨコハマタイヤ開発、他の3チームはタイヤのデータ共有によるポテンシャルアップが重要なシーズンとなった。

 

 

 

■第2戦富士はワン・ツーを達成!前半戦は3号車、23号車がポイントを重ねる

 開幕戦岡山は、気温27度という夏のような天候で始まった。スタート直後の1コーナーで23号車のクインタレッリは他車に押し出され、12 号車も他車のスピンを避けきれず順位を落としてしまう。これもあって開幕前テストから好調だったGR Supra GT500勢には追いつくことはできなかったが、23号車が5位、3号車が6位と、まずまずのスタートを切った。12号車と24号車は入賞を逃した。

 

 

   

 

 

 第2戦は恒例のゴールデンウィーク富士ラウンドで、SUPER GT初のタイムレースで、500kmは超えるであろう3時間レースだ。予選で3号車が2位、23号車が3位、12号車が5位となり優勝が期待された。決勝はスタートダッシュで3号車の高星明誠がトップを奪うと23号車の千代も23周目の2コーナーで2番手に浮上し、Zのワン・ツー態勢となった。ピット作業は2回が義務付で、1回目は3号車と12号車がドライバー交代をせずダブルスティントを採り、23号車はクインタレッリに交代。レース中盤は3号車がトップ、23号車が3位、12号車が5位で展開した。
 2回目のピット作業では3号車が三宅に、23号車が千代に、12号車が平峰に交代。3号車は独走でトップを守り、23号車は2位、12号車は6位となった。117周でレースはチェッカー。3号車の三宅はGT500へステップアップして2戦目で初優勝を飾り、2位には23号車がゴール。昨年開幕戦以来のワン・ツーでのフィニッシュを達成。12号車は6位となった。
「優勝できて素直にうれしいです。すべてにおいて収穫のあるレースになりました。でもまだまだ自分たちの求めているクルマのバランスには到達していません。さらに上を目指していきたい」と高星は勝って兜の緒を締めた。またGT500ルーキーの三宅は「GT500の2戦目で優勝できたことにはびっくりしていますし、本当にうれしい」と初優勝を喜んだ。

 6月1、2日の第3戦鈴鹿も3時間での開催となった。3号車は54kg(燃料リストリクター1段階ダウンで37kg)、23号車は44kgのサクセスウェイトを搭載するため、予選から苦戦が予想されるも、予選結果は3号車が6位、23号車が7位、12号車が8位、24号車が9位と4台そろってレースで上位を狙える位置につけた。
 レースでは23号車が他車との接触でペナルティを受けたが、4台のZは堅実に3時間を走りきり、12号車が4位、3号車が8位、24号車が9位、23号車が10位と全車ともポイントを積み重ねた。

 2か月のインターバルを挟んで開催された第4戦は再び富士が舞台。これもまた初となる350kmレースとなった。SUPER GT定番の300kmレースより少し長いが、1回のピットで済むためピットインのタイミングとタイヤ消耗がカギになると予想された。
 決勝は気温35度と猛暑の中のスタートでは、予選6位の12号車が堅実な走りで、5位に順位を上げてゴール。Z勢唯一のポイント獲得となった。前半の4戦を終えて3号車がポイントリーダーと11点差の3位、23号車が18点差の8位、12号車が22点差の11位とまだまだ混戦であり、ここからの追い上げに期待がかかった。

 9月1日に決勝が予定されていた第5戦鈴鹿は、台風10号の接近により延期となった。そして第6戦SUGO以降は天候に悩まされる後半戦となった。
 第6戦は悪天候のために公式予選が実施できないことが予想され、予選日午前の公式練習のベストタイムで決勝スターティンググリッドが決まる可能性も発表された。実際、その通りとなって公式練習のタイムで、グリッドは12号車が5番、24号車が7番、23号車が8番で、3号車は最後尾の15番となった。そして決勝レースも降雨の影響で50分遅れでスタート。セーフティカー(SC)スタートで、4周目からバトル開始。ここで素晴らしいダッシュを見せたのが12号車のバゲットで3位に順位を上げた。また最後尾スタートの3号車も7周目には7位、10周目には6位までジャンプアップする。中盤に3台による4位争いを展開していた12号車がさらに順位を上げて3位でゴールと、1年ぶりの表彰台を獲得。3号車は9台抜きの6位でポイントを加算した。

 

 

   

 

 

 

■第7戦は得意のオートポリスで2台が表彰台!しかしラスト2戦は厳しい展開となる

 第7戦は第5戦が延期されたためシーズン6戦目となり、サクセスウェイト(SW)はポイント×2kgで前戦と変わらず。SWの影響が比較的少ないオートポリスだが、なんとこの大会も悪天候で予選日の走行はすべてキャンセルとなる。気温10度の決勝日朝に30分間の予選が実施された。ここで24号車の名取が見事にポールポジションを獲得。名取のポール奪取はGT500クラスではもちろん初。「最後にアタックをしようとして1コーナー(ナカヤマ精密コーナー)でタイヤをロックさせてしまったのでやらかしたと思ってピットへ帰ってきたら、みんなが喜んでいるから何でだろうとなりました」と初ポールの感覚がなかった名取は苦笑するも、大きな自信になったことだろう。また23号車も2位でフロントローに並び、3号車は5位と決勝での活躍が期待された。

 

 

   

 

 

 3時間のタイムレースは、気温16度で薄曇りの中スタート。序盤は3番手へ順位を落とした23号車が12周目の第2ヘアピンで24号車からトップを奪うと、その後は独走状態へ持ち込む。しかしこの日の23号車はアンラッキーだった。23周目にGT500車両がコースサイドでストップするとFCY(フルコースイエロー)からSC導入となり築いたマージンを一気に吐き出すことに。さらにレース中盤、2回目のピット作業を済ませた直後にこの日3回目のSCが導入。このタイミングで2位から暫定トップに立っていた3号車と暫定2番手の39号車GR Supraがピットイン。ここで39号車が3号車ばかりか23号車の前でコースへ戻る。レースは残り1時間。先頭は39号車GR Supra、23号車、100号車CIVIC、3号車の4台が一塊でのトップ争う。
 トップに迫る23号車のクインタレッリだが、バックマーカーに引っかかるなどで前に出ることはできない。終盤に3号車が3番手を奪い、100号車CIVICの後方には12号車が迫っていた。最終盤に4回目のSC導入となりレースはSC先導のまま92周で終了。23号車はレースをほぼ支配していながら悔しい2位となった。3位には3号車が入り表彰台を獲得。12号車は5位でレースを終えた。

 

 

   

 

 

 

■最終戦でラストランのクインタレッリとマレリカラーの12号車が大健闘!

 本来最終戦として予定されていた第8戦もてぎはシリーズ7戦目となり、当初のサクセスウェイト無しではなく、ポイント×1kg搭載での開催。さらに折からの前線の影響で公式練習から予選は降雨となった。難しいコンディションでZ勢は本来のポテンシャルを発揮できず、12号車の10位が最上位と下位に沈んでしまう。決勝は快晴となり気温も21度と11月とは思えないほど上昇。300kmのレースは混戦となり、3号車が7位、24号車が8位、23号車が9位というリザルトに。このレースの結果、Z勢のドライバータイトル奪回の権利は消滅した。

 

 

   

 

 

 最終戦として開催された第5戦鈴鹿を前に大きなニュースが飛び込んで来た。それはGT史上最多となる4回のチャンピオンを獲得したクインタレッリのSUPER GT活動の終了の報だった。大会前の記者会見でクインタレッリは「今年は千代選手と組みセカンドドライバーとして臨みましたが、自分のパフォーマンスが出せなくなりました。オートポリスで優勝できていればまだやろうと思いましたが勝てませんでした。もてぎのレースを終えて、最後は23号車のドライバーとして終えたいと伝えました」と言う。引退を決めてからは眠れない日もあったと言うが、ジョークを混ぜながら語った記者会見は清々しかった。
 またこのレースでは、TEAM IMPULと星野一義チーム代表を43年間応援してきたマレリ(前身は日本ラヂヱーター/カルソニック/カルソニックカンセイ)が来年2月の契約満了をもってスポンサード契約の終了を発表。今大会がマレリ+TEAM IMPUL最後のレースとなった。「カルソニック/マレリに感謝。レースに感謝。俺の人生そのものでした」と星野氏は語った。

 第5戦鈴鹿は当初の予定では350kmレースだったが、300kmに短縮されて開催された。冷たい鈴鹿おろしが吹く中、Q1でコースレコードを塗り替えてトップタイムをマークしたのは、またしても24号車の名取だった。Q1とQ2の合算タイムでの総合予選結果であるためポールポジションとはならなかったが、今季の成長ぶりを見せた予選となった。決勝レースのグリッドは24号車が3位、3号車が7位、23号車が11位、12号車が最後尾の15位だった。
 決勝は曇りで気温13度という状況でスタート。序盤、温まり切らなかったタイヤが本来のパフォーマンスを発揮できず24号車は徐々に順位を落とすも、最後尾に落ちた3周目から追い上げを開始。しかし何より目を引いたのは、23号車のクインタレッリの最後の力走だった。1周目に3つ順位を上げるとアグレッシブな走りをみせ、バトルを展開して6番手まで順位を上げてファイナルランを飾った。
 そしてマレリとのファイナルランとなった12号車も目を見張るような追い上げをみせた。バゲットが序盤に9番手まで順位を上げて平峰に交代。そこから4番手へ順位を押し上げ、終盤に3位となって表彰台を獲得した。「マレリさんに感謝の意味を込めて最後は攻め抜きました」と平峰。これには星野一義氏も表彰台下でホッとした表情を見せた。
 3号車は三宅が中盤に前日タイトルを決めてトップを走る36号車GR Supraに迫り、29周目の1〜2コーナーでは並ぶ争いを展開。だがFCYからのリスタートでスピンを喫したことで、表彰台は逃したが7位でゴール。23号車は8位、24号車は15位で今シーズンを終えた。

 

 

 

 

 シーズンを終えて3号車がランキング3位、12号車が同6位、23号車が同8位、24号車が同14位という結果だった。最終戦までタイトル争いに残れなかったことはファンにとっては残念であったに違いないが、新人ドライバーの活躍、ブリヂストンとヨコハマのタイヤデータ蓄積などは、来季2025年の巻き返しに繋がるシーズンとであった。

 

 

 

 

※次回は「GT500クラス総集編:Honda NSX-GTの2024年」をお送りします。

 

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