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“スーパーラップ”はSUPER GTを変えるか!?−開幕戦で採用された予選の新システム− |
全日本選手権から国際シリーズへ。2005 AUTOBACS SUPER GTは、昨年までのJGTCとは位置づけが変わった。それにともない、レギュレーションも車両、競技の両面で一部変更された。なかでも開幕戦で注目されたのが、予選“スーパーラップ”方式の採用。GT500、GT300各クラスの上位12台が2台ずつタイムアタックを行うという新システムは、各チームやドライバーにどう受け止められたのか。現場の声を拾うとともに、GT-Aの加治次郎事務局長に話を聞いた。(*スーパーラップの規則は開幕戦のものです)
予選方式については、昨年のレギュレーションでも『規定の範囲内で各ラウンドごとに特別規則で設定できる』とされており、主催者の裁量にまかされていた。“スーパーラップ”方式を昨年中に実施することも、規定上は可能だったわけである。しかし、実際には他と異なる方式を採用した主催者はなく、全戦の予選が同じやり方で行われていた。
昨年の予選は、土曜日に60分ずつ2回のセッションが設けられていた。それぞれのセッションはさらに3パートに分けられ、1回目はGT500専有(20分間)→ GT300専有(20分間)→ 両クラス混走(20分間)、2回目は混走(20分間)→ GT300(20分間)→ GT500(20分間)の順に走行していた。決勝グリッドは、この2回のセッションを総合して、ラップタイムの速い順に決定された。
今季、開幕戦で行われたスーパーラップ方式は、土曜日に2セッションが行われる点は昨年と変わらない。1回目のセッションが3パートに分けられる点も同様。ただし走行の順番は、予選前日になってGT300(20分間)→ GT500(20分間)→ 混走(20分間)に変更された。
異なるのはここから先。決勝グリッドは予選1回目と2回目の総合ではなく、2回目に行われるスーパーラップの順位によって決まる。ごく大ざっぱにいえば、予選1回目はスーパーラップへの出走権とその順番をかけて行われるセッション。スーパーラップが決勝のグリッドを決めるためのセッションということができるだろう。仮に、天候急変などでスーパーラップでのタイムが予選1回目を下回ったとしても、グリッド上位はあくまでもスーパーラップによって決定される。
スーパーラップへの出走が許されるのは、まず予選1回目に各クラス10番手までに相当するタイムをマークした車両。ただし、ドライバーが二人とも予選通過基準タイムをクリアしていることが条件となる。通過基準タイムは各クラス上位3台の平均タイムの107%と規定されている。
予選2回目は、最初の15分間はGT300、つづく15分間はGT500が走行。ここで、予選1回目で各クラス10番手までに入ることができなかった車両のなかでの上位2台が、追加でスーパーラップ出走権を得る。つまり、各クラス都合12台が、これにつづいて行なわれるスーパーラップに出走することになる。この各12台が決勝グリッドの12番手までを占める。13番手以下のグリッドは、予選1回目のタイム順によって決定される。1回目に予選通過基準タイムをクリアできなかった車両も、この15分間でクリアすれば決勝への出走が許されるが、この場合スーパーラップには出走できない。
ここから5分間のインターバルをおいてGT300のスーパーラップがスタート。先の15分間で追加出走を決めた2台から一回目予選のタイムの遅い順に、2台ずつコースインしていく。2台の順番はタイムが遅かったほうが前、速かったほうが後ろ(第2戦からは速かった方が前、遅かったほうが後ろとなる)。2台はインラップのあと、さらにタイヤを温めるために1周し、その後タイムアタックに入る。この2台がアタックラップに入ったところで次の組(1回目のタイム10番手と9番手)の2台がコースイン。アタックを終えた2台は次の周にピットに戻る。これを6組12台が繰り返す、というのがおおよその手順。そのあと行われるGT500も、やり方はまったく同様だ。
予選1回目の上位だけがタイムアタックを行うやり方は、他のレースなどでも行われている。しかし、SUPER GTの場合は2台ずつ走行するという点が独自。GT-A内部では各クラス6台〜8台が1台ずつアタックするなどの方法も検討されたが、できるだけ多くの台数を限られた時間のなかで走らせるために、この方法を採用したという。
このスーパーラップ方式の採用によって、予選の作戦はかなり複雑になる。まず考慮しなければならないのは、1回目にどのポジションにつけるかでスーパーラップの出走順が変わること。天候が不安定な場合や、一度温まったタイヤが冷えないうちに走行したいなどの希望がある場合には、1回目にはあえて速いタイムを出さないという作戦もありうる。また同時に走る2台は、お互いの間隔をどの程度取るかをめぐって微妙な駆け引きを繰り広げることになる。
この“スーパーラップ”を、実際に経験したドライバーはどう評価しているのだろうか。「スーパーラップは、ドライバーとしてはおもしろいものですね。お客さんにもわかりやすいし」というのは2番手グリッドを得た本山哲(No.1 ザナヴィニスモZ)。GT300クラスポールの加藤寛規(No.19 ウェッズスポーツセリカ)は「走っている側としては、ドライバーの見せ場ですから、モチベーションは上がります」、クラス4番手だった木下みつひろ(No.13 エンドレス アドバンZ)は「3周目でタイムを出すというのは、タイヤをちゃんと温められるように考えてクルマを運んでこないといけない。しかも(アタックが)1周しかない。だから緊張感があって、ボクとしてはとても楽しかったですね」と評価する。クラス5番手の山路慎一(No.7 雨宮アスパラドリンクRX7)も「観ているほうにとってはおもしろいし、やっている側にもやりがいがあるシステム。予選って本来は1ラップアタックだと思いますから」と、好意的だ。
ただ、なかには「タイヤが温まりきらず、本来のパフォーマンスをみせられない」「偶然に左右される部分が大きいので好きではない」というドライバーも。タイヤのウォームアップが十分でないという意見は、タイヤメーカーの開発担当者からも聞かれた。しかし、別のタイヤメーカーの担当者は「ウチにとってはありがたい」と話しており、タイヤのキャラクターの違いによるところも大きそう。「ウォームアップは2周と決められているのだから、それで温まるタイヤを開発する努力をすべき」という声もある。また、出走順や天候など偶然に左右される部分が大きくなるのは事実だろうが、それはどのチームにとっても同じこと。特定のチームだけが不利を受けるということはないはずだ。
開幕戦では、No.30 RECKLESS MR-Sが出したタイムがペナルティによって取り消されるというハプニングもあった。同車は、“スーパーラップ”にNo.0 EBBRO M-TEC NSXと同時に出走。ピットロード出口でNo.0の後方に並んだが、前方のNo.0がすぐにスタートしなかったため、結果的に赤信号でコースに入るかたちに。これがペナルティ対象となり、せっかくマークしたトップタイムが幻に終わってしまった。
前の車両がスタート後はまだ青信号であったにもかかわらず、赤信号に変ってからスタートしてしまったのはチーム側のミス。今回の特別規則では、前車がスタートしなかった場合の手順も明確に規定されており、これを守らなかった以上、ペナルティの対象とされるのはやむをえない。ただ、前車を抜いて前に出るべきスペースに取材関係者がいてすぐには抜きにくい状況だったことなど、チーム側に同情の余地もある。このあたり、チーム、オフィシャルだけでなく、カメラマン、レポーター、TVクルーなどを含め、関係者全員がレギュレーションを熟知しておくことが必要だろう。
一方、観客側からみた場合、開幕戦でのやり方に問題がなかったわけではない。最大の欠陥は、スーパーラップ中の区間タイムがいっさい表示されなかったこと。場内放送ブースにもその表示はなく、アナウンスによって伝えることも不可能だった。したがって観客は、現在走っている車両のタイムを、すでに走り終わった車両と比較して「何秒速い」とか「何秒遅れた」と評価することができなかった。観客にとって、個々のタイムを直接比較することで生まれる「ドキドキ感」「ワクワク感」こそ、スーパーラップ方式いちばんのメリット。このラウンドではそれが奪われていたことになる。
GT-Aの加治次郎事務局長も、観客サービスという点では、今回のやり方が万全ではなかったことを認めている。「区間タイムを表示できなくても、同時に走る2台のタイム差が、アタックに入ったところで何秒あって、それがどう変化していったのかを知らせることができれば、2台の対決を演出することは可能だったはず」という。どうやら、開幕戦ではサーキットの設備などの問題があったようだ。だが、第2戦の富士スピードウェイ以降はこうした点もクリアになるはず。あとは、個々の主催者やサーキット側が、どれだけ熱意を持って取り組むかということにかかってくるのかもしれない。
いずれにしても、SUPER GTの予選はすべて同じ方式で行われると決定しているわけではない。冒頭にも触れたとおり規定の範囲内で各ラウンドごとに設定できることになっており、GT-Aでも「(スーパーラップは)ファンの反応とエントラント、各主催者の意見を聞き、今後のラウンドでも継続することを検討する」としている。「2台ずつ走行するという方式も、かならずしも固定的に考えているわけではないんです。1台ずつもありうるだろうし、3台だってあるかもしれない。また、従来のような予選方式も、可能性として排除しているわけではありません」(加治事務局長)。
今後、GT-Aをはじめとする関係者の努力によって、観る側にとっておもしろく、やる側にとって公平感のある予選が実現していくことを期待したい。観る側にとってなにより歓迎すべきなのは、レースを土曜日から楽しめるようになることだろう。
構成・取材:川合央助、取材:SUPER GTインサイドレポート班
*SUPER GTインサイドレポート班は、SUPER GTシリーズの公式レポート「SUPER GTインサイドレポート」やSUPER GT Press、
SUPERGT.netなどの記事を取材・執筆するレーシング・ライター集団です。