Hi-land GT Championship in SENDAI Hi-land Raceway

| 6/29 sun. | Wether: Fine | Course: Dry | Start: 14:23'00 | Finish: 16:19'00 | SEIKO TIMING |
| SENDAI Hi-land Raceway : 4.02960km / 63Laps |




GT500
最終ラップの大逆転!!
カストロール・トムス・スープラが勝利をもぎ取る
無念。亜久里はタイヤ選択に泣く


Round 3 Hi-Land GT Championship
29 June 97
Race Report

 心配された台風も早朝には太平洋に抜けていた。早朝には小雨が残ったものの、全日本GT選手権第3戦「ハイランドGT選手権レース」の決勝は、好天の下で開催された。決勝レースのスタート直前の14時過ぎには気温は25度を超え、雨を想定していたチームにはタイヤ選択で大いに悩むこととなった。


コマスvs利男の因縁バトル!
国光の激走にNSXファンが興奮

 14時20分定刻にローリングが開始され、1周でペースカーが抜けると各車フル加速で1コーナーに向かった。雨の予選でポールを獲ったNo.37カストロール・トムス・スープラ鈴木利男は好ダッシュを決めて、トップで1コーナーを通過する。これに続くのは、このレースから新型スカイラインGT-RとなったNo.2 ZEXELスカイラインエリック・コマス。そして、予選3位のNo.100 RAYBRIG NSX、超ベテラン高橋国光もポジションをキープし、前のスープラ、GT-Rにきっちりと着いていく。
 この3台が序盤一列になってトップ争いを展開する。少し離れて昨年、コマスと組んでこの仙台を制したNo.38カストロール・セルモ竹内浩典No.36カストロール・トムスペドロ・デ・ラ・ロサの2台のスープラが後を追いかける。特にNo.2 ZEXELNo.37カストロールはテールトゥノーズでトップを争う。だが、9周目にシケインでNo.37スープラがラインを外した隙をNo.2スカイラインに突かれてしまう。さらには、No.100 NSXもそこに乗じてパッシング。No.37は一気に3番手に落ちてしまう。トップに立ったNo.2コマスは、逃げ切り体制をつくる。一方、2番手になったNo.100 NSXはギアトラブルでペースダウン、徐々に後方へと下がっていく。これで、攻守を入れ替えて再びNo.2コマスNo.37利男がトップ争いを展開。平均ラップは49秒中盤から50秒前半、ベストは共に45秒台という予選並のハイペースで周回していく。その後ろを走るNo.38No.36のカストロール・スープラも互いに接近戦でやはり49秒台を出し、後半への勝負権を放さない。

 一方、新型になったスカイラインGT-R勢でもNo.12 カルソニックNo.3 ユニシアジェックスNo.556 KURE R33は予選でも苦戦し、決勝レースも周回遅れに接触、コースアウトするなど上位争いに加わることが出来ない。なかでもNo.12カルソニックスカイランは予選でスピンし、星野一義がタイムを記録できずに、屈辱の最後尾スタート。しかも、レースはオーバーヒートの兆候があって序盤にピットインを強いられ、ポイント圏内から完全に脱落した。だがエース・ドライバー星野一義は、それでも全力の走行で上位陣と変わらぬ1分49秒台を連発し、パフォーマンスは劣らぬことを観客にアピールしていた。

ピットワークで1歩リードのZEXEL
しかし、完璧のシナリオに誤算が

 レース中盤の見せ場は規定のピットインをいかにこなすか。GTCでは、燃料補給とドライバーの交代のため1度は必ずピットインをする必要がある。どのタイミングでピットに入れるか、タイヤを交換するか否か、ピットワークをいかに速くするか。チームの総合力が問われるポイントだ。

 まず動いたのはトップを行く、No.2 ZEXELスカイラインだった。31周目に上位陣の先頭を切ってピットイン。ドライバーを鈴木亜久里にチェンジ。42秒ほどの素早いピットワークを行う。35周目にNo.36、その次の周にNo.38、その次にNo.37とカストロール・スープラ勢が順次ピットインを行う。スープラ勢の平均的なピットストップは約50秒程度だった。

 主な上位陣がピットインを終了した40周過ぎ。この時点でNo.2 ZEXELスカイライン 亜久里が再びトップに戻った。2番手にはNo.36カストロール・トムス・スープラミハエル・クルムとなる。その差は、ピットタイムの早さなどが積み重なって約15秒に増えていた。序盤トップ争いをしたNo.37カストロール・トムス・スープラ(ドライバーは関谷正徳に交代)はさらに10秒ほど遅れて3番手。残り20周あまりで、トップのNo.2 亜久里が1分50秒前半から49秒後半をコンスタントに記録しているだけに、これで勝負あったと誰もが思ったところだった。


ラスト5周のサイド・バイ・サイド
クルムが大逆転で2年ぶりのハイランド制覇!

 ところが、追うNo.36クルムはあきらめていなかった。49秒台前半、時には48秒台でじわじわと追い上げる。クルム亜久里は追い上げを知るとペースアップを図る。が、徐々に50秒を切ることが出来なくなる。実は、気温の上昇を気にして安全策とハード気味のタイヤを選択したのが裏目に出たのだった。

 前をふさぐ周回遅れをかわそうと無理をすると、No.2 亜久里のGT-Rのラップタイムがかなり落ちる。その度にNo.36 クルムとの差が確実に減っていく。

 ラスト5周。ついにNo.36 クルムのスープラは、No.2 亜久里のGT-Rのテールにぴたりと着けた。ストレートスピードはほぼ互角。No.36 クルムが狙うのはコーナーしかない。まして、亜久里はタイヤに弱点がある。百も承知のNo.2 亜久里は、曲がらないクルマを巧みに操って、ブロックラインでクルムを抑える。それに対してアウトにインにと果敢に攻めるクルムとの手に汗握るサイド・バイ・サイドが展開される。


 そして、最終ラップ直前の最終コーナーで亜久里が、ついにこらえきれずにやや外に膨らんだところを、クルムは見逃さずにインに並び掛ける。そして、インを押さえて1コーナーに飛び込む。ここでついにクルムがトップに立った。そして、ラスト1周を逃げ切って、カストロール・トムスに今季初の優勝をもたらした。3位にはNo.37 カストロール・トムス・スープラが、4位にはNo.38 カストロール・セルモ・スープラ、5位は前戦優勝のNo.39 デンソーサードスープラGTが。以降8位までをスープラが占めた。






GT300
完全独走体制!つちやMR2がGT300初制覇
しぶとく2位のRS☆Rシルビアはランキングトップを譲らず

 雨の予選で感激のGTC初ポールを獲ったNo.16 ダンロップ-BP-BMWだったが、なんとタイヤの空気圧を異常というトラブルがスタート直前で発覚。修理をすることも出来ずにスタートしたために、徐々に遅れ出す。

 これに代わってトップに立ったのは、予選ではクラス5番手にとどまったNo.25 つちやMR2 土屋武士。今回からターボを搭載して登場したNo.25 つちやMR2はセッティングに手間取り予選はふるわなかった。だが、決勝日の朝になってベスト・セットが見つかり、1分54秒台と1台だけクラスが違うかのような速さをみせる。2番手のNo.81 ダイシンシルビア 木下隆之だが、1分55秒台中盤がやっとでNo.25を追うまでに至らない。

 唯一No.25 つちやMR2に互角のスピードを見せたのがNo.19 RS☆Rシルビアだった。雨が苦手というシルビアは予選クラス8番手と低迷した。その上、珍しくベテラン福山英朗が他車を抜くときムリをしすぎて、レース序盤にスピンを喫し遅れてしまう。だが、No.25と同等の54秒台でポジションを挽回していく。

 No.25 つちやMR2はエースの土屋武士でできるだけマージンを稼ぐ作戦。ピットインもギリギリまでガマン。タイヤ交換もせずにピット作業によるタイムロスを最小にとどめて長嶋正興にバトンタッチした。

 40周を過ぎた後半戦。トップで逃げるNo.25 つちやMR2 長島は、35秒近いマージンを貰い、無交換のタイヤに無理をさせず56秒台で確実に走行。これを猛然と追い上げるのは、ランキングトップのNo.19 RS☆Rシルビア 織戸学とランキング2位のNo.26 タイサンスターカードRSR 新田守男という実力あるチーム。ともに1分54秒台を記録して、トップとの差を詰める。

 だが、やはり序盤のマージンは大きかった。No.25 つちやMR2はゆうゆうと逃げ切り、GTC初優勝(長島にとっては全日本初優勝)を遂げた。これに続いて2位に入ったのはNo.19 RS☆Rシルビア。これでシリーズランキングトップの座を守った。3位にはしぶとく走りきったNo.26 タイサンスターカードRSRが入って、シリーズ後半戦にランキング逆転を狙う位置に着けた。4位は予選2番手の座を守りきれなかったNo.910 ナインテンポルシェ、5位には序盤健闘したNo.81 ダイシンシルビアが入った。









No.36 CASTROL TOM'S SUPRA
Pedro De La ROSA & Michael Krumm

ペドロ・デ・ラ・ロサ
「とにかくレースをフィニッシュすることが目標で、とくにアタックするようなつもりはなかったんです。序盤は前に竹内選手がいて、なかなか抜けなかったんですけど、チャンスは狙っていましたよ」

ミハエル・クルム
「ペドロがピットインの直前にかなり速いタイムで走ってくれたのが今回のレースのキーになっていると思います。自分も出ていった直後からかなり速く走れましたからね。終盤のバトルは、亜久里さんが簡単に抜けるような相手ではないので大変でした。でもレース中にスプーンコーナーの走り方も教えてもらえたし(笑)。自分のほうがペースが少し速かったので、抜くチャンスは狙っていましたから、最後に抜けてよかったです。タイヤは前半も後半もミディアムで同じ、まったく問題なかったですよ」





No.25 TSUCHIYA MR2
Takeshi Tsuchiya & Masaoki Nagashima

土屋武士
「ターボは日曜日になってなんとか調整がついてくれて、結果オーライというところですね。このペースだったら長島くんに貯金を残してあげられる状態でした。今までが全然ダメで、ターボがついてるとスピードが全然違う。クルマは全然問題ない。とりあえずタイヤはいいグリップで中段から抜けられた。ちょっと別の問題があって(笑)。スポンサーがね…。ミッションがひとつしかなくて、壊れた時点でリタイヤになってしまうので壊せない。今回、タイヤ交換はなしで走りきりました」

長島正興
「土屋君がマージンを作ってくれたので、後ろを見ながらゴールを目指して走りました」