最終ラップの大逆転!! カストロール・トムス・スープラが勝利をもぎ取る 無念。亜久里はタイヤ選択に泣く
Round 3 Hi-Land GT Championship
14時20分定刻にローリングが開始され、1周でペースカーが抜けると各車フル加速で1コーナーに向かった。雨の予選でポールを獲ったNo.37カストロール・トムス・スープラの鈴木利男は好ダッシュを決めて、トップで1コーナーを通過する。これに続くのは、このレースから新型スカイラインGT-RとなったNo.2 ZEXELスカイライン、エリック・コマス。そして、予選3位のNo.100 RAYBRIG NSX、超ベテラン高橋国光もポジションをキープし、前のスープラ、GT-Rにきっちりと着いていく。
一方、新型になったスカイラインGT-R勢でもNo.12 カルソニック、No.3 ユニシアジェックス、No.556 KURE R33は予選でも苦戦し、決勝レースも周回遅れに接触、コースアウトするなど上位争いに加わることが出来ない。なかでもNo.12カルソニックスカイランは予選でスピンし、星野一義がタイムを記録できずに、屈辱の最後尾スタート。しかも、レースはオーバーヒートの兆候があって序盤にピットインを強いられ、ポイント圏内から完全に脱落した。だがエース・ドライバー星野一義は、それでも全力の走行で上位陣と変わらぬ1分49秒台を連発し、パフォーマンスは劣らぬことを観客にアピールしていた。 レース中盤の見せ場は規定のピットインをいかにこなすか。GTCでは、燃料補給とドライバーの交代のため1度は必ずピットインをする必要がある。どのタイミングでピットに入れるか、タイヤを交換するか否か、ピットワークをいかに速くするか。チームの総合力が問われるポイントだ。 まず動いたのはトップを行く、No.2 ZEXELスカイラインだった。31周目に上位陣の先頭を切ってピットイン。ドライバーを鈴木亜久里にチェンジ。42秒ほどの素早いピットワークを行う。35周目にNo.36、その次の周にNo.38、その次にNo.37とカストロール・スープラ勢が順次ピットインを行う。スープラ勢の平均的なピットストップは約50秒程度だった。
主な上位陣がピットインを終了した40周過ぎ。この時点でNo.2 ZEXELスカイライン 亜久里が再びトップに戻った。2番手にはNo.36カストロール・トムス・スープラのミハエル・クルムとなる。その差は、ピットタイムの早さなどが積み重なって約15秒に増えていた。序盤トップ争いをしたNo.37カストロール・トムス・スープラ(ドライバーは関谷正徳に交代)はさらに10秒ほど遅れて3番手。残り20周あまりで、トップのNo.2 亜久里が1分50秒前半から49秒後半をコンスタントに記録しているだけに、これで勝負あったと誰もが思ったところだった。 ところが、追うNo.36クルムはあきらめていなかった。49秒台前半、時には48秒台でじわじわと追い上げる。クルムの亜久里は追い上げを知るとペースアップを図る。が、徐々に50秒を切ることが出来なくなる。実は、気温の上昇を気にして安全策とハード気味のタイヤを選択したのが裏目に出たのだった。 前をふさぐ周回遅れをかわそうと無理をすると、No.2 亜久里のGT-Rのラップタイムがかなり落ちる。その度にNo.36 クルムとの差が確実に減っていく。
ラスト5周。ついにNo.36 クルムのスープラは、No.2 亜久里のGT-Rのテールにぴたりと着けた。ストレートスピードはほぼ互角。No.36 クルムが狙うのはコーナーしかない。まして、亜久里はタイヤに弱点がある。百も承知のNo.2 亜久里は、曲がらないクルマを巧みに操って、ブロックラインでクルムを抑える。それに対してアウトにインにと果敢に攻めるクルムとの手に汗握るサイド・バイ・サイドが展開される。
完全独走体制!つちやMR2がGT300初制覇 しぶとく2位のRS☆Rシルビアはランキングトップを譲らず 雨の予選で感激のGTC初ポールを獲ったNo.16 ダンロップ-BP-BMWだったが、なんとタイヤの空気圧を異常というトラブルがスタート直前で発覚。修理をすることも出来ずにスタートしたために、徐々に遅れ出す。 これに代わってトップに立ったのは、予選ではクラス5番手にとどまったNo.25 つちやMR2 土屋武士。今回からターボを搭載して登場したNo.25 つちやMR2はセッティングに手間取り予選はふるわなかった。だが、決勝日の朝になってベスト・セットが見つかり、1分54秒台と1台だけクラスが違うかのような速さをみせる。2番手のNo.81 ダイシンシルビア 木下隆之だが、1分55秒台中盤がやっとでNo.25を追うまでに至らない。 唯一No.25 つちやMR2に互角のスピードを見せたのがNo.19 RS☆Rシルビアだった。雨が苦手というシルビアは予選クラス8番手と低迷した。その上、珍しくベテラン福山英朗が他車を抜くときムリをしすぎて、レース序盤にスピンを喫し遅れてしまう。だが、No.25と同等の54秒台でポジションを挽回していく。 No.25 つちやMR2はエースの土屋武士でできるだけマージンを稼ぐ作戦。ピットインもギリギリまでガマン。タイヤ交換もせずにピット作業によるタイムロスを最小にとどめて長嶋正興にバトンタッチした。 40周を過ぎた後半戦。トップで逃げるNo.25 つちやMR2 長島は、35秒近いマージンを貰い、無交換のタイヤに無理をさせず56秒台で確実に走行。これを猛然と追い上げるのは、ランキングトップのNo.19 RS☆Rシルビア 織戸学とランキング2位のNo.26 タイサンスターカードRSR 新田守男という実力あるチーム。ともに1分54秒台を記録して、トップとの差を詰める。 だが、やはり序盤のマージンは大きかった。No.25 つちやMR2はゆうゆうと逃げ切り、GTC初優勝(長島にとっては全日本初優勝)を遂げた。これに続いて2位に入ったのはNo.19 RS☆Rシルビア。これでシリーズランキングトップの座を守った。3位にはしぶとく走りきったNo.26 タイサンスターカードRSRが入って、シリーズ後半戦にランキング逆転を狙う位置に着けた。4位は予選2番手の座を守りきれなかったNo.910 ナインテンポルシェ、5位には序盤健闘したNo.81 ダイシンシルビアが入った。
No.36 CASTROL TOM'S SUPRA Pedro De La ROSA & Michael Krumm ■ペドロ・デ・ラ・ロサ 「とにかくレースをフィニッシュすることが目標で、とくにアタックするようなつもりはなかったんです。序盤は前に竹内選手がいて、なかなか抜けなかったんですけど、チャンスは狙っていましたよ」
■ミハエル・クルム
No.25 TSUCHIYA MR2 Takeshi Tsuchiya & Masaoki Nagashima ■土屋武士 「ターボは日曜日になってなんとか調整がついてくれて、結果オーライというところですね。このペースだったら長島くんに貯金を残してあげられる状態でした。今までが全然ダメで、ターボがついてるとスピードが全然違う。クルマは全然問題ない。とりあえずタイヤはいいグリップで中段から抜けられた。ちょっと別の問題があって(笑)。スポンサーがね…。ミッションがひとつしかなくて、壊れた時点でリタイヤになってしまうので壊せない。今回、タイヤ交換はなしで走りきりました」
■長島正興
|