JGTC2000 JAPAN GT FESTIVAL
6.23-25 / SEPANG CIRCUIT
JGTC2000 SPECIAL STAGE
Preview


日本のレースとして初の海外進出/まさに世紀の一戦がマレーシアで開催
 今年ももう6月。日本だけでなく、世界中でモータースポーツ・シーズンたけなわという状況だ。今、そのなかでも注目を浴びているのが、6月24、25日にマレーシアのセパンF1サーキットで開催される"JAPAN GT FESTIVAL in MALAYSIA"なのだ。
 この"JAPAN GT FESTIVAL in Malaysia"は、AUTOBACS CUP全日本GT選手権(JGTC)シリーズのスペシャル・イベントであり、JGTCに参加するチーム、ドライバーから選抜された25台50人+アルファが、F1世界選手権も開催されるアジア有数のサーキット、セパンを舞台にJGTCレギュラーレースさながらの熱いバトルを展開するものだ。
 世界的な不況の最中、モータースポーツを取り巻く環境も厳しい。だが、日本のファンの声援を受け、JGTCはその中でも大きな成果を挙げている数少ないレースと言える。そのJGTCが、いま伸び盛りの東南アジアのマレーシアでレース・イベントを行うとなれば、国内はもとより世界的にも注目を浴びることになる。マレーシアのクアラルンプールで行われた記者会見には日本大使やマレーシア観光大臣らも列席し、近隣諸国のメディアを多数集め、インターネットを通じて香港などのメディアからも問い合わせが届くなど、元気を取り戻しつつあるアジアを象徴するイベントになりつつあるようだ。
 もちろん、日本のモータースポーツ界、自動車業界においてもエポック・メイキングな出来事になるだろう。当然、日本のモータースポーツ・イベントが海外で開催されるのは史上初の出来事。文化としての自動車を輸出するというのは、日本の自動車関連産業においてもかなりの関心を得ている。これをきっかけにアジアや海外諸国と新たな架け橋ができるのではと期待する声も多いだけに、一スポーツイベントとして以上の注目度なのだ。


敵はライバルでなく、コースに気候?!/チームの総合力が試されるレースになる

 さて、周辺事情はそのくらいにして、レースとしての注目点はどこだろうか。
 まず、舞台となるのは、F1も開催される国際レースコース、セパンF1サーキットだ。コースは全長5.542kmとかなり長い。V字に配される2本のストレートを中心にさまざまなコーナーを巧みに配置しており、とてもテクニカルといえるレイアウトを持っている。元々F1をメインに想定して作られた最新のサーキットだけに、コース自体はやや高速寄りでダイナミックな感じを受ける。
 今回は、これまでのGTオールスター戦同様に、シリーズ戦のウエイトハンディは搭載されずに、マシン本来の性能で闘うことになる。となれば、現在JGTCマシン"最速"を誇り、フォーミュラ・ライクと称されるNSXにとっては、格好のサーキットといえよう。一方で、ハード・ブレーキングを必要とするコーナーも多く、この点ではブレーキ・バランスに秀でるスカイラインGT-Rに歩があるか。また、こういった総合力勝負のサーキットにおいてはスープラも悪いとは言えない。
 そういった車種との相性というより、もっと重視しなければいけないのが、マシンのセットアップ能力だろう。JGTCのドライバー、マシンにとって、このコースは当然初のチャレンジ。どのチームが、ドライバーがいち早くこのコースに対してベストなセッティングを見つけられるかが、勝負の鍵を握りそうだ。そして忘れてはならないのが、マレーシアの気候だ。この時期は暑さもかなりのものが予想され、スコールのようなにわか雨も考えられる。そう考えると、居住性、操作性、耐久性に問題を抱えるマシンは、明らかなハンデを背負うことになる。こういったことを考え併せると、一概にNSXユーザーのチームが有利とは言いにくい。さらに、セパンはコース幅が広く、高速からのブレーキングが勝負になるコーナーが多い。ゆえに、決勝レースではコーナーでの激しいバトルシーンも数多く展開されそうだ。
 ともあれ、まだ本格的なGTマシンが走ったことのないサーキットだけに、どんなレース展開になるかはまったく予想がつかないと言っていいだろう。もちろん、ドライバーにとっても、それは同じ。いち早くコースの特徴を把握し、それに併せたマシン・セッティングが行えるか、またドライバーのインフォメーションを早く正確に反映できるかというエンジニア、メカニックたちのテクニックも問われることになる。こういった側面からも注目してみたいレースなのだ。

 例年のGTオールスター戦と違い海外のサーキットで開催ということから、生観戦はできないというファンも多いと思う。だが、シリーズ戦同様にTV放映も行われ、このGTインターネットでも、速報体制を組んで現地セパンからリアルタイムに情報を提供していく予定だ。期待して待っていてくれたまえ。

GTインサイドレポート班
Report by GT INSIDE REPORT TEAM


Special
JAPAN GT FESTIVAL in MALAYSIA直前特集


JAPAN GT FESTIVAL in MALAYSIAに向けてひとこと
 話題を呼んでいる"JAPAN GT FESTIVAL in MALAYSIA"(6/24,25)の開催ももう間もなくだ。そこで、GTインサイドレポートでは、出場予定チーム、ドライバーの何人かに、セパンに向けての話をきいてみた。


エリック・コマス(No.1 ロックタイト・ゼクセルGT-R)
「海外で行われるJGTCのレースに出られることをうれしく思っています。いつも言っているようにボクはJGTCを心から称賛しているので、6年目になるJGTCのレースが海外で開催されることを喜んでいます。選手権の将来は徐々にその方向にいくと思う。それと、サーキットの選択はいいレースのために絶対不可欠な要素だけど、セパンは凄いサーキット。ボクはセパンを走ったことがないけど、やらなければならないのは素晴らしいレースをすること。もちろん優勝できればいちばんいいけど、選手権ポイントがつかないので結果のプレッシャーなしに走れる。みんなリラックスしていいレースになるでしょう」

片山右京(No.2 カストロール・ニスモGT-R)
「F1の仕事で見にいったことはあるんですけど、ずっとパドックにいたのでコースはわかりません。印象に残っているのはともかく暑いっていうこと。こんなところでレースするのかって。クールスーツをダブルで着ないと(笑)。でもこれからはアジアにどんどんいったほうがいいと思います」

野田英樹(No.6 エッソウルトロンタイガースープラ)
「選手権じゃないし、オールスターのようなレースだから楽しいレースができればいいと思います。暑さは好きじゃないですよ。でもみんな同じ条件だし、ガードナーが体力あるからガードナーにいっぱい走ってもらいますよ。まあ大丈夫でしょ。F1のレースをやるようなサーキットだから、そういう意味ではどういうサーキットかなって楽しみな部分はありますけどね」

土屋圭市(No.8 ARTA NSX)
「セパンはいったことないしコースも知らない。下調べもしてないよ。オレと亜久里は5〜6周すればわかるから。アジアに出ていくことに関してはいいことだと思う。日本はアジアのなかでは先進国だし、『クルマのレースっておもしろいよ』っていうことを見せないと。各国とも国内レースはやっているだろうけど、その国内のレベルしかわからない。その点、日本のGTはかなりレベルが高いので、それを見せればびっくりすると思う。オレらが見せるのは、やっぱりアグレッシブなレースだろうね。こんなにカッコいいクルマがレースしているんだっていうのを見せてあげたい」

星野一義(No.12 カルソニックスカイライン)
「ドライバーとしては、初めてだからとかなんとかじゃなくて、自転車借りてでも歩いてでもコースを見てどう走るか考えて、とにかく全力をつくすのが仕事だし、オレはそうするよ。お祭りイベントとかどうとか関係ない、レースはレースだからね」

近藤真彦(No.32 cdmaOneセルモスープラ)
「セパンにはいったことないけど、フジテレビのF1スタッフから『キレイだ、キレイだ』と聞いているので楽しみだね。レース自体はどこでやってもオレにとっては同じ。走ってしまえば1台でも抜こうっていう気になるし、前を走ろうと思うから。今後のJGTCのことを考えると今回のようなイベントは1回で終わらせたら意味がない。ずっと続けてほしいよね。1回きりのイベントっていうのはどうしても国内(日本)向けになっちゃうし。ボクもレースの仕事じゃなくて芸能界のほうの仕事でアジアでコンサートをやったことがあるけど、1回だけだとどうしても日本向けになると感じた。たとえば香港なんかにいったら向こうのマスコミも騒いでくれるよ。だけど、それを継続しないと意味がない。だから何回も続けていったし、そうすることで初めて向こうのファンも本当に受け入れてくれた。GTにも同じことがいえると思う」

伊藤大輔(No.64 Mobil 1 NSX)
「クルマは99年仕様を持っていくので、どこまで通用するかわからないんですけどね。プレイステーションのF1のゲームで道上選手と一緒に練習したんですけど、なかなかむずかしいコースで、けっこうトリッキーなコーナーもあるのでセッティングはむずかしそうですね。暑さはなんとかなるでしょう。うわさによるとけっこうきびしそうですけど、みんな同じ(条件)ですからね。クルマが壊れる前にドライバーが壊れないようにしないと(笑)。楽しみにしています」

雨宮勇美代表(No.7 RE雨宮マツモトキヨシRX7)
「パンフレットにウチのクルマの写真を使ってくれてるらしいね。モータースポーツの発展のためにがんばりますよ」

坂東正明監督(No.19 ウェッズスポーツセリカ)
「お祭りなので、勝負ということは考えてません。来てくれたお客さんに、いいレースを見てもらえればいいかな、と」

千葉泰常監督(No.26 シェルタイサンアドバンGT3R、No.28 イクリプスRDタイサンGT3R)
「セパンは、クライスラーからエンジンを持ってきてバイパーで出ます。ル・マン帰りで福山選手と、東南アジアのスター選手を起用したいと考えています。バイパーでの参戦について日本人選手との契約は入っていないし、オールスター戦なんで向こうの人にチャンスを与えてあげたい。メカとドライバーはル・マンから火曜日に移動して水曜にセパンに入り、早めに気候に慣れさせようと考えています。セパンへは2月の27〜28日にベントレーのイベントがあり、サーキットの立地やすばらしさを見てきました。やるからには何年も続けたいですね。ポルシェクラブがあり、ファンも多い。ただ、気温40度の炎天下の条件でコースも滑りやすいんです。ボクもベントレーで突っ込んだぐらいだからね(笑)。150kmの2ヒートでやるとか、見せるレースをやったほうがいいね。ドライバーもマシンもたいへんですよ。壊したら意味ないでしょう。98年にタイとマレーシアのモーターショーがあってクルマを9台持っていったら、暑すぎてゴム関係のパーツが溶けたり、考えられないトラブルが起きたんです。コンテナでクルマを運ぶと温度上昇がすごいですからね」

長谷川勇監督(No.31 スーパーオートバックスアペックスMR-S)
「マレーシアにいくのはいいことだと思う。東南アジアのモータースポーツの発展に寄与していくんじゃないかと、われわれはそう思っています。よくいえばモータースポーツの基礎を作っていくことになるんじゃないか。向こうはチーム体制がまだまだ貧弱で日本ほど整っていない。アペックスでは2〜3年前から東南アジアのツーリングカーシリーズ戦に出ている台湾のA1というトヨタ系のチームや香港のチームに、技術的な協力をしたり技術者を定期的に派遣するなどして地道だけど向こうのモータースポーツに協力していますよ」

加勢裕二代表(No.77 クスコスバルインプレッサ)
「ウチは社員チームなんで、チームの慰安旅行ですよ(笑)。メカはいつもと同じメンバーで、あとはくっついて遊びにいこうとしている人が増えそうです。マレーシアラリーもいったことあるし、チョコチョコ知りあいもいるんです。(ラリーだけでなく)レースをやってることをアピールしたいし、ビジネスにも広げたい。レースそのものは3年目だけど1年生の気分でいろんなサーキットで経験を積みたい。気温はラリーから比べれば(ラク)。(ラリーでは)あの服(レーシングスーツ)着て20時間走らなきゃいけないこともある。経験してないですからラリーとは違うむずかしさはあるだろうとは思いますが、日本の夏を走れればだいじょうぶですよ。たしかに温度は高いし暑いですけれど、隣のタイのラリーでナビをやったことありますし、メチャクチャな違いはないでしょう。まずは楽しもうということ。ちょうど去年海外ラリーはいってないんでね。オールスターV2ですからV3めざしたいですよね。ガソリンの質が違うのでエンジンのセットで悩むんじゃないかな? さいわいウチには、マレーシアにしょっちゅういってるSTIのエンジニアがいる。強い味方です。人間の暑さ対策は飲み物をきらさないことですね。クルマそのものは冷えすぎるぐらいよく冷えるんでね」

高橋国光GT-A会長
「われわれはここ数年GTレースに慣れているというか、その流れのまっただなかにいるわけです。短いなかで急成長しているレースということで、エントラントの気持ちがGT-Aのほうに集まっているからこそ可能になったマレーシア大会だと思います。それを考えるとJGTCの成長ぶりは凄いですね。GT-Aのモータースポーツに対するひたむきな熱意がかたちとして表れた。日本のレースが海を渡るというのは日本のモータースポーツ史上で大きな出来事じゃないでしょうか? トヨタ、日産、ホンダからマクラーレン、ランボルギーニなどのプライベーターまで、クルマがまとまっているからレースが成り立っていて、見ても走っても楽しいものになっていると思います。これを日本だけでなく海外でやることでわれわれの意識も高まるんじゃないでしょうか。レースをプロフェッショナルな気持ちでやっているということが表明できると思います。
 ボク自身は25年ぐらい前に3回ほどマレーシアにいったことがあります。当時も日本ではレースが好きな人は大勢いましたが、マレーシアにも同じようにいましたね。たしか観客もかなりいたという記憶があります。印象に残っているのは暑かったこと。それと食べ物がいろいろあって、人種がいろいろあってということですね。対日感情はすごく良かった。先日、下見というかたちでセパンにもいきましたが、いまは昔なかった高速道路が整備されていたり、クアラルンプールには伊勢丹やジャスコなど大きなデパートもあって、日本に見習おうという感じだと思いました」