2001 AUTOBACS CUP ALL JAPAN GT CHAMPIONSHIP Round1
GT CHAMPIONSHIP in TI
4.14,15 TI Circuit AIDA
RACE RESULT 2001-04-15

決勝レースレビュー

激しいレースをチャンピオンが制する!
ロックタイト無限NSXがプライド示すポール・トゥ・ウィン
GT300はARTA・アペックスMR-Sが世紀をまたいでの連勝


No1 NSX


 今世紀最初のJGTCが開かれた週末。勝負を司る女神は、昨年少し意地悪をしたチャンピオンに、お詫びのご褒美をあげたかのようだった。

 4月15日、好天に恵まれた岡山県・TIサーキット英田でAUTOBACS CUP全日本GT選手権(JGTC)開幕戦の決勝レースが行われた。
 午後2時ちょうど、気温23度、路面温度32度、快晴のという好コンディションの中、定時に決勝レースがスタート。ポールのNo.1 ロックタイト無限NSXのスターティングドライバーとなったのは、光貞秀俊だった。好スタートを決め、リーダーポジションを守ったまま1周目を終えた光貞だったが、その背後には牙をむき出しにしたライバルたちが迫っていた。ことにチャンピオン奪還を狙い、この決勝に自信を持っていたNo.23 ペンズオイルゼクセルGT-Rのエリック・コマスと、同じNSXユーザーであるNo.64 Mobil 1 NSXのドミニク・シュワガーのアタックは強烈を極めた。序盤は3台がテール・トゥ・ノーズでしのぎを削る闘いが続く。そして9周目に周回遅れに掛かる隙をコマスに突かれ、光貞は首位を明け渡した。


■チャンピオン・チームの自信あるレース展開
 だが、光貞はまったく動じていなかった。それには訳がある。彼は予選をエースの道上龍に任せ、TI入りしてからは決勝で闘えるマシン・セッティングだけをチーム・スタッフと練り上げていたからだ。「あそこはしょうがなかった。無理すれば周回遅れを飛ばしてしまうかもしれなかったし。抜かれてもコマスと自分のスピードは変わらなかったから、チャンスは必ずあると思っていた」。その光貞の言葉通り、チャンスは20周目に訪れた。コーナーでコマスの背後に着いた光貞はバックストレッチで並び掛ける。そしてGT-Rの真横に出たときだった。彼の進路には他車の落とした破片があった。「行くしかない!」。幸いにもはじき飛ばした破片でダメージを受けることはなかった。これは、勝負の女神のひいきだったのかもしれない。一方で、同じ破片を踏んだNo.64 Mobil 1 NSXはブレーキ冷却ダクトにこの破片の一部が張り付き、終盤ブレーキパワーの低下で苦しむことになったからだ。
 これで首位を奪い返した光貞は、再度守る立場になるかと思われたが、今度はコマスが苦しむ立場となった。首位から陥落したとたん、GT-Rのラップタイムが一気に落ち始める。左リアタイヤにトラブルが起こったらしく、マシンの挙動が安定しない。このままペンズオイルゼクセルGT-Rは首位戦線から脱落し、2度と上位争いに加わることはなかった。僚友の脱落と入れ替わるように、首位争いに加わったのはNo.22 ザナヴィヒロトGT-Rのミハエル・クルムだ。マシンは好調というだけに、前をゆくNSXにぴたりと付いていく。序盤のトップ争いはNo.1、No.64そしてNo.22が展開していく。


■予選10位から大躍進のARTA NSX
 この上位陣のつばぜり合いを後目に、後方から追い上げるマシンが3台あった。まずは、予選10位のNo.8 ARTA NSXの金石勝智だった。「予選での問題は分かっていたから、決勝は大丈夫」という言葉通り、着実に順位を上げていき、23周目には3番手となった。そして、No.100 RAYBRIG NSXの伊藤大輔のペースも凄まじかった。伊藤はスタート直後に中段で起こったクラッシュに巻き込まれ、1周目を終えた時点ではGT300よりも後ろの31番手まで後退してしまった。そこから猛然と巻き返す。5周目にはこの日のファステスト・ラップ(1'28.747)を記録して、33周目には5番手にまでポジションを復帰させる。
 また、この決勝での勝負に自信を持っていたのがNo.38 auセルモスープラだった。スタートドライバーを努めた竹内浩典は、ハード目のタイヤを選択し、序盤は無理せず上位陣がタイヤを痛めるころに巻き返す作戦だった。それはほぼ目論み通りに進み、32周目には4番手に浮上。さらに表彰台圏内に入ってから、次の立川祐路にトップ進出を託す予定だった。だが、彼らには勝負の女神はつれなかったようだ。37周目の最終コーナー入り口で突如マシンがコントロール不能になり、スピンしながらコースアウト。マシンはひっくり返った形でグラベルに止まった。一瞬、冷や汗を感じるアクシデントだったが、竹内は自力でクルマから脱出して事なきを得た。だが、彼らの勝負ここですべて終わってしまったのだった。
 No.38のアクシデント処理のため、37周から41周までペースカーの先導によるパレード・ラップとなり、トップをいくNo.1 ロックタイト無限NSXを始め、この機会にと各車が続々とピットに入る。このため、このレースではピットワーク勝負はさほどポイントにはならずに後半戦へと突入した。

 後半戦、勝利を争うこととなったのはトップのロックタイト無限NSXの道上、そしてARTAのドリキンこと土屋圭市の2台のNSX、そしてザナヴィヒロトGT-Rの田中哲也だ。
 だが、ここからチャンピオンであり、NSXのエースである道上の真骨頂が発揮された。 周回遅れに掛かり多少ペースの落ちたときこそ、2番手ドリキンに迫られるが、それでも1秒台前半には近づけることはない。ドリキンも他が1分30秒台に対して、29秒後半というハイ・ペースなのだが、道上はそれを上回る28秒台という、レース序盤並の超ハイペースで首位を走る。しかも、周回遅れの処理も巧みにこなす。こうなってはさすがのドリキンもお手上げ、いや、それでもワンチャンスを信じてその差4秒前後をきっちりキープしていった。
 だが、ドリキンの願いに女神は振り返ることはなかった。道上はロックタイト無限NSXを無事にゴールラインまで運び、自身にとって1998年の最終戦以来のJGTC通算3勝目を、光貞にとっては、99年の第6戦以来の2勝目を挙げた。
 昨年、道上は無冠の覇者と言われ、未勝利ゆえにその実績にはいろいろと意見が付いて回った。だが、世紀を跨いだこの勝利には、覇者としてのプライドと実力が存分に感じられるものだ。だからこそ、勝負の女神も彼らに微笑んだのだろう。

■3位争いの激戦はヤングタイガーが制す
 さて、終盤激しかったのは3〜5番手の争いだった。一時はトップ争いにも絡んでいたザナヴィヒロトGT-Rの田中だったが、終盤に来てペースが保てない。徐々に後続に追い上げられる。その表彰台最後の席を狙ってMobil 1 NSXの松田次生、No.39 デンソーサードスープラGTのジェレミー・デュフォア、RAYBRIG NSXの飯田章が近づいてきた。ところが、飯田はペースカー走行後の再スタート時の追い越し違反でペナルティストップで脱落。デュフォアはなんと無線の混信で自分もペナルティと勘違いして、ピットに戻ってしまうという珍プレーをしでかしてしまう。これで、3番手チャレンジャーとして残ったMobilの松田が、GT-Rの田中を攻め立てる。だが、ベテラン田中は、若干21歳にして今季初めてNSXを駆る松田に付け入る隙を与えない。だが「ワンチャンスを狙ってました」という松田に、女神は手を貸した。ラスト3周。松田は何とかGT-Rのインに潜りこみ、サイド・バイ・サイドに持ち込んだ。その時、コースのダストに乗ったGT-Rはわずかに加速が遅れた。これで、勝負あり。この結果、開幕戦TIサーキット英田の表彰台は、3台のNSXドライバーに占められることになった。

 5位には、中位陣の混戦からしぶとく生き残ったNo.37 マツキヨZENTスープラ(山路慎一→ガードナー)が入り、これがスープラの最上位となる。このほかスープラ勢では、No.6 エッソウルトラフロースープラの脇阪寿一が序盤5番手を走ったが、少々無理なパッシングで他車と接触して、リタイアとなった。だが、auセルモスープラにしても、このエッソにしても決してNSX、スカイラインにスピード面、パワー面で劣ったという状況ではなかった。次戦の舞台となる富士スピードウェイは、昨年11月に新たにトヨタ傘下に入ったサーキット。いわばホームコースでの初レースであり、スープラドライバー、関係者も富士での必勝を、前々から公言している。この一戦、今から楽しみである。


No31 MR-S

■不運の雨宮RX7が大健闘
 GT300クラスも結果から言えば、No.31 ARTA・アペックスMR-Sのポール・トゥ・フィニッシュ。昨年の最終戦鈴鹿に続く2連勝となった。所定のピットイン時以外は首位を譲ることのない完勝だが、その内容は決して楽なものではなかった。特に終盤、高木がドライブしていたときは、オーバーステアがきつく出ていた。このため、一時、2番手のNo.77 クスコスバルインプレッサの小林且雄に2秒差まで迫られた。だが、追うクスコインプレッサもミッションにトラブルを抱え、コーナーリングマシンの本領を発揮しきれず、アペックスMR-Sを逃がしてしまう結果となった。

 このGT300で観客をもっとも沸かせたのは、No.7 雨宮マツモトキヨシアスパラRX7だろう。このレースで、予選から好調だった雨宮RX7は予選2位と好位置につけ、アペックスMR-Sを脅かす存在だった。だが、スタート直後に発生したGT500集団のスピンを避けるために、ダートに飛び出さざるを得ず、クラス13番手まで落ちることになる。ここから雨宮RX7の山野が猛然と追い上げを開始する。そして、わずか16周で4番手まで復帰し、中盤のペースカーラン以後は3番手につけ、クスコインプレッサを追いかけた。だが、結局追いきれずに3位でのフィニッシュとなった。『たら・れば』は言いたくないが、雨宮RX7がスタートのアクシデントに巻き込まれなければ、アペックスMR-Sとかなりの接戦を展開し、ひょっとしたら勝者は違っていたかもしれない。次戦富士では、RE雨宮レーシングはニューシャシーを投入予定と言うことで、今後の闘いに期待したいところだ。

 このほか、ディフェンディング・チャンピオンのNo.26 シェルタイサンアドバンGT3Rは、序盤3番手を走行していたが、他車との接触でリアのカウルを破損するなど、アンラッキーな面が響き、結局4位と表彰台に届かなかった。また、今季GT300初挑戦のハセミ・モータースポーツのNo.3 ユニシアジェックスシルビアは、金曜日にマシンが届き、それから初走行という苦境ながら、しぶとく走りきって6位入賞という好結果を手にすることが出来た。


 このように結果だけふりかえるならGT500、GT300両クラスともにポールからの逃げ切り勝利だが、その中身は極めて厳しいものだった。もちろん、単に運が良かった訳ではなく、やはり勝なりの実力だったのは事実だ。だが、同時に今後のシリーズがいかに激しいものになりそうな予感を持たせるレース内容だったのも、これも確かな事実であろう。



GT500 Winner
No.1 ロックタイト無限NSX
道上 龍「今日は前半、光貞さんがNo.23(ペンズオイルゼクセルGT-R)に1回抜かれたけど、抜き返して差もつけて戻ってきてくれた。セーフティカーが入って、ピットに入ったタイミングもよかったと思う。No.8(ARTA NSX)が速いのはわかっていたんで、セーフティカーランのあいだに思いきりタイヤを温めて、解除になったあとの前半に逃げようと思っていて、実際に猛ダッシュした。その後はけっこうタイヤもきびしくて土屋さんをチギることはできなかった。途中はペースを上げずに、詰められたときにがんばれる余力を残しておいた。ラップ遅れのタイミングで差は縮まったり広がったりしてたけど、気を緩めたら抜かれるだろうし、最後まで集中してがんばった。速さもみせて、優勝できて、公約どおりのことができたと思う」
光貞秀俊「コマス(No.23)に抜かれたときは、周回遅れがからんでいてどうしようもないシチュエーションだった。あそこでいかせないためには周回遅れをリタイアに追い込むしかなかったんで、人をリタイアさせてまで自分のポジションを守ろうとは思わなかったよ。抜かれた後もコマスとそれほどスピードは変わらなかったので、自分も逆に同じようなチャンスがあるだろうと思って待っていた。抜き返したときは、『いくしかない!』と思っていった。カウルが落ちてるのはわかってたけど、カウルだから大丈夫だと思ってた。そういう意味でウチは今回はラッキーかもしれないね。タイヤは気温がちょっと上がっているんでツラかったけど、それを考えて対策してあったんで、うまく使えたかなぁと思う」



GT300 Winner
No.31 ARTA・アペックスMR-S
新田守男「クルマは問題なかったです。序盤でいかないと後半がきついのはわかっていたんで、ちょっとでも逃げて後半にペース保ちこたえられるようにしたかった。ポール・トゥ・ウインできて最高ですね」
高木真一「苦しかった。すごくオーバーステアが出てた。後ろから追ってくるのがわかってたんで、ちょっとのミスでも抜かれるんでスピンしないように気持ちを抑えて抑えてと、自分に言い聞かせて走りました。プレッシャーはすごかったですよ」




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