2004 Round5
MOTEGI GT CHAMPION RACE
2004.9.4, 5 / TWIN RING MOTEGI

2004Round5Race Review

2004 第5戦 決勝レースレビュー
2004-09-05
Review

ウエットからドライに、時折小雨の降る難しい状況

巧みなレース展開でNo.32 EPSON NSXが2年ぶりの優勝を果たす

エッソ、ザナヴィの最後の猛追は届かず…

2004年AUTOBACS全日本GT選手権(JGTC)第5戦「もてぎGTチャンピオンレース」の決勝レースが、9月5日に栃木県・ツインリンクもてぎで開催された。時折小雨の落ちる微妙な天候の中、No.32 EPSON NSXが快走し、優勝した。GT300クラスはNo.43 ARTA Garaiyaが前戦に続いて連勝を果たした。

GT500

 決勝開始は14時。朝のうち激しく降っていた雨はレース前に上がったが路面は濡れており、各チームは直前までタイヤ選択に悩むことに。けっきょく、GT500、GT300両クラスともほぼ全車が浅みぞのウエットタイヤを装着した。ただしNo.19 ウェッズスポーツセリカはスリック装着のギャンブルに出た。スタート直前の気温は22度、路面温度は25度。

 朝のフリー走行でクラッシュしたNo.38 auセルモスープラと、GT300クラスのNo.9 ADVAN K-STUDIUM MTはピットスタート。またフォーメーションラップ開始時にエンジンがかからなかったNo.88 JLOCムルシエRG-1は最後尾からのスタートとなった。
 スタート直後の1コーナー、上位は予選順位順に飛び込んでいく。2周目、4番手グリッドだったNo.25 ECLIPSE ADVANスープラ(織戸学)がコースアウト。ポジションを落とす。一方8番手スタートのNo.32 EPSON NSX(アンドレ・ロッテラー)は5番手までジャンプアップする。

 トップのNo.35 イエローハットYMSスープラ(脇阪薫一)は、2番手No.1 ザナヴィ ニスモZ(本山哲)との差を5周目までに5秒以上に開く。しかし9周目、1コーナーで姿勢を乱してコースアウト。No.32の後ろ、4番手でコースに復帰する。No.32は同じ周の90度コーナーでNo.6 エッソウルトラフロー スープラ(飯田章)をパス。これで3番手となったNo.6に、次の周の1コーナーでNo.35が並びかけ、3コーナーまで並走する。だが、ここでラインが苦しくなったNo.35を、後ろからNo.37 DYNACITYトムス スープラ(ジェームス・コートニー)がつつくかたちになり、たまらずNo.35はスピン。大きくポジションを落としてしまった。
 これでトップはNo.1、2番手がNo.32。11周目の1コーナーではNo.32がNo.1のインに並びかけるがここではNo.1がトップをキープ。次の周の1コーナーではNo.37がNo.6をパス。3番手に上がる。同じ周の90度コーナーではNo.32がNo.1を攻略し、ついにトップに躍り出る。ペースの上がらないNo.1は12周目の1コーナーでNo.37にもパスされ、3番手にダウン。No.32ロッテラー、No.37コートニーと、若手が濡れた路面コンディションで1-2に。
 19周目、今度はNo.6がNo.1をパス。しかしNo.6はそのあとコーナー出口で失速し、No.1が軽く追突。この2台をNo.36 WOODONEトムススープラ(土屋武士)がかわし、いったん3位に上がる。しかしNo.6は次の周にポジションを回復。No.1は21周目にはNo.12 カルソニックIMPUL Z(ブノワ・トレルイエ)にもパスされる。これでトップ3はNo.32、No.37、No.6の順となるが、23周目、No.36がNo.6をパス。一度失った3番手を奪い返す。

 25周目、この時点で12番手に下がっていたNo.35がピットイン。タイヤをスリックに交換、ドライバーも服部尚貴に交代して出ていく。27周目、No.37がNo.32をパス。トップに上がる。No.32陣営はウエットタイヤでの走行はこれが限界と見て29周目にピットイン。スリックタイヤへの交換と松田次生へのドライバー交代を行う。これで1-2となったトムスの2台は30周目にNo.37、31周目にNo.36の順でピットイン。やはりタイヤ交換と、片岡龍也、マルコ・アピチェラへの交代を行うが、No.36のアピチェラはアウトラップの1コーナーでコースアウト。9番手までポジションを落としてしまう。
 これで暫定的にトップに立ったのはNo.100 RAYBRIG NSX(加藤寛規)。もはやウエットタイヤは限界に達していたが、このころからポツポツと雨が落ち始めたため、チームでは交換するタイヤに迷い、さらに6周引っぱる。けっきょく雨はそれ以上降ることなく上がり、37周目、やはりスリックに交換。ドライバーは中野信治に代わる。
 これでGT500クラスは全車ピット作業を終了。トップがNo.37(片岡)、2番手No.32(松田)、3番手No.6(脇阪)となる。4番手には一度大きくポジションを落としていたNo.1が、タイヤを新品に交換してからペースを取り戻して復帰してきた(ドライバーはリチャード・ライアンに交代)。

 40周をすぎるころからトップのNo.37にNo.32が徐々に接近。43周目にはいったん並びかける。この接近戦に決着がついたのは48周目。周回遅れに詰まったNo.37をNo.32がパス。トップを奪う。No.37はその後No.32のペースについていけず、54周目にはNo.6、56周目にはNo.1の先行も許すことに。これでトップ3はNo.32NSX、No.6スープラ、No.1フェアレディZの順。この3台はそれぞれ2秒前後の差となるが、トップをいくNo.32松田が粘りの走りをみせ、それ以上の追撃は許さなかった。
 63周を走り終わってチェッカー。2002年の最終戦以来となるNo.32 EPSON NSXの優勝は、今季これまで苦しんでいたNSXにとって光明をもたらすものとなった。2位に入ったNo.6 エッソウルトラフロー スープラの脇阪/飯田組はこれでシリーズランキングトップに浮上。3位のNo.1 ザナヴィ ニスモZ、本山/ライアン組が1ポイント差でランキング2番手となった。


GT300

スタート直後のスピンを速さでリカバー

ARTA Garaiyaが十勝に続いて連勝を飾る!

M-TEC NSXは2位となり、ランキングトップを守る

 GT300クラスは、予選でワンツーだったNo.81 シーウエストダイシンアドバンZ(柳田真孝>尾本直史)、No.80 エンドレスダイシンアドバン Z(星野一樹>木下みつひろ)の2台が序盤で後退。選んだタイヤが、路面コンディションに合致しなかったようだ。予選4番手だったNo.43 ARTA Garaiya(新田守男>高木真一)もオープニングラップの1コーナーでコースアウトしポジションを下げる。
 代わって上昇したのがダンロップタイヤを履くNo.52 プロジェクトμ太陽石油セリカ(竹内浩典)とNo.16 M-TEC NSX(山野哲也>八木宏之)。10周目にはNo.16がNo.52をかわそうとするがコースアウト。代わって2番手に上がったのは、予選20番手から猛ペースでポジションアップしてきたNo.2 プリヴェチューリッヒ・クムホNSX(渡辺明>高橋一穂)。クムホタイヤも微妙な路面にぴったり合っていたようだ。No.2は、13周目にNo.52がスリックタイヤへの交換でピットに入ったため、ついにトップに。10周にわたってこのポジションをキープするが、これを逆転したのが、急速に失地を回復してきたNo.43だった。
 No.43は22周目にトップを奪うと次の周にピットイン。タイヤをスリックに換えコースに復帰する。No.2はピット作業を終えたあとコースアウトを喫しポジションダウン。代わって上がってきたNo.63 LEYJUNダンロップ320R(OSAMU>吉本大輝)、No.77 クスコスバルADVANインプレッサ(谷川達也>小林且雄)もマシントラブルなどで下がってしまう。

 これでNo.43はラクになり、2番手を回復したNo.16に対して大きなマージンを築きトップでチェッカー。前戦の十勝に続いて、JGTCでは難しいという連勝を果たした。2位はNo.16、3位には予選6番手から着実なレースをしたNo.10 JIM GainerアドバンF360(余郷敦>田中哲也)が入った。
 この勝利でNo.43 ARTA Garaiyaの新田守男は、GT300通算11勝目と単独最多となった。また、新田/高木組はランキング2位となり、トップNo.16 山野/八木組との差を7ポイントとし、残り2戦でのチャンピオン争いが厳しさを増しそうだ。


GT500 優勝

No.32 EPSON NSX

アンドレ・ロッテラー「すごくいいレースができたと思います。スタートしたときから回りより自分のクルマが速いとわかったので、うまく抜くことができました。コーナーのイン側にかなりスリッピーなところがあったので、スピンしないように気を使いました。ジェームス(*37)は途中からかなり追い上げてきて、こちらはスローパンクチャー気味でした。確かに彼はかなり速かったです。(トップを)守るのは厳しかったです。でも、引き継いだ松田がいいレース運びをしてくれたので、本当に良かったと思います」
松田次生「ドライでは、走り始めからトップを穫れるという気はなかったです。ウエットでは朝のフリーでも良かったし。ボクが走り始めるまでは降ってくれって思ったんですが、晴れちゃって。ボクが代わったときには『これは結構つらいよなぁ〜』って(笑)。でも、(今回)エンジンも良くなってきてるし、シャシーもエンジニアが良くなってきているんで、自信持って行こうと。片岡選手(No.37)に前に行かれていたんで、プッシュプッシュでした。それで(No.37に)追いついて、どこでかわそうかと考えて。濡れているところもあったんで、なるべく滑らないところで行こうと。それでうまくかわせて、あとはペースを挙げたかったんですけど、ユーズドタイヤで出たんで、残り10周は後ろに追い上げられてしまいました。でも、コースアウトすることなく、ミスすることなくいけば勝てる自信はあったんで、うまくいきましたね。(ゴール後は)泣けてきましたね(笑)。このところ勝てなかったし、もうみんなにダメ(勝てない)って言われてね。ホンダさんの力、チームの力、そしてアンドレの力とみんなが一丸となったから今回の優勝は穫れたんじゃないかと思います。それで、ボクが代表でチェッカーを受けたわけで、感動できたし涙が出ました。今後も、まだまだやることはたくさんあると思います。それでチャンピオン穫れるなら穫りたいですし、それでなくても少しでも上位でゴールできるようがんばりたいです」

GT300 優勝

No.43 ARTA Garaiya

新田守男「連勝は期待はしてましたが、こんなにうまくいくとは思いませんでした。正直、こんなコンディションでしたが、タイヤ選択や作戦がいい方向に行ったんで、皆さんに感謝しています。今年は1勝で終わりかなと思ってましたから。でも通算11勝目ということは、それだけ皆さんにボクを使っていただいたということですから、だからすべてのスタッフの方に感謝しています。コースアウトは、ペースを落としていたつもりなんですけど、チョイスしたタイヤがかなりハードで、8分のフリー走行とスタートしてからの感触がすごくて違ってしまって、ボクがミスした形になりました。ただ、そのあとのペースはボクたちが思っていたペースにほぼなったので、あの段階であわてることはありませんでした。今回は、ボクが経験した中ではサファリラリー以来の悪コンディションでした(笑)。普通に走っていても前が見ないくらい、ものすごく泥がウインドウに付いて、それで見えなくてコースも泥の色でコースなんだか泥なんだかわかんない状況でした。だからGT500が通って行ったときに出た水しぶきでワイパー使って、そう洗車状態(笑)にしないと回りが分からないくらい視界が悪かったです。オイルも出てたし。そういう状況で勝てたということは、良かったかのと思います」
高木真一「(新田さんのコースアウトを見て)これは正直おもしろくなるなと(笑)。実際、天候次第のところもあって(選んだタイヤでは)雨になったらアウトだというのはチームの賭でもあったわけです。こういったチームの選択が勝利に繋がったと思います。だから、新田さんががんばってトップで戻ってきてくれたので、展開的には楽になりました。ボクは滑る状況というのが好きなんで、プッシュしていこうと思ったんですが、ミスだけは避けようと思っていたんですが、新田さんはサファリラリーの経験があるそうですけど、ボクはやってないんで(笑)、泥だらけのクルマでミラーも見えなくて。それでまったく見えなかったカルソニック(No.12)に押し出すような形にぶつかって。そんときは本当に『終わった』と。でも幸いこっちはラップタイムに影響するほどではなかったんで。今回はお盆休みも返上して(エンジンチューナーの)尾川さんがエンジンパワーをアップしてくれて、トップクラスと同じ程度のスピードにしてくれたこともありますね。ポイントリーダーのMTECを追いかけるのは至難の業ですけど、僕たちがミスしないのは当然で、あとクルマのポテンシャルアップも休むわけにはいかないので、いろんなチャレンジをしていきたいです」



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