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2016.03.11
知っておきたい2016年のSUPER GTレギュレーション vol.03【予選とSC運用、車両】

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  レースはスピード競技なので、「速い者が勝つ」が基本ルールである。加えて、多数の車両が高速走行で競うレースでは、とても細かなルール、レギュレー ションが決められている。これによって安全性を高め、公正なレースを運営している。さらに、レギュレーションは現状に即したより良いものとするために毎年、改訂されている。
 そこで、2016年のレギュレーションの改訂のポイントをご紹介しよう。

 

第3回 予選とSC運用、車両規定

 最終回となる今回は、競技におけるルールであるスポーティングレギュレーション(競技規則、以下SpR)から予選、セーフティカー(SC)の運用に関する改訂と、車両に関してはGT500クラスの燃料流量リストリクター、空力セット制限について取り上げたい。

 

 

■予選Q2の進出車両台数(ノックアウト予選方式の実施細則)
 SUPER GT SpRには「プラクティスセッション(公式予選等)」(第29条)があり、ここに公式練習、公式予選を行わなければならないことが定められている。だたし、この条項では基本的な内容(同タイムの順位付けやシード権に関してなど)に留まり、ノックアウト予選方式の進行に関しては、付則というSpRに追加された細則で定められている。

 

 

 このノックアウト予選方式に関して、今季変更があった。GT300クラスにおいて予選Q2への進出台数が、今季は14台(昨年は13台)と1台増やされたのだ。今季のGT300クラスは、年間でのエントリー台数(各戦ではなく)が30台登録されており、これもあって予選Q2の枠が拡大された。

 同様なノックアウト予選方式を採る他カテゴリーの規定では、次の予選セッションへの進出台数を「全体の何%」と定めていることも多い。だが、どの 大会でも大きく変わらないエントリー(出走台数)があるSUPER GTでは、明確に進出台数を先に決めて公開することで、ファンにも分かりやすい予選スタイルにしているのだ。

 なおGT500クラスの年間エントリーは、昨季と同じ15台と変わらない。したがって、予選Q2の進出台数も8台と変更はない。

 

 

 

■セーフティカー(SC)運用規定

 

 今季注目される大きな改訂の一つがSC運用規定の改訂である。まだ記憶に新しいと思うが、昨年の第6戦SUGOにおいて、トラブルからSCが導入された際、各車のピットインタイミングが重なり、ピットロードが大混乱に陥った。幸いにも負傷者が出るようなアクシデントはなかったが、ひとつ間違うと大きな事故に繋がる要因があった。このSC導入時のピットインに関してはスポーツランドSUGOに限らず、以前からも課題となっており、順位にも関わる場合もあるため、SUPER GTでは常にそのあり方を検討し、適宜改訂してきている。

 

 

 今季の改訂では、SCが導入中には「すべての競技車両がピットレーンに進入することはできない」ということになった。これまではSCに連なる車列が整っている場合は、ピットレーンがオープン(入り口の信号が青)となり、当然ピットインも可能であり、ラップが遅い中でのピットインは有利となるため、このタイミングでピットインする車両が集中する状況が多々あった。今回の改定でレース戦略において余裕を持った燃料運用を考えるという点で、全チームが同じ条件であると言えよう。
 なお、燃料残量が少ないなどの理由があってもSC導入中にピットインを行った場合は、60秒以上のタイムペナルティが課されることになる。

 

 

車両に関する規定
 今季の車両規定改訂では、GT500クラス車両において、気にしておきたい点が2つある。

 

○燃料流量リストリクターのサイズの変更
 GT500クラスの車両のエンジン出力制限として、2014年から燃料流量リストリクターが使用されているのはご存じだろう。昨年、一昨年とこの燃料流量の制限は100kg/h(1時間に100kgの燃料が流れる)だったが、今季は一律95kg/hに変更された。
 これにより出力自体は若干の低下となるが、一方で各メーカーのエンジン開発陣は「少ない燃料でより効率良いパワーの取り出し」という技術を競っているだけに、これが各マシンのタイムにどのように影響するのか、SUPER GTファンとしては、各メーカーのエンジンの技術力やチームのセットアップ、ドライバーのがんばりと、その内側まで推理して楽しんでほしい。

 

○空力パーツのセットにおいてローダウンフォース仕様は富士のみ
 2014年に現行の車両規定になってから、空力パーツに関しては大きな制限が掛けられている。これは競技における性能均衡、安全を考えた速度上昇抑制などといった面から行われている。
 この中で基本の空力パーツのセットはシーズン中に2セットに限る、とされている。簡単に言えば、通常サーキットの仕様と高速サーキット用の仕様の2種類にするということだ。新規定となった2014年は、まだ車両自体が開発過程ということもあって“ジョーカー”と称される改定セットが1回許されたが、それも昨年にはなくなっている。昨季から運用はされていたが、高速サーキットというくくりは「富士スピードウェイ」のみと今季より明確に限定した。

 これにより、空力パーツ以外のエンジン性能、レースでの戦術、ピット作業、そしてドライバーの技量など各チームの総合力による争いが、より際立ってくるはずだ。

 

 
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 3回に渡り、2016年のSUPER GTレギュレーションの改訂点をご紹介してきた。SUPER GTは“ファンが楽しめるレースを提供する”ことを第一と考えており、そのなかでより安全を高め、競技を公正に行う手段を構築していこうとしている。したがって、こういった規定の改訂の中には一見抑制のように見える内容もあるかもしれないが、何れも競技が活性化させる要素が入っているわけだ。勿論、細かな規則を気にしなくても、SUPER GTはただ見て感じても楽しめる。でも、今回解説した規則をちょっと気に止めておけば、2016年のSUPER GTが、これまで以上に楽しく、エキサイティングに楽しんでいただけるはずだ。

 

 

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