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2016.12.29
【SUPER GT 2016 総集編】GT500クラス第3回「LEXUS RC Fの戦いを振り返る」

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2016年の総集編、最終回は今季のGT500クラスのチャンピオンマシンとなったレクサスRC Fだ。開幕から4戦は日産GT-Rが連勝。しかし、シーズン後半にRC Fは“強さ”を見せ、コンスタントにポイントを重ねたNo.39 DENSO KOBELCO SARD RC F(ヘイキ・コバライネン/平手晃平)が逆転でタイトルを獲得した。背景に何があったのか? その1年を振り返るとともに、レクサスRC Fを開発するトヨタテクノクラフト TRD開発部の永井洋治部長にお話を聞いた。

 

■快走するGT-Rの陰で何度も悔しい思いが繰り返されたシリーズ序盤戦

 

 レクサスとしては、2013年にZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)がダブルタイトルを獲得したが、規定が一新された2014年からの2シーズンはタイトルを逃してきた。それでも2014年は8戦4勝、15年も8戦3勝を挙げ、チャンピオンを最後まで争ってきた。
 そして現行規定最後となる2016年は、前年と同様6台が参戦した。

 

 

 開幕戦岡山は、過去2年LEXUS TEAM TOM'Sの37号車が連勝してきた。今季もNo.37 KeePer TOM'S RC F(ジェームス・ロシター/平川亮)が3連勝を目指し、岡山を得意とする平川がポールポジションを獲得。No.6 WAKO'S 4CR RC F(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ)が2位とフロントローを独占する。しかし、結果はGT-Rの1号車が独走優勝。37号車は辛くも2位を守るが、6号車は4位と表彰台を逃すこととなった。

 

 続く第2戦は、レクサス勢にとってホームコースである富士で開催。だが、ここは高速コースを得意とするGT-R勢に押される。予選トップ5では1、2、4位をGT-R勢が占め、3、5位にNo.38 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明)とNo.39 DENSO KOBELCO SARD RC F(ヘイキ・コバライネン/平手晃平)が食い込む。
 しかし、決勝はGT-Rの12号車と1号車のトップ争いとなるが、最終的には2位に39号車、3位に37号車と表彰台には2台が上ることができた。そして、4、5位も37号車、No.36 au TOM'S RC F(伊藤大輔/ニック・キャシディ)が続き2〜5位を“独占” する格好となったが、RC F勢としては決して納得のレースではなかっただろう。

 

  

 

 第3戦に予定されていたオートポリスは中止。2ヶ月あまりのインターバルを置いて7月末に開催された第4戦SUGOは、走り始めの公式練習から混戦模様となった。ウェイトハンディが軽く、しかも新エンジンで盛り返してきたNSX CONCEPT-GT勢が上位を走る力を得ていたこともあり、いよいよ3車種によるバトルとなってきた。

 

 

 そうした中、予選ではNo.6 WAKO'S 4CR RC Fがポールを奪ってみせる。だが、決勝序盤でトップだった6号車は、GT300車両と接触してポジションダウン。代わってトップを争ったのはNo.38 ZENT CERUMO RC F。その後方には、予選8位のNo.39 DENSO KOBELCO SARD RC Fのコバライネンと予選14位からWedsSport ADVAN RC Fの関口雄飛が驚くべきスピードで競り合いながら上位争いに加わり、場内を沸かせる。

 

 

 レース前半はRC F勢が上位を独占する勢いだったが、後半になるとタイヤ無交換作戦を採った予選9位の24号車GT-Rが、トップに浮上。レース終盤は39号車と38号車、さらには6号車と19号車までもが、逃げる24号車を激しく攻める。しかし、GT300車両のクラッシュから赤旗となり、レースは7周早く終了。これでRC F勢は優勝に一歩届かず、前戦富士に続き2〜5位は占めるも、GT-Rに3連勝を許してしまった。

 

■鈴鹿1000kmで今季初勝利。続くタイも勝って流れが変わる

 

 第4戦SUGOから2週間と短いインターバルで迎えた第5戦富士。RC F勢にはアップデートしたエンジンが投入された。しかし、GT-Rの高速コースでの優位を崩すまでには至らず。さらにウェイトの軽いNSX CONCEPT-GT勢にも先行を許してしまう。なんと予選Q1突破はNo.19 WedsSport ADVAN RC Fのみで、他の5台はQ2には進めなかった。結果、予選では8位の19号車が最高位と厳しい状況となる。決勝では、No.36 au TOM'S RC Fが予選11位から大健闘の5位フィニッシュしたのが最高位と、まさに完敗を喫してしまった。

 

 

 だが、この苦戦はある意味折り込み済みだったようだ。アップデートされた今季2基目のエンジンに関して、RC Fの開発を統括してきたトヨタテクノクラフトTRD開発部の永井洋治部長は「パワーアップというよりも夏場のレースに向けて暑さと長距離に適合させることを最優先に開発した」と語る。その言葉からも、本当の標的が1000kmという長距離レースでボーナスポイントも付与される第6戦鈴鹿を意識していたことは間違いないだろう。
 この鈴鹿は、開幕戦岡山と同様にRC Fが連勝している得意なコースだ。だが、公式予選ではRC F勢のタイムは伸びず。No.19 WedsSport ADVAN RC Fが4位、No.38 ZENT CERUMO RC Fが8位と後れを取った。ただ、38号車に関しては、Q2アタッカーの立川が、ポール最多記録保持者には珍しく「僕のミス」と公言した結果であり、決勝での挽回を誓っていた。

 

 

 決勝は時折雨が降るという難しいコンディションでのレースとなる。その中、猛然と追い上げを”魅せた”のは38号車だ。立川が予選の鬱憤を晴らす快走で、予選8位からなんと序盤にしてトップに立って見せる。また、鈴鹿3連勝を狙うレース巧者のNo.36 au TOM'S RC Fも、昨年のF3王者のキャシディがいよいよ本領を見せて予選11位から3番手と上げれば、伊藤も2番手へと押し上げて38号車に追いすがる。途中、GT300クラスのクラッシュにより、セーフティカーが導入され、これもあってRC F同士のトップ争いは白熱。時にポジションを入れ替える戦いは、僅差で38号車が逃げ切ってゴール。今季5戦目にしてRC Fの今季初優勝となった。また、2位は36号車、4、5位に6号車、19号車と続き、RC F勢がレースの主役とになった。

 

 

 第7戦タイのチャン・インターナショナル・サーキットでも、主役はRC Fだった。No.19 WedsSport ADVAN RC Fの関口雄飛がコースレコードでポールポジションを獲得。レースでも関口がトップをキープして快走。ピットイン前にタイヤトラブルに見舞われるも、コースの終盤だった事と関口の巧みな対応で大きなロスにはならず。後半も国本雄資がクレバーな走りで逃げ切る。これは、チームと関口にとって嬉しいGT5000クラス初優勝だった。

 

■GT-Rの3連覇を阻み、大逆転でSARDが悲願の初タイトルを獲得

 

 第6戦、第7戦と連勝で迎えた最終もてぎ大会。今年のもてぎは土曜日にオートポリス戦の代替戦として第3戦を行い、日曜日に本来の最終戦が開催された。レースフォーマットとしては、それぞれ予選・決勝を1日で行い、ウェイトハンディは第3戦が今季7戦目としてポイント×1kgに、最終戦が同8戦目としてノーハンディとなった。
 この2戦に向けTRDではエンジンをアップデート。今季3基目となるエンジンを投入する。永井部長いわく「気温が低くなった(時期の)もてぎに向けたスペシャル」であった。
 これも功を奏して、第3戦の予選ではNo.39 DENSO KOBELCO SARD RC F(コバライネン)がポールポジションを獲得。決勝では、またしてもタイヤ無交換でアドバンテージを得たGT-Rの24号車が勝利するが、39号車もしっかり2位をキープ。これで大会前にランキング1位だったGT-Rの1号車を、39号車が逆転して3ポイントリードのトップに立った。

 

 

 そして日曜日の最終戦でも、No.39 DENSO KOBELCO SARD RC Fの平手が前日のコバライネンに続きポールポジションを連続獲得。そして、今度はスタートからトップを譲ることなく完勝してみせた。チームにとって4年ぶりの勝利は、彼らに悲願のSUPER GT初制覇をもたらすこととなった。
 また2、3位に6号車、19号車が入って表彰台を独占。更に4、5位にも36号車、37号車と上位はRC F勢一色のレースとなった。

 

 

「タイで勝った19号車の関口と国本(の活躍)も印象的でしたが、最も印象に残ったのは39号車の2人。2シーズン目のヘイキ(コバライネンのドライビング)がSUPER GTに合わせて進化したこと。そして、コンビを組む(平手)晃平も、いまだに進化している。またエンジニアリングにおいても、それ以外でもチームが素晴らしい仕事をした」
 今季を振り返る中、永井部長はNo.39 DENSO KOBELCO SARD RC Fのドライバー2人とLEXUS TEAM SARDを絶賛する。

 


GT500クラスAUTOBACSチャンピオン杯の贈呈。
2016年SUPER GT表彰式“GT HEROS”にて

 

 しかし、RC Fのレースカーとしての今シーズンに関しては決して甘くはなかった。 「チャンピオンを奪い返したことで“満点”と言いたいところですが、(ホームコースの)富士で勝てなかった。何より、3年間もGT-Rにボロ負けしていたから80点ですね」
 と苦笑しながら、永井部長は2014年から3年間のRC Fを総括してくれた。

 

■2017年のスタートダッシュを狙い、ニューマシンはライバルを先行

 

 そして迎える2017年シーズン。レクサス系チームは“LEXUS LC500”をベース車両としたGT500車両で参戦する。
「ライバルがどのような条件で走っているかがわからないので、相対的な判断はできませんが、自分たちで計画した工程表通りには進んでいます。このまま計画通りに開幕戦を迎えたいと思っています」と語る永井部長。今季初勝利を飾った第6戦鈴鹿では、ライバルよりもいち早く来季マシンを披露。その先行アドバンテージをそのままに、年内の各テストでLC500は好走を続けている。

 


10月末のオートポリス新型車テストで走行するLC500テスト車両

 

 ファンへの今年最後のメッセージを永井部長に問う。
「(来季の)目標は2つあります。まずは開幕戦で優勝してシーズンの好ダッシュを切ること。そして富士で勝つこと。それが達成できれば(シリーズ連覇という)結果はおのずとついてきます。今シーズンは(5戦目と)初優勝まで時間が掛かり、ファンの皆さんをお待たせしてしまいました。来年こそは開幕からガンガン行きます」
 その力強い言葉には、今季得た自信が宿っているように感じられた。

 


2017年型GT500マシン「LEXUS LC500」テスト車両
最終戦もてぎの新型車発表会にて

 

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