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2017.12.19
【2017年シリーズ総集編】GT500クラス 第1回「開幕戦の衝撃! LC500が歩んだタイトルへの道」

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KeePer TOM'S LC500が2勝を挙げチャンピオンに輝く!!
デビューイヤーに開幕戦トップ6独占、開幕から4連勝と驚異の活躍を見せたLC500

2017年は車両規定の改訂もあって、全車が新型車で臨んだシーズンとなったGT500クラスの総集編第1回は、今季デビューしたレクサスLC500の6台を取り上げる。驚きの開幕戦、歓喜の第2戦、そして運命の最終戦と波乱に富んだその1年をドライバーたちとLC500開発担当者の言葉と共に振り返ってみたい。

 

 

GT500 Class | LEXUS LC500

■開幕戦はGT史上初のトップ6を独占!前半4連勝のLC500

 GT500クラスのテクニカルレギュレーションが変更され、3メーカーの競技車両が一新されることとなった2017年シーズン。レクサスは3年間使用したRC Fに代わり、ベース車両を新たにリリースしたラグジュアリークーペ“LC500”に変更した。

 レクサス陣営の参戦体制は2016年と同様に6チームの6台。昨年のチャンピオンであるNo.1 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/平手晃平)、No.6 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ)、No.19 WedsSport ADVAN LC500(関口雄飛/国本雄資)、No.36 au TOM'S LC500(中嶋一貴/ジェームス・ロシター)、No.37 KeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ)、No.38 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明)という布陣だ。36号車は、中嶋が3年ぶりに復帰。昨年までファーストドライバーを務めた伊藤大輔が監督兼第3ドライバーとなる。また、37号車は23歳の平川と22歳のキャシディ(年齢は開幕時点)の若手コンビとなる。他のチームのドライバーラインナップは変更なし。タイヤも19号車がヨコハマを履き、それ以外の5台がブリヂストンを装着とこれまで通りだ。

 

 3メーカーが新型車を投入した今季、オフシーズンから好調だったのがレクサスLC500で、開幕直前の3月に岡山国際サーキットで行われた公式テストでも速さを見せつけ、初日午前のセッションではトップ6を独占してみせた。2日間の総合結果でも37号車、1号車、36号車の順にトップ3を独占し、他の3台も上位につけた。
 4月に迎えた開幕戦岡山でも、その勢いは変わらず。今季、最初の公式セッションである公式練習ではトップ4を独占。予選Q1も上位4位までを占めるも、Q2は他車のトラブルからの赤旗中断の不運もあってポールポジションを逃してしまう。それでも上位6台中4台はLC500だった。決勝レースはフォーメーションラップで他車の3台が立て続けにストップする波乱の幕開けとなる。だがLC500勢は速さと共に盤石の走りを見せ、終わってみれば37号車が完勝。トップ6をLC500が占めた。
 レース後、キャシディは「レクサスが素晴らしいクルマを用意してくれて、テストから調子が良くて期待していたんだ。本当に思った通りの展開になったね」と、クルマを褒め称えた。過去3年タイトルを逃している平川は「(これまでは)勝ってもポイントを取りこぼすことがあってタイトルを獲れなかった。今年はそれがないように戦っていきたい」と、早くもこの後を見据え気を引き締めていた。

 

   

 

 第2戦富士でもLC500の勢いは衰えることなく、38号車がポール・トゥ・ウインを決める。2、3位も6号車と37号車となり、連続の表彰台独占だ。Q2でポールポジションタイムを出した立川は自己の持つ最多ポール記録を更新。さらにこの勝利でGT500最多勝記録に並ぶ18勝目を手にした。
 レース後、LC500開発ドライバーでもある立川は「このクルマを開発するにあたって“勝てるクルマ”、“チャンピオンを獲れるクルマ”、そして何よりも“富士で勝てるクルマ”を意識していました。だから(開発ドライバーとして)富士で勝つことができて、本当にホッとしています」とコメント。この言葉通り、富士をホームコースにするレクサス/トヨタながら2013年第6戦から勝利に見放されており、これが、実に3年8カ月ぶりの歓喜だった。
 一方、この活躍を反映してLC500各車のウェイトハンディも増えていく。第2戦終了時点で、ランキングトップの37号車の62kgを筆頭に、6号車が60kg、38号車も58kgと3台のLC500が50kgを超え、燃料流量リストリクターを1段階絞り込まれることとなった。

 

   

 

 第3戦オートポリスは36号車と1号車がトップを争うが、接触というアクシデントが起こってしまう。結局、36号車はトップを堅持し、LC500は見事3連勝を達成。だが、1号車はリタイアとなりワン・ツーフィニッシュを逃し、2位から5位はライバル車が並ぶこととなった。

 

 第4戦SUGOの決勝は、3度のセーフティカー導入もあってピットインのタイミングで明暗が分かれた。最後は1号車(平手)とGT-Rの46号車(本山)のマッチレースとなる。しかもラストラップに降った雨の中で、2台がサイド・バイ・サイドでバトルを展開し、大いに観客が沸いた。辛くも1号車が先行して、LC500の連勝を4とした。また、3位には6号車が入り、未勝利ながらランキングトップに浮上した。
 レース後に平手は「今年はシーズン序盤戦でなかなか思ったようなレースができなかったので何とか表彰台を、と思っていたら優勝することができました」と語る。好調LC500勢だけに、乗り遅れたくないという気持ちもあったようでホッとした様子だった。

 

   

 

 

■序盤の好調さゆえに中盤以降はウェイトハンディに苦しむ

 再び富士に戻って迎えた第5戦。LC500の6台中5台のウェイトハンディが50kgを超え、3台が燃料流量リストリクターを2段階絞り込まれるが、それでも予選で36号車が3番手につけてみせる。決勝ではトップにこそ手が届かなかったが、38号車が最後までGT-Rの23号車と激しい2番手争いを繰り広げ、3位表彰台に上がった。ウェイトハンディの厳しさがありながらLC500の6台は、全車がポイント獲得(トップ10入賞)を果たした。

 

 第6戦は、シリーズでも屈指の長距離レースとなる鈴鹿1000km。GT500では年間を通じてのエンジン使用数が制限されているが、これまでの年間3基から今季は2基となり、耐久性がより重要になる。今季の後期バージョンである2基目のエンジンを、LC500の6台全車が鈴鹿で投入した。SUPER GTのLC500開発を担当するトヨタテクノクラフト株式会社 TRD開発部の永井洋治部長は「(1基目で)信頼性が確保されたので、新しいアイテムを入れてパワーアップしています。でも、それ以上にドライバビリティの向上をさらに追求した」と、ドライバーに高評価のLC500のエンジン“RI4AG”の扱いやすさを重視。そして「ウェイトハンディもあって、この鈴鹿ではエンジンのパフォーマンスは評価できません。第7戦以降に真価が問われるでしょう」と付け加えている。
 確かに、LC500勢で26kgとウェイトハンディの軽い19号車が予選2位、決勝4位と健闘するも、それに次ぐのは37号車の予選8位、決勝6位と苦しい結果となった。第6戦は、今季初めてLC500ドライバーのいない表彰台となった。

 

   

 

 

■第7戦タイで37号車が2勝目!8戦5勝でチャンピオンマシンに

 続く第7戦はタイのチャン・インターナショナル・サーキットが舞台。GT500クラスは全車が参戦7戦目となり、ウェイトハンディはここまでの獲得ポイント×2kgからポイント×1kgとなった。前戦鈴鹿の結果により、ランキングトップの座をGT-Rの23号車に明け渡すこととなったLC500勢にとっては、まさに正念場である。
 ここで素晴らしいパフォーマンスをみせたのが37号車の“23歳コンビ(キャシディも第6戦を前に23歳に)”だ。予選ではキャシディが着実にQ1を突破、Q2で平川がスーパーラップをたたき出す。ウェイトハンディで30kg以上も軽いライバルに先んじてポールポジションを獲得。鈴鹿で永井部長が語った“2基目エンジンの真価”が現れたと言えよう。
 決勝前に降ったスコールにより、路面がウエットからドライに変わっていくという難しいコンディションも、LC500と平川&キャシディの妨げにはならなかった。ポール・トゥ・ウインで開幕戦岡山に続く今季2勝目を挙げ、最終戦を前にランキングトップの座を奪還した。
 ポールポジション会見では「(チャンピオン争いで)最大のライバルとなっているNISMO(23号車)は、今日の予選では下位に沈んでいるようですが、決勝になったら絶対に上位に上がって来ると思うので、まずは彼らより前で走り切って(彼らとの)ポイント差を詰める、もしできるなら(ポイント差を)逆転したい、と思っています」と語っていたが、GT-Rの23号車が下位に沈んだためにベストなシナリオとなり、ポイントリーダーとして最終戦を迎えることとなった。
 スタートを担当したキャシディは「ウエットでもドライでも良いギャップをつくることができました。今日のようなレースではピットワークが大事なのですが、チームは本当に素晴らしい仕事をしてくれました。自分がこれまで戦ってきたSUPER GTのレースで最高のレースです」と、ドライバーだけでなく、LC500もタイヤもチームも完璧だったと笑顔。「最終戦のもてぎが今から楽しみです」と快勝のレースウィークを結んだ。

 

   

 

 最終戦のツインリンクもてぎは、シーズン最短の250kmレース。逆転チャンピオンを諦めないGT-Rの23号車がポールポジションを獲得し、LC500陣営を脅かすが、予選2、3位には6号車、37号車のランキング1、2位がしっかりつけている。
 トップのまま逃げる23号車に届かないとみるや、37号車の2人は若さを感じさせないレース・マネージメントをして2位でゴール。優勝こそ23号車に譲るも、平川とキャシディはLC500にデビューイヤーのチャンピオン獲得という大きな勲章を贈ることができた。
 タイトルを獲得した平川は「シーズンを振り返ってみると、タイのレース、それも予選でポールポジションを獲れたことが大きなポイントになりました。そして最終戦で23号車に流れが行きそうになりましたが、それをチームが一丸となってノーミスで良い仕事をして、流れが変わるのを防いでくれました。本当に、チームががんばってきた結果のチャンピオンなので、皆に感謝したいです」と、LC500のみならず、チームの総合力を称えた。

 

   

 

 全車が新規定の新型車となった2017年。LC500は開幕4連勝を含む年間5勝と最多勝車種になり、今季のドライバーズランキングでは1位の37号車を含めトップ5中4組がLC500ユーザーとなった。シーズン後半、開幕戦の衝撃こそ薄らいだLC500だったが、終わってみれば、その“強さ”をしっかりと証明してみせた。

 

 

 

LEXUS LC500 開発責任者が今季を振り返る

「LC500のパフォーマンスは想定通り。シーズン終盤の23号車の速さは脅威で、来季への課題です」

トヨタテクノクラフト TRD開発部 永井洋治 部長

 シーズン序盤の快進撃も、中盤にウェイトハンディで苦労したことも含め、我々が想定していた通りになりました。ただ中盤からのライバル車種の追い上げは想定外のところもありました。NSX-GT勢のパフォーマンスがアップしたのは性能調整の変更(15kgの軽減)が原因だと分析しています。しかし、GT-Rは23号車のパフォーマンスアップに関してはまだ、分析し切れていません。
 今シーズンは(使用できる)エンジンが年間2基に制限されたので、信頼性に振った開発をしてきました。その中で、もちろんパワーアップも追求しましたが、2基目のエンジンではドライバビリティもより重視しています。
 シーズンのターニングポイントとなったのは鈴鹿1000km(第6戦)。LC500勢がウェイトハンディで苦しむ中、23号車が2位に入賞しています。彼らはピットワークなどの作戦も素晴らしかったのですが、レースのペース自体も速かった。その中、37号車は6位でしっかりポイントを加算。(ウェイトハンディが軽くなった)次のタイ(第7戦)では37号車が勝って、流れをまた引き寄せることができました。そして、チャンピオンを獲ることができてホッとしていますが、23号車の速さをさらに分析するなどして、来シーズンに備える必要があると思っています。
 最後になりますが、ファンの皆さま、LC500とレクサスの各チーム、ドライバーへのシーズンを通じての応援、ありがとうございました。

 


次回はGT500クラス総集編の第2回として、日産GT-Rの今シーズンを主要ドライバーと開発責任者であるNISMOの鈴木豊監督の言葉と共にレポートします。

 

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