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2018.12.07
【2018 シーズンプレイバック】第2回:GT300クラス「LEON CVSTOS AMG、チャンピオンへの道」

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GT300クラス「LEON CVSTOS AMG、チャンピオンへの道」

最終戦のもてぎで劇的な逆転優勝&チャンピオンを決めたNo.65 LEON CVSTOS AMG。
昨シーズンは2勝を挙げながらタイトルを逃した彼らは、今季どんな戦略でタイトルを目指したのか?
創設6年目して悲願のタイトルを掴んだ、彼らの1年を振り返る。

 

2018年も幾多の名勝負、感動のシーンを繰り広げ、シーズンを終えたAUTOBACS SUPER GT。SUPERGT.netでは、今季を振り返る意味で5回に渡り「2018 シーズンプレイバック」をお送りする。
第2回はGT300クラスで今季チャンピオンとなったLEON CVSTOS AMGの1年を振り返る。

 

 

昨年苦労したタイヤが、今年は大きな武器となる

 「去年の最終戦。ノーハンディのレースで勝ったということは、素のポテンシャルでは僕らが一番だったのは間違いない。でも、去年は取りこぼしが多過ぎた。だから、今年はそういうことのない、強いチームにしていきたいんです」 2018年の開幕を前に、黒澤治樹は強く語っていた。K2 R&D LEON RACINGが独自チームで参戦して今年で6シーズン目。昨年はクラス最多の2勝を挙げたが、トラブルやアクシデントにも見舞われた。そこから導かれた決意だろう。
 

 岡山国際サーキットでの開幕戦。No.65 LEON CVSTOS AMGは予選、決勝ともに4位。黒澤が早めのピットインでリヤタイヤのみ交換。これが当たってメルセデスAMG GT3勢では最上位を獲得した。「ピットから出たらタイミング良く前には誰もいない状態。しばらくプッシュできたのが良かった。(替えなかった)フロントタイヤはきつかったですが、後方を抑えることができた。でも残り10周ぐらいで1台に抜かれたのは、僕のミスです」と、蒲生は悔しさを語った。

 

 

 

 第2戦は高速コースの富士スピードウェイ。ターボ車有利と言われる中、Q2で蒲生が3番手を獲得。「クルマとタイヤのマッチングが、昨年とは比較にならないほど進んでいた」と蒲生は言う。昨年は初めて使用するブリヂストンタイヤへの合わせ込みに苦労していたが、その苦労が蓄積され、データとして大きな武器となっていた。
 ピットストップ2回の500kmレースで、最初はタイヤを4本ともに交換。次はフロント2本に留める作戦で、前戦同様の4位。彼らの前はターボ車のNo.55 ARTA BMW M6 GT3とNo.11 GAINER TANAX GT-R、そして富士が得意のハイブリッドNo.31 TOYOTA PRIUS apr GT。「優勝したBMWに比べ、ストレートで10km/hも遅くては……。本当はもっと前のポジションで争いたかったんですが、パワー的にきついNAエンジンでミスなく走って、ベストは尽くせたと思います」と黒澤。その言葉には達成感も感じられた。

 

 

 

 今年から300km での争いとなった鈴鹿サーキットでの第3戦。ウェイトハンディ32kgに苦しみ予選は6番手。決勝レースは黒澤がセーフティカーラン後のミニマム周回でタイヤをフロントのみ交換で蒲生をコースに送り出す。だが、ライバルの多くは無交換で、ポジションはダウン。それでも蒲生はNo.0 グッドスマイル 初音ミク AMG(谷口信輝)をラスト2周で抜き去り、意地の7位に。「谷口さんがタイヤ無交換なのは知っていたので、最後まで諦めずに追いました。今回は運がなかった。でも、次のタイは昨年、不運もあって結果を残せませんでしたが、いい走りができていた。だから今年は自信があります」と、蒲生は意欲を失わなかった。

 

 

 

 

苦戦の中で続く4位入賞。でも、気持ちは切れない

 チャン・インターナショナル・サーキットでの第4戦で、その言葉が現実のものとなる。Q1を黒澤が4番手で突破し、Q2で蒲生がポールポジション(同タイムの88号車が車検でタイム抹消)を獲得。「今回はクルマの状態もすごくいいし、ブリヂストンタイヤもすごく機能していました!」と蒲生。しかし、決勝ではエンジンパワーに優れる他のFIA-GT3勢に置いて行かれてしまった。「本当にもう、ストレートの分だけでした。ついていけるけどストレートで抜けず、コーナーで抑えられている。自分たちの良いところを全然引き出せない……」と黒澤から嘆きにも等しい声が返ってくる。それでも4位でまとめて見せた。
 「ここまで確実に入賞できているのは良いこと。きっと勝てるチャンスが来ると思うので、その時までしっかりポイントを稼いでおくのが大事だと思います。決して順調ではないですけれど、ちゃんとレースはできていますので」と蒲生。今だから言えることだが、まさに予言のような言葉であった。

 

 

 

 

 第5戦は再びの富士。シリーズ最長の500マイル(約807km)での戦いだ。この時点でのランキングは3位。ウェイトハンディ58kgを背負い、相性の良くないコースながら予選は6位と善戦だった。決勝では燃費の良さを生かし、1回目のピットインを早々の8周目に行うなど、戦術を駆使して徐々にポジションアップ。またも4位でゴールとなった。
 「また4位。4回目ですからね。今年は4位にしかなれないのかも……」と黒澤。気持ちが切れたかと思われたが、こう付け加えた。「みんなミスなくやってくれたから、いい4位です。まだ、(タイトルへの)チャンスは残されているはず」。そう、彼らはまだ諦めていなかった。

 

 

 

 

 

すべて筋書き通りの最終戦。さすれば運も味方する

 第6戦スポーツランドSUGOでは、ウェイトハンディが78kgにも達して、予選は14位。連続入賞も途切れるかと思われたが、決勝は上位陣の脱落にも助けられて8位。
 ウェイトハンディが半減となったオートポリスでの第7戦だが、予選は12位と奮わず。それでも、決勝は得意のタイヤ戦略で挽回。負担の掛かるフロントのみの2本交換が功を奏して5位でゴール。ドライバーランキングでも2位に躍り出た。

 

 

 

 

 そして迎えたツインリンクもてぎでの最終戦。ランキングトップのNo.55 ARTA BMW M6 GT3との差は12ポイント。勝ってなお、相手の結果次第という状況だ。「僕らは自分たちのベストなレースをするだけ」と黒澤は腹をくくる。そして予選を終えた後、状況は大きく変わった。蒲生がQ2で激走して予選2位を得たのに対し、55号車は10位と低迷。それでも黒澤は「55号車が上がってこないとは限らないから」と強気な言葉を返してはこない。しかし浮き足立ってもいなかった。
 そんな彼らが決勝で繰り出したのは、今季初めて行うタイヤ無交換だった。250kmとシーズン最短のレースながら、FIA GT3車両では簡単なことではない。スタートを担当した黒澤はタイヤのグリップ温存のため、無理にポジションを守らなかった。ただし、同じタイヤを履く僅差のチャンピオン候補、No.31 TOYOTA PRIUS apr GT(平手晃平)だけはしっかり抑え続けた。

 

 

 

 そして19周目をクリアして蒲生と交代。「無交換はこれまで一度もやったことがなかったので、不安もあった。でもセーブして負けるのは嫌なので一生懸命走りました」と蒲生は語る。全車がピットインを終えると、リーダーボードのトップに表示されたのは「65」だった。ラスト数周こそペースをコントロールして31号車に詰められたが、見事にタイヤを使い切って蒲生はトップでゴール。対して55号車は9位。他のライバルも思うような順位を得られなかった。
 これでNo.65 LEON CVSTOS AMGは、劇的な逆転チャンピオンを掴み取った。チェッカーと共に黒澤は涙した。なのに降りてきた蒲生が淡々としていたのは、実は王座獲得に気づいていなかったから。「勝ったのは分かったので、ホッとしていたのは事実なんですけど。無線で言ってくれたのかな?」と、彼の“天然”ぶりが、チームスタッフの更なる笑いを誘っていた。
 「41歳になって、やっとチャンピオンです。(ランキング)2位は何回もあるんですよ。NSXの2005年も、去年も、ル・マン24時間でも何回かある。だけどチャンピオンというと、人生初なので。……それだけ嬉しいです」と、感無量の黒澤。

 

 

 

 

 そして、タイトル獲得の理由をこう語った。
 「最終戦も、シーズン中も(タイトルのためという)意識はしていませんでした。ただただ毎回ベストなレースをしようと、やれることを集中してやろうと。常にそれだけでした。
 それと、尚弥の成長も大きかったですね。最初(2014年の初コンビで)は不安もあったんですが、乗って半年ぐらいからすごく速くなってきた。あの頃は僕より遅かったのに、今は予選で『おい、どこ通ってきたんだよ』ってタイムを出すし。なによりドライバーとして信用できるようになりました。
 ずっと自分がチームを引っ張ってきたんですけど、ある時、『ああ、これは尚弥を伸ばして、自分はサポート役だ』って。彼が気持ち良く走るために、自分が如何にタイヤをセーブしてポジションを落とさないとか、どれだけポジションを落とさずタイムを出すか。そういう風に彼を軸としたチームを考え出したら、今年は(チームの動きが良く)回ってきた。だから強くなったんだと思います」

 

 エースが仕事に徹して、チームメイトを生かし、マシンを理解し、タイヤを生かし、チームを信頼した。SUPER GTでタイトルを獲るべき要素を、今季のNo.65 LEON CVSTOS AMG/K2 R&D LEON RACINGはまさに獲得していたのだった。

 

 

 

 

 

2018年全8戦の記録

No.65 LEON CVSTOS AMG/K2 R&D LEON RACING
黒澤治樹/蒲生尚弥

各戦順位とドライバーポイント/ランキング
  Rd.1岡山 Rd.2富士 Rd.3鈴鹿 Rd.4タイ Rd.5富士 Rd.6SUGO Rd.7AP Rd.8もてぎ
予選 4 3 6 1 9 14 12 2
決勝 4 4 7 4 4 8 5 1
ポイント 8 16 20 29 39 42 48 68
ランキング 4 5 6 3 3 4 2 1
W.H. 0 16 32 40 58 78 42 0

決勝最高位:1位(1回)
予選最高位:1位(1回)
※W.H.はウェイトハンディ(kg)

獲得ポイント(全8戦)
 ドライバー:68点(1位)
 チーム:91点(1位)

 

 

 

 

 

※次回の『2018 シーズンプレイバック』はGT500クラス NISSAN GT-R NISMO GT500の1年を振り返る。

 

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