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2018.12.21
【2018 シーズンプレイバック】第4回:GT500クラス「序盤戦の出遅れが響いたLEXUS LC500の1年」

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GT500クラス「序盤戦の出遅れが響いたLEXUS LC500の1年」

2016年をRC Fで、2017年をニューマシンLC500で連覇したLEXUS勢。
今季序盤は、昨年の圧倒が嘘のように苦しんだ。そして第4戦タイから盛り返すも、3連覇には届かず…。
波が大きかった1年を、LC500開発の指揮を執る永井洋治部長と共に振り返る。

 

2018年も幾多の名勝負、感動のシーンを繰り広げ、シーズンを終えたAUTOBACS SUPER GT。SUPERGT.netでは、今季を振り返る意味で5回に渡り「2018 シーズンプレイバック」をお送りする。
第4回はGT500クラスのLEXUS LC500の戦いを振り返ってみたい。

 

 

今季型は“タイムアップ”を狙ったチャンピオンカーの正常進化版

 2017シーズンに初登場したLEXUS LC500は、全8戦で5勝とライバルを圧倒。そして、タイトルも獲得した。
 今シーズンのLC500は、その昨年型の正常進化版だという。車両開発を担当する株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメントのテクノクラフト本部 執行役員 パワトレ開発部 永井洋治部長は「昨年の開幕戦は、確かにライバルに対してアドバンテージもありました。しかし、中盤戦からそのアドバンテージがなくなった。今季型では、そのアドバンテージを取り戻せるように空力もエンジンも、できるところはすべて手を入れました。方向性としてはマシンを速くする、つまり“ラップタイムを上げる”ことを追求しました」と、その内容を話してくれた。

 

 

 参戦チームは、昨年同様の6台。チャンピオンナンバーを背負うNo.1 KeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ)、No.38 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明)は昨年そのままの体制。No.6 WAKO'S 4CR LC500は大嶋和也のパートナーに、スーパーフォーミュラでも活躍したフェリックス・ローゼンクヴィストを新たに迎えた。No.36 au TOM'S LC500は中嶋一貴と、関口雄飛のペアに。関口が抜けたNo.19 WedsSport ADVAN LC500は、国本雄資とGT300クラスから山下健太を抜擢。そして、No.39 DENSO KOBELCO SARD LC500はヘイキ・コバライネンに小林可夢偉が初のレギュラー参戦と、元F1ドライバーによるコンビ結成は大きな話題となった。

 

 

 

 

テストで分かったトラブルもあって序盤3戦は厳しい展開に

 昨年は決勝でトップ6を独占した開幕戦の岡山は、予選は6号車の4位、決勝は1号車の3位が最高位となる。残念ながらNSX-GT勢に対してパフォーマンス不足を感じさせる結果だった。
 実は3月に行われた岡山での公式テストで、LC500勢のエンジンにトラブルが見つかっており、永井部長は「開幕戦ではエンジンのパフォーマンスを少し制限していました」と、その裏側を明かした。

 

 

 

 しかし第2戦、レクサス/トヨタのホームコースである富士では状況を立て直してきた。予選では“富士マイスター”の異名を持つ38号車の立川祐路が、自身のポールポジション通算記録を更新。決勝はNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rに優勝をさらわれるも、39号車が2位。そこから5位までの4台をLC500で占めて見せた。その中、特に輝いたのが初GT500レースの坪井翔だ。FIA世界耐久選手権(WEC)出場のため欠場した小林に代わり39号車をドライブし、セカンドスティントでは23号車の猛攻からトップを守り抜く活躍だった。

 

 

 

 

 

 第3戦鈴鹿の直前、永井部長は「第2戦に間に合わなかった対応策も、鈴鹿にはすべてやりました。エンジンも最強スペックに仕立て上げて臨みます」と語った。だが、予選トップ3はNSX-GTが独占。決勝も1号車が予選4位から3位に食い込むのが精一杯。昨年は開幕から4連勝だっただけに、開幕からの3戦未勝利は非常に厳しい状況であった。当時を振り返る永井部長も「開幕からのスタートダッシュで出遅れたのが痛かった」と、痛恨の弁であった。

 

 

 

 

第4戦で今季初勝利。第5戦も勝つが、第6戦は最悪の結果に

 LC500勢の反撃が始まったのは第4戦のタイから。このコースは、2014年の初開催以来4戦3勝と、LEXUSのマシンと相性が良い。ウエットからドライへと路面状況が変わっていった予選こそNSX-GTにワン・ツーを許したが、ドライとなった決勝ではLC500勢が盛り返す。予選3位の39号車のコバライネンが序盤でトップに。その後にも6号車、19号車とLC500が速さを示した。後半も39号車の小林がリード。終盤は小林と36号車の関口が好バトルを展開。だが36号車は後半のハイペースが祟ったか、ファイナルラップにガス欠でストップ。それでもトップ4をLC500が独占と、久々の快勝だった。
 SUPER GT初優勝となった小林だが、第2戦富士は欠場、前戦鈴鹿は決勝を走る前にリタイアで、決勝を走るのは開幕戦の岡山以来だった。それだけに小林は「レース前は勝てるなんて考えていなかった。(終盤は)1コーナーで速かったのとトラフィックを上手く使えたことが(関口に)抜かれなかった要因」と、意外にも淡々とレースを振り返っていた。

 

 

 

 

 第5戦の富士は、今季から500マイル(約807km)レースとなった。予選は富士重視のGT-Rの2台にトップを占められたが、3位に36号車が食い込む。そして、決勝では苦しむGT-R勢と対称的に、LC500勢は後半に速さを見せる。終盤には36号車がトップに立ち、ラスト数周は1号車とのトップバトルとなる。結局、36号車が逃げ切って優勝。
 レース後、中嶋は「今回勝たないと、僕たちのシーズン(タイトル争い)が終わってしまう。それだけに、勝つことができてホッとしています。このコンビでは初優勝ですし、TEAM TOM'Sとしても初のワン・ツー・フィニッシュ。チームにとってもうれしい週末になりました」と、安堵と喜びを語った。

 

 

 

 

 しかし、良い状況は続かない。第6戦のSUGOに関して、永井部長は「我々がSUPER GTに挑戦してきた中でも、記録的な惨敗でした」と厳しい言葉で顧みる。予選ではNSX-GTのみならず、GT-Rにも後塵を拝し、19号車の6位が最高位。決勝もトップ10入りは5位の38号車と10位の39号車のみ。ランキング上位はウェイトハンディも苦しかったが、80kgを背負うNo.100 RAYBRIG NSX-GTが優勝しているだけに、それも言い訳にできないものだった。

 

 

 

 

マシンではなくチャンピオンのプライドで健闘した最終戦

 第7戦オートポリスの予選は、またもNSX-GT勢が速く、トップ3を奪われる。それでも決勝は36号車と1号車が予選4、5位から猛プッシュ。ペースの上がらない3台のNSX-GTをパスして、早々に36号車がトップへ。だが、ラスト6周で1号車が逆転して優勝。ポジションは入れ替わったが、第5戦に続くTEAM TOM'Sのワン・ツーだ。3、4位にも19号車と38号車が続き、LC500が上位4台を独占。
 見事な逆転劇となったオートポリス。「オートポリスはタイヤの選択が大きいと思います。LC500勢の多くが選んだミディアムのタイヤは、一発のタイムではソフトに後れを取ってしまいますが、ロング(長距離走行)では安定して速かったですね」。永井部長は逆転勝利をこう分析した。

 

 

 

 

 

 

 最終戦もてぎは、ディフェンディングチャンピオンの1号車と、100号車が同ポイントでタイトルを争う。もてぎはHondaのホームコースながら、LEXUSマシンが得意とするサーキットでもあった。
 予選ではNo.8 ARTA NSX-GTがポールポジション、2番手に100号車と、またもNSX-GT勢が先行。LC500では4位に38号車。そして1号車は6番手と苦しい状況となる。レース前、平川は「(予選でNSX-GT勢が速いのは)予想はしていたのですが、(トップの8号車と)0.7秒近く離れているとは…」と厳しい表情。だが「明日は悔いがないように、全力で戦う」とも誓った。

 

 

 

 レースでは38号車が2番手となり100号車を抑える。そして、平川の言葉通り、決勝終盤に1号車は100号車の背後に食らい付き、激しい3位争い、いやタイトル争いを繰り広げた。しかし、結果として抜くには至らずで、タイトル防衛はならなかった。
 「このレースは『さすが(2017年の)チャンピオン』と言いたいですね。LC500のポテンシャルを考えるなら、ランキングトップと同ポイントで最終戦に臨むことができ、競り合えたのは、彼らドライバーのがんばりであり、そしてチームの力だと思います」と、永井部長は今季のLC500を評し、“ゼッケン1番”の実力を讃えた。

 

 

 

 

 

 

ライバルに負けたものを一つ一つ潰してタイトル奪還へ!

 今季のLC500は全8戦で3勝、ポールポジション1回。ランキングでも2位となり、健闘はしたがタイトルは守ることはできなかった。
 永井部長は今季の結果を受け、来季のLC500開発のポイントをこう語る。「まずはベースの車両自体をレベルアップする。レベルアップと言うよりも、今年のクルマで(ライバルに)負けていたところを一つ一つ潰していく。そこから始めています」。

 

 今季は好不調の波が大きかったLC500。タイトルを獲った一昨年のように各チームが順次結果を残すことができなかった。
 「(各ラウンドで)優勝するだけでなく、上位を独占してライバルに大量ポイントを与えないようにするのも、SUPER GTでチャンピオンを争うためには重要なポイントです」。2016年、2017年の連覇と今年の苦戦。永井部長とLEXUS陣営は、そこにタイトル奪還への地図を見つけたようだ。

 

 

 

 

 

 

LEXUS LC500 2018年全8戦の記録

No.1 KeePer TOM'S LC500

ドライバー      平川 亮/ニック・キャシディ
チーム LEXUS TEAM KeePer TOM'S

今季成績

ドライバーランキング2位/チームランキング2位

  Rd.1岡山 Rd.2富士 Rd.3鈴鹿 Rd.4タイ Rd.5富士 Rd.6SUGO Rd.7AP Rd.8もてぎ
予選 9 9 4 12 7 9 5 6
決勝 3 7 3 8 2 14 1 4
ポイント 11 15 26 29 47 47 67 75
ランキング 3 5 3 5 1 3 2 2
W.H. 0 22 30 52 58 94 47 0

※ポイント・ランキングはドライバーのもの。W.H.はウェイトハンディ、単位はkg。

 

No.38 ZENT CERUMO LC500

ドライバー      立川祐路/石浦宏明
チーム LEXUS TEAM ZENT CERUMO

今季成績

ドライバーランキング4位/チームランキング4位

  Rd.1岡山 Rd.2富士 Rd.3鈴鹿 Rd.4タイ Rd.5富士 Rd.6SUGO Rd.7AP Rd.8もてぎ
予選 10 1 10 13 *1 7 8 4
決勝 8 3 8 4 8 5 4 2
ポイント 3 15 18 26 30 36 44 59
ランキング 8 6 6 6 10 8 7 4
W.H. 0 6 30 36 52 60 36 0

*1 予選出走せず

※ポイント・ランキングはドライバーのもの。W.H.はウェイトハンディ、単位はkg。

 

No.36 au TOM'S LC500

ドライバー      中嶋一貴/関口雄飛(Rd.2は中嶋に代わりジェームス・ロシター)
チーム LEXUS TEAM au TOM'S

今季成績

ドライバーランキング5位(関口)、6位(中嶋)/チームランキング5位

  Rd.1岡山 Rd.2富士 Rd.3鈴鹿 Rd.4タイ Rd.5富士 Rd.6SUGO Rd.7AP Rd.8もてぎ
予選 14 4 8 10 3 10 4 15
決勝 13 4 5 10 1 12 2 13
ポイント 0 8 14 15 40 40 55 55
ランキング 8 9 12 2 5 3 5
W.H. 0 0 16 28 30 80 40 0

※ポイント・ランキングはドライバーのもの。W.H.はウェイトハンディ、単位はkg。

 

No.39 DENSO KOBELCO SARD LC500

ドライバー      ヘイキ・コバライネン/小林可夢偉 (Rd.2は小林に代わり坪井翔)
チーム LEXUS TEAM SARD

今季成績

ドライバーランキング9位(コバライネン)、13位(小林)/チームランキング9位

  Rd.1岡山 Rd.2富士 Rd.3鈴鹿 Rd.4タイ Rd.5富士 Rd.6SUGO Rd.7AP Rd.8もてぎ
予選 15 5 13 3 11 *2 12 12
決勝 12 2 R 1 11 10 8 8
ポイント 0 15 15 35 35 36 39 42
ランキング 4 7 1 5 7 8 9
W.H. 0 0 30 30 70 70 36 0

*2 予選タイム抹消

※ポイント・ランキングはドライバーのもの。W.H.はウェイトハンディ、単位はkg。

 

No.6 WAKO'S 4CR LC500

ドライバー      大嶋和也/フェリックス・ローゼンクヴィスト(Rd.3はローゼンクヴィストに代わりジェームス・ロシター)
チーム LEXUS TEAM LEMANS WAKO'S

今季成績

ドライバーランキング10位/チームランキング7位

  Rd.1岡山 Rd.2富士 Rd.3鈴鹿 Rd.4タイ Rd.5富士 Rd.6SUGO Rd.7AP Rd.8もてぎ
予選 4 2 14 11 13 11 9 10
決勝 4 5 12 2 7 11 9 6
ポイント 8 14 14 29 34 34 36 41
ランキング 4 7 8 4 8 9 10 10
W.H. 0 16 28 28 58 68 34 0

※ポイント・ランキングはドライバーのもの。W.H.はウェイトハンディ、単位はkg。

 

No.19 WedsSport ADVAN LC500

ドライバー      国本雄資/山下健太
チーム LEXUS TEAM WedsSport BANDOH

今季成績

ドライバーランキング11位/チームランキング11位

  Rd.1岡山 Rd.2富士 Rd.3鈴鹿 Rd.4タイ Rd.5富士 Rd.6SUGO Rd.7AP Rd.8もてぎ
予選 7 8 9 6 6 6 10 7
決勝 9 12 13 3 10 R 3 5
ポイント 2 2 2 13 15 15 26 32
ランキング 9 13 15 13 14 16 12 11
W.H. 0 4 4 4 26 30 15 0

※ポイント・ランキングはドライバーのもの。W.H.はウェイトハンディ、単位はkg。

 

2018 GT500ドライバーランキング

2018 GT500チームランキング

 

 

 

※次回の『2018 シーズンプレイバック』はGT500クラス Honda NSX-GTの1年を振り返る。

 

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