「安全でエキサイティングなレースのために備える」セーフティデリゲート&メディカルデリゲート
エキサイティングでドラマティック、カッコいいマシン&ドライバーとファンを魅了するSUPER GT。このレースを毎戦、安全かつ公正に運営するため影から支える人たちがいます。中でもGTAで各種運営グループを率いるGTA派遣役員にお話しを聞きました。
第2回はセーフティデリゲート(安全担当のGTA派遣役員)、伊東和雄(いとう・かずお)さんです。“セーフティ”と言うからには、レースの安全に関わる仕事していることはお分かりだと思います。では、伊東さんに仕事の内容をお聞きしましょう。
──セーフティデリゲートとは具体的に何をするのでしょう? レース中は、何をしているのですか?
伊東 私たちは、レース全体の安全管理やFRO(※)チームの運営をしています。
コース上で事故などトラブルが起こったときに必要なことは、ドライバーを助けるための医療に加え、消火活動や事故車両を回収したり、タイヤバリアやガードレールを直して、その後の走行に危険がないようにしなければなりません。それらの活動をサーキットと一緒に準備し、運営しています。
──レースでは医師も必ず常駐していますが、GTAのメディカルデリゲート(派遣医療役員[医師])との連携はどうなっていますか?
伊東 メディカルデリゲートはサーキットの医師団長と協力してレース全体の医療を管理します。事故の際はドライバーの救出や応急処置、病院への搬送など、けがを負ったドライバーの命を守ることに専念します。
また、そうしたドライバーが再びレースに復帰する際の健康状態の確認も行います。各サーキットのスタッフと共に救出訓練を行い、救急の技量向上を担うのもメディカルデリゲートの役割です。
伊東和雄セーフティデリゲート(左)と山口孝治メディカルデリゲート(右)
──SUPER GTのレース中にトラブルがあるとFROが出動します。これはSUPER GT専属の組織と聞いていますが、なぜ必要なのか教えてください。
伊東 コース上で事故が起こった際には、できる限り早くドライバーを助けなければなりません。そのためには、セーフティカーや赤旗などでレースが中断された際にはいち早くコースインし、消火、救出などの活動を始めることが大切です。
SUPER GTは走行台数が多く2クラス混走で常にオーバーテイクが行われるため、レースが中断されてもすぐには緊急車両がコースインできないことがあります。
そこで現場に急行することに主眼を置いたFRO(First Rescue Operation)チームが作られました。FROはレーシングドライバーが運転し、いち早くコースインして現場に向かいます。そして事故現場ではFROが初期対応を行いながら、サーキットによる医療、消火、回収の専門チームに連携して救助活動を行います。
──FRO車両は何台が活動しているのですか? セーフティーカーとはどのように職務分担をしているのでしょうか?
伊東 公式戦では3台(3チーム)運用しており、最短時間で現場に到着できるようコース上に配置されます。(ただし今シーズンに限り、消火&レスキュー体制増強のためにFRO車両をもう1台使用しています)
セーフティーカーはコースや走行車両の管理を行いますが、FROは事故現場の作業や安全管理を担当します。FROは救出活動に加え、事故現場の手前で警告を促し、二次災害を防止する役割も担います。
トヨタ・ランドクルーザー プラド |
スバル・レガシィ アウトバック |
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ポルシェ・カイエン |
日産・PATROL NISMO
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──トラブルに対応するFROは、参戦するドライバーにも見ている観客にとっても頼もしい存在です。そのFROの装備やスタッフの役割を教えてください。
伊東 FRO車両は自動車メーカーなどの協力を得て、サーキット走行が可能な四輪駆動車を選定しています。コース外のグリーンやグラベル上でも走破できること、救出時の牽引力があること、また何よりもFRO乗員を守る頑丈なクルマが必要だからです。
各車両には、ドライバー、ドクター、ファイヤー&レスキューの3名が乗車します。
ドライバーはサーキット走行に習熟したレーシングドライバーが担当します。
ドクターは、レース医療経験豊富で救急医療に精通した医師です。
ファイヤー&レスキューは現場の消火活動、救出活動、そして車両回収やコース修復など、レース運営に精通した万能選手です。
またFROチームはレースコントロールにいるセーフティデリゲートと専用の無線でつながっており、GTAのレースダイレクターや競技長の指示を直接伝えながら活動します。
FRO車両には初期対応に特化した、救命医療、消火器材、救出用具を装備しています。興味のある方はSUPER GT各大会のピットウォークなどに参加していますので、ぜひ見に来てください。
──セーフティデリゲートという仕事のやりがいはどこにあるのでしょうか? どんなときに達成感を感じますか?
伊東 私たちはドライバーの命を守るために存在しているチームです。ドライバーが負傷するような事故がなく、安全でエキサイティングなレースが終わったときに最も達成感を感じます。
加えて申し上げると、大会中にお客様やレース関係者がけがをしたり急病になってしまうことがあります。サーキットに来たすべての人が安全に帰宅できることが何よりですので、皆さま自身も安全で楽しい週末をつつがなく過ごして、帰ってもらえたら何よりと思います。
伊東さん、興味深いお話しありがとうございました。
次回もお楽しみに!
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