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2019.12.20
【2019 シーズンプレイバック 第3回】GT500クラス総集編“NSX-GT”

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前年のチャンピオンマシン“NSX-GT”は苦悩の1年に…
連続ポールやルーキーの活躍など速さを見せるも、流れを引き寄せられずに年間1勝に終わる

 

壮絶な熱き勝負、感動のゴールなど記憶に残る多くのシーンがあった2019年のAUTOBACS SUPER GT。
シーズンを終えてSUPERGT.netでは、5回に渡り今季を振り返る「2019 シーズンプレイバック」をお送りする。
第3回は「GT500総集編」の第1弾として、昨年度のチャンピオンマシンであるHonda NSX-GTの2019年シーズンを、Hondaの開発担当者の言葉と共に振り返る。

 

 

■オールラウンダーを目指した2019年型NSX-GT

 2019年はRAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン)が“No.1”を背負って戦うことになったHonda陣営。昨年のHonda NSX-GTはインタークーラーをエンジン上部からサイドに移すという大改造を行った。これは見事に成功し、エンジン自体に格段のレベルアップはなかったものの、抜群のマシンバランスを得た。これが年間4勝(すべてポール・トゥ・ウイン)、6ポールポジション、チャンピオンへ繋がった。

 

   

 

 NSX-GTの開発を指揮するGTプロジェクトリーダーである佐伯昌浩氏(本田技術研究所 HRD Sakura)は、現行NSX-GTの2017年、2018年を振り返ってこう述べた。
「2017年シーズン用のクルマはスピードを求める方向に特化して開発しました。エンジンは正常進化というよりも大幅に手を入れ、車体でも軽量化と低重心化を進め、予選ではある程度競争力が発揮できたと思っています。
 2018年はレースで強いクルマを目指して、低重心化を進めてインタークーラーを低い位置に置き、熱い時期を凌いで寒い時期に結果を出す作戦でした。結果的に僅差でしたがタイトルを獲ることができました」

 昨年型はサイドに冷却系を移した結果、夏場のレースではエンジンのパワーダウンもあって苦戦も強いられた。佐伯リーダーの言うとおり承知の上ではあったが、2019年型ではエンジンを中心に改良を加え、オールシーズン戦えるマシンで2連覇を目指した。

 

   

 

 

■強雨のレースで3台がトップ争いを演じる

 そして迎えた開幕戦岡山。予選1、2位こそNISSAN GT-Rになったが、3位にNo.1 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/ジェンソン・バトン)、4、5位にもNSX-GTが並んだ。雨の決勝では抜群のバランスを活かし、1号車(山本)とNo.17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大)がトップを争った。悪条件のレースを“戦えた”2台ゆえに、接触してしまい共に脱落。その直後にレースが強雨のため中断となり、No.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/伊沢拓也)が優勝を手にした。

 

   

 

 第2戦はNSX-GTが苦手とする富士。予選は4位にNo.16 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/中嶋大祐)、6位に17号車(塚越広大/ベルトラン・バゲット)がつける。雨が降ったり止んだりの難しい天候となった決勝では、予選12位スタートの1号車が巧みなレース展開で追い上げをみせ、終わってみれば3位表彰台に上がった。

 第3戦鈴鹿は予選で8号車が3位。決勝はようやく晴れのレースだったが、逆に30度近い気温が厳しかったか、NSX-GT勢は精彩を欠く。しかも荒れた展開となり、17号車、16号車、1号車とトラブルや接触で次々に脱落。8号車も序盤に5番手まで下がるが、中盤に盛り返して4位でゴールした。

 続く、第4戦タイでも8号車(野尻)が予選Q1でトップタイムとなるが、ポールを目指したセッティング変更が裏目となったか8番手止まりで、1号車の予選7位が最上位だった。決勝でもNSX-GT勢は奮わず、なんと1号車と16号車、8号車が接触などでストップ(1号車は修復後に走行)、17号車も接触からパンクして完走できず。その中、No.64 Modulo Epson NSX-GT(ナレイン・カーティケヤン/牧野任祐)が10位となった。

 

   

 

   

 

 

■苦手の富士では2戦ともに驚異の追い上げを見せる

 そして2度目の富士のレース第5戦では、今季速さを見せているNo.17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大)が予選Q2で2番手を記録した。だが、タイム記録後の周にクラッシュ。赤旗中断の原因のペナルティでノータイムとなり、予選8位となる不運に見舞われる。このためNSX-GT勢の予選最上位は7番手のNo.64 Modulo Epson NSX-GTとなった。
 シーズン最長の500マイル(約805km)で行われた決勝レースは、2度のセーフティカーもあり、所定の周回前にレース最大時間で終了する荒れた展開となる。この混乱を巧みに利用したのが、予選10位スタートのNo.1 RAYBRIG NSX-GTだった。2度のピットイン前には5番手まで浮上。さらに2度目のセーフティカー解除の直後、各車が給油を焦って早々にピットインする中、1号車はもう1周を山本がフルプッシュ。これが当たってバトンは2番手でコースに戻る。さらに山本は終盤、背後に迫るNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(ロニー・クインタレッリ)を抑えきって2位でゴール。今季2度目の表彰台を得て、NSX-GT勢最上位のランキング5位に上がった。

 

   

 

「今年は富士での2戦が印象に残っています」と、佐伯リーダーは言う。
「どちらも優勝はできませんでしたが、第2戦では最後尾に近いところから追い上げて3位表彰台。第5戦でも後方から追い上げてトップ争いの末に2位。優勝こそできていませんが、これまでNSX-GTが弱いとされていた富士で、充分な戦闘力を発揮することができたことが印象深いです」

 

 

■64号車のルーキー牧野が猛追撃で2位表彰台を獲得

 第6戦オートポリスでは、予選でNo.17 KEIHIN NSX-GT(塚越)がポールポジション。予選2位にNo.8 ARTA NSX-GT(野尻)とフロントロウを独占。だが、決勝はスタート直後に雨が降り、その後は弱くなったり強くなったりと混乱の状況に。それでも17号車は何とか乗りきって、2位でフィニッシュした。

 

   

 

 第7戦スポーツランドSUGOでも、17号車の塚越がポールポジションで、予選2位にNo.1 RAYBRIG NSX-GT(山本)とNSX-GTが連続でフロントロウとなる。だが、このレースもスタート直前に雨が振り出し、様相は一変。スリックタイヤで臨んだ17号車は大きく出遅れてしまう。この雨のレースで活躍したのは、No.64 Modulo Epson NSX-GTだった。ドライ路面の予選でもQ1で牧野が2番手タイム。Q2でもカーティケヤンが6番手で、彼らの今季予選ベストにつける。そして、レインタイヤを選んだ決勝では、まずカーティケヤンが4〜5番手を走行し、後半は牧野が追い上げ、セーフティカーが導入されて間隔が詰まると、解除後の再スタートで2つポジションを上げる。勢いに乗る牧野は、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生)をも抜いて2番手に。トップには届かなかったが、64号車は2位で今季チーム初表彰台に上がった。

 

   

 

   

 

 最終戦ツインリンクもてぎは、予選で8号車(野尻)がQ1で4番手に入るが、Q2で伊沢は伸び悩み8位で終わる。ここでも17号車(塚越)の予選5位がNSX-GT勢のベストとなる。決勝でも思うようなパフォーマンスを発揮できず、17号車のポジションキープの5位がNSX-GTのベストだった。
 今季、随所に速さを見せたNSX-GT勢だったが、2019シーズンは全8戦で1勝、ポールポジション2回で終わる。またドライバーランキングでは、6位の塚越広大/ベルトラン・バゲット(No.17 KEIHIN NSX-GT)が最上位となった。

 

   

 

 佐伯リーダーは「2連覇を目指して臨んだ2019年でしたが、それは叶いませんでした。最後まで流れを自分たちに引き寄せられずに残念に思います。それでも苦手とされていた富士で、今季は良いパフォーマンスを見せることができました」と、2019シーズンを総括した。

 そして2020年シーズン、NSX-GTはCLASS1車両規定に準拠したマシンへと生まれ変わる。
 佐伯リーダーは2020年型NSX-GTの開発について、次のように教えてくれた。 「2020年シーズンの車両に関しては完成が遅れましたが、走り始めてからは順調で、トラブルなく進めることができています。今後はセパンでのテストなどを経て、ここから開発を急ピッチで進めていければ、と思っています」

 

 

 

 

 

※次回は「GT500クラス総集編:NISSAN GT-R NISMO GT500の2019年」をお送りします。

 

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