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2019.12.25
【2019 シーズンプレイバック 第4回】GT500クラス総集編“GT-R”

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ポール3回、表彰台4回も23号車はタイトルに届かず…
前半戦の抜け出た“速さ”も気まぐれな天気に翻弄される。それでも雨のSUGOは大逆転で3号車が勝利を手にする

 

壮絶な熱き勝負、感動のゴールなど記憶に残る多くのシーンがあった2019年のAUTOBACS SUPER GT。
シーズンを終えてSUPERGT.netでは、5回に渡り今季を振り返る「2019 シーズンプレイバック」をお送りする。
第4回は「GT500総集編」の第2弾として、タイトル奪還に挑んだNISSAN GT-R NISMO GT500の2019年シーズンを、NISMOの開発担当者の言葉と共に振り返える。

 

 

■開幕戦からの連続ポールポジションも勝利に繋がらず

 2019年の開幕前に行われた公式テストでは、No.12 カルソニック IMPUL GT-R(佐々木大樹/ジェームス・ロシター)が何度もトップタイムを記録。ドライバーと監督など体制を一新したNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(平手晃平/フレデリック・マコヴィッキ)以外はまずまずのテストを過ごした。

 

 NISMOでGT-R NISMO GT500の車体を担当する、車両開発部第1開発グループの坂本昌平マネージャーは今季型について、こう話してくれた。
 「昨年は辛い思いをしたので、オフの開発には普段以上に力が入っていました。具体的には軽量化を追求しました。もちろん最低重量は決められていますが、それより軽くして、搭載するウェイトでバランスを良くしていきます。2018年から2019年にかけても同じで、エアロそのものには手を加えることはできませんが、姿勢の制御などでエアロの性能をより引き出せるように開発してきました」

 

 それが速さに表れたか、開幕戦岡山では予選Q1ではトップ3をGT-Rが独占し、4台全車がQ2へ進出。Q2ではNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリがコースレコードでポールポジション。予選2位にも12 号車とGT-Rがフロントロウを占めた。だが、決勝は強い雨の中で始まる。2台のGT-Rはレインタイヤの暖気に時間が掛かり、Honda NSX-GT勢に先行される。だが、優勝こそ逃したが、上位陣の自滅もあって2、3位に23号車と12号車が入った。4、5位にもGT-Rが並び、まずまずの結果で初戦を終えた。

 

 

   

 

   

 

 

 続く第2戦富士は昨年優勝の得意コース。ここでも23号車のクインタレッリが、またもレコードタイムで連続ポールポジション。12号車も予選3位と上位に付けた。そして決勝はまたしても雨。その中で23号車(松田次生/クインタレッリ)とNo.38 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明)のトップ攻防が終盤まで続いた。途中、悪天候でレース中断、後半は雨が上がってドライ路面になるなど難しい局面の連続するレースに。結局、23号車は2戦連続の2位となった。また、新体制で今季に臨むNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが6位につけた。

 

 NISSAN GT-R NISMO GT500のエンジンを担当するNISMOのパワートレイン開発部の稲垣健夫デュプティ・ジェネラルマネージャーは、今季を振り返ってこの「ポールポジションを獲った第2戦の富士が印象に残っています」と言う。「ドライバーのがんばりが大きかったとは思いますが、想像以上の速さでしたね。(現行車両規定初年度の)2017年モデルは3年に1度の大きなチェンジが許されるので、エンジンでは燃焼の改善に取り組み、次の2018年は高回転化とターボラグを抑えることが大きなテーマになりました。アンチラグをできるだけ使わないようにして、燃費を良くしたいと考えていました。ただ、ドライバビリティでは効果が確認できましたが、高回転化では目標を達成できませんでした。そして今季の2019年モデルは、2020年モデルの開発と並行して行ったためにキープコンセプトとなりました」と、この3年間のエンジン面について話してくれた。

 

 

   

 

   

 

 

 

■第5戦のポールも23号車は展開に恵まれず3位に終わる

 連続2位のNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rは、第3戦鈴鹿でウェイトハンディが49kgになり、上位進出は難しくなる。決勝で23号車は高速コーナーでクラッシュし、早々にリタイア。結果、GT-R勢の最上位はNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-R(高星明誠/ヤン・マーデンボロー)の8位だった。

 

 第4戦タイでは、序盤速さを見せた23号車とNo.12 カルソニック IMPUL GT-Rに代わって、No.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rと24号車が活躍。予選Q1では3号車のマコヴィッキが2番手タイムを記録し、Q2では平手が3位を確定。24号車もQ1で高星が4番手で、Q2はマーデンボローが6位に。決勝では24号車がピットインの際に、隣接するピットのGT300車両と同時に入ってしまい作業でタイムロス。だが、代わった高星が8番手からハイペースで追い上げる。3番手のNo.19 WedsSport ADVAN LC500(坪井翔)の直後まで迫るが、抜くまでに至らず4位でゴール。3号車は序盤で遅れて一時5番手まで巻き返すも終盤に抜かれて6位だった。

 

 得意の富士に戻ってきての第5戦。23号車がQ1の松田、Q2のクインタレッリともにトップタイムを叩き出して、今季3度目、富士での連続ポールポジションを獲得。予選2番手にも3号車が入って、決勝レースはGT-Rがフロントロウを独占した。500マイル(約805km)の長丁場のレースでは23号車が前半をリードするも、2度導入されたセーフティカーのタイミングにも恵まれなかったこともあって、今季3度目の表彰台に上がったが3位に留まった。12号車は5位、3号車と24号車はマシントラブルでポイントを逃した。

 

 

   

 

   

 

 

 

■雨中の激走!第7戦SUGOでCRAFTSPORTS MOTUL GT-Rが優勝

 第6戦オートポリスではNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rが予選3位につける。決勝では序盤24号車のマーデンボローが2番手に浮上すると、ここで雨が降り出す。タイヤをレインに変えるチームも出たが、24号車は後半もスリックを選択。確かに終盤に雨は止んでほぼドライになるも、ペースは思いのほか上がらずに9位でフィニッシュ。他の3台も天気に翻弄され、ノーポイントだった。

 

 第7戦スポーツランドSUGOの予選では苦戦。Q1通過はNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rのみで、平手がQ1で5番手、Q2はマコヴィッキが予選7位を獲得。そして、決勝はまたしてもスタート前に雨が…。だが、今回は恵みとなる。仙台が夫人の実家でSUGOをよく知る平手の「降り続ける」と言うアドバイスで、レインタイヤを選んだ3号車は平手が順調に2番手までポジションを上げる。交代したマコヴィッキも改良されたミシュランのレインタイヤで好タイムを刻み、No.37 KeePer TOM'S LC500(平川亮)を抜いてトップに立つとそのままゴール。GT-Rにとっては今季初、平手とマコヴィッキはGT-Rでの初優勝を手にした。またNo.23 MOTUL AUTECH GT-Rも予選10位から確実に順位を上げ、なんと3位と今季4度目の表彰台を得た。

 

 23号車の松田/クインタレッリは、最終戦ツインリンクもてぎまでタイトルの可能性を残すも、ポールポジションを獲らなければ終了という厳しい状況。そのQ1で松田はトップタイム。そしてQ2でもクインタレッリが、一時トップに。だがライバルに逆転され、予選3位が確定。これでタイトル奪還は夢となる。決勝で23号車は思うようにペースが上がらず、結局8位でフィニッシュ。ドライバーランキングは3位で今季を終了。24号車は決勝10位。前戦優勝のNo.3 CRAFTSPORTS MOTUL GT-Rはレース前に、12号車もエンジンにトラブルが出て最終戦のリザルトを残せなかった。

 

 

   

 

   

 

 

 ツキに恵まれなかった感のある今季のGT-R NISMO GT500。最後に開発担当のエンジニアに今季の振り返りと、そして来季の新型車の開発状況を聞いた。
 車体担当の坂本氏は「シーズン序盤の2戦では、進化が速さとして証明され、印象に残っています。今季は、現行の規則のもとで自分たちが持っているものの中でベストなものが引き出せた、と思っています。ただ結果については、取りこぼしが少なくなかったので“それがなぜ起きたのか?”を分析して、2020年モデルはそういう面でも“強いクルマ”に仕上げたいと思っています」。
 また、エンジン担当の稲垣氏は「キープコンセプトだった2019年モデルは、シーズン後半には厳しくなってしまいました。同時に進めた2020年のエンジンでは出力アップと共に、振動の低減をテーマにしています」と、共に来季は“レースで強い”GT-Rを目指すようだ。

 

 

 

 

 

 

※次回は「GT500クラス総集編:LEXUS LC500の2019年」をお送りします。

 

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