News

News
2019.12.27
【2019 シーズンプレイバック 最終回】GT500クラス総集編“LC500”

【2019 シーズンプレイバック 最終回】GT500クラス総集編“LC500”の画像

ラストイヤーのLC500がタイトル奪還を果たす!!
ドライバーは6号車、チームは37号車がチャンピオンに。第2戦から5連勝を含む今季6勝と“レースの強さ”を発揮

 

壮絶な熱き勝負、感動のゴールなど記憶に残る多くのシーンがあった2019年のAUTOBACS SUPER GT。
シーズンを終えてSUPERGT.netでは、5回に渡り今季を振り返る「2019 シーズンプレイバック」をお送りする。
最終回は「GT500総集編」の第3弾、チャンピオンマシンに返り咲いたLEXUS LC500の2019年シーズンを、LC500の開発担当者の言葉と共に振り返える。

 

 

■まさに“お客様本位”のクルマづくりだったLC500の開発コンセプト

 2016年シーズンにRC Fでタイトルを獲得したLEXUS陣営は、2017年に新規定のLC500を投入するに当たってユーザー(チーム)が使いやすいマシンにすることを念頭にしたという。そして2017年は開幕戦から4連勝を含む5勝(全8戦)を挙げてドライバー&チームのタイトルを獲得した。しかし2018年は3勝に留まり、最終戦でタイトルを逃した。 GT500クラスに参戦するLC500の開発に携わった株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメントのテクノクラフト本部車両開発部、湯浅和基部長は、このLC500のコンセプトと2019年モデルの改良点を以下のように語る。
 「LC500を開発する際は、ドライバーやチームの要望を聞いて“運転しやすく、戦いやすい”がコンセプトでした。(2017年は2016年の3勝から)成績的にもV字回復できました。2018年仕様、2019年仕様はさらに速さと強さの追求を行いました。トラブルのリスクもありましたが、それも想定内で、素早く的確に対処しながら戦ってきました。結果的に“運転しやすく、戦いやすい”クルマになったと分析しています」
 そうして準備を始めた2019年開幕前の岡山公式テスト。タイムではLC500勢が上位に名を連ね、順調な出だしと思われた。

 

 

■悪夢となった開幕戦。だが第2戦富士までの2週間で立て直す

 そして迎えた開幕戦岡山国際サーキット。予選ではLC500を使う6チームのピットは、重い雰囲気に包まれていた。実はテスト時点からエンジンにトラブルが相次ぎ、開幕戦では安全策で本来の性能を制限して臨まなければならなかった。さらにライバル車種には性能向上もあったようで、明らかな苦戦となったのだ。予選でQ2に進めたのは、このコースを得意とするNo.37 KeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ)だけで、それでも予選7位が精一杯。雨の決勝では、No.19 WedsSport ADVAN LC500(国本雄資/坪井翔)の6位が最上位。ただし、強雨で所定の半分も周回できず、入賞したライバルたちの獲得ポイントが半分になったことは、苦戦のLC500勢にとって救いとなった。

 

 

   

 

 

 悪夢の開幕戦から3週間足らずで行われた第2戦。LEXUSのホームコースである富士スピードウェイで無様な走りはできないと、急遽の対策が施されたことで予選では37号車が2位に、No.39 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/中山雄一)も5位と立ち直りを見せた。500kmと長い決勝レースでは、予選7位のNo.38 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明)の立川が序盤の悪天候も味方につけて、ジャンプアップしてNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(ロニー・クインタレッリ)とトップを争う。後半に雨が止んでドライ路面になっても38号車のスピードは落ちず。このまま38号車は、悪夢を払拭する今季初優勝を手にした。

 

 

   

 

 

 この時を振り返って湯浅部長は「開幕戦は苦戦したことで印象に残っています。昨年後半からNSX-GT勢が速く、またオフにはGT-Rの12号車(カルソニック IMPUL GT-R)も速かったから、開幕前には戦々恐々としていた部分があったのです。でも(開幕戦では苦戦もしたがシーズンでは)自分たちは想定通りのレースができました」と語る。2020年マシンの同時開発の中、大きな進化がない2019年のLC500が苦戦するのは、ある意味折り込み済みだったのかもしれない。

 

 

■第4戦タイと第5戦富士で6号車が連勝!ランキングをリードする

 立ち直ったLC500勢は第3戦鈴鹿では、TEAM TOM'Sの2台が主役だった。ポールポジションはNo.36 au TOM'S LC500(中嶋一貴/関口雄飛)、予選2位にはNo.37 KeePer TOM'S LC500とフロントロウを独占した。決勝もこの2台が先行して、そのままゴール。36号車と37号車のワン・ツーとなり、3位にもNo.39 DENSO KOBELCO SARD LC500が食い込んで、LC500としては前年第4戦タイ以来の表彰台独占となった。優勝した36号車だが、前戦富士でエンジントラブルを起こし、この第3戦では後半用の新エンジンを先行投入。このエンジンは本当の意味での開幕戦の対策&進化バージョンだったようで、この後のLC500勢の躍進を期待させるに十分の出来だった。

 

 

   

 

 

   

 

 第4戦はタイのチャン・インターナショナル・サーキット。予選Q1で8位と苦戦したNo.6 WAKO'S 4CR LC500はドライブした大嶋和也が、サスペンションのダンパーを代えるという大きな変更を提案。それを受け入れたチームはわずかな時間で作業を完了。そしてベストな状態で臨んだ山下健太がレコードタイムで自身初のポールポジションを獲得した。
 決勝では、第3戦から好調を保つTOM'Sの2台と6号車の首位攻防となる。後半は先行する6号車の山下に対して、36号車とのバトルを制した37号車のキャシディが背後に迫る。同世代で全日本F3選手権時代からのライバルであり、2017年GT500チャンピオンであるキャシディの猛攻に、山下も一歩も引かず。サイド・バイ・サイドの攻防を抑えきった山下が、トップでゴール。山下はGT500の初優勝、大嶋とチームにとっては6年ぶりの勝利となった。そして、2、3位には37号車とタイを得意とするNo.19 WedsSport ADVAN LC500が入り、連続の表彰台独占。これでドライバーランキングでは、6号車、37号車、38号車がトップ3に並んだ。

 

 

   

 

 

 第5戦富士は、ランキング上位のウェイトハンディが増えたことで6号車や37号車は苦戦するも、予選3〜5位に19 号車など3台のLC500が並んだ。シーズン最長の500マイル(約805km)で行われた決勝は、セーフティカーが導入される荒れた展開となる。この中、予選11位に甘んじた6号車が快走を見せ、中盤までに2、3番手までポジションを上げる。ここでアクシデントが発生するが、2回目のセーフティカーが導入される直前に、山下とチームの好判断でルーティンのピットイン。これが功を奏して、見事トップに躍り出て連勝を飾る。また、37号車も4位に入ってタイトル争いに食い下がった。

 

 

   

 

 

 

■最終戦で3台による名勝負を繰り広げてLC500は幕を下ろした

 オートポリスの第6戦もレース序盤に雨が降り出す。滑りやすい路面の中、No.39 DENSO KOBELCO SARD LC500のコバライネンが好走を見せて予選5位から3番手に浮上。タイミング良くピットインして、レインタイヤに履き替えると後半はトップに立つ。ここでGT500ルーキーの中山が安定した走りで逃げ切ってフィニッシュ。中山は嬉しい初勝利となり、LC500としては1997年にトヨタ・スープラが達成して以来の1シーズン5連勝となった。また、後半にスリックタイヤを選んだNo.37 KeePer TOM'S LC500の平川は、雨が止み乾きだしたラスト5周で8番手から3位に上がる驚異的な追い上げを見せた。

 残り2戦となった第7戦スポーツランドSUGOでは、タイトルへのサバイバルとなる。予選では3位にNo.36 au TOM'S LC500が、4位に37号車がつける。ランキングトップのNo.6 WAKO'S 4CR LC500は8位。決勝はまたしてもスタート直前に雨が降って混戦に。この中、しぶとく走りきった37号車が4位でランキング2位。6号車は6位となり37号車と7点差でランキングトップをキープ。最終戦のタイトル争いは事実上この2台に絞られた。

 

 

   

 

   

 

 

 そして最終戦ツインリンクもてぎでは36号車がポールポジション。前戦は予選3位ながら、第3戦で投入した2基目のエンジンが限界で3基目を投入したため、レースでペルナティストップを余儀なくされたが、パフォーマンスは本領を発揮する。そして、レースで2位以上が必要な6号車が見事に予選2位。逆転には優勝して、6号車が3位以下という条件の37号車は予選4位につける。

 

 

   

 

 

 決勝序盤は6号車(大嶋)が5番手まで落ちるも、タイヤが温まると3番手まで盛り返す。一方37号車(キャシディ)は2番手まで浮上し、このままだと37号車が逆転タイトルとなる。ルーティンのピットが終わり、アウトラップでコースアウトしたトップ36号車(関口)に37号車の平川が迫ってパス。このまま37号車が優勝すれば、6号車は2位にならなければタイトルを奪われてしまう。ここで6号車の山下が猛然とスパートして36号車の背後に迫る。ここから2台のLC500による手に汗握る名勝負が展開。90度コーナーで「何があっても抜く!」と気持ちを持った山下がインを突くと、関口がクロスラインを取りビクトリーコーナーで並びかける。2台は譲らないサイド・バイ・サイドでコースをはみ出し、わずかに前に居た6号車が先にコースに戻った。これで2番手に上がった山下だったが、接触の影響で振動が生じてペースが上がらない。しかし36号車も同様だったようで、これで決着となった。最終戦は優勝が37号車。2位に6号車、3位が36号車。さらに4位もNo.38 ZENT CERUMO LC500と、LC500にとってのシリーズ・ラストレースはトップ4を独占して終えた。
 シリーズタイトルはドライバーがNo.6 WAKO'S 4CR LC500の大嶋/山下が獲得。チームはNo.37 KeePer TOM'S LC500となり、LC500としては3シーズンで2回目のタイトル独占、全24戦で14勝という素晴らしい勝率を打ち立てた。

 

 

   

 

   

 

   

 

 

 LC500のラストレースを見守った 湯浅部長は「やはり最終戦のもてぎは、良い意味で印象に残りました。LC500同士で優勝とチャンピオンを争って、お客さんにも満足してもらえるレースができましたから」と振り返り、「ライバルの2社さんはレースで苦戦が多い…。そんなシーズンでしたね」と締めた。
 2020年シーズンは話題の新型車“GR Supra GT500”が参戦。現在着々と開発とテストが進んでいる。「開発中のGR Supraは、使用する共通パーツが変更されたこともあって不具合も出たりしていますが、ほぼ予定通りに開発を進めています。NSX-GTが苦労するんじゃないか、と思っていましたけど、順調に走っていて“やはり手強いな”と感じています。いずれにしても、まだまだ開発途上です。エアロ開発が(規定により)凍結されるまで、各車のパフォーマンスや戦力は分析できないですね。そう思って、今は自分たちの開発に集中しています」と、ニューマシンであるGR Supraの状況について語ってくれた。

 

 

 

Page Top