News

Special
2020.04.28
【SUPER GT 名勝負列伝】「GT-Rの敵は、GT-R。R35 GT-Rのデビュー」2008年開幕戦鈴鹿

【SUPER GT 名勝負列伝】「GT-Rの敵は、GT-R。R35 GT-Rのデビュー」2008年開幕戦鈴鹿の画像

2008 AUTOBACS SUPER GT Round 1 SUZUKA GT 300km / 2008.3.16 SUZUKA CIRCUIT

2020年のSUPER GTはシリーズの開幕が延期となってしまったので、SUPERGT.netでは「SUPER GT 名勝負列伝」と題し、SUPER GT(2005年〜現在)で行われたシリーズ123戦から、名勝負として名高いレースを紹介していく。

まずは、2008年の第1戦鈴鹿。GT-RがR35の“NISSAN GT-R”となってのデビュー戦。「GT-Rの敵は、GT-R」のバトルをプレイバック!


 

   

 

日本だけでなく世界も注目した一戦となる

 2008年の開幕戦「SUZUKA GT 300km」。決勝日の3月16日、鈴鹿サーキットは3万2000人もの大観衆で沸いていた。お目当てはこのレースでデビューする新型車、通称R35のNISSAN GT-Rだ。当時、日産自動車復活の証として進められた“GT-Rのカムバック”。その大事な布石がSUPER GT参戦、いやSUPER GTで新たな“GT-R伝説”を創ること。それだけに、ファンはもとより、国内外のマスコミからも大いに注目を集めた。

 そして、5台の新型GT-Rがグリッドに着く。予選1位、ポールポジションに位置したのは、「パーフェクトな走りができた」と言うNo.22 MOTUL AUTECH GT-R(ミハエル・クルム/柳田真孝)のクルムだった。

 

必勝のプレッシャーとも戦うドライバーたち

 日産のエースナンバー“23”を背負うNo.23 XANAVI NISMO GT-R(本山哲/ブノワ・トレルイエ)は、わずか0.267秒差で予選2位。「ベン(トレルイエの愛称)が勢いで攻めるのは分かっていた。だからもう少し車高を上げるべきだった…」と担当エンジニアは悔いる。確かに攻めすぎたトレルイエは、2コーナーの縁石に乗り、車体の底を打ってタイムロスをした。“新しいGT-Rで勝つこと”を義務付けられた23号車の2人。鈴鹿に入ってから、いつも陽気なトレルイエからは笑みが消え、本山が緊張をほぐそうと苦労するほどだった。
 だが、予選の失敗はレースで取り戻せばいい。「レースではよくあることだよ」と、トレルイエも引きずらない。決勝スタートで彼は好スタートを切り、先行する22号車のクルムを僅差で追っていく。2台のGT-Rは3番手のNo.36 PETRONAS TOM'S SC430(アンドレ・ロッテラー)をわずか2周で1秒以上、10周で5秒も後方にし、マッチレースを繰り広げる。

 息詰まる接戦を見た本山とエンジニアは「先に入ろう」と、当初の作戦を変更してピットインを22号車より先に行うことを決断した。
 ヘルメットを被り、交代に備える本山は「心臓がバクバクしていた。自分で胸を触って分かるくらい。そんなこと、今までになかったんですよ」と語る。JGTC/SUPER GTで2度、フォーミュラ・ニッポンでも3度のタイトルを獲得する“日本一速い男”にも、重圧がのし掛かっていた。「GT-Rでデビュー・ウィンをする。クルマも良かったから、日産も、NISMOも、自分たちでも常に言っていましたから。すごいプレッシャーでした」。

 

■GT-R同士の戦いを制し、23号車が逆転勝利

 しかし、ステアリングを握れば平常心が戻ってくる。22周でトレルイエがピットイン。NISMOのメカニックたちもノーミスで仕事をこなす。本山も重要だったというアウトラップを細心に、かつ最速でクリア。次の周にピットに入った22号車は、柳田にバトンが渡った。ピット時間は給油量の差か、わずかに22号車が早かった。だが、コースに出た彼のミラーには微かに23号車が見えていた。
 柳田はこの時28歳、GT500クラスで3シーズンの実績を積み上げていた。まだタイヤが温まらない中、できる限りの努力はしたはず。しかし、容赦なく本山は柳田を追い詰めていく。
 そしてヘアピン。出口でGT300車両に詰まった22号車のインに23号車のノーズをねじ込んだ。もちろん状況を考えれば、この後にもっと安全な抜き方もできたろう。だが、23号車は格の違いを見せつけるように前に出たのだ。

 このまま本山の23号車は先頭を譲らす、22号車を従えてゴール。R35 GT-Rは、見事デビュー戦をワン・ツー・フィニッシュで飾ることとなった。
 勝ちきれなかった悔しさを残した22号車の柳田。彼は翌年、再度GT300クラスに戻っている。そうして2010年に2度目のクラスチャンピオンとなり、再度GT500クラスに上がった2011年。同い年のロニー・クインタレッリと組んで、チャンピオンを獲得して翌年も連覇。現在でも両クラスで2度の制覇を達成した、ただ1人のドライバーだ。

 さて2008年開幕戦を制したNo.23 XANAVI NISMO GT-Rは、続く第2戦岡山も連勝。そのままランキングトップを独走するかに思えたが、シーズン中盤は増えたウェイトハンディ(WH)もあって苦戦。それでもWHが減った(※)第8戦オートポリスで3勝目を挙げ、最終戦富士では再び80kgを背負うもポイント重ねて、辛くも本山/トレルイエがドライバータイトルを手にした。
 なお2008年全9戦でGT-Rは7勝もしているが、なんとチームタイトルは未勝利ながら全戦で得点したNo.36 PETRONAS TOYOTA TEAM TOM'Sが獲得している。かくもSUPER GTは難しいレースなのだ。

 

※ 当時のウェイトハンディ制では、決勝6位以下で次戦のハンデ重量が軽減。但し、終盤2戦でもハンディは搭載された。

 

 


No.22 MOTUL AUTECH GT-R(ミハエル・クルム/柳田真孝)
決勝2位/予選1位
 

   


No.36 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー)
決勝3位/予選4位
 


No.38 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/リチャード・ライアン)
決勝4位/予選5位
 

   


No.24 WOODONE ADVAN Clarion GT-R(J.P.デ・オリベイラ/荒 聖治)
決勝5位/予選8位
 


No.35 宝山 KRAFT SC430(ピーター・ダンブレック/片岡龍也)
決勝6位/予選15位
 

   


No.18 TAKATA 童夢 NSX(道上 龍/小暮卓史)
決勝7位/予選6位
 


No.17 REAL NSX(金石勝智/金石年弘)
決勝8位/予選12位
 

   


No.12 カルソニック IMPUL GT-R(松田次生/セバスチャン・フィリップ)
決勝周回数不足/予選3位
 

 

 

 

 

 

2008 AUTOBACS SUPER GT 第1戦 SUZUKA GT 300km/鈴鹿サーキット

公式予選:2008年3月15日(土) 天候:晴・曇り/コース:ドライ

決勝レース:2008年3月16日(日) 天候:晴/コース:ドライ

Po No Machine Driver Laps Time Tire Q-Pos
GT500
1 23 XANAVI NISMO GT-R 本山 哲/ブノワ・トレルイエ 52 1:44'03.977 BS 2
2 22 MOTUL AUTECH GT-R ミハエル・クルム/柳田 真孝 52 0'00.854 BS 1
3 36 PETRONAS TOM'S SC430 脇阪 寿一/アンドレ・ロッテラー 52 0'25.551 BS 4
4 38 ZENT CERUMO SC430 立川 祐路/リチャード・ライアン 52 0'32.757 BS 5
5 24 WOODONE ADVAN Clarion GT-R J.P・デ・オリベイラ/荒  聖治 52 0'47.966 YH 8
6 35 宝山 KRAFT SC430 ピーター・ダンブレック/片岡 龍也 52 1'12.218 BS 15
7 18 TAKATA 童夢 NSX 道上 龍/小暮 卓史 52 1'23.777 BS 6
8 17 REAL NSX 金石 勝智/金石 年弘 52 1'37.516 BS 12
9 6 ENEOS SC430 伊藤 大輔/ビヨン・ビルドハイム 52 1'42.861 BS 13
10 32 EPSON NSX ロイック・デュバル/平中 克幸 52 1'45.416 DL 7
11 25 ECLIPSE ADVAN SC430 土屋 武士/石浦 宏明 51 1Lap YH 14
12 39 DENSO DUNLOP SARD SC430 高木 虎之介/アンドレ・クート 51 1Lap DL 16
13 100 RAYBRIG NSX 井出 有治/細川 慎弥 51 1Lap BS 9
14 1 ARTA NSX ラルフ・ファーマン/伊沢 拓也 47 5Laps BS 10
15 3 YellowHat YMS TOMICA GT-R ロニー・クインタレッリ/横溝 直輝 41 11Laps BS 11
  12 カルソニック IMPUL GT-R 松田 次生/セバスチャン・フィリップ 35 17Laps BS 3

・タイヤ=BS:ブリヂストン/DL:ダンロップ/YH:ヨコハマ

 

→ 2008 AUTOBACS SUPER GT 第1戦 SUZUKA GT 300km

Page Top