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2020.05.08
【SUPER GT 名勝負列伝】「ARTA NSXが意地のポール・トゥ・ウイン 先代NSXのラストレース」2009年最終戦もてぎ

【SUPER GT 名勝負列伝】「ARTA NSXが意地のポール・トゥ・ウイン 先代NSXのラストレース」2009年最終戦もてぎの画像

2009 AUTOBACS SUPER GT Round 8 MOTEGI GT 250km / 2009.11.8 TWIN RING MOTEGI

SUPERGT.netでは2020年のSUPER GTシリーズ開幕まで「SUPER GT 名勝負列伝」と題し、SUPER GT(2005年〜現在)で行われたシリーズ123戦から、名勝負として名高いレースを紹介していく。

第3回は、GT500クラスの車両規定が大きく変わった2009年の第9戦(最終戦)のもてぎ。先代NSX(NA2)のラストレースとなったバトルです。「ARTA NSXが意地のポール・トゥ・ウイン」の一戦をプレイバック!

 


 

   

 

GT500車両規定の変更でラストイヤーとなったNSX

 2009年はGT500クラスの車両規定が大きく変わった。これまでベース車両のものだったモノコック(車体の基本部分)がカーボン素材のレース専用に、エンジンはV型8気筒・3400ccの自然吸気に統一。駆動レイアウトはFR(フロント・エンジン/リア2輪ドライブ)となる。また空力面ではダウンフォースが前年比40%減と大幅にダウンした。しかし、規定に合致した車両はトヨタ/LEXUSのSC430だけ。NISSAN GT-Rのエンジンは前年の4500ccのV8のままで、出力制限と最低車重増の条件で参戦する。

 そしてHonda NSXはベース車両自体がFRではなく、ミッドシップだ。そこでHondaは空力面とエンジンを新規定に合わせたNSXをこの年のみ暫定的に使用。このためか最終戦もてぎ前の8戦を、NSXは1勝、ポールポジション1回と苦戦。そして最終戦を前に、Hondaは2010年より新たなFR車両の投入と2009年でNSXの参戦終了を発表した。

 

ノーハンディの最終戦予選で“最速”を証明

 最終戦の予選日は、好天に恵まれる。予選1回目ではNo.36 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー)がトップ。2番手はNo.8 ARTA NSX(ラルフ・ファーマン/伊沢拓也)が僅差で続く。どちらもタイトルの可能性を残すが、8号車は優勝が最低条件と厳しい状況だ。
 予選2回目は、3段階のノックダウン方式(※1)。最終セッションでポールポジションを決めたのは8号車のファーマン。36号車のロッテラーは僅差の2番手。そしてランキングトップのNo.1 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ブノワ・トレルイエ)は、本山のアタックで5番手。本山のチャンピオン連覇(トレルイエは第6戦欠場)に黄信号が点った。

 NSX-GTプロジェクトリーダーである白井裕氏は「規定上、大きく変えることはできないが、最終戦もてぎに向けてエンジン制御やブレーキ対策などやれることは全部やった」と前日厳しい表情で語っていた。だが予選日の夜に行われた「ありがとうNSX」のパーティでは満足感ある表情でこう語る。「正直、ノーウェイト(ハンディ)の最終戦(※2)、Hondaホームのもてぎでポールが獲れて嬉しい。最後まで“NSXは速い”と証明できた」。決勝はアクシデントなど不可抗力もあるため、クルマの真価がより問われるのは予選だと言われる。第5戦富士でNo.32 EPSON NSXがポールポジションを得たが、この時は雨も利した。それだけに最終戦の予選は、是が非でもポールポジションだったのだろう。

 

※1 当時は各大会によって公式予選の方式が選択でき、「スーパーラップ」方式と「ノックダウン」方式と呼ばれていた。
※2 2009年より現在同様に最終戦まで全戦参戦の車両はウェイトハンディを免除される競技規則となった。

 


ラストレースに臨むARTA NSXのルーフにはNSXとファンに向け
「ありがとう」の文字(本田宗一郎の筆)が書かれた。
 

   


決勝日の朝には、最終戦もてぎに参戦したNSX5台と各チーム、
Honda関係者が勢揃いで記念撮影を実施。
 

 

 

NSXは最終戦を勝利で飾り、SC430の脇阪組がタイトル獲得

 決勝レースではポールポジション、8号車のファーマンがスタート直後の2コーナーで36号車のロッテラーに先行を許す。36号車はソフトなタイヤを選択しており、ここは彼らの作戦勝ちか。それでも8号車も36号車をピタリと追走する。
 この後方では4番手争いがヒートアップ。No.1 MOTUL AUTECH GT-Rのトレルイエと、No.38 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/リチャード・ライアン)のライアンが抜きつ抜かれつのバトルを展開。ここでトレルイエがソフト目のタイヤに負担を強いたのか、ピットインを目前に左フロントがバーストし、フェンダーも破損。ピットでの修復に入った1号車はポイント圏外となり、タイトル争いから脱落した。

 トップの36号車もソフトタイヤだけに早めの22周にピットインし、脇阪に交代する。これで暫定トップになった8号車のファーマンに、チームからスパート指令が出る。これがズバリ当たり、32周目にピットを終えた8号車は36号車の前で戻り、実質トップに復帰。
 勝利を託された伊沢は2007年チャンピオンの伊藤に代わり、前年からARTAのレギュラーとして抜擢された。前戦オートポリスで初勝利を挙げたが、「本当に今までにないくらいのプレッシャーを感じた」と、この時の心境を語る。しかも35周目にGT300車両がトラブルからオイルをコースに撒き、セーフティカーが入る事態に。「僕の時にSCが出たのは初めてで、手順がよく分からなくて(チームに)無線で確認しました。リスタートからはもうプッシュするだけでした」。

 リスタートを上手く決めた伊沢は、2番手の36号車を引き離す。だが、36号車はもはや8号車を追う必要はない。1号車が脱落して、タイトルは3位でも獲得可能だからだ。予選9位から追い上げてきたNo.17 KEIHIN NSX(金石年弘/塚越広大)の塚越が迫るも、貯めたマージンを使いタイヤをいたわり、脇阪はポジションをキープする。

 No.8 ARTA NSXは結局36号車に8.8秒の差をつけ、逃げ切ってゴール。序盤こそトップを譲ったが、完勝で先代NSXのラストレースを締めた。
 No.36 PETRONAS TOM'S SC430は最終ラップで17号車に直後まで迫られるも、2位を守った。脇阪は3度目、ロッテラーは2度目のドライバーチャンピオンを決め、チームタイトルもNo.36 LEXUS TEAM PETRONAS TOM'Sが獲得した。

 NSX(NA1/NA2)は1997年全日本GT選手権第2戦富士以来、13年間で106戦(※)に参戦し、車種として当時最多の39勝、ポールポジション49回を記録。また1998年は4連勝(1998~99年では6連勝)し、ポールポジションは全7戦で獲得(1997~99年では10戦連続)している。

 

※オールスター等の特別戦も含む。1996年に参戦したNSXは英国のガレージがル・マン参戦仕様に独自製作した車両は除く。

 

 

 


No.36 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪 寿一/アンドレ・ロッテラー)
決勝2位/予選2位
 

   


No.17 KEIHIN NSX(金石年弘/塚越広大)
決勝3位/予選9位
 


No.6 ENEOS SC430(伊藤大輔/ビヨン・ビルドハイム)
決勝4位/予選3位
 

   


No.39 DUNLOP SARD SC430(アンドレ・クート/平手晃平)
決勝5位/予選8位
 


No.32 EPSON NSX(ロイック・デュバル/中山友貴)
決勝6位/予選13位
 

   


No.1 MOTUL AUTECH GT-R(本山 哲/ブノワ・トレルイエ)
決勝14位/予選5位
 

 

 

 

 

2009 AUTOBACS SUPER GT 第9戦 MOTEGI GT 250km/ツインリンクもてぎ

公式予選:2009年11月7日(土) 天候:晴/コース:ドライ

決勝レース:2009年11月8日(日) 天候:曇/コース:ドライ

Po No Machine Driver Laps Time Tire Q-Pos
GT500
1 8 ARTA NSX ラルフ・ファーマン/伊沢 拓也 53 1:43'30.913 BS 1
2 36 PETRONAS TOM'S SC430 脇阪 寿一/アンドレ・ロッテラー 53 0'08.829 BS 2
3 17 KEIHIN NSX 金石 年弘/塚越 広大 53 0'09.010 BS 9
4 6 ENEOS SC430 伊藤 大輔/ビヨン・ビルドハイム 53 0'10.440 BS 3
5 39 DUNLOP SARD SC430 アンドレ・クート/平手 晃平 53 0'12.653 DL 8
6 32 EPSON NSX ロイック・デュバル/中山 友貴 53 0'13.417 DL 13
7 12 IMPUL カルソニック GT-R 松田 次生/セバスチャン・フィリップ 53 0'19.213 BS 10
8 100 RAYBRIG NSX 井出 有治/細川 慎弥 53 0'25.402 BS 11
9 35 KRAFT SC430 石浦 宏明/大嶋 和也 53 0'26.900 BS  
10 18 ROCKSTAR 童夢 NSX 道上 龍/小暮 卓史 53 0'27.811 BS 6
11 24 HIS ADVAN KONDO GT-R J.P・デ・オリベイラ/荒 聖治 53 0'38.254 YH 12
12 3 HASEMI TOMICA EBBRO GT-R ロニー・クインタレッリ/安田 裕信 53 0'42.655 MI 7
13 38 ZENT CERUMO SC430 立川 祐路/リチャード・ライアン 53 1'28.331 BS 4
14 1 MOTUL AUTECH GT-R 本山 哲/ブノワ・トレルイエ 48 5Laps BS 5

・タイヤ=BS:ブリヂストン/DL:ダンロップ/MI:ミシュラン/YH:ヨコハマ

 

→ 2009 AUTOBACS SUPER GT 第9戦 MOTEGI GT 250km

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