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2020.05.12
【SUPER GT 名勝負列伝】「涙の完勝劇。初音ミクグッドスマイルが初タイトル」2011年最終戦もてぎ

【SUPER GT 名勝負列伝】「涙の完勝劇。初音ミクグッドスマイルが初タイトル」2011年最終戦もてぎの画像

2011 AUTOBACS SUPER GT Round 8 MOTEGI GT 250km RACE/ 2011.10.16 TWIN RING MOTEGI

SUPERGT.netでは2020年のSUPER GTシリーズ開幕まで「SUPER GT 名勝負列伝」と題し、SUPER GT(2005年〜現在)で行われたシリーズ123戦から、名勝負として名高いレースを紹介していく。
第4回は、GT300クラスの名勝負。2011年の第8戦(最終戦)もてぎ。初音ミク グッドスマイル BMWは、あるドライバーの加入により大きく成長。それを証明した一戦です。「涙の完勝劇」のバトルをプレイバック!

 


 

   

 

苦渋の第7戦。谷口の一言が番場の胸に刺さる

「番場。頼むから俺にチャンピオンを獲らせてくれ」。2011年第7戦オートポリスを終え、空港に向かう車中。谷口信輝はいつもと違う静かな声で、相棒の番場琢に伝えたという。
 この第7戦、ランキングトップのNo.4 初音ミク グッドスマイル BMWは、No.11 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)と競っていた。予選7位スタートの谷口は、11号車ともう1台を抜いて5番手に浮上。だが、後半を託された番場は11号車の平中に抜かれ、さらに後退して9位でゴール。対して11号車は順位を上げて、今季4回目の2位となった。
 第7戦を終えて11号車の田中/平中組はランキングトップ、4号車の谷口/番場組は5ポイント差の2位。最終戦もてぎのチャンピオン争いは、この2台のマッチレースとなる。

 

雨の予選。緊張の中、番場の好走でQ2を1位通過
 谷口はこの年40歳。16歳でオートバイにはまるも、偶然見かけたクルマのドリフトに魅入られてドリフト競技を始める。そして30歳でツーリングカーレースへ。翌年早くも全日本GT選手権GT300クラスに参戦。すると2010年までに6勝。何度もタイトルに絡むが、あと一歩及ばず…。そんな折りに“初音ミク”を掲げるグッドスマイルレーシングが、谷口に声を掛けてきた。すでに他チームと交渉中だった谷口だが、彼らは谷口の課した“条件”に真摯に対応。“勝てる”と見た谷口はBMW Z4のシートに収まる決断をした。

 谷口のパートナーは、TOM'Sから全日本F3選手権に参戦したこともある番場。2009年第6戦鈴鹿からチームに加入し、予選下位常連を予選12位に引き上げ、2010年の最終戦では決勝10位へとチームに貢献する。
 2011年、ニューマシンBMW Z4 GT3を得た谷口と番場は第3戦セパン、そして第6戦富士と2回のポール・トゥ・ウインを決めて一躍タイトル争いの本命に躍り出た。しかし、番場は第7戦オートポリスであの走りをしてしまう。速さはあるが、走りに時おり波があるのが当時29歳の本人にも課題であり、谷口の“お願い”の理由だった。

 2011年のAUTOBACS SUPER GT最終戦(第8戦)「MOTEGI GT 250km」の予選日は、あいにくの雨。マシンの性格から11号車のフェラーリ458GTCはコーナーが速く、4号車のBMW Z4 GT3はストレートが速い。雨ならストレートで稼げる4号車が有利だ。だが、11号車の田中はGT500クラスで優勝もしているベテラン。平中もGT500経験者で、共にフェラーリのGT経験も豊富で、予選3位と“勝てる”位置を得る。
 4号車も番場が予選Q2を1位通過。Q3は谷口がポールポジションを決める。Q2を谷口という安全策でなく、早くからチームは番場に託していた。「最終戦は並々ならぬ決意で挑みました。おかげでくちびるにヘルペス(潰瘍)ができるほど(精神的に追い込まれた)」。番場は大きなプレッシャーの予選を、まずは成功させた。

   

 

 

今季初スタートを番場が決め、谷口が逃げ切る

 運命を決める決勝。午前は雨も、昼前に上がって路面はドライ。4号車のスタート担当はこれまでは谷口だが、ドライとなったことで乗れている番場を指名する。
「第7戦が終わってからの2週間。自分でできること全部やって来たつもりです。だから初めてのスタートでも気持ちも変わらず、いつもと同じようにしっかり集中すればちゃんと結果がでると信じてました」。言葉通りに番場は好スタートを決める。
 追うべき11号車の田中だったが、No.62 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也/佐々木孝太)の佐々木に抜かれて3番手に後退。だが62号車にトラブルが発生し、再び2番手に戻るが4号車との差は4秒と開いていた。

 19周目、11号車はいつもの作戦で早めのピットイン。46秒の作業で平中を送り出す。4号車も次の周にピットへ。メカニックが40秒の早技を決め、谷口を実質トップのまま戻した。これで4号車と11号車は11秒まで開いた。
 こうなれば谷口は無理をせず安定のラップを刻む。一方、11号車のペースは上がらず。ピットスタートで猛追のNo.33 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)の藤井に2番手を奪われ、終盤も順位アップは叶わなかった。

 No.4 初音ミク グッドスマイル BMWは、今季3回目のポール・トゥ・ウインを達成。初参戦の2008年第6戦鈴鹿は公式予選を走ることもできず。前年の当初には参戦が危ぶまれる危機もあった。だが、この日彼らはもっとも速く、そして強かった。
 念願のGT300タイトルを掴んだ谷口は、マシンを降りると人目をはばからず号泣。もちろん、初タイトルの番場も目にも涙が…。

「僕らには運もあった。62号車や33号車が本来のレースをしていたら、勝てなかったかもしれない」とレース後に谷口は述懐する。確かに4号車が3位、11号車が4位ではタイトルは逃していた。「でも、(心配だった)番場がどうあれトップを守ってくれたからOKです! あとは『(トップを)絶対守ってやる』という気持ちで走りました。このチームに移籍するにあたり、まだまだのレーシングチームでしたから、辛口、憎まれ口、わがままもたくさんに言いました。でもメンテナンスのRSファイン、タイヤのヨコハマさん、そして(アドバイサーの片山)右京さんも僕たちを盛り立てて、(監督2年目の)大橋監督もすごく(レースを)勉強して、この一年で一気に成長したチームでした」とシーズンを振り返った。

 この後、グッドスマイルレーシングは谷口と共にGT300タイトルを2度獲得。欧州のGT耐久レースにも挑戦し、名実共に強豪へと躍進する。2011年の最終戦もてぎは、その最初のステップになった一戦であった。

 

 

 


No.33 HANKOOK PORSCHE(影山正美/藤井誠暢)
決勝2位/予選7位
 

   


No.11 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458(田中哲也/平中克幸)
決勝3位/予選2位
 


No.66 triple a Vantage GT2(吉本大樹/星野一樹)
決勝4位/予選6位
 

   


No.88 JLOC ランボルギーニ RG-3(井入宏之/関口雄飛)
決勝5位/予選3位
 


No.62 R&D SPORT LEGACY B4(山野哲也/佐々木孝太)
決勝6位/予選5位
 

   


No.43 ARTA Garaiya(高木真一/松浦孝亮)
決勝7位/予選4位
 

 

 

 

 

2011 AUTOBACS SUPER GT 第8戦 MOTEGI GT 250km/ツインリンクもてぎ

公式予選:2011年10月15日(土) 天候:雨/コース:ウェット

決勝レース:2011年10月16日(日) 天候:晴/コース:ドライ

Po No Machine Driver Laps Time Tire Q-Pos
GT300
1 4 初音ミク グッドスマイル BMW 谷口 信輝/番場 琢 49 1:37'56.682 YH 1
2 33 HANKOOK PORSCHE 影山 正美/藤井 誠暢 49 0'11.405 HK 7
3 11 JIMGAINER DIXCEL DUNLOP 458 田中 哲也/平中 克幸 49 0'20.286 DL 2
4 66 triple a Vantage GT2 吉本 大樹/星野 一樹 49 0'31.937 YH 6
5 88 JLOC ランボルギーニ RG-3 井入 宏之/関口 雄飛 49 0'33.036 YH 3
6 62 R&D SPORT LEGACY B4 山野 哲也/佐々木 孝太 49 0'35.011 YH 5
7 43 ARTA Garaiya 高木 真一/松浦 孝亮 49 0'38.654 BS 4
8 2 エヴァンゲリオンRT初号機アップル紫電 高橋 一穂/加藤 寛規 49 1'11.552 YH 10
9 74 COROLLA Axio apr GT 新田 守男/国本 雄資 49 1'13.539 YH 8
10 26 Verity TAISAN Porsche 松田 秀士/山下 潤一郎 49 1'15.041 YH 15
11 31 ハセプロMA イワサキ aprカローラ 嵯峨 宏紀/岩崎 祐貴 48 1Lap YH 11
12 86 JLOC ランボルギーニ RG-3 坂本 祐也/青木 孝行 48 1Lap YH  
13 15 ART TASTE GT3R 清水 康弘/T.ベルグマイスター 48 1Lap HK 12
14 27 PACIFIC NAC イカ娘 フェラーリ 山岸 大/カルロ・ヴァン・ダム 48 1Lap YH 9
15 5 マッハGOGOGO車検RD320R 玉中 哲二/黒澤 治樹 48 1Lap YH 19
16 87 リール ランボルギーニ RG-3 余郷 敦/織戸 学 47 2Laps YH 13
17 10 Rn-sports JIMGAINER F430 植田 正幸/川口 正敬 47 2Laps YH 20
18 69 サンダーアジア MT900M メルビン・チュー/吉田 広樹 47 2Laps YH 16
19 25 ZENT Porsche RSR 都筑 晶裕/土屋 武士 35 14Laps YH 17
  14 SG CHANGI IS350 折目 遼/A.インペラトーリ 16 33Laps YH 14
  41 NetMove TAISAN Ferrari 山路 慎一/峰尾 恭輔 0 49Laps YH 18

・タイヤ=BS:ブリヂストン/DL:ダンロップ/HK:ハンコック/YH:ヨコハマ

 

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→ 2011 AUTOBACS SUPER GT Round8 MOTEGI Full Race 日本語実況

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