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2020.05.19
【SUPER GT 名勝負列伝】「雨中の大逆転。S Road REITO MOLA GT-Rが最終戦前で連覇」2012年第7戦オートポリス

【SUPER GT 名勝負列伝】「雨中の大逆転。S Road REITO MOLA GT-Rが最終戦前で連覇」2012年第7戦オートポリスの画像

2012 AUTOBACS SUPER GT Round 7 SUPER GT in KYUSHU 300km / 2012.9.30 AUTOPOLIS

SUPERGT.netでは2020年のSUPER GTシリーズ開幕まで「SUPER GT 名勝負列伝」と題し、SUPER GT(2005年〜現在)で行われたシリーズ123戦から、名勝負として名高いレースを紹介していく。
第6回は2012年の第7戦、目まぐるしく順位が変わった雨のオートポリス。最終ラップにS Road REITO MOLA GT-Rが逆転して優勝、しかも最終戦を前にして連覇を決めたバトルです。「雨中の大逆転で連覇達成」の一戦をプレイバック!

 


 

   

 

 

連覇を目指す1号車は予選Q2でタイヤ選択をミス

 台風の接近で雨の週末となった2012年9月29日。AUTOBACS SUPER GT第7戦「SUPER GT in KYUSHU 300km」の公式練習では、ディフェンディングチャンピオンでランキングトップのNo.1 S Road REITO MOLA GT-R(柳田真孝/ロニー・クインタレッリ)がトップタイムを記録。「路面温度が低いので、正しいタイヤのチョイスが必要だ」と、タイヤの重要性をアタックしたクインタレッリは語っていた。
 そして迎えた公式予選。クインタレッリがQ1をトップで通過。だが、柳田はQ2を10位と、Q3に進出できず。気温が低いため、温まっているQ1用タイヤをQ2で使う作戦が裏目に出た。一方、ランキング2位のNo.38 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)の立川は、Q3を4位で終えて表彰台を見据える。

 決勝日もやはり雨。午前のフリー走行は霧のため、わずか7分で中止。幸いにも昼過ぎには霧も晴れ、雨の中セーフティカー(SC)スタートに。SC先導2周の後、レースが始まる。ポールポジションからスタートしたのはNo.19 WedsSport ADVAN SC430(荒聖治/アンドレ・クート)のクート。しかし予選3位のNo.23 MOTUL AUTECH GT-R(本山哲/ミハエル・クルム)の本山が早々にパス。23号車はリードを広げるも、12周目にGT300車両がクラッシュしてSCが導入され、マージンは消える。17周目に再スタートすると2番手以降の順位は目まぐるしく変わり、中盤を過ぎると23号車もタイヤがマッチしなくなったのか順位を下げていく。

 そうした中でペースが良かったのは、No.32 EPSON HSV-010(道上龍/中山友貴)の道上だ。予選Q2で中山がクラッシュしたため、11番手からスタート。しかも修復に際しエンジン交換をしたため、序盤にペナルティストップ15秒を課されて14番手まで落ちていた。それでも「昨日のクラッシュを忘れるほどチームが速いマシンに仕上げてくれた」と道上。さらにタイヤがコンディションにマッチした32号車は徐々に順位を上げ、レース中盤の30周目には3番手となる。

 対して1号車のクインタレッリは、着実に周回を重ねる。レース前半のコンディションが見えないため「安全を重視したタイヤを選んだ」からだ。そしてシナリオ通りにミニマムでのピットインを実行。1号車にタイヤを供給するミシュランは「予選こそがっかりでしたが、雨は(タイヤの)性能をアピールする舞台ですから」と自信を持って臨んでいたのだ。

 

 

レース後半は逃げる32号車HSV-010を1号車GT-Rが猛追

 後半に入った42周目に、32号車は所定のピットイン。チームはタイヤ無交換でタイムを稼ぎ、トップで中山を送り出す。中山は44周目にGT300車両と接触して、No.24 D'station ADVAN GT-R(安田裕信/ビヨン・ビルドハイム)の安田に先行を許す。だがペースは衰えず、50周目には再びトップを奪い返してみせた。
 一方、1号車の柳田は5番手。この頃から小雨になりコース後半は乾き出し、タイヤがマッチせずペースアップできないマシンが増える。その中、1号車だけは快調だ。57、58周目には19号車、24号車を相次いで抜き2番手に。10秒以上先のトップ32号車を追い上げる。

 32号車はタイヤ無交換の苦しさが出たのか、ペースが悪い。残り8周、32号車と1号車の差は約8秒に。だが柳田は追撃の手を緩めない。ラップタイムが1分50秒程度の32号車に対して、1号車は1分48秒台、62周目には車両ベストの1分46秒005を叩き出して差を詰めていく。すると、場内やテレビ中継の実況が慌てはじめる。逆転優勝の可能性が高くなっただけでなく、1号車が優勝して38号車(立川)がこの時点の5番手で終われば、柳田/クインタレッリ組の連覇が決定することに気が付いたからだ。しかも38号車のペースは悪く、自力での上位は見込めそうもなかった。

 だが、その差はまだ5秒前半。トップの中山は、滑るマシンを必死に前に進める。「予選では僕がクラッシュしてしまったが、チームが夜を徹して修復してくれた。だから、何としても結果で恩返しをしたいという強い想いがありました」。NAKAJIMA RACING総監督の中嶋悟氏が、GT300クラスすら未経験の中山を抜擢してから4年目。初めて訪れた優勝のチャンスだ。あと3周、中山も1分48、49秒で逃げ切りを図る。

 

 

 

ラストラップに王者・柳田の闘争心が燃え上がる

 しかしファイナルラップを前に、32号車の背後に1号車が迫った。タイヤ以外にも「24号車を抜いてからブレーキがロックするようになり、ペースが落ちてしまった…」と、苦しい状況の中山。あと1周を逃げ切りたい中山は1コーナーの出口でインを締め、1号車をブロック。ペースの速い柳田はフルブレーキングで接触を避ける。

 「強引にインを締められて『絶対に抜いてやろう』『このレースに勝つんだ!』と思った」。ゼッケン1を付ける柳田の闘争心が燃え上がる。2003年にGT300チャンピオンを獲得。2005年にGT500クラスに上がるも、2009年にはGT300クラスに戻る。しかし、2010年に再びGT300を制して翌年GT500に復帰。その年にチャンピオンを獲得し、史上初の両クラス制覇を成し遂げ、さらにはこの年も連覇に手を掛けた。その柳田が“王者の貫禄”を見せつける。

 第1ヘアピン出口から32号車と1号車はサイド・バイ・サイドで軽い接触もしながら競り合い続ける。すると、第2ヘアピン進入で中山がブレーキングを遅らせて前に。これには付き合わなかった柳田は、大きくアウトに膨らむ32号車のインをズバリと突く。意地で追いすがる中山だが、アウト側のタイヤを芝生に落としてスピン。これで勝負ありだ。

 大逆転の勝利で柳田は、連覇それもGT300と合わせて3年連続チャンピオンを決めた。「無線の調子が悪くてピットからの情報も伝わらず、(チャンピオンは)チェッカーを受けるまでまったく考えていませんでした。今大会は自身GT参戦100戦目でしたが、レースに勝って、連覇を達成でき、本当に最高の気分です」と満面の笑み。もちろんクインタレッリとチームも連覇だ。クインタレッリは2014、15年にも連覇して、現在もGT500クラス最多の制覇4回を誇るドライバーとなっている。

 

 

 

 


No.32 EPSON HSV-010(道上 龍/中山友貴)
決勝2位/予選11位(Q2タイム抹消)
 

   


No.19 WedsSport ADVAN SC430(荒 聖治/アンドレ・クート)
決勝3位/予選1位
 


No.24 D'station ADVAN GT-R(安田裕信/ビヨン・ビルドハイム)
決勝4位/予選3位
 

   


No.39 DENSO KOBELCO SC430(脇阪寿一/石浦宏明)
決勝5位/予選Q1タイム抹消(15番グリッド)
 


No.23 MOTUL AUTECH GT-R(本山 哲/ミハエル・クルム)
決勝6位/予選2位
 

   


No.38 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/平手晃平)
決勝7位/予選4位
 

 

 

 

 

2012 AUTOBACS SUPER GT 第7戦 SUPER GT in KYUSHU 300km/オートポリス

公式予選:2012年9月29日(土) 天候:雨/コース:ウェット

決勝レース:2012年9月30日(日) 天候:雨/コース:ウェット

Po No Machine Driver Laps Time Tire Q-Pos
GT500
1 1 S Road REITO MOLA GT-R 柳田 真孝/ロニー・クインタレッリ 65 2:09'45.269 MI 10
2 32 EPSON HSV-010 道上 龍/中山 友貴 65 7.581 DL 11
3 19 WedsSport ADVAN SC430 荒  聖治/アンドレ・クート 65 31.747 YH 1
4 24 D'station ADVAN GT-R 安田 裕信/ビヨン・ビルドハイム 65 35.489 YH 3
5 39 DENSO KOBELCO SC430 脇阪 寿一/石浦 宏明 65 1'45.603 MI  
6 23 MOTUL AUTECH GT-R 本山 哲/ミハエル・クルム 65 1'47.611 BS 2
7 38 ZENT CERUMO SC430 立川 祐路/平手 晃平 65 1'49.213 BS 4
8 100 RAYBRIG HSV-010 伊沢 拓也/山本 尚貴 64 1Lap BS 7
9 18 ウイダー HSV-010 小暮 卓史/カルロ・ヴァン・ダム 64 1Lap BS 6
10 12 カルソニックIMPUL GT-R 松田 次生/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ 64 1Lap BS 8
11 8 ARTA HSV-010 ラルフ・ファーマン/小林 崇志 64 1Lap BS 12
12 6 ENEOS SUSTINA SC430 伊藤 大輔/大嶋 和也 64 1Lap BS  
13 35 KeePer Kraft SC430 国本 雄資/アンドレア・カルダレッリ 64 1Lap BS 13
14 17 KEIHIN HSV-010 金石 年弘/塚越 広大 63 2Laps BS 5
15 36 PETRONAS TOM'S SC430 中嶋 一貴/ロイック・デュバル 63 2Laps BS 9

・タイヤ=BS:ブリヂストン/DL:ダンロップ/MI:ミシュラン/YH:ヨコハマ

 

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→ 2012 AUTOBACS SUPER GT Round7 AUTOPOLIS Full Race 日本語実況

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