SUPERGT.netでは2020年のSUPER GTシリーズ開幕まで「SUPER GT 名勝負列伝」と題し、SUPER GT(2005年〜現在)で行われたシリーズ123戦から、名勝負として名高いレースを紹介していく。
第7回は2017年の開幕戦の岡山国際サーキット。KeePer TOM'S LC500がLC500同士の接戦を制して逆転優勝。これがデビュー戦だったLC500は、さらに同一車種でトップ6を独占する前代未聞の記録を打ち立てました。では「LC500が衝撃のトップ6独占」のバトルをプレイバック!
■開幕戦の走り出しから“LC500のライバルはLC500”だった
GT500クラスでは、2014年の車両規定改定から同じモノコックを3シーズン使用することになった。2017年はこの区切りの年で、LEXUSはこの期にベース車両をRC FからLC500へ変更した。
開発を担うTRDは“ユーザーが扱いやすいクルマ”を目指した。そこでLEXUS系チームのドライバーとエンジニア、さらにはメカニックもユーザーと定め、要望を聞くだけでなく、皆の車両ノウハウを包み隠さず明かしてもらい開発を実施。RC Fの3年で出た課題や新たな性能規制の対策も皆で考え、2017年車両に注ぎ込む。こうして、彼らの知恵の結晶である“LC500”は誕生した。これを武器に、6チームはシリーズ戦をライバルとして思い切り戦うことになる。
迎えたAUTOBACS SUPER GT開幕戦。4月8日午前の公式練習で、早くもLC500がトップ4を独占する。トップタイムのNo.38 ZENT CERUMO LC500(立川祐路/石浦宏明)の立川は「トップタイム? LC500勢としては僅差だから、予選はわからないね」と、ライバルは同じLC500と意識していた。
午後の予選は、Q1とQ2のノックアウト方式。公式記録のコンディションは「曇り/ドライ」だが、時折雨がぱらつく状況。Q1は38号車の石浦がトップ、上位4台がLC500と公式練習と同じだ。5番手はNSX-GTでNo.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/小林崇志)の野尻。GT-R勢は精彩を欠き、全車がQ1で敗退した。
Q2では路面状況が悪くなり、No.36 au TOM'S LC500(中嶋一貴/ジェームス・ロシター)の中嶋がコースアウト。さらにNo.16 MOTUL MUGEN NSX-GT(武藤英紀/中嶋大祐)もマシントラブルでストップ。この2回の赤旗中断で、全車がアタックできずにタイムアップ。結果、ポールポジションは8号車の小林が獲得。
この岡山を得意とするNo.37 KeePer TOM'S LC500(平川亮/ニック・キャシディ)の平川もLC500最初のポールポジションを狙っていたが、これで3位に。「神様がちょっといたずらしたんじゃない。明日(決勝)はまた違った展開になると思う」といつものように淡々とコメント。十分に逆転は可能という雰囲気であった。
■決勝は37号車と6号車が先行
翌9日の決勝日。昼には日も差して、路面は完全なドライとなる。決勝に先立ち行われた交通安全啓発活動パレードラップで、予選5位のNo.17 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/小暮卓史)にマシントラブルが発生。続くフォーメーションラップ途中でポールポジションの8号車もコース上にストップ。これでスタートがやり直しとなるが、その際にNo.64 Epson Modulo NSX-GT(ベルトラン・バゲット/松浦孝亮)も動けなくなる。NSX-GTの悪夢はまだ続く。レースわずか5周でNo.100 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/伊沢拓也)もリタイア…。
Honda陣営とって悪夢の開幕戦。予選で止まった16号車も含め5台全車が同じ電装部品のトラブルだった。「過去3年間で壊れたことがない予想外な部品が、走行距離も同じタイミングで壊れてしまった」と、Honda関係者は悔やんだ。17号車と64号車は修復後にレースに復帰するが、挽回はすでに不可能だった。
再開された決勝レースは、スタートでは予選2位No.6 WAKO'S 4CR LC500(大嶋和也/アンドレア・カルダレッリ)の大嶋が逃げる。追う37号車のキャシディは、ヘアピンコーナーで凄まじいレイトブレーキングを見せてインを刺す。これで37号車がトップも、6号車も離されない。12周目には5、6番手に36号車の関口、No.1 DENSO KOBELCO SARD LC500(ヘイキ・コバライネン/平手晃平)のコバライネンが浮上し、LC500全6台で上位を競う形に。
■2年前の優勝コンビがライバルとなり緊迫の接近戦
所定のピットインでドライバーが代わっても、トップ37号車の平川と追う6号車のカルダレッリはテール・トゥ・ノーズのまま、GT300車両を縫うように緊迫の接近戦を展開。レース後半、トップ争いの後方では1号車と38号車もそれぞれ約1秒差で虎視眈々と上位を伺っていた。
平川とカルダレッリは、2015年に37号車でコンビを組み岡山で初優勝を飾った間柄である。コースも手の内もよく知った2人のバトルは、時にカルダレッリがサイド・バイ・サイドに持ち込む。だが、平川もきわどく凌いで先行を許さない。ラスト3周、6号車は集団に巻き込まれ、その目前でGT300車両がスピン。辛くも避けたカルダレッリだが、これで37号車との差は2秒弱に開いた。
楽になった平川はトップのままでフィニッシュ。LEXUS LC500のデビュー戦は勝利に加え、全日本GT選手権も含めても史上初の参戦同一車種全車でトップ6という驚きの記録を打ち立てた。
「優勝なんて、まだ信じられないよ! でもLEXUSが素晴らしいクルマをつくり、テストから調子良くて(優勝を)期待はしていたんだ」と、自身の初勝利に興奮気味のキャシディ。平川は「Honda勢には残念でしたが、僕たちにとっては完璧なレースになりました」と冷静に振り返る。「LC500が調子いいので、今後もシリーズでは確実にポイントを稼いでいきたい」と続けた。この1ヶ月前に平川は23歳になり、キャシディはまだ22歳という若いコンビは、その言葉通りに第2戦富士で3位、第7戦タイでは2勝目を挙げる。最終戦もてぎも2位と、全戦でポイントを重ねた。こうして23歳コンビ(最終戦時点、これも最年少記録)は、2017年のGT500チャンピオンに輝いた。
またLC500は2017-19年のシリーズ24戦で14勝、2017年と2019年にタイトル獲得という素晴らしい成績を残した。2020年、その技術はGR Supraへと引き継がれていく。
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2017 AUTOBACS SUPER GT 第1戦 OKAYAMA GT 300km RACE/岡山国際サーキット
公式予選:2017年4月8日(土) 天候:曇/コース:ドライ
決勝レース:2017年4月9日(日) 天候:曇/コース:ドライ
Po | No | Machine | Driver | Laps | Time | Tire | Q-Pos |
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GT500
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1 | 37 | KeePer TOM'S LC500 | 平川 亮/ニック・キャシディ | 81 | 2:12'39.626 | BS | 3 |
2 | 6 | WAKO'S 4CR LC500 | 大嶋 和也/A.カルダレッリ | 81 | 1.503 | BS | 2 |
3 | 1 | DENSO KOBELCO SARD LC500 | ヘイキ・コバライネン/平手 晃平 | 81 | 2.761 | BS | 9 |
4 | 38 | ZENT CERUMO LC500 | 立川 祐路/石浦 宏明 | 81 | 2.939 | BS | 4 |
5 | 36 | au TOM'S LC500 | 中嶋 一貴/ジェームス・ロシター | 81 | 7.607 | BS | 8 |
6 | 19 | WedsSport ADVAN LC500 | 関口 雄飛/国本 雄資 | 81 | 9.219 | YH | 6 |
7 | 23 | MOTUL AUTECH GT-R | 松田 次生/ロニー・クインタレッリ | 81 | 20.096 | MI | 14 |
8 | 12 | カルソニック IMPUL GT-R | 安田 裕信/ヤン・マーデンボロー | 81 | 32.360 | BS | 13 |
9 | 16 | MOTUL MUGEN NSX-GT | 武藤 英紀/中嶋 大祐 | 81 | 40.195 | YH | 7 |
10 | 24 | フォーラムエンジニアリングADVAN GT-R | 佐々木 大樹/J.P.デ・オリベイラ | 81 | 51.691 | YH | 11 |
11 | 17 | KEIHIN NSX-GT | 塚越 広大/小暮 卓史 | 73 | 8Laps | BS | 5 |
12 | 64 | Epson Modulo NSX-GT | ベルトラン・バゲット/松浦 孝亮 | 57 | 24Laps | DL | 12 |
46 | S Road CRAFTSPORTS GT-R | 本山 哲/千代 勝正 | 33 | 48Laps | MI | 15 | |
100 | RAYBRIG NSX-GT | 山本 尚貴/伊沢 拓也 | 5 | 76Laps | BS | 10 | |
8 | ARTA NSX-GT | 野尻 智紀/小林 崇志 | DNS | BS | 1 |
・タイヤ=BS:ブリヂストン/DL:ダンロップ/MI:ミシュラン/YH:ヨコハマ
→ 2017 AUTOBACS SUPER GT 第1戦 OKAYAMA GT 300km RACE
→ 2017 AUTOBACS SUPER GT Rd.1 OKAYAMA GT 300km RACE 日本語コメンタリー
4/13-14 | Round1 OKAYAMA | |
5/03-04 | Round2 FUJI | |
6/01-02 | Round3 SUZUKA | |
8/03-04 | Round4 FUJI | |
8/31-9/01 | Round5 SUZUKA | |
9/21-22 | Round6 SUGO | |
10/19-20 | Round7 AUTOPOLIS | |
11/02-03 | Round8 MOTEGI |