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2020.06.05
【SUPER GT 名勝負列伝】「壮絶バトル!0.025秒差の逆転劇。KEIHINが猛追撃で初優勝」2010年第5戦SUGO

【SUPER GT 名勝負列伝】「壮絶バトル!0.025秒差の逆転劇。KEIHINが猛追撃で初優勝」2010年第5戦SUGOの画像

2010 AUTOBACS SUPER GT Round 5 SUGO GT 300km RACE / 2010.7.25 SPORTSLAND SUGO

SUPERGT.netでは2020年のSUPER GTシリーズ開幕まで「SUPER GT 名勝負列伝」と題し、SUPER GT(2005年〜現在)で行われたシリーズ123戦から、名勝負として名高いレースを紹介していく。
第10回は2010年の第5戦、スポーツランドSUGO。予選10位のKEIHIN HSV-010が、決勝で猛追撃。終盤は逃げるウイダー HSV-010と好バトル。そして2台はフィニッシュラインをほぼ横一線で駆け抜けて…。「壮絶バトル!0.025秒差の逆転劇。」の一戦をプレイバック!

 


 

   

 

 

予選10番手から17号車の金石年弘が猛烈な追い上げ

 2010年シーズンはHondaがHSV-010 GTをGT500クラスに送り出した。開幕戦鈴鹿では、No.18 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル)がデビュー戦でポールポジションを獲得。決勝ではNo.100 RAYBRIG HSV-010(伊沢拓也/山本尚貴)が3位表彰台。そして、第2戦岡山では18号車がポール・トゥ・ウインで初勝利を飾る。これでHonda初となるGTのFRマシンは一躍脚光を浴びることとなる。

 そして迎えた第5戦。スポーツランドSUGOでの予選日は、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(本山 哲/ブノワ・トレルイエ)が絶好調で、公式練習、予選1回目とトップタイム。スーパーラップでもトレルイエが最速ラップを決め、ポールポジションを獲得した。HSV-010 GT勢も100号車の伊沢が2位、4番手に18号車の小暮、5番手はNo.8 ARTA HSV-010(ラルフ・ファーマン/井出有治)のファーマンと上位に名を連ねる。
 だがNo.17 KEIHIN HSV-010(金石年弘/塚越広大)は、予選1回目で塚越がドライブするも歯車が噛み合わず10番手で、トップ8によるスーパーラップ進出を逃す。しかし、マシンの調子自体は悪くなく、決勝レースでの巻き返しを誓っていた。

 

 

独走の23号車GT-Rに悪夢! 優勝争いは18号車と17号車に

 決勝スタートでは、ポールポジションから23号車のトレルイエが逃げ、5周目にはファステストラップになる1分17秒691を記録し、後続の100号車の伊沢と18号車のデュバルを引き離す。2番手争いでは100号車がスピンし、代わって18号車が23号車を追いかける。
 この後方で目覚ましい追い上げを見せたのが、17号車の金石だ。予選10位から10周目には7番手、30周目には4番手へとポジションを上げていく。
 上位で早めに動いたのは18号車で、29周目に小暮に交代。17号車は37周目、4番手でピットイン。塚越に追い上げのバトンを渡す。23号車はトレルイエで引っ張り、2番手に10秒差をつけて50周目にピットへ。実質トップのまま、本山に引き継いだ。
 レースも後半。各車のピットが済み、17号車は3番手に浮上。さらに塚越は72周目に自己ベストの1分18秒864を叩き出して、18号車との差は1秒台にまで削られた。

 残り8周となった74周目。追う18号車に約10秒差をつけトップを快走していた23号車が、最終コーナーで突如マシンを止めてしまう。「エンジンのメイン電源が突然落ちた。しばらくしてからスイッチを入れ直すと、再スタートしたが…」と本山。レース後に判明したが、前走の周回遅れが跳ね上げたコブシほどのタイヤかすが、23号車のボンネット上にあるキルスイッチ(非常時に外から電源を切るレバー)に当たって、なんと電源が切れたという。これで1分近く動けなかった23号車は上位から脱落した。

 

 

 

終盤は小暮と塚越が好バトル! 決着は最後の直線で

 ついにトップは18号車の小暮。その背後にまで迫った17号車の塚越とのマッチレースとなる。早めのピットインをした18号車はタイヤがグリップダウンしたのか、コーナーでマシンが滑ることも。塚越にとって小暮は、Hondaドライバーの先輩で、抜くべき目標だ。まして、このパッシングは2008年にスポット参戦して以来苦楽を共にしたチームの、もちろん自身と金石(※)にとっても、GT500初勝利に直結する。コーナーごとに18号車に迫り、牽制して、時にサイドにマシンをねじ込む。しかし、小暮もHonda系チームの中心である18号車のエースを任されるドライバーだ。時に暴れるマシンを巧みに抑え付け、塚越にパッシングを許さない。

 ※金石年弘はシリーズ戦以外ならば2004年のオールスター戦カルフォルニア第1レースで優勝している(G'ZOX・SSR・ハセミ Z)。

 

 ラスト6周の最終コーナー手前。18号車がGT300車両に詰まると、17号車はすかさずアウトへ。塚越が抜いたかに見えたが、小暮はGT300車両がインに避けた瞬間に思い切ってアウト側、17号車の前にマシンを加速させる。小暮らしい攻める守りでトップをキープ。塚越は「リスクを負ってまで抜こうと思ってなかった。ぶつかってもいけないので、そこで仕切り直して抑えていこうと…」と、ここは引く決断をした。
 残り2周の1コーナーでは、スリップから出た塚越がアウトから抜きに掛かる。しかし、小暮はレイトブレーキングでそれをを許さない。2台はサイド・バイ・サイドで2コーナーに向かうが、ここも小暮が守り切った。

 そして、2台はテール・トゥ・ノーズのままで最終ラップへ。この1ラップ、両車とも1分19秒台前半の全力疾走。このまま18号車の小暮が逃げ切るかと思えた最終コーナー。小暮の目の前にGT300車両が現れる。このため、18号車のコーナー脱出速度がわずかに鈍ったか、ストレート入り口で18号車のスリップストリームに17号車の塚越が入る。小暮もそれは許さないと、イン側にマシンを向けて17号車をスリップから外そうとする。しかし、すでに加速に入った17号車はまっすぐに18号車に並び掛ける。

 

 スリップストリームがしっかり効いたこと。18号車のわずかな進路変更で17号車はまっすぐに走れたこと。このレースのウェイトハンディが18号車は70kgに対し、17号車は28kgと軽かったこと。SUGOのメインストレートが登り坂だったこと。そういった要因が味方したか、17号車は18号車に並ぶことに成功。そしてフィニッシュラインを2台が駆け抜けた。

 GT500クラスの1位と2位差の最少記録となる0.025秒、マシンのノーズ部分だけ前に出た17号車が勝者となった。前半の立役者である金石が「今日はスタート直後からマシンの調子が良かった。(塚越が)2番手になってからはピットでレースを見ていられなくなり、トレーラーの中でモニターを眺め、とにかく祈っていました。優勝した瞬間は鳥肌が立ちました」と語るほど、劇的な逆転勝ちだった。

「前半を年弘さんが順位を上げてくれ、それが非常にいいペースだったので、(自分に)代わってからも慌てず最後まで攻めようと思いました。走り出してからは前へ前へと追い上げるだけ。最後は(18号車の目前に)GT300のクルマがいなかったら抜けなかった。あれは狙っていたわけではなく、本当に運が良かっただけだと思います」と、塚越は記者会見で振り返った。
 “何かが起こる”と言われるSUGOだけに、運を呼び寄せるのも実力と言えるだろう。そんな劇的で記録的な逆転劇であった。

 

 

 

 


No.18 ウイダー HSV-010(小暮卓史/ロイック・デュバル)
決勝2位/予選4位
 

   


No.6 ENEOS SC430(伊藤大輔/ビヨン・ビルドハイム)
決勝3位/予選8位
 


No.12 IMPUL カルソニック GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)
決勝4位/予選6位
 

   


No.24 HIS ADVAN KONDO GT-R(J.P・デ・オリベイラ/安田裕信)
決勝5位/予選11位
 


No.23 MOTUL AUTECH GT-R(本山 哲/ブノワ・トレルイエ)
決勝6位/予選1位
 

   


No.1 PETRONAS TOM'S SC430(脇阪寿一/アンドレ・ロッテラー)
決勝7位/予選12位
 


No.100 RAYBRIG NSX(伊沢拓也/山本尚貴)
決勝8位/予選2位
 

   


No.38 ZENT CERUMO SC430(立川祐路/リチャード・ライアン)
決勝9位/予選9位
 

 

 

 

 

2010 AUTOBACS SUPER GT 第5戦 SUGO GT 300km RACE/スポーツランドSUGO

公式予選:2010年7月24日(土) 天候:晴/コース:ドライ

決勝レース:2010年7月25日(日) 天候:晴/コース:ドライ

Po No Machine Driver Laps Time Tire Q-Pos
GT500
1 17 KEIHIN HSV-010 金石 年弘/塚越 広大 81 1:50'27.577 BS 10
2 18 ウイダー HSV-010 小暮 卓史/ロイック・デュバル 81 0'00.025 BS 4
3 6 ENEOS SC430 伊藤 大輔/ビヨン・ビルドハイム 81 0'12.633 BS 8
4 12 カルソニック IMPUL GT-R 松田 次生/ロニー・クインタレッリ 81 0'16.466 BS 6
5 24 HIS ADVAN KONDO GT-R J.P・デ・オリベイラ/安田 裕信 81 0'37.837 YH 11
6 23 MOTUL AUTECH GT-R 本山 哲/ブノワ・トレルイエ 81 0'56.119 MI 1
7 1 PETRONAS TOM'S SC430 脇阪 寿一/アンドレ・ロッテラー 81 1'14.303 BS 12
8 100 RAYBRIG HSV-010 伊沢 拓也/山本 尚貴 81 1'14.474 BS 2
9 38 ZENT CERUMO SC430 立川 祐路/リチャード・ライアン 80 1Lap BS 9
10 39 DENSO DUNLOP SARD SC430 アンドレ・クート/平手 晃平 79 2Laps DL 13
11 32 EPSON HSV-010 道上 龍/中山 友貴 79 2Laps DL 7
12 8 ARTA HSV-010 ラルフ・ファーマン/井出 有治 77 4Laps BS 5
  35 MJ KRAFT SC430 石浦 宏明/大嶋 和也 15 66Laps BS 3

・タイヤ=BS:ブリヂストン/DL:ダンロップ/MI:ミシュラン/YH:ヨコハマ

 

→ 2010 AUTOBACS SUPER GT 第5戦 SUGO GT 300km RACE

 

→ 2010 AUTOBACS SUPER GT Round5 SUGO Full Race 日本語実況

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