News

Special
2020.06.09
【SUPER GT 名勝負列伝】「各所で好バトルが連続。MOTUL AUTECH GT-Rが立ち直りの完勝劇」2014年第3戦オートポリス

【SUPER GT 名勝負列伝】「各所で好バトルが連続。MOTUL AUTECH GT-Rが立ち直りの完勝劇」2014年第3戦オートポリスの画像

2014 AUTOBACS SUPER GT Round 3 SUPER GT in KYUSHU 300km / 2014.6.1 AUTOPOLS

SUPERGT.netでは2020年のSUPER GTシリーズ開幕まで「SUPER GT 名勝負列伝」と題し、SUPER GT(2005年〜現在)で行われたシリーズ123戦から、名勝負として名高いレースを紹介していく。
第11回は2014年の第3戦、オートポリス。レースはMOTUL AUTECH GT-Rのポール・トゥ・ウインでしたが、GT-R同士、RC F同士、さらにGT-R対RC Fの近接バトルが繰り広げられました。「各所で好バトルが連続」の一戦をプレイバック!

 


 

   

 

 

前戦富士ではまさかのトラブルで勝利を失う

 2014年5月4日の第2戦富士は、前半に2度もセーフティカーが導入される荒れたレースだった。その中、No.23 MOTUL AUTECH GT-R(松田次生/ロニー・クインタレッリ)は予選3位からトップに上がる。しかし69周目、トラブルが発生しマシンはダンロップコーナー手前外側でストップしてしまい、松田はスロー走行でピットに戻った。彼が何とかピットに運んだマシンは修復され、クインタレッリが挽回して8位入賞。貴重な3ポイントを手にした。
 23号車は開幕戦岡山で思うようにセッティングが決まらずに7位だったが、それでも手応えを掴んでの第2戦富士だった。松田は「このまま良い流れを掴めずズルズルとシーズンが終わってしまうのでは」と不安になったと言う。

 当時、松田はチャンピオンこそないが、GT経験15年目で12勝の実力者。特に前年までの4年は毎年勝っており、それを評価されてこの年にNISMOに招聘されたのだ。パートナーは彼に先立ち前年からNISMOで走るロニー・クインタレッリ。彼も2011年、2012年とMOLAで連覇しての加入と、NISMOにとって2008年以来のタイトルを獲ることが2人の“仕事”であった。
 第2戦後は、流れを変えるべく2人が持っていたノウハウをより積極的にチームへ提案。チームもそれに対応していく。「僕らは遠慮せずにバンバン言ったよね。それは互いに信頼できて、フレンドリーだからできること」とクインタレッリも当時を振り返る。富士でのトラブルだけでなく、次戦オートポリスまでの4週間でマシンの細部まで徹底的に見直されたという。

 その甲斐あって、5月31日午前の公式練習から23号車は速かった。クインタレッリは、ここでコースレコードを超えるタイムでトップ。午後のQ1では松田が午前のクインタレッリを超えるタイムで、No.46 S Road MOLA GT-R(本山哲/柳田真孝)に次ぐ2番手。そしてQ2ではクインタレッリがさらにレコードを書き換えるタイムでポールポジションを手に入れた。2番手は僅差で46号車。3番手のNo.1 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/平手晃平)に1秒1の差をつけてみせた。

 

 

決勝ではGT-RとRC Fによる熾烈な3位争いが終始展開

 そして翌6月1日の午後2時。好天の下で決勝レース65周の火蓋が切られた。路面温度も想定内で、23号車のクインタレッリは5周で46号車の本山に約2秒の差をつける。その後ろ、3番手の1号車の平手はさらに3秒後方で、その直後にはNo.12 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)のオリベイラとNo.37 KeePer TOM'S RC F(伊藤大輔/アンドレア・カルダレッリ)のカルダレッリが僅差で続く。さらにNo.36 PETRONAS TOM'S RC F(ジェームス・ロシター/平川亮)のロシターも3番手争いに加わった。

 ペースの上がらない1号車は12号車に攻めたてられ、18周目にはサイド・バイ・サイドの攻防となる。かわそうとする平手だったが、オリベイラに攻略されると37号車、36号車にも相次いで抜かれて上位争いから脱落。トップ争いからは20秒近く引き離された3位争いの3台だが、この後のピットインを挟んで僅差のバトルを続けていく。
 レース中盤となる29周目にはトップ争いが激化。一時の差を詰めた46号車の本山は、第2ヘアピンの進入でアウトから23号車に仕掛けるが、クインタレッリもきっちり守る。その際、23号車の右後方と46号車の左前が接触。これで空力に支障が出たか、46号車のペースがガックリ落ちてしまって23号車との差が開き出した。

 GT500クラスの最後、37周目にピットインしたのはトップの23号車。ピット作業に少し時間が掛かるが、それでもトップを守ったまま松田はコースに戻ることができた。12号車の安田、37号車の伊藤を追う36号車は、前戦富士でSUPER GTデビューしたばかりの20歳の平川だ。コースイン後にはまだ温まらないタイヤでコースアウトする危ういシーンもあったが、徐々にペースは安定し、終盤には再び3位争いに追い付くことになる。

 

 

 

ラスト10周の再スタートも決めて前戦の悔しさを晴らす

 トップ争いは23号車が46号車に15秒近くの差を付け、これで決まりかと思われた。だが、レースも終盤を迎えた48周目にGT300車両がクラッシュ。さらにNo.24 D'station ADVAN GT-R(ミハエル・クルム/佐々木大樹)が、佐々木のドライブ中に1コーナーのコース外でストップする。これで、セーフティカーが導入されて先行車のマージンはリセットになってしまった。

 トラブルの処理が終わり、レースは残り9周のスプリントになった。再スタートでは23号車の松田が好ダッシュを決めて1周で15秒の差をつけ、再度の逃げ切りを図る。46号車、12号車はそれぞれ前後の間隔が開く中、4番手の37号車、伊藤の背後には36号車の平川が迫ってきた。
 この時、3番手の12号車のペースが悪くなり、2台のRC Fの争いに追い付かれてしまう。なんと12号車の電気系にトラブルが出て、ステアリングの液晶表示がブラックアウトしたのだ。ラスト3周ではシフトチェンジも不調になり、この3台のバトルが激しくなる。GT-Rでの表彰台独占に向け、トラブルを抱えた12号車の安田は必死のブロック。ここが勝負という37号車の伊藤だが、36号車の平川も若さに溢れるアタックで時にコーナーで位置を入れ替えるバトルに持ち込む。同じLEXUS陣営、しかもTOM'Sの2台だが両ピットからはクールダウンの指示はないようで、ラスト3周はGT300をかき分けながらの大混戦でスリリングなバトルを繰り広げた。このGT300の集団は安田の利になったようで、これで逃げ切った12号車が3戦連続で3位となり、GT-Rは全日本GT選手権時代の1995年第4戦富士以来の表彰台独占を果す。

 優勝は23号車の松田が2番手に5秒以上の大差を付けて逃げ切る。2位に終わった46号車の柳田は、セーフティカー先導の走行でタイヤを冷やしてしまい追いつけなかったと悔やんだ。
「NISMOに移籍しての2戦は悔しいレースが続き、僕もチームも悔しい思いをした。本当に簡単には勝たせてもらえませんでしたが、今回はクルマもタイヤも素晴らしかった。勝って泣くことはあまりなかったんですが、今日は少しウルッときて(苦笑)」と、笑顔で記者会見に臨んだ松田は振り返る。
 その後、23号車は第5戦富士と第6戦鈴鹿と表彰台に上がり、ランキング3位で臨んだ最終戦もてぎで2度目のポール・トゥ・ウイン。第2戦富士で松田とクインタレッリが必死でリカバーして得た3ポイントが効いて、逆転で松田にとって初の、クインタレッリは3度目のGT500チャンピオンに輝いたのだ。

 

 

 

 


No.46 S Road MOLA GT-R(本山 哲/柳田真孝)
決勝2位/予選2位
 

   


No.12 カルソニックIMPUL GT-R(安田裕信/J.P.デ・オリベイラ)
決勝3位/予選4位
 


No.37 KeePer TOM'S RC F(伊藤大輔/アンドレア・カルダレッリ)
決勝4位/予選5位
 

   


No.36 PETRONAS TOM'S RC F(ジェームス・ロシター/平川 亮)
決勝5位/予選11位
 


No.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/武藤英紀)
決勝6位/予選8位
 

   


No.18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/ジャン・カール・ベルネ)
決勝7位/予選10位
 


No.19 WedsSport ADVAN RC F(脇阪寿一/関口雄飛)
決勝8位/予選14位
 

   


No.6 ENEOS SUSTINA RC F(大嶋和也/国本雄資)
決勝9位/予選15位(赤旗原因でQ1ノータイム)
 

 

 

 

 

2014 AUTOBACS SUPER GT 第3戦 SUPER GT in KYUSHU 300km/オートポリス

公式予選:2014年5月31日(土) 天候:晴/コース:ドライ

決勝レース:2014年6月1日(日) 天候:晴/コース:ドライ

Po No Machine Driver Laps Time Tire Q-Pos
GT500
1 23 MOTUL AUTECH GT-R 松田 次生/ロニー・クインタレッリ 65 1:58'46.067 MI 1
2 46 S Road MOLA GT-R 本山 哲/柳田 真孝 65 5.788 MI 2
3 12 カルソニックIMPUL GT-R 安田 裕信/J.P.デ・オリベイラ 65 23.285 BS 4
4 37 KeePer TOM'S RC F 伊藤 大輔/アンドレア・カルダレッリ 65 23.649 BS 5
5 36 PETRONAS TOM'S RC F ジェームス・ロシター/平川 亮 65 24.036 BS 11
6 100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT 小暮 卓史/武藤 英紀 65 44.576 BS 6
7 18 ウイダー モデューロ NSX CONCEPT-GT 山本 尚貴/ジャン・カール・ベルネ 64 1Lap MI 10
8 19 WedsSport ADVAN RC F 脇阪 寿一/関口 雄飛 64 1Lap YH 14
9 6 ENEOS SUSTINA RC F 大嶋 和也/国本 雄資 64 1Lap BS  
10 32 Epson NSX CONCEPT-GT 中嶋 大祐/ベルトラン・バゲット 64 1Lap DL 13
11 39 DENSO KOBELCO SARD RC F 石浦 宏明/オリバー・ジャービス 64 1Lap BS 12
12 1 ZENT CERUMO RC F 立川 祐路/平手 晃平 64 1Lap BS 3
13 24 D'station ADVAN GT-R ミハエル・クルム/佐々木 大樹 46 19Laps YH 8
  8 ARTA NSX CONCEPT-GT V.リウッツィ/松浦 孝亮 38 27Laps BS 9
  17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT 塚越 広大/金石 年弘 29 36Laps BS 7

・タイヤ=BS:ブリヂストン/DL:ダンロップ/MI:ミシュラン/YH:ヨコハマ

 

→ 2014 AUTOBACS SUPER GT 第3戦 SUPER GT in KYUSHU 300km

 

→ 2014 AUTOBACS SUPER GT Round3 AUTOPOLIS Full Race 日本語実況

Page Top