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2020.06.12
【SUPER GT 名勝負列伝】「トップ4が0.7秒差でチェッカー。吉兆宝山DIREZZA Zが超接戦を制す」2006年第5戦SUGO

【SUPER GT 名勝負列伝】「トップ4が0.7秒差でチェッカー。吉兆宝山DIREZZA Zが超接戦を制す」2006年第5戦SUGOの画像

2006 AUTOBACS SUPER GT Round 5 SUGO GT 300km RACE / 2006.7.23 SPORTSLAND SUGO

SUPERGT.netでは2020年のSUPER GTシリーズ開幕まで「SUPER GT 名勝負列伝」と題し、SUPER GT(2005年〜現在)で行われたシリーズ123戦から、名勝負として名高いレースを紹介していく。
第12回は2006年の第5戦、スポーツランドSUGO。GT300クラスの決勝レースは序盤から驚きのバトルが展開。そして緊迫のレースは最終ラップまで続き、トップを争う4台が一団となってゴールを駆け抜ける。「トップ4が0.7秒差でチェッカー」の一戦をプレイバック!

 


 

   

 

 

前年チャンピオンたちは新たな挑戦を選ぶ

 2005年のGT300チャンピオンである山野哲也と佐々木孝太は、この2006年はそれぞれ別の道を選んだ。山野は古巣のNo.7 雨宮アスパラドリンクRX7(山野哲也/井入宏之)へ。そして佐々木は、前年からフェアレディZで参戦を開始したMOLAのエースとしてNo.46 吉兆宝山 DIREZZA Zのステアリングを握る。パートナーは、前年2戦にスポット参戦した24歳の番場琢。この年、初のレギュラードライバーというチャンスを得た。

 前年王者であり、ドライバーとしても32歳と脂の乗りきった佐々木は、初めてのZながら開幕戦鈴鹿、第2戦岡山と連続でポールポジションを獲得。岡山での予選会見では「去年はチャンピオンになれて"強さ"を見せられましたが、今年はそれにプラスして"速さ"をアピールしたい。鈴鹿は雨(の予選)で“まぐれ”と思われたところもあったので、今回は正真正銘のポールを獲りに行きました」と意気込んでいた。
 だが、鈴鹿はスタートの佐々木が逃げ切れず、番場もアウトラップでスピンして結果は12位。岡山も思うように行かず5位。第3戦富士は6位、続くセパンはノーポイントと前半戦は噛み合わずに過ぎていった。

 全9戦で行われた2006シーズンの折り返しは、第5戦スポーツランドSUGO。当時は金曜日に練習走行が行われていたが、雨と霧、低い路面温度で各チームは十分なデータは得られなかった。その中で、佐々木は上位に名を連ねる。そして、予選日の7月22日も雨。佐々木は予選1回目でトップタイム。だが、スーパーラップを前に小雨となり、路面は一部乾いてタイヤ選択が難しくなる。結局、ドライ路面用のスリックタイヤを選んだNo.88 アクティオムルシェRG-1(マルコ・アピチェラ/桧井保孝)のアピチェラがポールポジションを獲得。46号車の佐々木は5番手となった。

 

 

佐々木が好スタートも序盤はスリーワイドの激戦

 決勝日、朝は小雨と霧だったが昼前には雨は上がって、コースもドライ路面に。各車がドライコンディションのデータが無い中、決勝レースを迎える。
 このレースもスタートドライバーとなった46号車の佐々木は好スタートを切って、1周目には3番手に浮上。トップの88号車のアピチェラ、追うNo.96 EBBRO BTEC MAZIORA 350R(黒澤琢弥/黒澤 翼)の兄、琢弥、そして佐々木の3台がサイド・バイ・サイドの激戦を早くも繰り広げる。そして3周目にはメインストレートで3台横一線の“スリーワイド”のスリリングなバトルも披露。SUGOのスリーワイドと言えば2007年第5戦、GT500クラスのバトルが有名だが、GT300ではその前年にすでに披露していたのだ。
 この中、トップに抜け出たのは46号車の佐々木。2番手の96号車は、追い上げてきたNo.11 JIM CENTER FERRARI DUNLOP(田中哲也/青木孝行)の田中と接触。2台はもつれるようにスピン、コースアウトして優勝争いから脱落。88号車も選んだタイヤが状況に合わなかったか、ポジションを下げてしまう。

 作戦通りにレースの半分以上、42周を走った佐々木がピットイン。46号車を番場に手渡す。実質トップの番場を追い上げるのはNo.13 エンドレスアドバンCCI Z(影山正美/藤井誠暢)の藤井だ。予選はスーパーラップに進めず11番手だった13号車だが、影山の猛追もあって中盤には2番手まで上がっていた。さらに、その後ろにはNo.27 direxiv ADVAN 320R(密山祥吾/谷口信輝)の密山と、No.2 Privée Zurich・アップル・紫電(高橋一穂/加藤寛規)の加藤も迫っていた。
 トップを走る番場は、GT500車両との交錯など思うように行かないこともあり、追ってくる13号車とのマージン10秒をジワジワと消費してしまう。「できるだけマージンを取って番場選手に渡したかったので、それはできた。マージンは使ってもらうために取るんですけど、そんなきっちり使うな!と(笑)」と、佐々木はレース後半を見守る心境を振り返った。
 一方、後半のペースが良かったのは2号車だ。加藤は58周目に27号車を抜いて3番手に浮上する。だが、27号車も僅差で食い下がり、15秒以上あったトップ4の間隔は周を追うごとに詰まっていった。

 

 

 

後続の猛追でラストラップは4台が超接戦に

 46号車を追う13号車の藤井は、この後GT300で6勝を記録する選手となるが、この年はまだ参戦2年目。トップとの差を詰めるが、それで精一杯の状況だった。対して、この時すでにベテランの域に達していた2号車の加藤は、自分が開発する“紫電”のポテンシャルを最大限に発揮して、前の2台に迫っていく。それに引っ張られるように27号車のペースも衰えない。ラスト10周で、トップ46号車と13号車の差は約1.5秒。その4秒ほど後方に2号車と27号車が追い上げる。
 ここから46号車の番場も踏ん張り、13号車と約1秒差をキープ。藤井は前を追うどころか、背後1秒まで迫ってきた2号車の加藤が気になる状態になってしまう。

 いよいよラストラップ。ここでGT500クラスのトップを走るNo.1 ZENT CERUMO SC(立川祐路/高木虎之介)の立川が、1コーナーでGT300トップ集団に追い付く。1号車もNo.23 XANAVI NISMO Z(本山 哲/松田次生)の本山に追われているだけにGT300集団を強引に掻き分けるように抜いていく。バックストレッチに入ったところで、1号車は1列僅差で進む46号車、13号車、2号車を抜こうとする。だが、46号車だけは抜けずに馬の背コーナーを通過。
 立川にすれば46号車がSPコーナーで譲らないようにも思えたはずだ。「(1号車に)追い付かれたときは、最終コーナーまで先に行こうと思ったんです。『SPコーナーのあたりで譲れ』と無線があったんですが、僕も冷静さを失っていて…」とは番場。そして最終コーナー入り口で番場がアウト側にズレるやいなや、猛然と1号車は駆け抜けて行った。

 これで加速が鈍った46号車の背後、スリップストリームに13号車が張り付き、2号車は先行2台のインに、27号車は13号車の背後に位置して、ラストラップの最終コーナーを駆け上がっていく。ウェイトハンディがわずかに軽かった利もあったのか、登り坂の加速は13号車より46号車の方が良かった。13号車の藤井としては、2号車がイン側に来てしまったため、抜きどころを逸してしまったか。
 トップ争い4台の中、まっ先でゴールを駆け抜けたのは、46号車の番場だ。2位の13号車との差はわずか0.401秒。その真横に0.035秒遅れて2号車が3位。4位の27号車までトップから1秒もない、0.785秒の激戦、一瞬の攻防だった。

 「後ろから(No.13とNo.2が)来ているのは分かっていたんで“絶対抜かれない”と、アクセルは戻さないで踏みっぱなし。優勝は嬉しいけど、反省点がものすごくあって、正直、嬉しいのは半分。優勝は(佐々木)孝太さんのおかげです」と、優勝会見で番場は述べた。
 佐々木は「これでタイトルを狙える位置に来た」と語ったが、残念ながらこの後は表彰台に登ることは叶わず。タイトルは、前年のチームメイトである山野がエースを務める7号車の手に渡った。番場とチームはこれが初優勝で、5年後に番場はGT300のチャンピオンとなる。MOLAも2年後の2008年にGT300のタイトルを獲得し、ステップアップしたGT500クラスでも2度の栄冠を手にしている。

 

 

 


No.13 エンドレスアドバンCCI Z(影山正美/藤井誠暢)
決勝2位/予選11位
 

   


No.2 Privée Zurich・アップル・紫電(高橋一穂/加藤寛規)
決勝3位/予選2位


No.27 direxiv ADVAN 320R(密山祥吾/谷口信輝)
決勝4位/予選14位
 

   


No.101 TOY STORY Racing MR-S(新田守男/高木真一)
決勝5位/予選9位
 


No.110 TOTALBENEFIT GREENTEC BOXSTER(松田秀士/菅 一乗)
決勝6位/予選13位
 

   


No.88 アクティオ ムルシェ RG-1(マルコ・アピチェラ/桧井保孝)
決勝15位/予選1位
 


No.96 EBBRO BTEC MAZIORA 350R(黒澤琢弥/黒澤 翼)
決勝10位/予選3位
 

   


No.11 JIM CENTER FERRARI DUNLOP(田中哲也/青木孝行)
決勝16位/予選4位
 

 

 

 

 

2006 AUTOBACS SUPER GT 第5戦 SUGO GT 300km RACE /スポーツランドSUGO

公式予選:2006年7月22日(土) 天候:雨/コース:ウエット

決勝レース:2006年7月23日(日) 天候:曇/コース:ドライ

Po No Machine Driver Laps Time Tire Q-Pos
GT300
1 46 吉兆宝山 DIREZZA Z 佐々木 孝太/番場 琢 75 1:49'21.084 DL 5
2 13 エンドレスアドバンCCI Z 影山 正美/藤井 誠暢 75 0'00.401 YH 11
3 2 Privée Zurich・アップル・紫電 高橋 一穂/加藤 寛規 75 0'00.435 YH 2
4 27 direxiv ADVAN 320R 密山 祥吾/谷口 信輝 75 0'00.785 YH 14
5 101 TOY STORY Racing MR-S 新田 守男/高木 真一 75 0'53.932 MI 9
6 110 TOTALBENEFIT GREENTEC BOXSTER 松田 秀士/菅  一乗 75 1'07.797 YH 13
7 777 梁山泊 apr MR-S 田中 実/大嶋 和也 74 1Lap MI 8
8 47 吉兆宝山 DIREZZA Z 長島 正興/安田 裕信 74 1Lap DL 7
9 7 雨宮アスパラドリンクRX7 山野 哲也/井入 宏之 74 1Lap YH 15
10 96 EBBRO BTEC MAZIORA 350R 黒澤 琢弥/黒澤 翼 74 1Lap DL 3
11 52 プロμ太陽石油KUMHOセリカ 竹内 浩典/嵯峨 宏紀 74 1Lap KH 18
12 87 トライクジャパン ムルシェ RG-1 山西 康司/WADA-Q 73 2Laps YH 21
13 9 NOMAD ADVAN LeyJun MT OSAMU/田中 勝喜 72 3Laps YH 23
14 666 ライフワークBOMEXアップル NSX 周防 彰悟/山下 潤一郎 72 3Laps YH 22
15 88 アクティオ ムルシェ RG-1 マルコ・アピチェラ/桧井 保孝 72 3Laps YH 1
16 11 JIM CENTER FERRARI DUNLOP 田中 哲也/青木 孝行 69 6Laps DL 4
17 5 プロμマッハGOGOGO車検320R九州 玉中 哲二/筒井 克彦 59 16Laps YH 17
18 19 ウェッズスポーツセリカ 松田 晃司/脇阪 薫一 53 22Laps YH 12
  77 クスコスバルADVANインプレッサ 小林 且雄/谷川 達也 49 26Laps YH 10
  62 WILLCOM ADVAN VEMAC408R 柴原 眞介/黒澤 治樹 35 40Laps YH 16
  10 T&G CyberAgent DUNLOP F360 ヒロミ/尾本 直史 27 48Laps DL 19
  55 DHG ADVAN FORD GT 光貞 秀俊/池田 大祐 14 61Laps YH 20
  14 ハンコックエンドレスポルシェ 木下 みつひろ/峰尾 恭輔 4 71Laps HK 6

・タイヤ=DL:ダンロップ/HK:ハンコック/KH:クムホ/MI:ミシュラン/YH:ヨコハマ

 

→ 2006 AUTOBACS SUPER GT 第5戦 SUGO GT 300km RACE

 

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