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2020.06.19
【SUPER GT 名勝負列伝】「王者の逆襲。天候に翻弄されるもMOTUL AUTECH GT-Rが連覇達成」2015年最終戦もてぎ

【SUPER GT 名勝負列伝】「王者の逆襲。天候に翻弄されるもMOTUL AUTECH GT-Rが連覇達成」2015年最終戦もてぎの画像

2015 AUTOBACS SUPER GT Round 8 MOTEGI GT 250km RACE / 2015.11.15 TWIN RING MOTEGI

SUPERGT.netでは2020年のSUPER GTシリーズ開幕まで「SUPER GT 名勝負列伝」と題し、SUPER GT(2005年〜現在)で行われたシリーズ123戦から、名勝負として名高いレースを紹介していく。
第14回は2015年の最終戦となる第8戦、舞台はツインリンクもてぎ。MOTUL AUTECH GT-Rは、予選12位と厳しい結果となる。抜きにくいと言われるもてぎで、ランキングトップで予選5位のカルソニック IMPUL GT-Rの前でゴールしないと連覇は潰えてしまう。しかし決勝日の朝、松田とクインタレッリは“行ける”という確信があった。「王者の逆襲」の一戦をプレイバック!

 


 

   

 

 

雨の予選が松田/クインタレッリの連覇を窮地に追い込む

 2015年の最終戦「MOTEGI GT 250km RACE」。ロニー・クインタレッリは11月15日、決勝日の朝に磨き上げられ、完璧に仕上がっているNo.1 MOTUL AUTECH GT-Rを見て「このクルマは強い」「僕らは勝てる」と勇気をもらったという。そして、彼らは予選12位から、連覇を狙って決勝レースに臨んだ。

 同い年の松田次生とロニー・クインタレッリは2010年にTEAM IMPULで初めて組み、2014年にNISMOで再びチームメイトとなる。シーズン序盤こそ苦しんだが第3戦オートポリスと第8戦もてぎに勝利し、GT500クラスのチャンピオンに輝いた。
 そして2015年も同じ体制で、連覇に挑んだ。この年は、第2戦富士でポール・トゥ・ウインを決め、そのままランキング上位を進むかと思われた。しかし中盤戦はノーポイントこそなかったが、上位入賞は叶わず苦しいレースが続いた。それでも、前年も勝利した第7戦のオートポリスで2勝目を挙げて、ランキング2位へと浮上した。

 迎えた最終戦のツインリンクもてぎ。古巣でランキングトップ、2ポイント差のNo.12 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)の前を走らなければ連覇はない。他に4チームにタイトルの可能性はあったが、ランキング3位で13ポイント差のNo.38 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明)までに実質絞られた状況だ。

 予選日の11月14日。雨の中、午前の公式練習で1号車は2番手タイム。だが、予選Q1を前に雨脚が強くなり、それが彼らを苦しめる。“普通の雨“ならなにも問題なかったが、強めの雨ではライバルたちが使用するタイヤメーカーのレインタイヤにアドバンテージがあったからだ。
 Q1を早めにアタックした松田だが、結果は12位。上位8台が進出するQ2には進めず。タイトルを争う12号車と38号車は、Q2で5位、6位となる。1号車の実力からすれば決勝で届かない位置ではないが、もてぎは抜きにくいコースと言われ、最終戦はシリーズ最短の250kmと抜くチャンスがいつもより少ないこともあり、かなり難しいミッションだ。「この時は今年チャンピオンになるのは無理かもと思いました」と、いつも強気で前向きなクインタレッリでさえ悲観的になっていた。

 

 

微妙な天候の中、下位スタートのクインタレッリ好走

 決勝日の翌15日は天候が回復する予報だったが、午前のフリー走行は雨。ここでも1号車は11番手。しかし、昼前には雨は上がるという情報を得ていた彼らは、それを見込んだセッティングを試していたのだ。
 その後、予報通りに雨は上がり、路面も乾いた。ところが、スタート直前に一時的な雨が再びコースを濡らしてしまう。グリッド上では、各車が慌ててレインタイヤを用意し始める。
「微妙なコンディションでした。(スタートが)上位ならもっと悩んだでしょうが、逆に冷静に色々考えられた」と松田は状況を前向きに捉える。

 スタートドライバーのクインタレッリが「レインタイヤでスタートしたかった。予選と違い、ウエットから乾いていくなら僕らのタイヤが良かったからね。ただタイヤが冷えた状況だけが心配だった」と言うとおり、ウォームアップからスタートまでは慎重だったが、1周終えると早くも2つポジションを上げ、翌周は9番手に。10周目では6番手まで浮上する。

 序盤をリードしたのは。ポールポジションのNo.37 KeePer TOM'S RC F(アンドレア・カルダレッリ/平川 亮)のカルダレッリ。これに雨を得意とするNo.64 Epson NSX CONCEPT-GT(中嶋大祐/ベルトラン・バゲット)のバゲットが続く。12号車のデ・オリベイラは、前にNo.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也)の山本、後ろに38号車の立川と、3番手を争う集団で接戦を繰り広げていた。

 6番手まで上がってきた1号車だが、12号車までは約15秒あり、ここからが正念場。しかも徐々に路面は乾き出し、刻々とレインタイヤで難しい状況に変わっていく。それでも、クインタレッリは着実に12号車との間隔を削っていった。

 上位で先に動いたのは38号車で、22周目でピットイン。タイヤはドライ路面用のスリックだ。翌周に100号車が続き、12号車も24周でピットに戻る。このピットイン前に1号車は8秒差まで迫っていたが、12号車は37秒弱の素早い作業で1つ順位を上げて、安田を送り出す。この直前、38号車の石浦が冷えたタイヤに足をすくわれてコースアウト。なんとかコースに戻るが、タイトルは絶望的となる。また、タイヤの温まっていない12号車は100号車の伊沢に再び抜かれてしまった。

 

 

 

最速ピット作業から松田が好守、そしてトップ争いの一騎打ちへ

 対して、1号車は25周目にピットイン。ここまでレインタイヤで追い上げ、路面がスリック向きになったベストタイミングだ。しかもNISMOのメカニックたちが、なんと作業時間33秒フラットで松田を100号車、12号車の前へ送り出すことに成功。後半のドライバーたちは、この週末初めてスリックタイヤを履き苦戦する中、松田は冷えたタイヤで絶妙なブロックラインをキープ。100号車の猛攻を1周にわたり見事に防いだ。
 ここでクラッシュが発生し、セーフティカー(SC)がコースイン。「SCが入らなくても抜かれない自信はあった」という松田は、32周目にSCランが解除されてもこの2台を抑え込む。前半2番手の64号車はSC導入時点でピットインしておらず、これで不運にも順位を下げる。さらにリスタート周にコースアウトしてしまい下位に沈んだ。

 再スタート直後の1コーナー、1号車の松田は先行する37号車の平川がGT500の周回遅れに詰まって一瞬失速したのを逃さない。ついに1号車はトップに上る。
 抜かれた平川だったが「(抜き返そうと)燃えていたけど、冷静に対応しました」と、チャンスを待ち、2台は共に自己ベストを出しながらテール・トゥ・ノーズでの攻防を続ける。対して3番手の100号車は少し離され、その後ろの12号車の安田は浮上のきっかけを見いだせないでいた。

 残り10周となった43周目、1号車はV字コーナーでGT300の集団に行く手を阻まれる。すると、今度は平川がこの隙を逃さずインへ。しかし松田も立ち上がりからサイド・バイ・サイド、軽く当たるバトルへ持ち込むが、ヘアピンでは37号車が前へ抜け出る。
 それをモニターで見ていたクインタレッリは、抜かれたことより危うさに渋い表情。「アウトラップはGT300をさばいていくタイミングも良く、素晴らしかった。そして、最後まで目が離せなかったし、僕の寿命が5年は縮まったよ(苦笑)。でも(松田)次生は、今シーズンすごく苦労しました。シーズン中盤は海外参戦もあって体調も気力も苦しい中、すごくつらいトレーニングや減量もしてくれた。感謝しています」と、松田の走りとシーズン中の努力を讃えた。
 終盤、12号車は4番手のまま。「12号車の位置を知って、優勝を狙うより、2位でしっかりとチャンピオンを獲ろうと切り替えました」と松田。それでも、隙あらばとトップの37号車に1秒以内で最後まで食らい付く。
 そしてレースは37号車が逃げ切り、シーズン2勝目を挙げた。「中盤戦の取りこぼしがなければタイトルも…」との悔しさが、後の平川と37号車を一段上に引き上げた一戦であった。

 1号車は0.5秒差で2位、12号車は4位でフィニッシュ。レース直後、松田は溢れそうな涙を堪えながら「こんなに上手くいくとは思わなかった。最後まで諦めてはいけない、レースはチェッカーを受けるまで分からないということをまざまざと感じました」と振り返った。これで松田とクインタレッリはGT500クラス連覇を達成。そして流ちょうな日本語を操るイタリアンは、SUPER GT史に残る初の王者4回という金字塔を打ち立てたのだった。

 

 

 

 


No.37 KeePer TOM'S RC F(A.カルダレッリ/平川 亮)
決勝1位/予選1位
 

   


No.100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT(山本尚貴/伊沢拓也)
決勝3位/予選3位
 


No.12 カルソニック IMPUL GT-R(安田裕信/J.P.デ・オリベイラ)
決勝4位/予選5位
 

   


No.38 ZENT CERUMO RC F(立川祐路/石浦宏明)
決勝5位/予選6位
 


No.39 DENSO KOBELCO SARD RC F(平手晃平/H.コバライネン)
決勝6位/予選7位
 

   


No.15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT(小暮卓史/O.ターベイ)
決勝7位/予選15位
 


No.17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT(塚越広大/武藤英紀)
決勝8位/予選9位
 

   


No.6 ENEOS SUSTINA RC F(大嶋和也/国本雄資)
決勝9位/予選10位
 

 

 

 

 

2015 AUTOBACS SUPER GT 第8戦 MOTEGI GT 250km RACE / ツインリンクもてぎ

公式予選:2015年11月14日(土) 天候:雨/コース:ウエット

決勝レース:2015年11月15日(日) 天候:曇・晴/コース:ウエット&ドライ

Po No Machine Driver Laps Time Tire Q-Pos
GT500
1 37 KeePer TOM'S RC F A.カルダレッリ/平川 亮 53 1:43'10.687 BS 1
2 1 MOTUL AUTECH GT-R 松田 次生/ロニー・クインタレッリ 53 0.591 MI 12
3 100 RAYBRIG NSX CONCEPT-GT 山本 尚貴/伊沢 拓也 53 1.389 BS 3
4 12 カルソニック IMPUL GT-R 安田 裕信/J.P.デ・オリベイラ 53 1.63 BS 5
5 38 ZENT CERUMO RC F 立川 祐路/石浦 宏明 53 3.112 BS 6
6 39 DENSO KOBELCO SARD RC F 平手 晃平/ヘイキ・コバライネン 53 4.375 BS 7
7 15 ドラゴ モデューロ NSX CONCEPT-GT 小暮 卓史/オリバー・ターベイ 53 10.490 BS 15
8 17 KEIHIN NSX CONCEPT-GT 塚越 広大/武藤 英紀 53 1'33.028 BS 9
9 6 ENEOS SUSTINA RC F 大嶋 和也/国本 雄資 53 1'39.104 BS 10
10 19 WedsSport ADVAN RC F 脇阪 寿一/関口 雄飛 52 1Lap YH 8
11 8 ARTA NSX CONCEPT-GT 松浦 孝亮/野尻 智紀 52 1Lap BS 14
12 24 D'station ADVAN GT-R 佐々木 大樹/ミハエル・クルム 52 1Lap YH 11
13 64 Epson NSX CONCEPT-GT 中嶋 大祐/ベルトラン・バゲット 51 2Laps DL 2
  46 S Road MOLA GT-R 本山 哲/柳田 真孝 25 28Laps MI 13
  36 PETRONAS TOM'S RC F 伊藤 大輔/ジェームス・ロシター 10 43Laps BS 4

・タイヤ=BS:ブリヂストン/DL:ダンロップ/MI:ミシュラン/YH:ヨコハマ

 

→ 2015 AUTOBACS SUPER GT 第8戦 MOTEGI GT 250km RACE

 

→ 2015 AUTOBACS SUPER GT Round8 MOTEGI Full Race 日本語実況

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