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Race Report
2024.06.02
Catch Up_02:GAINER X 富田竜一郎

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【Cath Up_02】
”ものづくり”への原点回帰

 

 

昨シーズンまで、NISSAN GT-R NISMO GT3によるシリーズ参戦を行なってきたGAINER。今シーズンからは、規定範囲内での開発が可能であるGTA-GT300規定車両へとスイッチ、前回の第2戦富士においてデビューとなりました。

鈴鹿戦を前に、車両は「いまだ開発途上」とのことですが、今回どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、予選10位からの戦いに、ファンの期待も膨らんでいるのでは? バラエティ豊かな車両が参戦するGT300クラスにおいて、オリジナル車両での参戦に挑むチームの福田洋介チーフエンジニア、そして富田竜一郎選手にお話を伺いました。

 

 

 

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GAINER
福田洋介チーフエンジニア

 

より難しく困難な道を選んだ

 

 

── なぜGTA-GT300規定車両での参戦を?

 

「元々、うちは”ものづくり”をしてる会社です。ただ、SUPER GTでは、2009年に手掛けたフェラーリ(F430)が最後。しかも作って1年しか使わなかったんです。以来、ものづくりの仕事は継続していましたが、クルマそのものはずっと作っていませんでした。そのなかで、チーム監督の藤井(一三)さんがNISMOさんに打診したところ、OKが出たので(日産フェアレディZで)車両を作ることになりました」

 

 

──11号車は、現行車両の純正モノコックをベースにしていますね。

 

「安全性を考慮しての判断です。市販車を使って競争力ある形に仕上げるほうがより高いスキルも必要なのですが、加工をするにあたっては、より安全性が高いのではないかとも思っています。また、GTカー、つまり”グランドツーリングカー”は一応レーシングカーではあるものの、市販車を改造したクルマからスタートしていると考えているので、ある意味原点回帰をしたとも言えるのではないでしょうか。  作り方としては、1990年代後半から2000年頭ぐらいのやり方になるんですが、その当時でも高いスキルが必要でした。ただ、僕も含め、チームスタッフの一部が当時のクルマ作りに携わっているんです。それもあって、僕らのイメージとしてはパイプフレームでの製作の方が簡単ではあるけれど、若手スタッフの育成などを考えても、より難しく困難な道を選ぶほうがスキルアップになるだろうとトータル的に判断しました。チームとしても、これまで脈々とがんばってきたことを継承したいし、勉強するチャンスがあるのならやろうと、あえて厳しい道を選びました。ゼロからのクルマづくりを行なうなかで、最初は溶接作業がちょっとおぼつかない状態だったスタッフも、今となってはしっかり任せられる状態になっています」

 

 

── 今回の鈴鹿、そして、これからどのように”進化”していくのでしょうか?

 

「富士戦のあと、(5月8、9日には)鈴鹿でGTE(GTエントラント協会)主催のGT300クラス専有テストに参加し、その後、全部バラしてチェックしたこともあって、あまり作業としては進んでいないんです。鈴鹿に向けて、木曜の夕方4時には積載車に乗せて……と思っていたものの、結局は作業が長引いてその夜の10時まで伸びてしまいました。車両としての完成度としては、まだ90%までいかないぐらいかなと思います。まだ作る必要がある部分、一方で作り直した方がいいというものも出てきてますしね。基本的には、今シーズン中に耐久性、戦闘力を高めて、しっかりと成績を残せるクルマにしていくことができれば、と思っています」

 

 

 

 

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富田竜一郎

 

鈴鹿で普通にレースしているってこと自体、すごいと思う

 

 

── GTA-GT300車両を作ると聞いたとき、どう思いましたか?

 

「最初に、福田(洋介)さんから、新しくクルマを作るので一緒にやってほしいと言われました。GAINERの11号車のエースドライバーをやらせてもらっているからには、何かしらチームと一緒にできたらうれしいという思いもあり、まったく悩むことなく『一緒にやりたいです!』と答えました。その上で、自分が乗ってみたいクルマというものをリクエストしました。福田さんが作りたいクルマとある程度同じ方向だったこともあり、すごく信頼できたし、クルマができるのが楽しみでした。感謝しかないですね」

 

 

── 開幕戦には間に合わず、第2戦でデビューとなりました。

 

「僕としては、開幕からの2戦は(参戦が)難しいのではと思っていたんです。ところが、”走る走らない”は別として、チームは岡山にレーシングカーという形として持ってきました。そして、その翌週にはシェイクダウンを行ない、第2戦富士でとりあえず予選を走ったわけです。僕としてはビックリすることだったし、チームのがんばりがあのような形でキチンとリザルトとして残って、本当にうれしかった。  製作中は、僕が何かできるわけでもないので、開幕戦の直前まで工場には一切行かないことにしていたんです。チームのみなさんはこれ以上ないくらいがんばっているのに、僕が行くことでプレッシャーをかけるのもイヤでした。以前、別のチームでメカニック見習いみたいなお手伝いをしたこともあって、状況やみんなの立場もそれなりに理解できたので、僕の仕事はサーキットに来てから、と思っていました」

 

 

── 富士から鈴鹿の間では、あまり”進化”していないと福田さんがおっしゃっていましたが!?

 

「いえ。そもそも富士でレースをして、そのあと鈴鹿のテストで連続40周とか、ちゃんと走れてるんです。2月から作りはじめて、4月の終わりにシェイクダウンしたクルマが、今、この鈴鹿で普通にレースしているってこと自体、すごいと僕は思ってます。予選日も特にトラブルは起きていない。それこそが、一番の進化じゃないでしょうか。予選だって別に遅かったわけじゃないし(笑)。もちろん、もうちょっとこうしたい、みたいな部分はありますよ。でも、やってきた時間と今できているもののレベルを考えると、どれだけみんながいろいろ考え、知恵を絞ってやってきたんだろうと感心します。自分自身もクルマへの理解度もすごく進みました。まぁ、頭を使うようになった分、予選前のプレッシャーはこれまでの比じゃないです(苦笑)。今ほど”嫌だなぁ”と思いながら予選に行くことってなかったですからね。ただ、それだけ結果が出たときは今まで以上にうれしい気持ちになりました」

 

 

── 昨年までドライブしていたGT-Rと類似点はあるのですか?

 

「大まかに言って全然違います。同じ日産車とはいえキャラクターがもともと違うし、Zはボディ自体が量産車ですしね。ただ、GT-Rのエンジンを搭載しているので、強いて言えば、クルマの中で聞くエンジン音が変わらないことくらい。でも、配管が違うので、外で聞くエンジン音はGT-Rと全然違うと思います」

 

 

── 迎える決勝では、どのような戦いをしたいですか?

 

「僕らの最大の目標は、しっかりトラブルなくレースを完走すること。完走を目指すなか、まだ何が起きるのか見えていないものもあるので、あまり”結果、結果”とは言わず、自分たち自身のレースをきちんとやって、このクルマでどういう戦いができるのか、そういうところをしっかりと学んだ上で、もし何かしら結果がついてくるのであればいいなという気持ちです」

 

 

 

 

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