モータースポーツのオリンピック的なイベントといえる「FIA MOTORSPORT GAMES」が、10月23日から27日までスペインで行われ、チームジャパンの一員としてF4 CUPに日本からエントリーした森山冬星選手(HELM MOTORSPORTS)は、初めてのマシン、タイヤ、コースという難しい環境の中健闘を見せました。
舞台となるスペイン・バレンシア(リカルド・トルモ)サーキットに乗り込んだ一行は、23日水曜に車検やシートフィッティングをこなすと、翌24日木曜にはドライバーズビリーフィングなどに参加。そしていよいよ25日金曜には初の走行となる、タトゥース製シャシーにアバルト製の1.4リッターターボエンジンを搭載した車両でのフリープラクティス1と2、2回の走行に臨みました。
現地時間午前10時から45分間で行われたフリープラクティス1は、一部路面が濡れている状況の中、気温16℃、路面温度19℃でスタート。森山選手も他の車両とともにコースインとなりましたが、序盤ターボ周辺のパイピングの外れなどトラブルがあり、若干走行時間を失うことに。また、序盤のコンディションの悪い状況での走行でタイヤを傷めたこともあり、タイムは伸び悩むことに。
それでも初めてのバレンシアのコースを確かめつつ、周回を続けた森山選手は、トップから1.2秒差の15番手で最初の走行を終えることとなりました。
森山選手のコメント:
「最初トラブルが出て思うように走れませんでした。後半は少しエンジンは遅かったですが、そこまで感触は悪くなく走行を続けましたが、(セッションの)最初から出たせいで路面も悪く濡れていてタイヤが壊れ、タイムが上がらずでした。
トップの車両たちはセッションスタートから15〜20分待ってから出たので1秒程度の差がついたように思います。プラクティス2については、もっと煮詰められるようにこれからエンジニアと話したいと思います」
同じく25日金曜の午後5時05分に始まったプラクティス2は気温21℃、路面温度24℃で始まりました。完全なドライコンディションとなったこの45分間のセッションでは、森山選手は多くの周回を重ねることに集中することに。
前述したように、今回のイベントは全車タトゥースでのワンメイク、さらにベースセットもタイヤの内圧も全車イコールとされ、セットアップ変更もリヤスタビとリヤウイングの調整のみということで、非常に限られた中で様々なトライを行なって、このセッションを13番手で終えることとなりました。
森山選手のコメント:
「プラクティス2は、プラクティス1で色々トライしたことをアジャストして、できるだけ長い時間走ることを心掛けました。
明日の予選に向け、色々走り方を試し、セット変更もしました。ここでの傾向をチェックして明日の予選に挑もうと思います。
やるしかないので、まずは予選で3番手以内を目指します」
10月26日土曜には、いよいよ予選と予選レースが行われることとなりましたが、前日のフリープラクティスではトラックリミット違反が頻発したことから、緊急ドライバーズブリーフィングが設定され、スチュワードから各ドライバーへの厳重注意が与えられるひと幕も。
そして迎えた午前8時30分から25分間の予選セッションは、前夜からの雨の影響で、朝方には雨は上がるも路面はウェット。ウェット宣言が出される中で、全車ウェットタイヤでのアタックとなりました。
気温14℃、路面温度12℃と初日よりも低温となる中、森山選手も初めてのウェットタイヤを履いてのアタックとなりましたが、ここで走行中に他車と接触してしまうというアクシデントが。
それでも大きなダメージはなく、初のウェットタイヤに苦戦しながらも、アタックを続けた森山選手は21台中8番手を獲得。前日からワンランク順位を上げ、午後の予選レースに向けて、まずまずのグリッドを確保しました。
森山選手のコメント:
「予選の感触として悪くなかったのですが、初めてのウエットタイヤに苦戦しました。後半タイムを上げれたらもっと上に行けたと思うのですが、残念ながら他車と接触してリズムが狂ってしまいました。決勝に向けて、まずは予選レースで順位を上げていきます。頑張ります!」
午後零時50分から20分間で行われた予選レース。ここでは路面もドライに転じ、気温19℃、路面温度18℃というコンディションで予選レースがスタートしました。
複数のマシンがストールする中、8番グリッドからスタートした森山選手は、1コーナーまでに7番手に浮上。背後には同じチームがメンテナンスを担当する、いわばチームメイトのイスラエル代表が続くことに。しかし、オープニングラップの終盤、このイスラエル代表に左コーナーでインを突かれ、森山選手は8番手に後退。
レース中盤を過ぎるまでは前後のライバルたちと数珠繋ぎの密集状態のまま、接近戦を演じた森山選手でしたが、レース終盤までコンマ数秒差で前を追うもポジションアップはならず、8位でのチェッカーとなりました。
森山選手のコメント:
「予選レースは8番手スタートだったのでスタートに集中しました。スタートは決まり、1台を抜き、順位をひとつ上げたのですが、抜き返されてしまいました。そこからペースが辛いと想定していましたが、トップ集団に付いていくことができました。タイム的にもトップスリー圏内に入っているので、予選がドライだったらもっと良かったと思います。
ペース的には悪くなく、戦えるということが分かったので、満足のできる順位ではないですが、まだまだできることがあると思うので決勝に向け頑張ります」
前日の予選レースを8位フィニッシュとした森山選手でしたが、そのレースでも懸案のトラックリミット違反が頻発したことから、レース正式結果が出るまでかなりの時間を要しましたが、その結果上位フィニッシュの車両1台に違反があったことで、森山選手は7位に繰り上がることに。このため、最終日となる27日日曜の決勝は7番グリッドから表彰台を目指すこととなりました。
午後零時10分から30分間で行われる決勝レースは、薄曇りの空の下、気温14℃、路面温度15℃とやや肌寒いコンディションの中で戦いの火蓋が切って落とされました。
レッドシグナルが消灯すると、各車いっせいにスタートとなりましたが、森山選手はやや出遅れて8番手に後退。オープニングラップから森山選手の前では激しい6番手争いが展開されます。そのラップの最終コーナーでは背後の選手に並びかけられ、森山選手の右フロントとその車両の左リヤがわずかに接触。そのドライバーはサスペンションにダメージを受けてコースオフしそのままピットイン。この結果、森山選手は8番手でオープニングラップを終えますが、さらに後続のプレッシャーを受けることに。
前の6番手争いに加わりたい森山選手ですが、後続の動きをケアしつつの走行で、前とのギャップは約2秒と拡大してしまいますが、ここでコースアウトした車両回収のためにセーフティーカーが導入され、開きかけたギャップがリセットされました。
約2分ほどと短いセーフティーカーランが終わり、レースは残り22分ほどでリスタートに。8番手から再びレースをスタートした森山選手は、前後の車両とのギャップがコンマ数秒差の接近戦の中、なんとかポジションアップの機会を探りましたが、なかなかチャンスは訪れないままレースは終盤へ。
後続をやや引き離しつつ、前車に食らいつく森山選手ですが、8番手のまま30分間の時間レースはいよいよファイナルラップを迎えることに。結局オーバーテイクのチャンスは訪れず、森山選手は8番手でのチェッカーとなりましたが、上位フィニッシュの3台がレース中にタイム加算ペナルティーを受けており、暫定結果のタイミングモニターでは森山選手が5位という表示に。しかしレース後、ペナルティーを受けた一部ドライバーの抗議が認められたことで、最終的には森山選手は6位という結果となりました。
森山選手のコメント:
「序盤、他車が向こうが寄せてくる形で接触しました。あそこでアライメントが少し崩れフロントタイヤが削れた可能性はあると思いますが、思ったよりは大きな影響はありませんでした。
最終的には6位という順位でしたが、序盤からずっとペースが苦しく、タイヤもどんどん減り苦しい展開でしたが、トラックリミットが厳しいので四脱しないように心掛けて走行しました。結果的にすごく苦しいレースで何もできず、自分的には悔しいレースウィークとなりましたが、今回のイベントに参加して得ることができた経験により、さらに成長できると思うので、日本に帰ってその成果をあらわせるようがんばります。この度は応援ありがとうございました」
初めて走るヨーロッパのコース、初めて操るマシン、初めて履くタイヤ、そして初めてのヨーロッパのチームでの戦い……。初めて尽くしの環境の中にありつつも、チームジャパンの一員としてFIA-F4を戦い、表彰台へあと一歩に迫った森山選手は現地チームスタッフからも高く評価され、彼のが光ったイベントとなりました。
(画像:HELM MOTORSPORTS / GTA)
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