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2014.01.30
2013年SUPER GTマシンを振り返る Part 5 GT300 “JAF-GT300”

2013年SUPER GTマシンを振り返る Part 5 GT300 “JAF-GT300”の画像

 

OFF SEASON SPECIAL -5-

2013年はJAF-GT300マシンの初優勝ラッシュ!

 

 2013年のSUPER GTマシンを振り返るシリーズもGT300クラス編に突入。前回のFIA GT3の1回目に続き、今回はJAF-GT300車両を取り上げる。前回のFIA GT3がFIA(国際自動車連盟)のGT規定によるものなら、こちらはJAF(日本自動車連盟)が定めるSUPER GT独自のGT300クラス車両の規定となる。JAF-GTといっても、これは日本(国産)車のための車両規定ではない。海外の車両でもJAF-GT300規定に沿ってレースカーを製作すればJAF-GT300車両となる。ここ数年、海外でFIA GT3車両のレースが盛んになり、車種も増えた。SUPER GTのGT300クラス参加車両も、一昨年よりJAF-GT300車両とFIA GT3車両と規定され、両規定の車両で争われることとなった。

 JAF-GT300規定の特徴は改造範囲、セッティング範囲が広いこと。FIA GT3規定ではメーカーのコンプリート車両から基本的に変更することができない。だが、JAF-GT300ではエンジン搭載位置の変更やサスペンション自体の交換も可能だ。これがJAF-GT300車両がコーナリングに強いと言われる所以だ。この後の各車の解説でも分かるようにシーズン中に変化のないFIA GT3車両と違い、JAF-GT300車両ではコースごとに空力パーツなどが変化している。もちろん、外観の写真では見えないサスペンションやギア比、エンジンにも変更が加えられているはずだ。
 一方、エンジンパワーはGT300クラスの名称の由来となった約300馬力に抑えられている。このため、500馬力超えも多いFIA GT3車両にはストレートで抜かれることも少なくない。ただ、パワー差は燃費という面で逆に作用する。そこで長距離のレースではJAF-GT300車両が強みを発揮する。2013年も500kmの第2戦富士、1000kmの第5戦鈴鹿ではJAF-GT300車両が勝利している。さらにハイブリッド車両は燃費で優位を持ち、パワー面でも加速にモーターを使うことでFIA GT3車両に互する性能を発揮していた。

 2012年は勝つことができなかったJAF-GT300車両だが、2013年は8戦4勝(CR-Z GTが2勝、プリウスGTとBRZが各1勝)とFIA GT3車両と五分となり、チャンピオンはCR-Z GTが獲得。なお、シリーズ戦ではない交流レースのアジアン・ル・マン・シリーズ第2戦富士でもCR-Z GTが優勝している。

 

○Honda CR-Z GT [日本]


Rd.1 OKAYAMA No.16 MUGEN CR-Z GT

 


Rd.1 OKAYAMA No.55 ARTA CR-Z GT

 


Rd.1 OKAYAMA No.55 ARTA CR-Z GT

 


Rd.2 FUJI No.16 MUGEN CR-Z GT

 


Rd.3 SEPANG No.55 ARTA CR-Z GT

 

2013年はNo.16 MUGEN CR-Z GTが、ハイブリッド車として初のSUPER GTチャンピオンとなった。デビュー年の2012年は第4戦からの参戦で、勝つまでには至らなかったが、今季はエンジンとモーターを組み合わせる技術がより進化し、JAF-GT300車両が得意とするコーナリングに加え、ストレートでもFIA GT3車両と互角に渡り合った。

シーズンを通じて外観の大きな変化はなかったが、高速コースの富士、暑いセパンではフロント部の空力パーツに変化があった。第2戦富士では第1戦岡山にあったフロントバンパー部分のカナード(小翼)がなくなっている。第3戦セパンではカナードが復活。ボンネットのスリットには衝立のような囲いが立てられている。これは暑さ対策(対オーバーヒート)で、空気の抜けをよくする効果がある。また、ドライバーに対する暑さ対策としては、ルーフの上に車内換気用のインテーク(吸気口)が追加されている。

 

 

○TOYOTA PRIUS GT [日本]


Rd.1 OKAYAMA No.31 Panasonic apr PURIUS GT

 


Rd.1 OKAYAMA No.31 Panasonic apr PURIUS GT

 


Rd.1 OKAYAMA No.31 Panasonic apr PURIUS GT

 


Rd.2 FUJI No.31 Panasonic apr PURIUS GT

 


Rd.3 SEPANG No.31 Panasonic apr PURIUS GT

 

プリウスGTは2012年開幕戦から参戦を開始。SUPER GTでのハイブリッドレーシングカーの先駆けとして、2013年の第2戦富士でハイブリッド車として初めてSUPER GTの優勝を手にした。CR-Z GTはレース専用のハイブリッドシステムの開発を行ったが、プリウスGTでは市販ハイブリッド車のパーツを多く使用し、市販ハイブリッドが極限であるモータースポーツにどこまで対応できるかというCR-Z GTとは違う挑戦を行っていた。

開幕戦岡山、第2戦の富士、第3戦セパンとプリウスGTもフロントカナードの有無という変化があった。ただ、セパンでも車室へのインテークは変化がない。これは車室内のエアコンがしっかり効いていたから。ハイブリッドの制御系が助手席部にあり、この電子部品が熱に弱いこともあって、プリウスGTの室内は夏でも快適だったようだ。このため、走行セッションの合間などに、ドライバーがマシンからなかなか降りてこなかったとか。

 

 

○SUBARU BRZ GT300  [日本]


Rd.1 OKAYAMA No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT

 


Rd.1 OKAYAMA No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT

 


Rd.1 OKAYAMA No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT

 


Rd.2 FUJI No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT

 


Rd.3 SEPANG No.61 SUBARU BRZ R&D SPORT

 

2012年デビューのBRZも、この年は我慢の1年だった。2013年は前年のデータを基に、シャシーも一新する大改革を行い、タイヤもGT300で唯一のミシュランを履くこととなった。タイヤのブランドだけでなく、サイズも前年より幅広になり、前後のフェンダーは前年型からかなり変わり、GT500車両を彷彿させるデザインに。そして、ポールポジション5回とSUPER GTの年間最多記録を更新し、第5戦鈴鹿ではBRZの初勝利も掴むという、躍進を果たした。

2013年中の外観の変化は、他の2台と同様にそれほど大きくなく、コースの性格によっての変化(フロントカナードの有無)程度だ。5回のポールというのはJAF-GT300車両らしく、どのコースでもアジャストして一発のタイムを出せるという証明だろう。また、1000kmレースでの優勝もターボエンジンながらも燃費の良さが活き、鈴鹿という高速寄りのテクニカルコースにマッチした結果だと推測される。

 

※次回は2月6日、Part 6 GT300 “FIA GT3 -2-”をお送りします。

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