NICOS CUP GT ALLSTAR RACE '99


GT INSIDE REPORT
NICOS CUP GT ALLSTAR RACE '99 in AUTOPOLIS

SPECIAL REPORT

2000年シーズンの構想を訊く
今シーズンも最後のレースとなるGTオールスター戦。そこに集まったGTC参戦マシンの開発に携わるコンストラクター、そして有力プライベート・チームに来季の参戦構想を訊いた。


トヨタ/TRD 木村芳郎部長
「99年のスープラは98年に比べて大幅に戦闘力が上がったと言われて、われわれもそれを認めていたんですが、細かいトラブルが多くて後退してしまうことが多かったですね。それはわれわれの反省すべき点です。(GTCは)完全な耐久レースとは言えないまでも距離が長いわけですから、安定して走れるということがだいじですよね。今、来年のクルマを開発している段階ですが、そこにそうとう力を入れてます。今年の性能を維持したままで、つまらないトラブルをなくすことを目指しています。98年型から99年型のときのように、ガラッと変えてしまうということはないですね。
 チーム体制についてはほぼ今年と同じとお考えいただいていいと思います。台数的には、増やしたいという話が持ち上がっているチームもあるんですが、エンジンを供給するのがウチだけですから物理的に可能かどうかということと、チーム側のスポンサーなどの問題で、確定はしていません。それは新規チームではなくて、既存のチームが台数を増やすという話が出ているということです。
 2000年モデルは、開幕に何台間に合うかということとトータルで何台作るかということがありますんで、99年型をモディファイして混走させることも考えています。まだ2000年モデルの戦闘力もわかりませんから、そのへんのようすも見ながら、ということになるでしょう。明らかに戦闘能力が違えば全部2000年モデルになるんでしょうけど、逆に99年モデルのほうが速かったら…どうしたらいいかわからないですね(笑)。今のところは2000年モデルは5台は作ろうと考えています。
 GT300については、基本的にはプライベートのために空けておこうという考え方なんですが、できれば新しい車型で動きたいものですから、今年走っているセリカが新しいセリカになるとか、MR2がMR-Sになるとか、そういうかたちで新しい車種を投入することは考えていますし、現実にそれで動いてもいます。今はMR-Sのほうが先行してますね。今までのユニットがそのまま使えてスタイルが新しい車両になるということを考えています。エンジンは3Sターボです。オープンボディで不利な面もあるんですが、ディーラーオプションでハードトップがあるんで、そんなものも活用しようかなと考えています。とりあえずは1台、A'PEXチーム(アペックス、今季のNo.25)が名乗りを上げていますので、われわれとの共同開発ということで動いています。あとから増やしてもいいな、と思っています。
 セリカのほうはFFでターボというのはむずかしいので、NAの2リッターの新型セリカということが考えられます。今年セリカでやっているチームが2チームありますが、それがそのまま新型に移行するかどうかはまだわからないんですが、われわれとしてはできれば新型でやっていただきたいとは思っています。それ以外にはFRでやりたいという話もあるんですが、GT500で使っているスープラをGT300でも走らせるのもおかしいですし、ほかに適当なFRのクルマもありませんしね…。ハチロク(AE86トレノ)に関しては、チームのほう(No.86 KRAFTトレノ)では来年もやりたいと考えているようです」


日産/NISMO 岡 寛監督
「来年のことは今検討中です。でも、GTはやりますし、R34のニューマシンも、少し遅れてはいますが、現在開発しています。どういうクルマになるかということですが、今年の結果を見ていただければわかるように、スカイラインは一発の速さが足りなかったですよね。だから、来年型では一発のタイムを出せるクルマにするよう、開発陣にネジを巻いているところです。予選でもっと上のポジションにいければ今までよりもラクに戦えますから。コスト、効率などを考えなければいけないので台数などはまだわかりません。1号車は早ければ1月に仕上がると思います。今年よりもちょっと遅れ気味ではありますが、ちゃんとしたものができてくれば、その遅れはカバーできると思いますよ。
 GT300のシルビアについてもやる方向で検討中ですが、今はっきりしたことは言えないですね。スポンサー活動を含めて活動中なので、年末には、はっきりするんじゃないでしょうか。
 会社としてはドライバーラインナップも検討中です。今年ももちろん速かったんですが、来年も速いドライバーを乗せたいですね」


ホンダ/無限 技術部 永長 真マネジャー
「クルマを供給する側としては、来年も現在の4台という規模は維持したいと考えています。ただ、その中身はチーム側の体制作りですとかスポンサーさんの意向などもある話ですので、今のところはなんとも言えません。ドライバー構成も含めて、このオールスター戦が終わって、シーズンが終了してから考えるということになると思います。今あるチーム以外からもNSXでやりたいという話をいただいていますが、われわれのキャパシティとしては台数を増やすのはむずかしいですね。
 クルマのほうですが、設計にはもう取りかかっています。来年のレギュレーションは空力的にはダウンフォースを減らす方向になっています。NSXは、ターボ勢に対するエンジンパワーの不利を足回りや空力などでおぎなってきたわけです。つまり来年のレギュレーションでは空力面での影響を一番大きく受けることになりますから、その影響をいかに減らすかということがひとつのテーマですね。足回りについても、98年から99年と基本的に同じクルマでやってきたなかで『ここをこうしたい』ということが出てきていますから、それを改良していきます。それから、来年はABSが禁止になるわけですが、その点に関してはわれわれ(NSX勢)はABSがある状態とない状態の両方を経験していますから、アドバンテージがあると思います。エンジンのターボ化は選択肢のひとつとしてありうるとは思います。ですが、ひとまずは手持ちの(技術の)中で見きわめようということですね。
 今年は昨年同様、4チームに対してまったく同じクルマを供給しデータも共有する、またチャンピオンシップポイントについて各チーム間にオーダーは出さないという方針でやってきました。結果的には3チームが1勝ずつ挙げるかたちになり、タイトルはコンスタントにポイントをかせいだところが獲得しました。ある意味で(この結果は)なるべくしてなったと言えると思います。われわれとしてもニスモさんを見習わなければならない点はあります。ただ、(ニスモと)同じことをできるかと言われれば、できないでしょう。われわれもタイトルを獲ることを第一にするのならこれまでと違ったアプローチのしかたもあるとは思います。ですが、すべてのチームが同じアプローチをするのではなく、チームごとに特色を出していくことでシリーズがおもしろくなるという面もあると思います。
 今のレギュレーションについては、お客さんが満足してくれているのだったら、いいと思います。技術的にはハンディなしでやりたいという気持ちはありますけれどね。
 (S2000がGT300クラスに出る可能性は)個人的にはたいへん興味はあります。ただ、今のGT300でトップを争うのはむずかしいでしょう。小排気量のNAでは勝ちにくい状況にありますからね。仮にターボをつけてパワー面をクリアにしても、オープンボディですから空力面でのむずかしさがある。お客さんから期待されているクルマであることは理解していますが、だからこそ簡単には出ていきにくいでしょう」


No.26/55 チーム・タイサン 千葉泰常監督
「来年はGT500はやめ、GT300クラスを2台態勢でやることになるでしょう。1台はポルシェGT3Rで、もう1台はシーズン序盤の3戦はRSR、ル・マンのあとは新車のGT3Rということになると思います。ドライバーは、1台は松田秀士とドミニク・シュワガーの予定ですが、シュワガー選手はあくまでフォーミュラ・ニッポンが最優先ですので、そちらの動向しだいになるでしょう。もう1台は、ポルシェから『若手を育ててください』と言われていることもあって、若手組になると思います。こちらの人選についてはまだ白紙です。今回(オールスター戦で)乗る本庄康幸も候補の一人ですが、いずれにしてもスポンサーしだいという部分があります。スポンサーについてもまだわかりません。
 ル・マンは、来年はポルシェ・ワークスが出場しないので、これと組んで出場できるよう話し合っていきます。いずれにしても組んでやらないと、日本から全部持っていくというのはできませんからね。やるからにはクラス優勝したいですね。ドライバーは、今のところ松田秀士と近藤真彦を予定しています。あともう一人はポルシェとの話し合いで決めることになると思います」


No.81 チーム・ダイシン 大八木信行代表
「今年使ったクルマそのもので、もう1年やる予定です。ただ、来年はレギュレーションが少し変わりますから、エンジンもシャシーもそれに合わせた改良をして、そのテストをオフのあいだにやるようになるでしょう。ドライバーも今年と同じです。カラーリングも、これから大きいスポンサーでもつけば別ですが、今のところはそのままの予定です。GTC以外には例年どおり鈴鹿1000kmなどをやりたいな、と思ってます」(福山英朗「まだ大八木さんとそういう話はしていないんですけど、ボクの感じではチームとしてのスキルアップを考えているのかな、と感じています。スタッフも、ドライバーも、施設も、少しずつステップアップしていかないとね」)


No.19 RACING PROJECT BANDOH 坂東正明監督
「来年のことはカネしだいということでまだはっきりは決まっていないが、スポンサーが集まればGT500クラスに出たいと思う。スポンサーがちょっとだったらGT300クラスだけど、車種変更の可能性はあるね。来年はレギュレーションが変更になるから、その内容しだい。NAが今より50kg重くなってセリカでも925kgから975kgになるけど、ターボは重量も積まれたうえにリストリクターの径も絞られる。どちらが戦闘力があるのか考えて、セリカからMR-Sに変える可能性があるね。ドライバーは、織戸は今年でウチのチームを卒業。だから12月8〜9日にTIであるヨコハマのテストでは何人か乗せる予定にしている。今言える範囲では脇阪薫一、青木孝行、藤原靖久が乗ることになってるよ」


No.77 クスコレーシング 加勢裕二代表
「このままGT300クラスで、インプレッサのニューマシンを投入します。このマシンは、重量配分や基本のレイアウトを詰めて、今年型をいい方向に進化させていこうと思っています。マシンの仕上がりは開幕1ヶ月前をメドにしています。テストなど細かい予定はまだ決まっていませんが、チャンスがあればいっぱい走りたいですね。来シーズンの目標は全戦表彰台。高い目標を持たないとね。ターボは来年リストリクターが小さくなるんですが、それがウチのマシンのエンジンにとってはいい方向だと思うので、期待していてください。ドライバーは今のところ未定です。チームとしては今年と同じメンバーでいきたいんですが、ドライバーのほうにもいろいろ都合があると思いますし。いずれにしても、年明けの早いうちに決めたいですね」


No.7 RE雨宮レーシング 雨宮勇美代表
「マツダスピードはサポートしてもらったわけじゃなくて、おカネを払ってたお客さんの立場だから。パーツは来年できるぐらい十分ある。N1(スーパー耐久)も考えたけど、お客さんがあれぐらいの入り方だしね…。プライベートでがんばりたい気持ちはあるけど、予算の状況からいって現状では(来年もGTをできるかどうか)五分五分ぐらい。来年はきびしいかもしれないなあ。今のところはわからない」


No.25 MOMOCORSE Racing Team with Tsuchiya 土屋春雄監督
「まだ、正式にはなにも決まってない。(シーズン途中での新車投入の話があったが)MR2は新車を作っても速くなる可能性が見込めなかったからやめた。TIは予定外だったけれど、タイトルは獲れたから。現状では、MR2のパーツがそっくりそのまま使えるのでMR-Sをやろうかと、とりあえず思っている。GT500の可能性はゼロではないけど、2〜3%かな…」




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