2024年のAUTOBACS SUPER GTも、毎戦のようにホットなレースが繰り広げられた。だが今季後半戦は悪天候が続き、特に予選日は毎戦のように予選方式を変更せざるを得ないという異例なシーズン後半でもあった。一方、決勝レースは天候が回復して、激しいレース展開の連続であった。
今シーズンもGT500クラスとGT300クラスで唯一無二である“チャンピオン”の座が全8戦で争われた。まだ興奮と感動も冷めやらないが、総集編「2024 シーズンプレイバック」をGT300クラスの2回、GT500クラスは3回の、計5回でお届けする。
第2回は「GT300クラス総集編その2」として、GT300クラスの後半4戦をレビューする。
注)レポートの周回数はGT300クラスの数値です。決勝上位のドライバー名に※印がある第3ドライバーは決勝を走行していません。
Round 6 SUGO GT 300km RACE
スポーツランドSUGO
公式予選:9月21日(土) 雨/決勝レース:9月22日(日) 雨/晴れ
難しい路面を読み切ってNo.65 LEON PYRAMID AMGが今季2勝目!
45号車フェラーリが初の2位表彰台。777号車が3位に食い込む。
本来は第5戦鈴鹿が8月31日、9月1日に行われるはずだったが、折から中部地方に接近中の台風10号の影響で延期となり、12月の開催となった。
このため2024シーズンの5戦目は、第6戦SUGOとなったが、予選日は朝からかなりの雨。しかも予選の行われる午後に、さらに悪化する予報だ。このため、公式練習の前に各チームへ「予選が中止になった場合、公式練習のベストタイムで決勝スターティンググリッド順を決める可能性がある」と伝えられていた。
公式練習の開始時の気温は20度とこの時期にしては低く、雨もかなりの量が降っていた。走行早々にNo.52 Green Brave GR Supra GT(吉田広樹/野中誠太)がコースアウトしてクラッシュ。この時、壊したパーツが代替の効かない一品ものであったため、前年のチャンピオンチームは第6戦をリタイアすることとなった。この後もコースアウトや強くなった雨のため走行中断があった中で、トップタイムを記録したのはNo.20 シェイドレーシング GR86 GT(平中克幸/清水英志郎)の平中。それにNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)、No.777 D'station Vantage GT3(藤井誠暢/チャーリー・ファグ)、No.7 Studie BMW M4(荒聖治/ニクラス・クルッテン)、No.45 PONOS FERRARI 296(ケイ・コッツォリーノ/リル・ワドゥー)と続き、上位7台をミシュランタイヤ勢とダンロップタイヤ勢が占める形となった。
午後になっても雨は降り続き、路面はヘビーレイン。予選開始の時間が幾度かディレイ(延期)されたが、回復の見込みがないと判断されて予選の中止が決定された。また、翌日の決勝レースのスターティンググリッドは、この日午前に行われた公式練習の各車ベストタイムをもって決められた。このため、予選結果で授与されるシリーズポイント(ドライバーのみ)は、今大会のスターティンググリッド順では付与されないことになった。
決勝日の午前こそ雨は降り続いていたが、午後には小雨となった。そして決勝スタート時には止み薄日も差すが、路面はまだウエットという難しいコース状況だ。レース序盤で抜群の速さを見せたのは、7号車(ニクラス・クルッテン)と45号車(ケイ・コッツォリーノ)のミシュランタイヤ勢。2、3番手に浮上し、ポールポジションから逃げる20号車との差を詰めていく。時折小雨が振るもコースは徐々に乾いていく状況でレース中盤となり、スタート時に履いたレイン用タイヤをドライ用に替えるピットインタイミングを各チームが探り出す。その中でNo.11 GAINER TANAX Z(富田竜一郎/石川京侍)がコースアウトしてクラッシュ。これを機と見た上位陣も一斉にピットイン。案の定、この直後にセーフティカーが導入された。
このセーフティカーが退去すると、トップに立っていたのは45号車(リル・ワドゥー)。背後に上がってきたのは、前戦勝者のNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗)だ。前半は15番手スタートから蒲生が着実にポジションを上げ、11号車のトラブル時に判断よくピットイン。そして後半担当の篠原もペース良く45号車の背後に迫って行く。45号車のワドゥーも耐久レース経験豊富なフェラーリ・ドライバーだけに巧みなドライビングで、ペースに優る65号車も簡単には抜けない。だがレースも残り10周ほどとなると、最終コーナー立ち上がりでタイミングを合わせた65号車の篠原がストレートで45号車をついにパッシング。これでトップに立つと65号車は45号車を振り切って連勝のゴールを駆け抜けた。2位は45号車で、3位には難しい状況を堅実に走り抜いた777号車が入った。チャンピオンシップではランキングトップの65号車が連勝したことで、一歩抜け出した形となった。
GT300クラス 決勝結果
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Po | No | Machine | Driver | Laps | Best Lap | Diff. | Tire | SW |
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1 |
65 |
LEON PYRAMID AMG Mercedes AMG GT3 |
蒲生 尚弥 篠原 拓朗 |
79 | 1'21.982 | 2:11'59.248 | 50 | |
2 |
45 |
PONOS FERRARI 296 FERRARI 296 GT3 |
K.コッツォリーノ リル・ワドゥー |
79 | 1'23.063 | 4.032 | 14 | |
3 |
777 |
D'station Vantage GT3 Aston Martin Vantage GT3 EVO |
藤井 誠暢 C.ファグ |
79 | 1'22.530 | 24.722 | 50 | |
先頭グリッド:No.20 シェイドレーシング GR86 GT 平中克幸 1'29.389※ |
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Round 7 AUTOPOLIS GT 3Hours RACE
オートポリス
公式予選:10月20日(日) 曇り/決勝レース:10月20日(日) 曇り
※予選日(10/19)が悪天候のため、決勝日の午前に公式予選を実施
No.88 VENTENY Lamborghini GT3が予選15位から大逆転優勝!
2号車GR86は勝てたはずの悔しい2位。3位には96号車RC Fが入る。
第7戦オートポリスは2024シリーズの6戦目であるため、本来の7戦目ならサクセスウェイトがポイント×1kgに減るはずが、前戦同様にポイント×2kgで行われた。
前戦に続き第7戦でも予選日は悪天候に。この日、午前に行われる予定の公式練習が雨と霧による視界不良でキャンセル。昼には一時回復傾向にあったが、公式予選の予定される午後1時に再び悪化。雷雨にもなったため、結局この日の予選はキャンセルとなり、翌決勝日の朝にクラス毎に30分間の走行時間を取り、予選を行うこととなった。
幸い、決勝日の朝には雨も上がる。ただ路面はウエットのまま、路面温度も13度とかなり低目の難しい状況。ほとんどがウェットタイヤを履く中、ランキングトップのNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/篠原拓朗/黒澤治樹)の蒲生がスリックタイヤで走行。時間を掛けてタイヤを温め、最終盤の路面が乾くタイミングでアタックを狙ったが、結局7番手という結果に。ポールポジションはNo.6 UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI(片山義章/ロベルト・メリ・ムンタン)のムンタンが記録し、予選2、3位にはNo.56 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(佐々木大樹/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)、No.777 D'station Vantage GT3(藤井誠暢/チャーリー・ファグ)が入った。
この日の午後に行われた決勝レースは、曇りでコースもドライ、路面温度も24度まで上昇と予選とはまったく異なった状況となった。このため、スタート直後から上位勢がテール・トゥ・ノーズでの縦隊状態となり、序盤は目まぐるしくトップが、順位が変わっていく。一時はNo.96 K-tunes RC F GT3(新田守男/高木真一)がリードを拡げるが、GT500車両のストップでセーフティカーの導入となった。
リスタート後、しばらくしてトップに立ったのは予選14位のNo.2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)の平良。レース早々に接触からコースアウトして最下位近くに下がるも、9周目に給油のみのショートストップのピットインのタイミングをずらす作戦で、ここから平良が猛然と追い上げる。さらに2号車同様に明らかにペースが優っている1台がいた。予選は15番手だったNo.88 VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)だ。まずは元嶋が2スティントを使って、14番手から2番手という正にごぼう抜きを見せた。さらにGT500車両同士の接触から2度目のセーフティカーもあるなか、1回目のピット作業が終わるとトップは2号車(堤優威)、だが、これはピットインをずらした利があるため。2回目のピット作業をタイヤ無交換で短く済ませ、代わった堤が再度トップを目指すが、なんとここでドライブスルーペナルティが課せられてしまう。平良がセーフティカー中に車間があけ過ぎてしまったのだ。
2度目、最後のピット作業を終えると、88号車の小暮がトップに立っていた。そしてこのまま今季2勝目のゴールとなる。レースをほぼ3分割のピットインという正攻法とドライバー2人の速さ、勝負強さが際だったレースだった。2位はペナルティ後も速さは失わず、再度浮上した2号車。65号車は8位となり、ランキングトップは守ったがランキング2位の2号車に加え、同3位に浮上した88号車との差が一気に縮まった。
GT300クラス 決勝結果
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Po | No | Machine | Driver | Laps | Best Lap | Diff. | Tire | SW |
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1 |
88 |
VENTENY Lamborghini GT3 LAMBORGHINI HURACAN GT3 EVO2 |
小暮 卓史 元嶋 佑弥 |
88 | 1'47.436 | 3:01'28.683 | 50 | |
2 |
2 |
muta Racing GR86 GT TOYOTA GR86 |
堤 優威 平良 響 |
88 | 1'45.881 | 4.005 | 50 | |
3 |
96 |
K-tunes RC F GT3 LEXUS RC F GT3 |
新田 守男 高木 真一 |
88 | 1'46.548 | 14.971 | 14 | |
予選ポールポジション:No.6 UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI ロベルト・メリ・ムンタン 1'46.524 ※予選は悪天候のため1セッションで順位を決定 決勝ファステストラップ:No.65 LEON PYRAMID AMG 篠原拓朗 1'45.523 |
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Round 8 MOTEGI GT 300km RACE
モビリティリゾートもてぎ
公式予選:11月2日(土) 雨/決勝レース:11月3日(日) 晴れ
またも猛追でNo.88 VENTENY Lamborghini GT3が連勝で今季3勝目!
65号車は2位でランキング首位を堅持。18号車NSXが今季初の3位表彰台。
第8戦もてぎは例年ならサクセスウェイトがなくなるのだが、2024シーズンは7戦目であり、ポイント×1kgのウェイトが載せての開催となった。
予選は3戦連続で雨。Q1開始時で気温17度、路面温度19度と、この時期としてはそれほど低くはないが、路面はヘビーウエットで難しいコンディションであった。また本来は延期の第5戦から変わるはずだったQ1の予選方式がこの第8戦にして初めて適用された。従来のQ1は2組に分かれ各10分間で行われていたが、全車が20分間で行うものだ。このQ1ではNo.45 PONOS FERRARI 296(ケイ・コッツォリー)がトップタイム。2番手はランキングトップのNo.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥)。タイトルを狙うNo.88 VENTENY Lamborghini GT3は元嶋佑弥が担当するも23番手。No.2 muta Racing GR86 GTも平良響が21番手と、2台ともに低迷してQ1の15位以下が走るグループ2でのQ2となった。
ただ幸いだったのは、雨(WET宣言)のGT300予選は合算タイムではなく、Q2のタイム順が予選順位になること。Q2グループ2で2号車(堤優威)がこの中で2位、88号車(小暮卓史)が3位で、予選総合では16、17位となった。Q2グループ1でポールポジションを獲得したのはNo.31 apr LC500h GT(小高一斗/中村仁)の小高。2、3位はNo.7 Studie BMW M4(荒聖治/ニクラス・クルッテン)、No.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)。65号車は篠原がアタックして4位につけた。
決勝日は打って変わっての好天に恵まれて、気温はスタート時点で気温は21度まで上昇した。レース序盤はポールポジションの31号車(中村仁)が逃げ、7号車(荒聖治)、65号車(蒲生尚弥)が追う展開となる。その後方、スタート周で5台を抜いて12位に上がったのは88号車の元嶋佑弥だ。元嶋は「65号車がすごく遠くに見えたので、そこまでは死にものぐるいで追いつかなきゃいけない」と数周毎に順位を上げ、ドライバー交代のピットインが始まる19周時点では、なんと4番手まで上り詰めていた。トップの31号車は早めの20周でピットに戻り、小高に交代しタイヤ無交換を敢行。そして22周には65号車と88号車もピットイン。65号車はタイヤ無交換を選択。88号車は交代した元嶋が「65号車がタイヤ無交換でも、(自分たちの)タイヤがすごく良かったので4輪交換してもこっちに分があると思った」と言うが、チームはリアタイヤ2本を換えて小暮をコースに戻した。
上位陣のピット作業が終わるとトップは31号車。88号車は、65号車を抜いて2番手に上がる。小暮は「65号車をパスできて(自分の)仕事の大部分が終わったとも思った。あとは自分のペースを守って走りました」とレース後に語ったが、その後トップの31号車にも迫り、これもパスしてしまう。31号車はその後もポジションを下げ、GT500車両との接触での破損もあって入賞圏外に後退した。
その後もハイペースをキープした88号車は2番手の65号車を見る間に引き離して、最終的に独走状態となり、連勝で今季3勝目を挙げた。65号車が2位、3位には18号車が入り、今季初表彰台を獲得した。
これで、最終戦となった第5戦鈴鹿でタイトルを争うのは3台に絞られた。ランキングトップは65号車、同2位の88号車、そしてこのレースを13位ノーポイントで終えた2号車が同3位で競うことになった。
GT300クラス 決勝結果
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Po | No | Machine | Driver | Laps | Best Lap | Diff. | Tire | SW |
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1 |
88 |
VENTENY Lamborghini GT3 LAMBORGHINI HURACAN GT3 EVO2 |
小暮 卓史 元嶋 佑弥 |
59 | 1'50.411 | 1:55'28.374 | 50 | |
2 |
65 |
LEON PYRAMID AMG Mercedes AMG GT3 |
蒲生 尚弥 篠原 拓朗 |
58 | 1'50.383 | 1 Lap | 50 | |
3 |
18 |
UPGARAGE NSX GT3 Honda NSX GT3 |
小林 崇志 小出 峻 |
58 | 1'50.453 | 1 Lap | 4 | |
予選ポールポジション:No.31 apr LC500h GT 小高一斗 1'57.322 ※予選はウエットのため、Q2のタイムで順位を確定 決勝ファステストラップ:No.87 METALIVE S Lamborghini GT3 坂口夏月 1'49.735 |
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Round 5 SUZUKA GT 300km RACE GRAND FINAL
鈴鹿サーキット
公式予選:12月7日(土) 晴れ/決勝レース:12月8日(日) 晴れ
No.88 VENTENY Lamborghini GT3が見事なポール・トゥ・ウイン!
3連勝&今季4勝目とライバルを圧倒して大逆転の初チャンピオンを決める!
9月の開催から台風で延期され、12月7、8日に開催となった第5戦鈴鹿。その大会名称にも「GRAND FINAL」と最終戦であることが謳われた。また当初は350kmの決勝レースだったが、300kmに変更された。一方でドライバー登録は当初の3名も可能なままとなった。
ようやく好天に恵まれた予選日。27台が一斉に走ったQ1は、勢いに乗るNo.88 VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史)がトップタイムを記録。2番手には僚友のNo.87 METALIVE S Lamborghini GT3(坂口夏月)が続いた。対してタイトルを争うNo.2 muta Racing GR86 GT(平良響)は4番手、No.65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥)は9番手と、タイトル候補の3台は揃ってポールポジションが争えるQ2のグループ1に進出した。ランキングトップの65号車は決勝で2位以上なら自力で、88号車が3位以下ならその前でゴールすればタイトルを決められる。そして88号車は決勝4位以上が、2号車は優勝が最低条件で、あとはライバル次第という状況だ。
Q2のグループ1では上位5台がレコードタイムを更新する激戦となった。このセッションのトップはNo.56 リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R(ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)が新レコードの1分55秒092で獲得も、Q1との合算タイムでは予選総合5位となる。ポールポジションはQ1は1位、Q2を元嶋佑弥が2位となった88号車が獲得した。予選総合2位はNo.61 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)、3位はNo.2 muta Racing GR86 GT(堤優威/平良響)。一方、65号車は総合10位となり、ポイント追加はならず。この結果、88号車が3点を、2号車が1点を加えて65号車とのポイント差が決勝レースを前にさらに縮まることとなった。
決勝日も風が強いものの、好天となった。気温は13度と12月と考えれば想定内といえる。好スタートを決めたのはポールシッターの88号車(元嶋佑弥)で、これに61号車(井口卓人)、2号車(平良響)と予選順位通りに続いていく。対して予選5位の56号車は早々に車両トラブルでピットに戻り、予選6位の87号車はクラッシュで戦線を離脱した。その中、トップの88号車は後続を引き離し、序盤で4秒以上のマージンを築く。
ドライバー交代のタイミングとなったところで、15周目と早めにピットインしたのは8番手の65号車。タイトルを掴むためにも表彰台に届く位置に上がりたいだけにタイヤ無交換で作業時間を縮め、蒲生尚弥をコースに戻した。対してトップを走る88号車は、こちらも定番になりつつある後輪2本の交換をして、小暮に後を託す。そして2号車は意外にもピットインを7周も遅らせ、タイヤ無交換で堤を送り出す。
前半トップを守り切った88号車の元嶋は「ブリヂストンタイヤ勢(65号車と2号車)が無交換なのは分かっていたので、少しでもギャップを築きたいと必死でプッシュしました。特にそれ以外はなかったんですよね(苦笑)」と苦しい中でも、余裕を感じさせた。また、88号車の則竹監督は「ライバルの65号車がピットインしたら、僕らも入ろうと思っていました。そこで65号車の前に出れば、あとの2台は小暮選手なら追いつくだろうと。ドライバーふたりとも100点満点です」と、レース後に語った。
上位陣が所定のピット作業を終えると、トップは2号車、これに31号車、88号車、65号車が続いていた。この順位のままなら65号車がタイトルを決める。レース終盤になり、タイヤを換えてない31号車のペースが落ち、さらにGT500車両に抜かれる際に挙動を乱した隙を88号車が捕らえて背後につくと、メインストレートで横に並び、1コーナーでインを見事に突いて2番手に。さらに小暮はハイペースでトップの2号車へ迫っていく。そしてメインストレート入り口で2号車のテールに食いつくと、今度は1コーナーをアウト側に並んでいくが、2号車の堤も意地を見せて2コーナーで前を取る。残り10周で今度は日立Astemoシケインから2号車のテールのギリギリにつける小暮。メインストレート序盤で早くもインに並ぶと、ウラカンGT3のスピードを活かして2号車を見事にパス! 88号車がトップに返り咲いた。
小暮はレースを振り返り「元嶋選手がマージンを稼いでくれたので、65号車とのバトルでかなり有利でした。31号車、2号車をパスできたのは、やはり(後輪2本の)タイヤ交換で余力があったからだと思います。でもずっとトップで走れていたら良かったんですけどね」と、タイヤ面での余裕がハイペース&パッシングに繋がったと語ってくれた。 こうなると65号車がタイトルを獲るには、2号車を抜いて2位に順位を上げなければならない。残り9周弱、3番手の31号車の背後に迫るも、65号車も無交換のタイヤのため抜くペースは得られなかった。
最終戦鈴鹿のレースは、このままチェッカーフラッグとなった。優勝はNo.88 VENTENY Lamborghini GT3(小暮卓史/元嶋佑弥)。見事なポール・トゥ・ウイン、第7戦から3連勝、今季全8戦中半分の4勝という好成績だった。そして小暮と元嶋は2024シーズンのGT300クラス、ドライバータイトルを初獲得。小暮はGT500タイトル(2010年)と併せ、3人目の両クラス制覇となった。チームタイトルもNo.88 JLOCが獲得。全日本GT選手権初年度の1994年からランボルギーニのマシンで参戦を続けて31年目の則竹功雄監督兼オーナーにとって、念願の初タイトルであった。
2位は2号車で、今季もタイトルには届かなかった。3位は31号車で今季初の表彰台を獲得。65号車はこのレースを4位で終え、ランキングは2位となった。
GT300クラス 決勝結果
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Po | No | Machine | Driver | Laps | Best Lap | Diff. | Tire | SW |
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1 |
88 |
VENTENY Lamborghini GT3 LAMBORGHINI HURACAN GT3 EVO2 |
小暮 卓史 元嶋 佑弥 |
47 | 1'59.214 | 1:45'03.710 | ||
2 |
2 |
muta Racing GR86 GT TOYOTA GR86 |
堤 優威 平良 響 |
47 | 1'59.281 | 9.250 | ||
3 |
31 |
apr LC500h GT LEXUS LC500h |
小高 一斗 中村 仁 根本 悠生 |
47 | 1'58.934 | 11.685 | ||
予選ポールポジション:No.88 VENTENY Lamborghini GT3 小暮卓史/元嶋佑弥 3'50.338 決勝ファステストラップ:No.31 apr LC500h GT 中村 仁 1'58.934 |
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GT300クラスチャンピオン会見ダイジェスト
悲願のGT300タイトルを獲得した則竹功雄監督は「素直に本当に嬉しいですね。1994年に手作りのカウンタックを作って、それでずっと続けて…。ランボルギーニ社も協力はしてくれましたけど、サテライトでクルマを作ってくれただけ。その後、2016年にダラーラ社と一緒にウラカンでレーシングカーを作るというプロジェクトがスタートして、その時の社長が『則竹、絶対に勝てるクルマを作ったから、絶対にチャンピオンを獲れ!』と言われてから7年かかりました。まさしく“万感の思い”ですね」とSUPER GT/全日本GT選手権での苦節を語った。
元嶋佑弥は「僕がJLOCに入ったのが2017年。最初はリザーブドライバーで、翌年87号車にレギュラーで乗れました。その時はSUPER GTにフル参戦できるかできないか、どちらかと言えば(今後は)厳しいかなという状況を則竹代表に拾ってもらい、そこから僕のSUPER GTのキャリアが本格的に始まりました。そして、87号車での1年目が終わった時に「お前、来年は最高のパートナーを用意したから楽しみにしておけ!」と則竹代表に言われて、それがまさか小暮選手だとは思ってもいませんでした。幼い頃、テレビの向こう側でメチャクチャ活躍して暴れまくっている選手でしたし。小暮選手と組ませてもらってシーズンを終えた時に則竹代表に「僕、このチームと心中します!」と言ったと思います。それぐらい、則竹代表の一本気なスタイルに惚れましたし、その頃から“このチームでチャンピオンを獲りたい”という気持ちに変わってきました。そこからレース以外のところでもいろいろな人から情報収集などして、まずは優勝に向けて必死にがんばりました。時間はかかりましたけど、昨年の最終戦(もてぎ)で勝てて、まず「本当に良かった」と。小暮さんと一緒にこんなに早くチャンピオンまでこられるとは思いませんでした。でも、これで則竹代表に少しだけ恩返しをできたのかなと思います」と、チームと則竹代表への思いを語った。
そして、小暮卓史は「僕はGT500にずっと乗っていたんですけど、“卒業”というか、そういうカタチで終わった時にレーサー人生も終わりかなと思っていました。でも、そういう時に則竹さんにチャンスを与えていただいて、正直、ここまでこられるとは思っていなかったところもありました。初めて(ウラカンGT3に)乗った時に、GT500と違うGT3マシンの、一見簡単に乗れそうですが突き詰めるとすごい奥の深い難しさがあって。そういうなかで(乗り慣れた)元嶋選手の走りに圧倒されて、全然タイムも敵わないし、どうなっちゃうんだろうなと思っていました。でも、則竹さんの『大丈夫! お前のことを信じているから』という言葉がすごく嬉しかったですし、一方ですごくプレッシャーに感じて、“これはなんとかしなくちゃいけないな”と思っていました。自分自身もだんだんウラカンに慣れてきても、でも優勝がなかなかできなくて、ものすごくハードルが高いなと。GT500もそれなりの難しさがあって、レベルのすごく高いドライバーたちと戦っているんですけど、GT300はGT300でその時のコース、マシン、タイヤの全部が合致しないと勝てない。そういうなかですごく苦労した5年間があって。でも、昨年の最終戦で勝てて、そこから流れがすごく良くなりました。チームもレベルアップしましたし、みんなのおかげかなと。今回のチャンピオンもこれまで培ってきたものが、それは僕と元嶋選手もそうですけど、何年もかけて積み上げてきたものが爆発したのかなと思います」と、GT300クラス特有の難しさとともに、支えてくれた則竹監督と元嶋選手、JLOC全員への感謝を話してくれた。
※チャンピオン会見の全文はこちらをお読みください。
「2024シリーズ・チャンピオン会見」
※次回は「GT500クラス総集編その1:“Nissan Z GT500”の2024年をお送りします。
4/13-14 | Round1 OKAYAMA | |
5/03-04 | Round2 FUJI | |
6/01-02 | Round3 SUZUKA | |
8/03-04 | Round4 FUJI | |
9/21-22 | Round6 SUGO | |
10/19-20 | Round7 AUTOPOLIS | |
11/02-03 | Round8 MOTEGI | |
12/07-08 | Round5 SUZUKA |