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2024.12.28
【2024プレイバック】第5回 GT500クラス総集編その3「“GR Supra GT500”の2024年」

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2024シーズンも3勝のau TOM'S GR Supraがチャンピオン連覇を達成!
GR Supra勢は8戦で6勝、ポールポジション4回※、ワン・ツーは3回とライバルを圧倒
最強GR Supraの秘密と2024シーズンの足跡を振り返る

 

 2024シーズンのTOYOTA GR Supra GT500勢は、全8戦で6勝、ポールポジションも4回※、ワン・ツーフィニッシュは3回と昨年を上回る成績を挙げた。もちろん、2年連続の年間3勝のNo.36 au TOM'S GR Supraはダブル・タイトルを連覇した。そのGR Supraの速さと強さの秘密はどこにあるのか。そして、その好成績の1年間を振り返ってみよう。
 熱戦が連続した2024シリーズを振り返る総集編「2024 シーズンプレイバック」。最終回となる第5回は、GT500クラスの第3弾となるTOYOTA GR Supra GT500の6台の活躍を振り返る。
 ※第6戦の公式予選中止による公式練習ベストタイム1位の38号車を含む。この1位(決勝の先頭グリッド)記録は公式のポールポジション記録に採用されません。

 

 

■エンジン軽量化と新たな空力により操縦性が向上し、2024年型GR Supraは強さも備える

 TOYOTA GAZOO RACING(TGR)陣営は2024年、HondaがNSXからCIVIC TYPE R、日産がZからZ NISMOにベース車両を切り替えたのに対し、2024シーズンも引き続きGR SupraをベースにGT500車両を開発し、シリーズに投入した。とはいえ、今シーズンのGT500車両においては、規制が一部解除され空力に関する開発が可能となったので、TGR開発陣は改めてGR Supraの空力デザインを見直し、5シーズン目を迎えたGR Supraベースの車両をより進化させた。
 2024年型GR Supra GT500の主な開発テーマは、「フロント周りの軽量化」だった。これまで4シーズンを戦ってきたGR Supraが抱えてきた課題が、アンダーステア傾向の強い操縦性であった。そこで開発陣はまずフロントの軽量化に取り組んだ。フロント周りを軽量化すれば、慣性モーメントを低減してコーナリング時に車両の向きを変えやすくなる。また軽量化した分、重量を後寄りにして前後重量バランスを最適化することもできる。
 開発陣はまず、エンジンの軽量化に着手。2014年にターボ過給2リッター直列4気筒エンジンに関するNRE規格※が定められて以降、GR SupraはRI4AG型エンジンを使い続けてきた。しかし今年は初めて世代交代を果たし、型式名がRI4BGと変わった。RI4BG型エンジンでは、昨年までのRI4AGで用いられてきた4連スロットルがシングルスロットル化された。
 ※NRE:Nippon Race Engineの略でGT500参戦の3社で定めた直列4気筒直噴ターボというGT500やフォーミュラカー用のエンジン規格

 また、今季はダウンフォースを削減して空力性能を抑制して安全性を高めるため、車高を一律5mm引き上げる規則が導入された。エアロ面では、この規制への対策が施された。TGRの開発陣はこの新しい規制の中で、空力性能を可能な限り落とさないよう車両各部のデザイン見直しを行なった。
 車高が上がると共に、空力デザインを改良したうえ、フロントの軽量化も行われた結果、操縦性が安定し2024年型GR Supraは「速さ」に加え「強さ」を備えたマシンに仕上がった。

 

 

 

 

■前半戦で2勝のGR Supra勢。前年王者の36号車はランキング首位を堅持し続ける

 岡山国際サーキットで行われた開幕戦。2023チャンピオンである36号車 au TOM'S GR Supraは、今季から合算タイムで競われる公式予選でポールポジションを奪取。予選2位に39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)が続いて、スターティンググリッドのフロントローを独占した。決勝でもこの36号車と39号車がそのままゴール。GR Supra勢として完勝を遂げ、特に36号車 は2023年の開幕戦岡山を終盤までトップを争うも、タイヤ脱落というミスで勝利を逃していただけに、見事なリベンジとなった。このように2024年型GR Supraは快調にシーズンを戦い始めた。
 また36号車を牽引する坪井は「(昨年の第7戦、第8戦に続く)3連勝ですか。SUPER GTでまずできることじゃないので、これはチームと山下選手とみんなの力で勝ち取った勝利だと思います。開幕戦の勝利はすごく良かったと思います」と、この勝利を手放しで喜んだ。

 

 

   

 

 

 ところがTOYOTAのホームコースである富士スピードウェイで開催された第2戦では、ドライバーが直線スピードの不足を訴える事態に。公式予選ではGR Supra勢の最上位が14号車 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)の7位、前戦を勝った36号車は11位と開幕戦から一転苦戦に陥ったのだ。
 しかし決勝レースでは36号車が力強く順位を上げていき、4位でフィニッシュ。ドライバーズランキングのトップの座を守った。5位には今季から立川祐路監督体制となった38号車KeePer CERUMO GR Supra(石浦宏明/大湯都史樹)が予選10位からの追い上げをみせた。図らずもこの一戦は今季のGR Supraが「強さ」を発揮した1戦であった。

 

 

 

 

 第3戦は鈴鹿サーキットで開催された。ここではGR Supra勢が「速さ」を取り戻し、予選では37号車 Deloitte TOM'S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)がポールポジションを獲得し、予選3位に14号車ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/福住仁嶺)がつけた。そして決勝レースでも37号車がポール・トゥ・ウインの完勝。2位に14号車と、3戦目にして今季2度目のワン・ツーとなった。
 初勝利となった笹原は「本当に長い間参戦(6年目)して、ポールポジションも獲ったことがあるのに優勝できないっていうのが……本当、勝てそうで勝てないという…。HondaからTOYOTAのTOM'Sに移籍して、やっと今日そういったものを手に入れることができて、少しホッとした気持ちと、何よりこのチーム……特にTOM'S、そしてTGR、車両開発の皆さんにはもう感謝してもしきれないぐらい……」と、レース後は何度も言葉を詰まらせ、37号車を支える皆に感謝していた。

 

 

   

 

   

 

 

 前半戦を締めくくる第4戦富士では、第2戦での状況を勘案してGR Supraには直線スピードを高めるための対応が加えられる。その効果もあってGR Supra勢最上位は、38号車が予選4位に。決勝レースでも38号車が立川監督の新体制で初表彰台となる3位をゲット。14号車も4位に入賞した。36号車は大きなサクセスウェイト(SW)もあって予選14位と苦戦しながらも、7位入賞を果たしてドライバーランキングのトップを守ってシーズンを折り返した。

 

 

 

■第6戦で37号車が今季2勝目を達成し、36号車も全戦でポイントを積み重ねる

 第5戦鈴鹿が台風10号の影響で開催が12月へ延期されたため、シーズン後半戦はスポーツランドSUGOでの第6戦SUGOで始まった。ここでGR Supra勢は今シーズン2基目のエンジンが投入する。実は開幕前テストでエンジンの一部にトラブルが起きる事案があり、GR Supra陣営は一抹の不安を抱えてシーズン前半戦を戦っていた。そこで2基目のエンジンでは信頼性を確保するための対策が施されたうえ、熱効率をさらに追求してパフォーマンスを引き上げる改良も加えられた。
 その効果があったか、雨の公式練習でベストタイム1位に38号車、2位に14号車、3位に19号車WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)、さらにSWが82kgにもなった36号車も4位となる。午後の予選が悪天候で中止となり、この公式練習のタイムでスターティンググリッドが決められたため、決勝グリッドのトップ4をGR Supraが独占することとなった。
 決勝は雨が上がり、路面がウェットからドライに変わっていく難しいコンディションとなるが、ここで37号車が今季2勝目を挙げる。しかも予選14位からの大逆転での勝利だ。2位は38号車が入り、GR Supraとしてなんと今季3回目のワン・ツーを遂げた。一方SWが重い36号車は決勝でも4位に入賞。この頃から「重いのに速い36号車」とその走りにファンのみならず、関係者からも注目が集まった。

 

 

   

 

 

 

 第7戦の舞台であるオートポリスはアップダウンの激しいコースとして知られる。予選日は前戦に続き悪天候となって、この日の走行は全てキャンセル。急遽、決勝日朝に30分間の公式予選が組み込まれた。ここで14号車がGR Supra勢トップの予選4位を獲得。
 決勝では39号車の中山が予選10位から着実に順位を上げて実質5番手でピットイン。レース後半は単独クラッシュの車両があって、この日3度目のセーフティカーが導入された。この直前に上手く2度目のピットインをした39号車の関口はトップに躍り出て、そのままフィニッシュして今季初勝利を挙げた。
 関口は「僕らは同じGR Supra勢の36号車の決勝の強さを目標にがんばっています。予選と決勝前の短い時間に変えた…、(脇阪)寿一監督がアドバイスしたもの(セット変更)と関係がありそうな感じがするので、それをしっかり次のレースまでに精査したい。なにか掴み掛けてる感じがするので、それを確実に掴んで今後のレースに繋げられるようにがんばります」と、成績で先行する36号車を目標にTGR陣営内でも競争していることを明らかにした。
 その36号車はしっかりと7位に入り、ポイントを重ねてランキングトップをキープしてシーズン終盤戦に突入した。

 

 

   

 

 

 モビリティリゾートもてぎで開催された第8戦。通常シーズンなら8戦目となり、SWはリセットになるが、第5戦が最終戦となったため7戦目の第8戦もポイント×1kgのウェイトを積むこととなる。ランキング首位の36号車は前戦から半減されたとはいえ53kgを積みながらも速さをみせ、予選でGR Supra勢最上位の3番手となる。
 そして決勝レースでは、ドライバー交代のピットストップでライバルより早くコースに復帰すると、後続を突き放して優勝を飾った。SWでリストリクターが絞られている分、燃料を節約し給油量を減らしてピットストップのロスタイムを切り詰めるという戦略が結果に結びついた、TGR TEAM au TOM'Sとしての総合力の勝利だった。

 

 

 

 

 

■最終戦の予選でポールポジションを獲得!36号車が決勝を待たずに連覇を決める

 こうして迎えた最終戦・第5戦は延期により12月前半という冬の鈴鹿サーキットでの開催となった。予選開始時の気温は14度とタイヤには厳しいコンディション。しかしSWをすべて下ろした36号車は“速くて強い”GR Supra本来のパフォーマンスを炸裂させ、公式予選でポールポジションを獲得。この時点で翌日の決勝結果を待たずに、ドライバーとチームのチャンピオン連覇を決めてしまった。
「見ている方にとっては、若干“空気が読めない”結果になってしまいましたね」と恐縮するも連覇達成で笑顔の坪井。そして山下は「最後はしっかり勝って気持ちよく。今年最後のSUPER GTのレースなので、勝って気持ちよく終わりたいです」と最終戦の決勝に目を向けていた。

 

 

 

 

 その言葉の通り、36号車は決勝レースでも坪井が前半をトップで独走。ピットイン後には後続に迫られるシーンもあったが、終わってみれば山下が2位の17号車CIVIC TYPE R-GTに1.5秒の差をつけ、ポール・トゥ・ウインで今季3勝目を決めて2024シーズンを終えた。

 

 

 

 

 

 ドライバーランキングでは、勝利こそなかったが表彰台3回の38号車(石浦/大湯)が4位、今季2勝の37号車(笹原/アレジ)が5位、1勝の39号車(関口/中山)が7位となる。2024シーズンはタイトル獲得に加え、ランキングのトップテンに6台中4台が入ったGR Supra勢。正に“速くて強い”2024年型GR Supra GT500を証明した。
 当然、2025シーズンはライバルたちが連覇したGR Supraの打倒を目指してくるだろう。それに対抗するTGR陣営は、“さらに速い”GR Supraを作り上げることができるだろうか? このシーズンオフも当然、各陣営の来季GT500車両は開発が進行中である。早くも2025シーズンが待ち遠しい。

 

 

GT500クラスチャンピオン会見ダイジェスト

 

 連覇&チャンピオン3回目の坪井は「自身3回目のチャンピオンを獲得することができました。それぞれのチャンピオンに意味はもちろんあるんですけが、1回目は大逆転のチャンピオンで、2回目はしっかり最終戦まで戦ってのもの。今年は最終戦(の決勝)を待たずして(予選で決定の)チャンピオンみたいな。同じチャンピオンでも、そこまでのプロセスがこれまでと全然違ったなという感じですね。3回目の今シーズンはランキングトップを1回も譲らずにチャンピオンを獲れましたし、そういった意味では、速さ、強さを一番発揮できた年だったと思います。今年のチャンピオンは、ライバル勢に『36号車には敵わない』と思わせることができたと思うので、素晴らしい年だったと思います」と、今年のチャンピオン獲得に満足げだった。
 一方の山下は「今年は36号車に移籍して、絶対チャンピオンを獲らなきゃいけない環境、雰囲気ではありました。シーズンが始まる前は『まぁ大丈夫だろう』と思っていたものの、始まってみるとなんて言うんですかね、苦戦っていうかうまく乗れないときもあって、ちょっとそれが余計プレッシャーにもなり…。で、最終戦に近づくにつれ、坪井選手はスーパーフォーミュラでもタイトル獲るし、これで彼はSUPER GTとのダブルが懸かってるし…(僕にも責任が)みたいな(苦笑)。(今季は)プレッシャーというか、なんか珍しく緊張を感じるほどで。自分はそうことがあんまりないんですけど、そう感じるレースが多くて。ただ、それなりにチャンピオンが獲れるぐらいのパフォーマンスを出せたのかなっていう風には思います」と、彼らしく、一方で連覇を狙うチームでの重圧を感じるシーズンであったことを明かした。
 また伊藤大輔監督は「『2連覇を』という目標に向かってスタートしたシーズンだったので、それを実現できたというところで、喜びというかホッとしているほうが正直なところです。今年の36号車のテーマは、とにかく毎戦毎戦をきちんと(チームの)ひとりひとりがミスなくやることによって、確実にポイントを重ねるということでした。開幕戦を勝ち、それ以降はサクセスウェイトもあって、特にドライバーは非常にストレスを感じる場面が多かったでしょう。それでもポイントを積み重ねることができて、最終的には2連勝で終えることができました。本当に辛いというか、苦しいなかをドライバーが辛抱して走ってくれたのは良かったと思います」と、全戦でポイントを獲得したチーム、全戦でポイントリーダーだった坪井/山下コンビの苦労をねぎらっていた。

※チャンピオン会見の全文はこちらをお読みください。
「2024シリーズ・チャンピオン会見」

 

 

 

 

※【2024 シーズンプレイバック】は今回で最終回です。
 SUPER GTの2025シーズンの熱戦もご期待ください!

 

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