2001 GT INSIDE REPORT NETWORK EDITION
Round5 MOTEGI GT CHAMPION RACE Special Report

■特集:2003年新レギュレーションについて
すでにJAF広報誌でJGTCの2003年度車両規定の骨子が公表され、レース専門誌でも紹介されている。2003年からは大幅な車両規定の変更があると言われていたが、その基本内容が初めて公にされた。この規定は今後も論議され、12月に正式発表されるという。
この新レギュレーションに対して現在JGTCに参戦しているチーム関係者はどう感じているか、意見を聞いてみた。

【参考】
2003年グランドツーリングカー(JAF-GT)規定骨子
1.車両の改造
車両の基本骨格である車室部分は基本車両のままとするが、隔壁より前後部の車体フレームを切断し、ロールゲージに接続されたパイプフレームに置き換えることができる。(GT300クラスへの導入は未定だが、2001年12月までに決定される)
2.フラットボトム化
FIA GT車両規定(付則J項第258条)に準拠し、車両のフロアに堅牢な平板を装着することにより車体床下部分(ホイールベース間)をフラットボトムとすることを義務づける。
3.トランスミッションの位置
トランスミッションの搭載位置を自由とする。
4.エンジンの搭載位置と方向
エンジン搭載位置と方向を基本車両のエンジンルームの範囲で自由とする。
5.サスペンションの改造
形式を含めサスペンションの改造を自由とする。
6.4ドア車両
該当モデルが属するファミリー内に2ドアモデルが存在しないことを条件にJAF-GT規定に基づき改造された4ドアの全日本GT選手権への参加を認める(選手権統一規則第11条"参加車両"に「JAF-GT規定に基づき改造された4ドア車両」を追加)。
*以上はJAFモータースポーツニュースより抜粋


熊倉淳一監督No.1/No.18 無限×童夢プロジェクト)
「2003年の新しい車両規則案は、ウチの場合にはエンジンの方向を(横を縦に)に変えていいということになれば、自由によりよいレイアウトを追求できるようになって、クルマが造りやすくなりますね。今回のレギュレーションの改訂は、これまでグレイな部分を縛れなくなってしまっているところを徹底的に自分たちが追求できるようになってスッキリするのではないですか。解釈のしかたがメーカーによって違いますからね。GTですとリストリクターやウェイトをしぼることによって各マシンのスピード調整などができますし、それぞれの作り方が変わっても、新らしいおもしろさが出てくるんじゃないでしょうか。そのために、ぜひ理想のクルマを作り上げていきたいと思っています」


坂田ともかず監督No.30 TEAM TAKE ONE)
「GTは他のカテゴリーより救済処置というかメーカーとプライベーターとのレベル均一化が行われているのでウチもがんばらなくては…と思ってきましたが、なかなか表彰台に上がるに至らない結果に終わってしまっているのが現状です。そうなるとスポンサーの維持もむずかしくなってしまいますから、新しい態勢は非常にキツイですよね。もっと結果が出しにくくなってしまう気がします。ウチのクルマの特徴として、ピットインしたときにほかよりガソリンを喰うので給油も時間がかかってしまい、いくらトップ集団を団子状態で走っていても、そこで15秒近くロスタイムしてしまうんですね。これまでもプライベーター寄りのアイデアを出してもらってきたのはありがたいですし、早くいい結果が出せるようにがんばり続けたいと思います」


佐藤直樹 TRD MS事業室マネージャー
「JAFのなかでも93年にGTのレギュレーションを最初に作ってから修正を重ねてきていますよね。そのなかで解釈もいろいろと出てきたので、一度スッキリさせたいというのはありました。GT-Aの意向としてもバラエティーに富んだ車種を出して、そのなかで勝ったり負けたりしていこうという考え方ですよね。GT-Aとしては、全日本GTを世界一の量産車改造レースにしたいというのがありますから。あとはもっと改造の自由度を増やしたい。サスペンション形式の改造が量産車ベースだと決まってしまい、みんな苦しくてよけいにコストがかかるんですが、自由度が増してコストも下がる。それが今回のレギュレーション変更の基本コンセプトでしょう。
 パイプフレームに関しては99年にも同様のアイデアが出たんですが、コストが高くなりそうだという意見が出て実現しませんでした。でも、いま考えるとロールケージをはりめぐらせて、すでにパイプフレームに近いものがありますからね。ただパイプフレームならなんでもいいわけではなくて、安全性はキッチリ決めないと、ということがありますし、そのへんはいま技術部会で審議しています。クラッシャブルストラクチャーもつけることは決まってはいますが、大きさや形はみんなでスタディしています。
 フラットボトムは私が推しました。いまのGTはコーナリングスピードが速すぎますから落とさないと。それを期待して入れた項目です。
 ミッション(の位置の自由化)も安全性向上から出た話です。ドライバーをもっと真ん中に寄せ、側面衝突から守るためですね。いまはミッションを真ん中に置くしかありませんが、位置を動かせればトランスアクスル化が図れます。重量バランスは少しはよくなるでしょうけど、それは微々たるもの。FRのマシンがミッドシップに近づくというのはむずかしい。ミッドシップに追加されるウェイトをなくそういう話も出ていますけど、FRでは後ろにいくのが14kgぐらいなので相殺にはなりませんよ。ミッドシップのウェイトをなくすとNSXが有利になるので私としては反対しています。
 エンジンの搭載位置や向き(の自由化)の最大のねらいはFFをFRにしていいよということだったんですが、これも結果的にNSXに有利になりますよね。それも私は反対したかったんですけど、フロントエンジンならよくてリヤエンジンはダメという理由が見つからなかったんです(笑)。
 4ドア車輌に関しては、時代の流れですからしょうがないですよね。いま国産車で2ドアというのは少ない。トヨタでもスープラとソアラ、MR-S、日産もGT-R、フェアレディZ、シルビア、ホンダではNSXとS2000ぐらいしかないんじゃないですか。インプレッサも4ドアしかないですし、出られる車種が限られてしまうのでなんとか4ドアを認めてほしいということになりました。でも、車種が増えていいと思いますよ。
 トヨタで増やせるとすれば、アルテッツァやセリカぐらいですか。でも、それはプライベーターでやりたい人がいた場合の話。TRDとしてはいまのところスープラで出場するつもりです。でも、スープラがこのレギュレーションで有利になるというのはないと思います。ただ、今回のレギュレーションでは、ランニングコストをある程度下げることができる。そうすればチームの負担も下がるし、それはいいと思いますよ」


柿元邦彦監督No.22/No.23 NISMO)
「新レギュレーションは三つの点で非常にいいと思います。まず長い目で見るとコストダウンになるということ。二つ目はバラエティに富んだクルマができるだけ同じ性能を持つという目標に近づくところ。そして、三つ目に安全性が高まるということです。
 パイプフレームはコストダウンという部分で大きい。今までのレギュレーションでは、その範囲内でクルマを速くするために非常にお金がかかっていました。毎年どのメーカーも新しいクルマを作って、サイドメンバーを残しつつ、エンジンをいかに搭載し、サスペンションをいかにマウントし、フロント回りの剛性をいかに上げるかということをやっていましたが、そこにすごくコストがかかるんです。サイドメンバーを残さなきゃいけないとかいうことがあるといつまでたっても理想のクルマはできませんし、おカネも時間もかかる一方なんですよ。その点パイプフレームでフラットボトムということになるといちばん理想的な組み方ができる。最初の年はコストがかかっても、2年、3年先を考えると結果的には安くなるんです。フロアもいままでは空力の効果を得るためにみんないろいろやっていましたが、フラットボトムならやりようがないですしね。プライベーターについては、パイプフレームでなきゃダメというレギュレーションではないですし、フラットボトムでワークスのマシンは遅くなる可能性が高いですから、不利になるということはないと思いますよ。ただ、2003年に02モデルも走っていいということになっているんですが、03モデルのほうが遅いワケにはいかないので、02モデルにはウェイトを載せるとか、そういうことも考えていかなきゃダメかもしれませんね。
 ミッションについていちばん大きいのは安全性の部分。いまはミッションがクルマの真ん中にあるので、ドライバーを中央寄りにすることができません。でも、新しいレギュレーションではそれが可能になるので、サイドインパクトに対する安全性が高まります。それからGT-Rに関して言えば、ミッションの位置が後ろにいくことで重量バランス的にもいい。どれぐらいいいかはわかりませんが、性能的に少しはよくなるでしょう。
 エンジンの向きについては(横置きの)FF車を(縦置き)FRにして走りたいという場合を想定しているんですが、NSXやMR-Sといったミッドシップのマシンが縦置きにできるようになる。そうするとやっぱり性能は上がるみたいで、ちょっとイヤですね(笑)。でも、そこは広い心で。GTの発展のためですから。
 サスペンションはいまでもほとんど自由ですが、パイプフレーム化になることでさらに自由度は広がります。いまはサイドメンバーを残していて望ましいジオメトリーを取れないんですが、パイプフレームになれば理想的なジオメトリーにできますよ。
 4ドア車輌の参加についてはボクが主張しました。特認でいいんじゃないかという意見もあったんですが、ちゃんと認められたクルマにしないと。そうしないとメーカーのなかで4ドアのクルマでやりたいと提案しても、トップになかなか理解してもらえないでしょうし、新しいメーカーが出てきにくいですから。ニスモとしてはいまのところGT-R以外は考えていませんけどね。
 あと、安全性の部分では、パイプフレームのフロント部分にクラッシャブルストラクチャーを付けようということを話し合っています。その大きさとかクラッシュテストの義務付けをどうするかなど、いろいろやっている最中ですよ。いまの状態では命に関わる事故も起こりかねない。もう1回大きな事故が起こるとGT選手権自体がなくなってしまうかもしれない。だから、それ以外にもドライバーの首を補強するハンズシステムの導入なども検討しています。
 総括すると、新レギュレーションは単にパイプフレームとフラットボトムでクルマを速くしようというのではなく、最初に言ったような3つのポイントを考えてやっているんだと思います。その理解のもとに私たちも発言していきますし、協力もしていきます。それがGTの発展のためでもあるワケですからね」


河野高男チーフエンジニアNo.7 RE雨宮レーシング)
「来年に向けては、ジオメトリーの変更を予定していますが、2003年に関してはまったくの白紙です。新レギュレーションはプライベーターには問題点がいろいろ出てきます。メーカーがからんでないとどうなるか、ポルシェのユーザーさんと同じですよ。コスト考えたらけっこういくでしょうし、もうひとつは公認パーツの問題があるんです。ロールケージにしても公認がいるのかとか、レギュレーションとコストがプライベーターには問題です。公認がいるパーツなら、当然つくれないんです。1回プランを早めに出してもらって、エントラント・ミーティングをやって意見をある程度聞いてもらいたいですね」


本島伸次監督No.62/No.63 アールアンドデースポーツ)
「ポルシェGT3Rは、完成度の素晴らしいレースカーで2400万円という価格で誰もが買えるというGT本来の形だと思います。2003年を見据えては、ウチとしてのクルマを出していきたいと思っています。ウチだけ1台という考え方じゃなく、GT3Rみたいにして、プライベーターさんが買って参戦できて、メーカーとのしがらみもなくやれるクルマをつくって出したいんです。すでにビーマックという英国生産のロードカーを国内で販売していますので、これをベースにGTマシンにしようと考えています。エンジンのライフが5000kmで年に1回オーバーホールをすればもつようなマシンにしたいですね。レギュレーションを見据えて、来年の1月下旬から2月に発表できればと思っています。設計は進んでいますから」


加勢裕二代表No.77 CUSCO RACING)
「今の段階での構想は4ドアのインプレッサでやりたい。レギュレーションもGT500が先みたいだし、どうなるのかなあ? GT500とGT300で違うのもへんだし、統一してやってほしい。それを最大限に生かして速いクルマをつくりたいですね。これまでもダートラのDクラスのクルマを全部ウチでつくってきていますから、ウチとしては慣れた仕事ですのでぜひやりたいですね。公認パーツの問題は、それはプライベーターではどうにもならない部分で、たぶんみんな同じ条件でしょう。メーカーさんにお願いして考えていただきたい。新レギュレーションには賛成でも反対でもないですよ。みんな同じ土俵に立つわけですから。ただ、オカネはかかると思いますよ」


五十嵐協二監督No.21 HITOTSUYAMA RACING)
「新体制になったら、まず我々はついていけるか?という思いが強いですね。メーカーとプライベートチームとしての差はいま以上にどうしようもなくなりますよ。マクラーレンではこれ以上のマシンに変えていくのはむずかしいですね。でも現行のモデルで、そのなかでできることをちょっとずつ向上させていくのを心がけるしかないのでは…。まぁ観る側にしてみたらワンメイクのレースよりはおもしろくなるんじゃないですか? ただあまりメーカー主体のレースになってしまうと、プライベーターにとって資金的な面がよりきびしくなって、新たにGT500を始めようという人たちが増えにくくなってしまうのは心配ですよね」


千葉泰常総監督No.24/No.26 チームタイサン)
「(パイプフレーム化は)われわれからするとぜんぜん意味がないですね。私たちのようなプライベーターは(ポルシェなどの)メーカーが作ったクルマそのままでやるしかない。プライベーターがパイプフレームまで作るというのは費用的にも不可能だし、ポルシェの協力も得られない。けっきょく、日本のメーカーとのつながりがあるチームしか参加できないということになってしまいます。それでは参加チームが減ってしまうだろうし、シリーズの衰退につながるでしょう。GTカーというからには世界のGTの基準にのっとっていなければ意味がないと思います。
 (今年のレギュレーションについて)たしかに去年ポルシェが速かったのは事実です。ですが、それによって今年は3.5リッター以上のNA車が2ランクのダウンになってしまった。いっぽう、2リッター以下のターボ車は1ランク速くなっています。これで3ランクの差ですが、さらに(ターボ車を作る日本の)メーカーが力を入れて開発するために、その3ランクの差が5ランクにも6ランクにもなってしまっている。そういった状況を正しもしないで来年もそのままでいこうというのはおかしいですよ。まして、2003年からパイプフレーム化というのでは、われわれとしてはこれまでの態勢で参戦することはできません」


加治次郎事務局長(GTアソシエイション)
「JGTCでもっとも大事にしなければいけないのはクルマのバリエーションです。JGTCはいろんなクルマが走るからおもしろいんです。ですが、クルマの改造範囲が狭いとベースになる車種の優劣で勝負が決まってしまう。ひとつの車種しか勝てなくなって、結果的にシリーズの衰退を招くということが、過去、さまざまなカテゴリーで繰り返されてきました。前後部をパイプフレーム化していいという新規定はそれを避けるために出てきた考え方です。前後部をパイプフレーム化すればベース車両のポテンシャルに関わらず戦闘力のあるレースカーを作ることができる。
 しかもこれは自動車メーカーでなくても、レーシングコンストラクターなどが作り上げることができるんです。現在のレギュレーションでは足回りなどの改造はそのクルマの図面を自動車メーカーから出してもらわないとできませんが、新レギュレーションならコンストラクターが自由に製作することができます。レースカーではロールケージで剛性、強度を上げる方法が採られていますが、ロールケージは自動車メーカーが公認をとったものでないとダメでした。ですが、パイプフレーム化によってロールケージの公認とは関係なく剛性を確保できます。JAF-GTでは改造の自由度を高めることで車種のバラエティを確保し、コストも抑えようとしているんです。
 新レギュレーションでクルマが速くなると考えている人もいるかもしれませんが、フラットボトム化でむしろコーナー速度は落ちると思います。現在の規定のなかでトップクラスはいきつくところまでいっていますから、サスペンションを自由にしたからといって、それほど速くなるとは思いません。むしろ、自由にすることによってアームの長い似たような設計になってくるでしょうから、部品の共通化ができるかもしれません。
 もうひとつ、安全性の向上ということは考え方のなかに入っています。前方から突っ込んだときやサイドインパクトを含めて安全性を追求していこうということです。
 4ドアも認めるという規定については、JAF-GTの規定はあくまで2ドア。ただしJGTCには4ドアでも参加できるようにしようということです。4ドアを認めてもそれがいきなりレースの主流になるわけではないだろうし、排除する理由はないでしょう。
 それから、ドアが開くとかボンネットが開くとか、クルマとしての基本的な形状は維持する方向ですから、市販車からまったく離れてしまうということはありません。
 こうした車両規定、技術規定はそれだけが独立しているものではありません。スポーティングレギュレーションとかプロモーション規定とか、すべての規則のなかに車両規則もあるのであって、まず車両規定ありきではありません。
 GT300に関しては、いきなり変更するとさまざまな問題が生じかねないので、いまはとりあえずGT500を先行させたらいいんじゃないかという論議があると聞いています。GT300の方向性としてはポルシェGT3Rをベンチマークにしようと考えています。GT3Rが大がかりな改造をしなくてトップ争いできることを基準にすることでポルシェのような供給態勢を大切にしようということです」




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