2023年も2月を迎え、各チームはテストや体制発表を行なうなど、シーズン開幕に向けて着々と準備を進めている。その中、GTアソシエイションは、2023年のスポーティングレギュレーション(競技規則)と付随規則をチーム他に向け公開している。
今季は、昨年明らかにした『SUPER GT Green Project 2030』(※)に則り、使用タイヤの持ち込みセット数の変更、一部の大会で決勝レース距離の変更、カーボンニュートラルフューエル(CNF)の導入が実施される。
※:『SUPER GT Green Project 2030』に関してはこちらから
また、安全面の強化として昨季途中から行なわれている運用の明文化、フルコースイエロー(FCY)の手順変更などが行なわれている。これらの内容について、簡単に紹介しておきたい。
※競技規則抜粋、各大会のレース距離と決勝条件表の赤字は今季の変更点です。
※本記事は2023年SUPER GTスポーティングレギュレーション(競技規則)などを基にSUPERGT.net編集班が解説したものです。
※掲載の写真は記事のイメージを表したものです。内容と直接の関係はありません。
ドライタイヤは1大会で5セットに。昨年より1セット減になる
2023 SUPER GT Sporting Regulations
第21条 タイヤ
1. 公式練習に先立ち、最大5セット(20本)のドライタイヤがマーキングされる。
プロモーションイベントを含み公式練習開始から決勝レーススタートまでに1競技車両が使用できるドライタイヤは、マーキングされたタイヤ(以下「マーキングタイヤ」という)5セット(20本)とする。
13. タイヤメーカーがサーキットに持ち込めるタイヤの本数は、1台当たりドライタイヤ5セット、ウェットタイヤ6セットまでに制限される。
<途中省略>
当初のレース距離が300kmを超える競技会における持込み本数については、GTAがその都度定めSUPER GTレースブルテンにて公示する。
1大会(公式練習から予選、決勝終了まで)を通じた持ち込み、マーキングタイヤは、2023シーズンでは各大会でドライ(乾いた路面用)タイヤは5セット(前後計4本が1セット)、ウエット(濡れた路面用)タイヤは6セットとなった。これは、昨季よりドライ、ウエット共に1セット減っている。
これにより、各チームの経費と環境コストの削減に貢献し、タイヤメーカーにおいても、活用できるグリップが長持ちするタイヤ技術の開発に応用できるだろう。また、チームとドライバーはタイヤを上手く使う車両のセッティングが必要となり、より長くグリップ力を発揮できるドライビング技術が問われることとなり、レース後半での攻防がより盛り上がると予想される。
450kmの長距離レースの大会が5大会に増加
2023 各大会のレース距離と決勝条件
Rd | 開催日 | サーキット | レース距離 | 決勝の条件 |
---|---|---|---|---|
第1戦 | 4月15、16日 | 岡山国際サーキット | 300km | タイヤ交換の義務なし |
第2戦 | 5月3、4日 | 富士スピードウェイ | 450km | 2回の給油義務 |
第3戦 | 6月3、4日 | 鈴鹿サーキット | 450km | 2回の給油義務 |
第4戦 | 8月5、6日 | 富士スピードウェイ | 450km | 2回の給油義務 |
第5戦 | 8月26、27日 | 鈴鹿サーキット | 450km | 2回の給油義務 |
第6戦 | 9月16、17日 | スポーツランドSUGO | 300km | |
第7戦 | 10月14、15日 | オートポリス | 450km | 2回の給油義務 |
第8戦 | 11月4、5日 | モビリティリゾートもてぎ | 300km | タイヤ交換の義務なし |
※450kmレースでは第3ドライバーの登録も可能となる。
※各大会の詳細は事前にGTAよりの通知(ブルテン)や特別規則書にて告知する。
2023シーズンも6つのサーキットで全8大会が行なわれるが、今季は450kmの決勝レースが5戦に増加した。昨季は300kmレースが5戦で、450kmレースは3戦であった。
450kmレースは最低2回の給油を伴うピットインが義務づけられ、300kmレースより1回の走行時の燃料搭載量が少なくて済む。これで基本、車両重量が軽くなってスピードが増すはず。また昨年行なわれた450kmレースでは、それぞれのクルマやタイヤ、さらにドライバーの特性を活かし、また工夫を凝らして各チームが異なったレース戦略を展開した。また出遅れても、450kmあればレース終盤に巻き返すことも少なくなかった。今季は最後まで目が離せない、スリリングなレースがより増えるだろう。
カーボンニュートラルフューエルの導入で環境に配慮
2022年11月、最終戦決勝日翌日の月曜日、モビリティリゾートもてぎで両クラスの車両によるカーボンニュートラルフューエル(CNF・ドイツのハルターマン・カーレス社製の環境負荷の少ないバイオ燃料)のテスト走行が行なわれた。その後も各車両メーカーなどが、その燃料でエンジンのベンチテストを継続し、今季開幕戦よりの使用が決定している。
これまでのテストでもCNFは従来のガソリンと遜色のない性能を発揮。そしてエキゾースト・ノート(排気音)も、そのままだ。
スロー走行時の周知義務が明文化される
2023 SUPER GT Sporting Regulations
第18条 ドライバーの遵守事項
3. すべてのプラクティスセッションおよび決勝レース中において、車両トラブル等によりやむを得ずスローとなった場合はハザードもしくはウィンカーの点滅により後続車へ知らせると共に走路を外し妨げとならないように安全措置を講ずることを義務付ける。
2022年に起こったクラッシュを教訓に、以後の大会では競技前ブリーフィングで注意喚起が行なわれていた。今シーズンも安全なレース運営とドライバーの安全確保のため、この内容を競技規定の「ドライバーの遵守事項」の項目として明文化した。
予選での走路外走行タイムの不採用が明文化される
2023 SUPER GT Sporting Regulations
第29条 プラクティスセッション(公式予選等)
7. 走路外走行(4輪脱輪)によって達成された当該周回タイムは公式予選結果として採用しない。
8. 公式予選中黄旗提示区間を走行した車両の当該周回タイムは公式予選結果として採用しない。
これまでは予選や決勝の走路外走行は「ドライバーの遵守事項」として、(タイムの向上などの)アドバンテージが認められた場合にタイムペナルティが課される場合があると記されていた。
今季の予選の規定として、コースアウトも含めアドバンテージの有無に関わらず該当周回のタイムは採用されないと明記された。さらに予選の走行で、黄旗が提示された減速区間を走行した場合、減速の有無に関わらず該当周回のタイムは採用されない。このようにドライバーにはより正確な、安全な走行を求められることとなった。
FCY宣言後はまず黄旗振動、開始でFCYボード提示の順に
2023 SUPER GT Sporting Regulations
付則-4 FCY(フルコースイエロー)運用規定
2. FCY宣言は計時モニターおよびレースコントロール無線、車両のディスプレイ表示で行われFCYのカウントダウンが始まる。
(1) 宣言後ただちに、全ポストにおいて黄旗が振動提示される。この時点から追い越しが禁止され、ドライバーは周囲の安全を確認し減速の準備を始める。
(2) 黄旗の振動提示の10秒後に全ポストにおいてFCYボードが提示される。この時点からコース上での走行速度は上限80km/hに規制され監視が開始される。
これまではFCY宣言と同時に「FCYボード」のみが提示されたが、今季は黄旗を振っての提示となる。黄旗の振動提示の10秒後に「FCYボード」が提示され、上限80km/hの規制となる。これはドライバーが「FCYボード」を見た途端に減速することで混乱が生じたこともあり、黄旗提示を先にすることでドライバーの視認性、理解しやすい方法として採用された。なお、車載モニターの表示、FCY中と終了の手順に変更はない。
このように2030年までのCO2排出量半減を目指し、環境に対応した施策を導入するSUPER GTだが、2023年もこれまで同様の迫力あるレースが展開されるので、シーズンの開幕を楽しみにしてほしい。
4/13-14 | Round1 OKAYAMA | |
5/03-04 | Round2 FUJI | |
6/01-02 | Round3 SUZUKA | |
8/03-04 | Round4 FUJI | |
9/21-22 | Round6 SUGO | |
10/19-20 | Round7 AUTOPOLIS | |
11/02-03 | Round8 MOTEGI | |
12/07-08 | Round5 SUZUKA |