SUPER GTマシンの基本を知ろう! ~2つのクラスと多彩な車種~
2017年も熱戦が続くAUTOBACS SUPER GTシリーズ。夏休みも間近ということで、「サーキットに観戦に行こう!」と観戦計画を練っている方もいらっしゃると思います。そこで“SUPER GT夏の3連戦 (※)”に向けて、SUPER GTの基礎中の基礎を改めてご紹介します。
第3回のテーマは「SUPER GTに参戦するマシンの基本」です。
※“夏の3連戦”は7月から8月に行われる、SUGO大会、富士大会、鈴鹿大会のこと。
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SUPER GTに参加できるクルマ、SUPER GTマシンはどのように定められているのでしょう?
GTレースなんだから“GTカー”でなければならない。……実は違うんです。
市販されている車両をベース車両として、レギュレーション(規定)の範囲内でレース専用に開発された車両ならOKなんです。
以前は車両規定に「GTカーは2座席、2ドア」と明記されていたこともありましたが、SUPER GTにおいては「GTカーのレースを超えたGTレース(つまりSUPER GT)」として、いろいろな高性能車が参加できるよう、上記が基本となっています。
モータースポーツでは、参加する車両によって色々な競技形態があります。
このとき、参戦する車種を1つに限定してしまうのが、ワンメイクレースです。全員が同じ車両を使うので、ドライバーの腕前で差がつき、車両のコストも抑えられます。そのため、フォーミュラカーのレースや参加型のレースで多く見られます。
一方、同じレースの中で、いくつかのクラス(条件)に分けて行われるレースもあります。複数のクラスをつくることで、参加できる車種が増えます。ツーリングカー(乗用車)のレースに多いスタイルです。
SUPER GTの場合は、「GT500クラス」と「GT300クラス」の2つのクラスが、同じレースを混走して行う方式となっています。
この2つのクラスは車両規定が異なり、その結果GT500クラスがGT300クラスより“速い”マシンとなっています。
SUPER GTの前身である全日本GT選手権(JGTC)の初年度(1994年)には、GT1(現在のGT500)、GT2(現在のGT300)と呼ばれ、1996年より現在と同じ「GT500」「GT300」となりました。単に1と2ではどちらが速いかが「観客の皆さんに分かりにくい」というのが、変更の大きな理由でした。そこで、各クラスの想定馬力が約500馬力、約300馬力ということから「GT500」「GT300」と名付けられました。
ただし、現在のGT500マシンは550馬力以上、GT300マシンでも公称で500馬力以上あるものもありますが、クラスの名称として定着していますので、引き続き使用されています。
今やGT500クラス並みに馬力が大きいGT300マシンもありますが、車両規定の条件の違いから、やはり速さではGT500マシンが上になっています。ちなみに、昨年の第4戦SUGOのポールポジションタイムは、GT500では1分10秒516(WAKO'S 4CR RC F/大嶋和也)、GT300では1分17秒493(VivaC 86 MC/松井孝允)という差になっています。
○GT500クラス車両の概略
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シャシー | 共通のモノコックを使用し、ベース車両のデザインを活かす。 |
空力パーツ | リアウイングなど共通部品の使用を義務付けられているもの以外は、規定の範囲内で自由に作れる。 ただし、シーズン開幕戦で決めたパーツを原則シーズンを通して使用する。 |
共通部品 | GT500車両ではDTM(ドイツツーリングカー選手権)と車両規定を共通化し、モノコックをはじめ主要パーツは 共通部品として全車が同じものを使用している。 |
サスペンション/ ブレーキ |
規定の範囲内で自由。 |
エンジン | 2000cc直列4気筒 直噴シングルターボが共通仕様。 |
駆動方式 | フロントエンジン/リアドライブ ※NSX-GTはベース車両と同じミッドシップでのエンジン搭載が認められている |
電子制御 | セミオートマチックミッションは使用可能。アンチロックブレーキ(ABS)、トラクションコントロール、 アクティブサスペンションなどドライビングアシスト機能は禁止。 |
出力制限 | 燃料の使用量を瞬間的に制限できる燃料流量リストリクターを使用。 |
タイヤサイズ | フロントが最大幅336mm、最大外形685mm。リアが最大幅356mm、最大外形7125mm。 |
○GT300クラス車両の概略
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シャシー | JAF-GT300車両はベース車両の車室部分を残すこと。FIA GT3車両は変更不可。 |
空力パーツ | JAF-GT300車両は規定の範囲内で製作。FIA GT3車両は変更不可。 |
サスペンション/ ブレーキ |
JAF-GT300車両は規定の範囲内で製作。FIA GT3車両は変更不可。 ABSはオリジナルで装備されている場合は使用可能。 |
エンジン | JAF-GT300車両のマザーシャシーは指定のエンジンを使用。 JAF-GT300車両はベース車両と同じメーカーのエンジンなら変更可能。FIA GT3車両は変更不可。 |
駆動方式 | JAF-GT300車両は変更可能。FIA GT3車両は変更不可。 |
電子制御 | セミオートマチックミッションは使用可能。 FIA GT3車両はオリジナルで装備されているものは使用可能。 |
出力制限 | エア(吸気)リストリクターを使用。 |
タイヤサイズ | 最大幅14インチ、最大外形28インチ。 |
2017年シーズンのGT500クラスには、レクサスLC500、日産GT-R NISMO GT500、Honda NSX-GTの3メーカー3車種が参戦しています。
現在の車両規定ではモノコックやリアウイングなど、共通部品が多く使われるようになりましたが、エンジンや一部の空力パーツなどは、各自動車メーカーならではの技術力を注ぎ込んでハイレベルな開発が行われています。
エンジンはSUPER GT参戦3メーカーが基本仕様を定めたNRE(ニッポン・レース・エンジン)という2000ccの直列4気筒、直噴シングルターボが搭載されています。仕様は同じですが、各自動車メーカーの最新エンジン技術が結集したエンジンです。
このエンジンでは燃料効率、エネルギー変換効率など市販車用エンジンの省燃費やエコロジー技術の基本にもなる技術やデータが得られ、現代の“走る実験室”にもなっています。
レクサスLC500
Honda NSX-GT
日産GT-R NISMO GT500
多彩な車種が走るGT300クラス。2017年シーズンは12メーカー15車種の車両が参戦しています。
現在のGT300クラスは2つの車両規定があり、大きく3つのグループに分類できます。各規定による制限に加えて、車種ごとに性能調整が行われているため、市販モデルの価格や性能、車格にかかわらず、均衡したパフォーマンスとなっています。それにより、街で良く見るハイブリッド車のプリウスと、高額スーパーカーのフェラーリが互角の勝負を展開します。これが、他国のGTレースにはないSUPER GTの魅力の一つなのです。
○JAF-GT300車両
JAF(日本自動車連盟)によって定められているGT300クラス用の車両。ベース車両の車室部分は残さなくてはなりませんが、比較的大きな範囲を改造できます。特に空力やサスペンションなどを各レースごとに変えられるのは利点となっています。ただし、エンジンパワーの面ではかなり厳しい制限を受けています。
参加車両:TOYOTA PRIUS GT/SUBARU BRZ GT300
○JAF-GT300車両・マザーシャシー
JAFによって定められているGT300クラス用の車両のうち、GTアソシエイションが販売するマザーシャシーを使用してつくられた車両。マザーシャシーは、モノコックとエンジンなど共通パーツを使用して、チームがベース車両に模したGTマシンを製作できます。技術力に自信があるレースガレージはオリジナリティ溢れるマシンを造ることが可能です。
参加車両:TOYOTA 86 MC/TOYOTA Mark X MC/LOTUS EVORA MC
○FIA GT3車両
FIA(国際自動車連盟)が定めるFIA GT3規定に準じた車両。世界各国の自動車メーカーが製造し、販売しています。レース専用車ですが、販売されている車両ですので、手を加えることなくレースに参加することができます。またGTカーらしいハイパワーが魅力となっています。一方で、空力やミッション、サスペンションを改造することはできず、車種によって得意コース、不得意コースがはっきりしています。
参加車両:LEXUS RC F GT3/Mercedes AMG GT3/BMW M6 GT3/PORSCHE 911 GT3 R/NISSAN GT-R NISMO GT3/
Lamborghini HURACAN GT3/Audi R8 LMS/Ferrari 488 GT3/BENTLEY CONTINENTAL GT3/Mercedes SLS AMG GT3
このようにSUPER GTに参戦する各マシンの基本を知ると、より深く、おもしろくレースを観戦することができると思います。
次回のSUPER GT基礎講座は、
第4回「チームとドライバー」をお送りします。
お楽しみに!
バックナンバーはこちらから
第1回 サーキットに行こう! ~7つの開催サーキットを紹介~
第2回 レースを観戦しよう! ~チケット購入とサーキットの歩き方~
4/13-14 | Round1 OKAYAMA | |
5/03-04 | Round2 FUJI | |
6/01-02 | Round3 SUZUKA | |
8/03-04 | Round4 FUJI | |
9/21-22 | Round6 SUGO | |
10/19-20 | Round7 AUTOPOLIS | |
11/02-03 | Round8 MOTEGI | |
12/07-08 | Round5 SUZUKA |