レースの基本ルール - レース規定を知るともっとおもしろい!
2019 AUTOBACS SUPER GTの開幕を前に、レース観戦初心者やまだサーキット観戦が慣れないという方に向けたSUPER GTの基本情報や楽しみ方をご紹介。
第3回は「レースの基本ルール」として、SUPER GTではどうやってレースが行われ、勝者、順位が決まるのか、その基本的なルールをご紹介します。
自動車レースに限らず、走る競技の基本は“速くゴールしたものが勝ち”です。自動車レースでは、何キロメートル走るか、どんなクルマを使うのか、どういう資格の選手が参加できるか、年間チャンピオンはどう決めるのか、など細かいルールがあります。また、自動車レースでは、使用するクルマに様々な種類があったり、ベース車両からの変更の度合いも異なりますので、非常にルールが複雑になります。
SUPER GTに限らず、自動車レースには競技の内容や運営を定めた「スポーティング・レギュレーション(競技規則)」と、使用するクルマ(マシン)について定めた「テクニカル・レギュレーション(車両規則)」という2つの大きな基本ルールがあります。SUPER GTでもこの2つを「法律」として、運営するGTA、サーキット、そして参加するチームはこれに従って競技が行われます。なお、この2つのレギュレーションは国際自動車連盟(FIA)/日本自動車連盟(JAF)が定めるモータースポーツ競技規則に準じたもので、両団体に公認されたものとなります。
SUPER GTのレースの仕組みを取り決めたスポーティング・レギュレーションは多項目に及びますので、ここに子細を書くことはできません。そこで、レースの進行に合わせて、要所をご紹介しましょう。
レース距離
決勝レースの距離は250km以上で、最大1000kmです。2019年は開幕戦の岡山を始め5レースが300kmで行われるので、これが基本的な距離です。長い距離は第2戦富士が500km、第5戦富士が500マイル(約805km)の2戦。そして最終戦もてぎは250kmと最短となります。
また、レースが悪天候や不測の事態で中止、中断になった場合の進行や獲得ポイントなどもレギュレーションに定められています。
ドライバー
決勝レースが500km未満の場合、1台のマシンにドライバーが2人交代で乗ります。予選も決勝も2人が必ず走らなければなりません。また、決勝レースでは1人が3分の2を超えて走ってはいけません。レース距離が500km以上の第2戦富士と第5戦富士は、第3ドライバーの起用も認められています。
タイヤ
タイヤは公式練習から決勝スタートまでで1台あたり最大6セット(24本)が使用でき、公式練習前に使用するタイヤを決めて印をつけます。レース距離が300kmを超える場合は、大会前に使用できるタイヤの総セット数が指示されます。
予選のQ1では1セットを使用することができます。Q1で予選を終えた場合はQ1で使用したタイヤを決勝スタートで使います。Q2では新たに1セットを使用することができます。Q2に進出した車両が決勝スタートで使用するタイヤは、Q2終了後に抽選が行われ、Q1かQ2で使用したどちらかが決められます。
ウエット(雨用)タイヤは、オフィシャルから「ウエット宣言」が出された場合のみ使用できます。この宣言が出た場合のウエットタイヤへの交換は、上記の使用制限には入りません。
公式予選
予選はQ1とQ2によるノックアウト(2段階の勝ち抜き)方式で、クラス別に行います。Q1、Q2はそれぞれ1人のドライバーが走ります。
1回目の予選Q1は15分間(※1)の走行を行い、タイム順位の上位がQ2に進出できます。GT500クラスは上位8台、GT300クラスは上位16台(※2)です。それ以下のマシンはQ1の順位で決勝レースのスターティングリッドが決まります。
2回目の予選Q2は12分間で行われ、それぞれの上位のスターティングリッドが決まります。Q2進出車両がノータイムであっても、そのQ2進出車両での最後尾となります。
予選のタイムが同じだった場合は、先にタイムを出した方が上位となります。
決勝スタート
決勝レースは2列縦隊を組み、走りながらスタートするローリングスタート方式で開始します。
スターティングリッド(スタート位置)は、GT500クラス車両を前に、その後ろにGT300クラスが予選結果順に並びます。その先頭にオフィシャルカー(先導車両)がついて、フォーメーションラップを行います。その際、各車は隊列を保ち、GT300の先頭車両は安全の為、GT500クラスとの間隔を空けることになっています。フォーメーションラップは原則1周ですが、天候が悪い場合などは数周に及ぶ場合もあります。
オフィシャルカーが隊列先頭から離れて、スタートラインにあるシグナルがグリーンになったらレースがスタートになります。ただし、自車がスタートラインを越えるまで前走車を追い抜いてはいけません。
ピットイン
決勝レースでは、ドライバーの交代を必ず行います。決勝レースが基本的な300km以下なら通常は1回です。500km以上の場合は大会前に最低のピットイン回数が指示されます。
ピットインにおいて、同時にクルマに触って作業ができるメカニックは最大5名、加えてドライバーのみです。そのうち2名でタイヤ交換を行います。燃料補給とタイヤ交換は同時に行うことは禁止です。
タイヤ交換は義務ではありません。各チームの作戦で、無交換や2本交換などを選択することもできます。
レースの終了(ゴール)
SUPER GTのレースは各大会で決勝距離が決められており、その距離の周回数を走ることになります。その規定周回を終えてフィニッシュラインを追加した順に、順位が与えられます。順位はクラス別になります。
SUPER GTでは各クラスで、優勝車両が走行した周回数の70%(少数点以下切り捨て)を走り切れなかった車両は、順位が認定されません。
シリーズ得点(ポイント制)
SUPER GTでは、GT500クラスとGT300クラスそれぞれでドライバーとチームの2つの年間タイトル(チャンピオン)を争います。ランキングは1年間のシリーズ各戦の決勝結果で獲得したポイントをすべて合計し、最も多いものにタイトルが与えられます。
決勝レースの距離が700km以上の場合は、通常距離のレースより多いポイントが付与されます。
ドライバーには決勝順位のポイントに加え、予選1位(ポールポジション)にも1ポイントが与えられます。
チームでは決勝順位のポイントに加え、完走した場合に周回数に基づいてポイントが与えられます。
250〜300kmレースのポイント | ||||||||||
決勝順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
ポイント | 20 | 15 | 11 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
700km以上のレースのポイント | ||||||||||
決勝順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
ポイント | 25 | 18 | 13 | 10 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 1 |
※予選Q2で最速タイムを出したドライバー(組)に1ポイントが与えられます。 |
※決勝で各クラスの完走車の周回数に基づき、チーム(ゼッケン別)に下記のポイントが与えられます。 | |||
トップと同一周回 | 1周遅れ | 2周遅れ以上で完走 | |
GT500チーム | 3 | 2 | 1 |
GT300チーム | 3 | 3 | 1 |
ウェイトハンディ制
SUPER GTでは、各車両のドライバーの成績に応じたウェイトハンディが搭載されます。シーズン途中にドライバーが変わって、2人のポイントが違う場合は多い方を採用してウェイトハンディの重量を決めます。
GT500クラスは燃料の流量を制限する燃料流量リストリクターの制限も併用します。
○参戦2戦目から6戦目では、獲得したドライバーズ・ポイント、1ポイントを2kgに換算した重量のウェイトを積載します(例:10ポイント=10×2=20kg)。 ○参戦7戦目では、獲得したドライバーズ・ポイント、1ポイントを1kgに換算した重量のウェイトを積載します(例:10ポイント=10×1=10kg)。 ○参戦8戦目はウェイトが適用されません(ノーウェイトとなる)。 ○100kgまではウェイトを搭載し、それ以上は計算上のみとなり100kg以上ウェイトを積むことはありません。 ○欠場等によりドライバー個々のポイントが違う場合は最多の方で、参戦数は車両の回数でウェイトを搭載します。 ○GT500ではウェイトが50kgを超えた場合、超えた重量を3段階で区切って燃料流量リストリクターをより絞ることで置き換えます。 |
GT500クラスの燃料流量リストリクター制限 | ||||
課されたウェイト | 0〜50kg | 51〜67kg | 68〜84kg | 85〜100kg |
車載ウェイト | 0〜50kg | 34〜50kg | 34〜50kg | 35〜50kg |
燃料流量リストリクター | 95.0kg/h | 91.8kg/h | 88.6kg/h | 85.5kg/h |
※燃料流量リストリクター数値は1時間あたりの使用燃料の重量。 ※通常は95.0kg/hで、0〜50kgのウェイトはリストリクターの制限はありません。 |
スポーティング・レギュレーションでは、レースに関して細かく内容や状況が決められていますが、こんなことも定められています。
排気音量
GTマシンは爆音を響かせて走っていると思われますが、実は排気音量も制限されています。排気管から3m離れて110デシベル、0.5mで125デシベルが最大限度となっています。
使用燃料
SUPER GTで使用する燃料は、一般に販売されている無鉛ガソリンを使用します。皆さんも使う「無鉛ハイオク(プレミアム)」で、サーキット内(もしくは指定)のガソリンスタンドで購入し、後から空気以外の添加物を入れてはいけません。
決勝レース後の記者会見
優勝ドライバーは「表彰台における式が終了後、速やかに記者会見の会場に移動し、会見に出席しなければならない」という決まりも明記されています。
このようなSUPER GTのレースの仕組みを知ると、もっと深く、おもしろくレースを観戦し、みんなでレースを語ることができると思います。
次回のSUPER GT 観戦ガイド 2019は、
第4回「SUPER GTマシンの基本 両クラス車両の違いや特徴とは?」をお送りします。
お楽しみに!
バックナンバーはこちらから
第1回 サーキットってどんなところ?
第2回 SUPER GT観戦ノウハウ
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