SUPER GT 2025 SERIES

JAPANESE FIA-F4 CHAMPIONSHIP

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【2025プレイバック】第4回 GT500クラス総集編その2「“Honda CIVIC TYPE R-GT”の2025年」

 

 

Honda CIVIC TYPE R-GT勢の2025年
CIVICラストイヤーに100号車が最終戦でタイトルに挑むも、悔しいランキング2位に
前半戦は苦戦も第7戦で100号車が優勝し、64号車と16号車が2、3位とCIVIC勢が表彰台を独占!

 2025年のHonda/HRC陣営は、前年同様に5台のCIVIC TYPE R-GTでGT500クラスに挑んだ。CIVICでのシーズンは2年目だったが、前半戦は思うような結果が得られなかった。それでも第2戦富士は決勝3位、第3戦マレーシアでは同2位と表彰台に上った。後半戦の第6戦SUGOでも決勝3位。そして第7戦オートポリスでは、予選で苦しみながらも今季初優勝を記録し、CIVIC TYPE R-GTの3台で表彰台独占を果たした。
 残念ながらタイトルには届かなかったが、CIVIC TYPE R-GTの最終年は波乱に満ちたものであり、来季登場する“PRELUDE-GT”に繋がるデータを残したはずだ。
 激戦が続いた2025シリーズを振り返る総集編「2025 シーズンプレイバック」。第4回はGT500クラスのHonda CIVIC TYPE R-GTの活躍を振り返っていく。

 

苦戦が続く前半戦。それでも第2戦は100号車が3位、第3戦では8号車が2位と表彰台に上がる

 Honda CIVIC TYPE R-GTにとって2年目となる2025年シーズンは、規定で空力を含む基本部分の開発が凍結されたため、Honda/HRC陣営は基本的なセッティングを大幅に見直した。まず車体のダウンフォースを増強する方向へ振ることを行なった。しかし、その結果、昨年まで優位に立っていたストレートスピードのアドバンテージを失って、シーズン前半戦は苦しい戦いを強いられることになった。
 岡山国際サーキットでの開幕戦では、公式予選の最高位がNo.100 STANLEY CIVIC TYPE R-GT(山本尚貴/牧野任祐)の4位で、Q1の10番手以内にはNo.16 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(大津弘樹/佐藤蓮)が8番手と、Q2は2台のみだった。決勝レースはウェットコンディションで始まり、レース途中で路面がドライコンディションへ変わるという難しい展開となり、100号車の4位が最上位だった。

 続く第2戦富士スピードウェイでは、開幕戦の苦戦から巻き返しに挑む。公式予選では16号車が3番手、No.8 ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8(野尻智紀/松下信治)が4番手に続き、好調なGR Supra勢を追撃する構えを見せた。
 3時間の決勝レースでもCIVIC TYPE R-GT勢は、8号車が2番手につけてレースを進める。16号車はペースが上がらず後退したが、予選では13番手と後方からのスタートとなった100号車が猛然と追い上げ、レース後半は上位争いに加わる。
 8号車は2回目のピットストップ以降、ペースが上がらなくなって順位を下げたが、それに代わって100号車がCIVIC TYPE R-GT勢最上位となり、そのまま3位でチェッカーを受けた。これでCIVIC TYPE R-GT勢としては2025シーズン初めての表彰台に上がった。

 

 

 12年ぶりにマレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットでの開催となった第3戦で、CIVIC TYPE R-GTは本来の戦闘力を発揮した。公式予選では8号車が2番手、No.64 Modulo CIVIC TYPE R-GT(伊沢拓也/大草りき)が3番手、さらにNo.17 Astemo CIVIC TYPE R-GT(塚越広大/小出峻)が7番手と上位に並んでみせた。
 決勝では8号車がトップを走る37号車GR Supraを攻める。順位を入れ替えることはできなかったが、2位でレースを終えて表彰台に上がった。その後方では、予選11位の100号車が猛追撃を展開し、ラスト2周で3番手まで順位を上げてゴール。ただ、オーバーテイク時に危険行為があったと判定されてタイムペナルティ(結果に+10秒)が課せられ、正式結果は6位となった。
 CIVIC勢として、ここまで最上位となる2位に入った野尻は、「彼ら(優勝したGR Supra)はピットストップの時間が短く、前に出られてしまった。でも、もし僕が前にいたとしても、彼らを押さえ込んだまま走りきるだけの力はありませんでした。ただ、タイヤに厳しいサーキットで、あれだけのロングスティントに耐えて2位を守り抜けたので、そこはポジティブにとらえて、次のレースに臨もうと思っています」と、苦しい中でもやり遂げた反撃について振り返った。

 

 

 ところが丸1か月のインターバルを置いて富士スピードウェイで開催された第4戦では、完全に風向きが変わり、CIVIC勢は大苦戦に陥った。今、2025シーズンを振り返ってみると、この第4戦の大苦戦がCIVIC勢の大きな転機だったと言えよう。
 第4戦は、SUPER GTの新たな試みとして、スプリントレースを2回行う2レース制、そしてスプリントのおもしろさを見せるためにドライバーも各レースを1人で走り切り、全車がサクセスウェイトを下ろしての戦いとなった。Race 1では公式予選上位10台に食い込んだのは7番手の100号車のみ、Race 2の公式予選でも上位10台に食い込んだのは64号車の6番手、100号車の8番手のみと低迷した。
 決勝レースでも苦戦は変わらず、Race 1でCIVIC TYPE R-GT勢最上位は100号車の7位。Race 2では64号車の8位にとどまり、シリーズポイントを大きく増すことができずに2025シーズンの前半を終えることになった。

 

 

ホームの鈴鹿で16号車がポールポジション獲得も勝てず。第6戦は17号車が決勝3位

 シーズン後半戦の第5戦は8月最終週に鈴鹿サーキットで開催。Hondaのホームコースである鈴鹿から反撃をみせたいCIVIC勢は、公式予選で16号車がポールポジションを獲得、64号車が6番手につけた。しかしCIVIC TYPE R-GT勢でランキング最上位の100号車は10番手と苦しいポジションから決勝レースを迎えることになった。
 決勝では、ポールポジションからレースを始めた16号車がトップに立って逃げ、一旦は独走に持ち込むが、徐々に後方の23号車Zに追いつかれて防戦に努める。なんとかトップのままドライバー交代のためピットインしたものの、ピット作業の間に23号車Zの先行を許し、その後も後続車のオーバーカットを許してしまい、4番手に後退してレースを終えた。64号車は7位、100号車は10位でフィニッシュ、期待された成績を挙げることはできなかった。

 

 

 スポーツランドSUGOで開催された第6戦の公式予選では、16号車が第5戦に続きポールポジションを獲得した。だが他にトップ10に食い込んだのは8番手の17号車のみ。このようにCIVIC勢は「ハマれば速い」が、特に予選では足並みが揃わなかった。
 決勝レースでも、16号車はポールポジションからトップに立ったものの、序盤のペースが上がらず徐々に順位を下げてしまう。一方、ペースが良かった17号車は8番手グリッドから徐々に順位を上げ、公式予選で最下位の15番手だった100号車も快調にオーバーテイクを重ね、上位へ進出。最終的に17号車は、16号車と順位を入れ替え3位でフィニッシュし、CIVIC勢としては第3戦の8号車以来の表彰台に立った。

 

 

 

第7戦の3時間レースでは100号車が今季初勝利を挙げ、CIVIC勢で表彰台を独占する!

 シリーズも大詰めとなった第7戦オートポリスで、開発陣は2基目のエンジンを投入した。開幕から用いてきた1基目は、2024年後半仕様からは大きく変わるものではなく、開発陣は1基目を第6戦まで使用し、その間に時間をかけてプレチャンバーを含む燃焼室形状に大幅な改良を加え、パフォーマンスを引き上げて最後の反撃を行う算段だった。
 公式予選は、ドライコンディションながらいつ雨が降るか分からないという状況で進んだ。CIVIC陣営は降雨を予測してセッション前半のうちにタイムアタックにかかったが、結局雨は降らず、作戦は裏目に出てCIVIC TYPE R-GT勢は、最上位が64号車の8番手と、下位に沈んでしまった。
 しかし決勝レースでは、2基目のエンジンが狙い通りのパフォーマンスを発揮し、CIVIC TYPE R-GTは快走した。グリッド12番手の100号車は、3時間の長距離レースを考慮してピットインをできるだけ遅らせるオーバーカット作戦を選び、スタートを担当した山本とマシンを引き継いだ牧野とも燃料消費を抑えながら周回数を稼ぎ、トップに抜け出した。牧野は2回目のピット作業を終えた後もステアリングを握り続けて第3スティントを走りきり、CIVIC TYPE R-GTにとって2025年シーズン初めての優勝のチェッカーフラッグを受けた。
 また、8番手スタートの64号車、11番手スタートの16号車も順位を上げて2位、3位でフィニッシュ。なんと苦戦続きだったCIVIC勢が第7戦で表彰台を独占して、Hondaファンの溜飲を下げる完勝となった。

 

 

 この結果、100号車の山本/牧野組は、ランキングトップの坪井/山下組に8.5点差のランキング3番手に浮上し、次戦の最終戦でチャンピオンを争うことになった。山本は「(第7戦の)作戦としては僕が最初のスティントを、残りの2スティントを牧野選手が担当することを決め、最初と真ん中のスティントをなるべく引っ張って2回目のピットストップを短くするという考えでした。優勝はしましたが、今回は1号車(GR Supra)のサクセスウェイトが重い状態で、ノーウェイトの彼らがどれだけ強いかは良く知っているので、(最終戦は)ひと筋縄ではいかないとは思っています」と、最終戦にもつれ込んだチャンピオン争いに向けた思いを語った。

 こうして、全車がサクセスウェイトを下ろしてモビリティリゾートもてぎでの最終戦を迎えた。だが公式予選ではチャンピオンを争う100号車が7番手とCIVIC勢の最上位で、8号車も8番手、16号車が9番手、64号車が10番手とグリッド中団にとどまり、GR Supra勢に届かない。
 優勝した前戦は3時間レースの長丁場だったので挽回もできたが、最終戦は300kmと通常の距離でチャンスも限られる。
 それでも果敢にタイトル獲得を狙う100号車は、決勝レースでタイヤ無交換作戦を選択。狙い通りレース後半で事実上のトップに立つも、後半をフレッシュタイヤで走る後続車のペースに対抗することはできず、順位を落としてしまう。これで1号車GR Supraの坪井/山下組の先行を許して、結局3位でフィニッシュ。ドライバーランキングは2位でシーズンを終え、逆転チャンピオンは実現しなかった。

 Honda/HRCは2026シーズンのベース車両を“プレリュード(Prelude)”に切り替えて戦うことを発表し、CIVIC TYPE R-GTは2シーズンでSUPER GT活動を終えることとなった。
 陣営のランキング最上位となった山本は「我々100号車としては、チャンピオンの条件的にも、とにかく1号車の前に出ないといけない状況でした。結局、志半ばには終わりましたが、この勢いをしっかりと次のPRELUDE-GTに注ぎ込んで、必ずライバルを倒します」と、最終戦を締めくり、2026シーズンの巻き返しを誓った。

 

 

 


※次回は最終回「GT500クラス総集編:TOYOTA GR Supra GT500の2025年」をお送りします。

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