チームとドライバー ~ハイレベルなクルマのプロたち~
2017年も熱戦が続くAUTOBACS SUPER GTシリーズ。夏休みも間近ということで、「サーキットに観戦に行こう!」と観戦計画を練っている方もいらっしゃると思います。そこで“SUPER GT夏の3連戦 (※)”に向けて、SUPER GTの基礎中の基礎を改めてご紹介します。
第4回のテーマは「SUPER GTに参戦するドライバーとチームの基本」です。
※“夏の3連戦”は7月から8月に行われる、SUGO大会、富士大会、鈴鹿大会のこと。
◇ ◇ ◇
SUPER GTファンのあなたは、なんと7億円の宝くじを当てました。「これでFIA GT3車両を買って、プロのレーシングドライバーと契約すれば念願のSUPER GTに参戦できる……」。
残念ながらマシンとドライバーだけでは、ダメなのです。ちゃんと資格のあるチームをつくらないと、SUPER GTには参戦することはできないのです。
SUPER GTを運営している株式会社GTアソシエイション(GTA)は、チームが参戦するにあたり様々なレギュレーション(規則)を定めています。まず、SUPER GTに参加するために必要な事項を定めた「シリーズ参加規定」。この規定で参加するための条件や、必要な資格が定められています。そして、SUPER GTの競技に関して厳格に定めたのが「スポーティングレギュレーション(SpR)」。公式車検に始まり、公式予選、決勝レースといったレースウィークの競技の手順や内容、違反行為への罰則や、SUPER GT特有のウェイトハンディ制もこのSpRに定められています。さらに付随する項目の詳細を定めた「付則」も設けられています。
意外と知られていませんが、公式のレースに参加するにはチームにもライセンス(許可証)が必要です。このライセンスはエントラント(競技参加者)ライセンスと呼ばれるもので、日本ではJAF(日本自動車連盟)が発給し、チームの代表者が取得する必要があります。このエントラントライセンスには国内競技用と国際競技用があり、国際レースであるSUPER GTでは国際エントラントライセンスが必要です(参加規定 4)。
また、実際にレースに出場するとなると、レースの指揮を執るチーム監督、レーシングカーに精通したエンジニアやメカニックは、チームには欠かせません。プロモーション活動ややスケジュールを管理するチームマネージャーや、メディアなどの取材窓口となる広報担当者も必要です(参加規定 5)。
華やかに見えるレーシングチームですが、その中身は非常にシステマチックで、プロフェッショナルな集団、組織なのです。
ただ、チームは必ずしも1つだけの組織で構成されるわけではありません。例えば、資金を集め管理するチーム母体となる法人、レースチーム自体を運営するレーシングガレージ、車両やパーツを提供するサプライヤーの3つ以上の組織が組み合わさって存在するチームもあります。
このように、GTAでは、SUPER GT各戦すべてでハイレベルなプロフェッショナルによるレースをファンに見せることを大切に考えているので、こうした基準が“SUPER GT”というレースを保つための仕組みになっています。
ポディウム(表彰台)に上がって大観衆の前で大きなAUTOBACSトロフィーを掲げるレーシングドライバーたちはカッコ良いですよね。
では「僕もレーシングドライバーとしてSUPER GTに出たい!」と思い立った時、どんな資格が必要なのでしょうか?
SUPER GTに限らず、公式な自動車競技に参加するには、自動車運転免許証とJAF(または各国のFIA公認の統括団体)が発給するドライバー(競技者)ライセンスが必要です。運転免許証が取得できない年齢でも、カートで実績があれば特定のレース限定でドライバーライセンスが発行される場合もあります。
競技者ライセンスにも国内ライセンスと国際ライセンスがあり、競技の実績によりA、B、Cといったグレード(段階)があります。まずは運転免許証を取得し、JAF公認のライセンス講習会を受講して国内Bライセンスを取得し、ジムカーナなどのスピード行事に参加します。そして競技経験をつみ、一定の結果をクリアすると次のグレードに上がれます。
SUPER GTは国際レースですので、国際ドライバーライセンスのグレードB以上が必要になります(SpR 4.1)。
しかし、国際ドライバーライセンスBを取得したとしても、それだけではSUPER GTに参戦することはできません。次に先程解説した、SUPER GTに参戦するチームにドライバーとして所属しなければなりません。
また、SUPER GTの1チーム(ゼッケン単位)から参戦できるドライバーは年間で4名までと決められています(SpR 10)。そのため、毎戦違うドライバーが参戦することはできません。
ドライバーとして“速い”“強い”“マシンを壊さない”“チームの信頼を得られる”。そんなドライバーが必要とされることは間違いありません。
あなたは国際ドライバーライセンスBを取得し、SUPER GT参戦チームとの契約も得られました。これで、いよいよ参戦開始……、とはまだいかないのです。
SUPER GTのGT300クラスに初出場するドライバー、2シーズン以上SUPER GTに参戦していなかったドライバーなどは、初参戦の前に公式テストなどで「ルーキーテスト」を受けなければなりません(SpR 4.2)。テストではGTAのドライビング・スタンダード・オブサーバーが、ルーキードライバーの走りをチェックします。このテストに合格して、晴れてSUPER GTへの参戦が認められるのです。なお、GT500クラスでは所属チームやメーカーによる確認があるため、ルーキーテストは行われていません。
ここで紹介したのはドライバーがSUPER GTに参加するための資格を定めた規定の一部です。このように厳しい条件が定められていますが、GTAはハイレベルなレースを行うためにドライバーにも一定の水準を求めているのです。
いかがですか? SUPER GTに参戦するチーム、ドライバーは選び抜かれた存在であることがお分かりいただけたでしょうか?
そんなチーム、ドライバーにとって最大、究極の目標はSUPER GTでのシリーズタイトル(チャンピオン)の獲得です。SUPER GTには、GT500とGT300クラスのそれぞれに、ドライバーのためのタイトルであるドライバーズチャンピオンと、チームのためのチームチャンピオンの2つがあります(SpR 7.1)。
どちらもシーズン全戦で獲得したシリーズ得点(ポイント)を合計して、最多のチームとドライバーに与えられます(SpR 7.5)。各戦では、1位から10位までにポイントが与えられます(下表参照)。
なお、決勝レースが不可抗力で中止になった場合、先頭車両の周回数が1周以下ならポイントはなしとなります。2周以上で予定周回数の75%未満までなら半分のポイントとなり、75%以上周回できた場合は所定のポイントが与えられます。
またドライバーズでは、公式予選でポールポジション(1位)を獲得した参戦車両のドライバーにも1ポイントが与えられます。
チームには、決勝レースの完走車両の周回数に応じて1~3点が与えられます(SpR 7.2)。
○ドライバーズ・ポイント
決勝順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ポイント | 20 | 15 | 11 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
ポイント (レース距離 700km以上) |
25 | 18 | 13 | 10 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 |
※予選ポールポジション : 1pt
|
○チーム・ポイント
決勝順位 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 6位 | 7位 | 8位 | 9位 | 10位 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ポイント | 20 | 15 | 11 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 | 1 |
ポイント (レース距離 700km以上) |
25 | 18 | 13 | 10 | 8 | 6 | 5 | 4 | 3 | 2 |
決勝レースの走行ラップ数によるポイント | |||
GT500クラス | トップと同一周回 | 1周遅れ | 2周遅れ以上で完走 |
---|---|---|---|
ポイント | 3 | 2 | 1 |
GT300クラス | トップと同一周回 | 1周遅れ | 2周遅れ以上で完走 |
ポイント | 3 | 3 | 1 |
ドライバーズチャンピオンの得点について |
参戦したドライバーが、同一チーム(ゼッケン単位)で1シーズンに獲得したポイントをすべて合計します。別チーム(ゼッケン単位)で参戦した場合は、チーム別に合計し、ポイントの多い方を最終成績とします。 |
チームチャンピオンの得点について |
チームは車両のゼッケンを単位に1チームとして、1シーズン獲得したポイントをすべて合計します。同じチーム名であっても、ゼッケンが違う別車両として出走すればポイントは別となります。 |
1シーズンのポイント合計が同点だった場合 |
1シーズンのポイント合計が同点だった場合は、優勝回数が多い方が上位となります。それも同じだった場合は、2位の回数を比較し、それも同じなら3位の回数と、順次比べて上位を決めます。それでも同じ場合は、ドライバーズにおいては各戦決勝レースの走行距離を合計し長い方を上位とします。それでも決まらない場合はGTAが判定します。 |
チャンピオンにはシシーズン終了後の表彰式“SUPER GT HEROES”でチャンピオントロフィー(AUTOBACS杯)が授与されます。さらに、GT500クラスのチームチャピオンには経済産業大臣杯、GT300クラスのチームチャピオンには自由民主党モータースポーツ議員連盟杯が、またGT300クラスのJAF-GT規定車最上位チームには国土交通大臣杯が授与され、その栄誉が讃えられます。
次回のSUPER GT基礎講座は、
第5回「公正で安全なレースをするために」をお送りします。
お楽しみに!
バックナンバーはこちらから
第1回 サーキットに行こう! ~7つの開催サーキットを紹介~
第2回 レースを観戦しよう! ~チケット購入とサーキットの歩き方~
第3回 SUPER GTマシンの基本を知ろう! ~2つのクラスと多彩な車種~
4/13-14 | Round1 OKAYAMA | |
5/03-04 | Round2 FUJI | |
6/01-02 | Round3 SUZUKA | |
8/03-04 | Round4 FUJI | |
9/21-22 | Round6 SUGO | |
10/19-20 | Round7 AUTOPOLIS | |
11/02-03 | Round8 MOTEGI | |
12/07-08 | Round5 SUZUKA |