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2025年のNISSAN/NISMO陣営は、4台のNissan Z NISMO GT500でGT500クラスに参戦。結果は第5戦鈴鹿と第6戦SUGOで連勝し、2025シーズンは2勝を挙げた。前年の1勝から増えたが、今季も最終戦前にタイトル争いから脱落と苦いシーズンとなった。
それでも名取鉄平の好バトル&初勝利をはじめ、シーズン後半戦には各車が快走、好レースを見せた。
激戦が続いた2025シリーズを振り返る総集編「2025 シーズンプレイバック」。第3回からGT500クラスで、第1弾としてNissan Z NISMO GT500の活躍を振り返る。
昨年最終戦を最後に4回のチャンピオン経験者であるロニー・クインタレッリがSUPER GTを引退。その23号車に誰が乗るのか? という事もシーズンオフの話題だった。そして2月に発表された新体制。NISMOのエースカーであるNo.23 MOTUL AUTECH Zには、高星明誠が3号車から加入し、2年ぶりに千代勝正とのコンビとなった。この2人は2022〜23年の2年間をドライバーランキングで2位という結果を残している。高星が抜けたNo.3 Niterra MOTUL ZにはGT300クラスから佐々木大樹が復帰し、三宅淳詞とのペアに。佐々木がブリヂストンのタイヤを履くのは5年ぶりで、これまでの経験をどう発揮できるかに注目が集まった。
一方No.12 TRS IMPUL with SDG Zは平峰一貴とベルトラン・バゲット、No.24 リアライズコーポレーション ADVAN Zは松田次生と名取鉄平というコンビで変更なし。12号車はメインスポンサーがTRS(東京ラヂエーター製造)となり、ベースカラーも2年ぶりにTEAM IMPULのマシンで長く使われた、星野一樹監督が言うところの“あの青”が復活。これには平峰も「本物の青というかIMPULブルーが戻ってきてモチベーションも高まります」と、テンションが高かった。
車両は基本的に前年から使用するZ NISMOがベース。今季はGT500車両の規定によって車両空力面での改良は行えない。しかしエンジンは前年のNR4S24型をベースに細かく改良したNR4S25型(NR型エンジン/4気筒/SUPER GT仕様/2025年の意)となった。
開幕前の3月に行われた岡山と富士の公式テストはあいにくの天候となり、2025年仕様Zの性能やコースとのマッチングが思うようにつかめなかったが、それは他の陣営も同様。しかしZ勢はタイム的に上位となった車両は少なく、一抹の不安を抱えての開幕戦となった。
開幕戦の岡山国際サーキットは桜の咲く暖かい日和の中で開催。4台のZは今季から上位10台が進めるQ2に進出を果たす。そのQ2ではヨコハマタイヤを履く24号車の松田がコースレコードに迫る3位を獲得。暑い時期に活躍するイメージが強いヨコハマだが、開幕戦から同じヨコハマタイヤの19号車GR Supraも5位につけ周囲を驚かせる。「あの予選3位で“今年はいけるぞ”と思いました。去年(タイヤの)開発で苦労してきたものがやっと結果に結びつけられる気がしました」と、松田はシーズン中盤に語っている。

しかし、決勝は冷たい雨となりウェット路面となった。予選9位からジャンプアップを狙っていた12号車がスタート直後のマルチクラッシュに巻き込まれてリタイア。このアクシデントからのリスタート後、23号車は単独スピン、3号車は1コーナーでグラベルにはまり、24号車もウェット路面では苦戦。この中、Z勢最上位は23号車の6位となった。
第2戦の富士スピードウェイは恒例のゴールデンウィーク開催で、気温20度と観戦日和となり2日間で8万2300人もの多くのファンを集めた。だが予選でQ1を突破できたのは3号車だけで、Q2では佐々木が5番手まで順位を上げる。決勝は長丁場の3時間レースなので、各車が上位進出を狙っていた。
決勝で奮起したのは11番手スタートの12号車。スタートドライバーのバゲットが序盤に2台をかわしトップ10入り。そして中盤からの2時間を担当した平峰が終盤は3位を争う活躍を見せ、結果的には4位でゴール。23号車は8位、3号車は10位でポイントを獲得した。

第3戦の舞台はマレーシアのセパン。2013年以来、実に12年ぶりに開催されたが、セパンでのウィンターテストでZ勢はまずまず好調だった。ただGT300クラスは長く走る機会がなかったため、木曜夕刻と金曜午前中に公式練習が行われた。ここで23号車と3号車はセッティングが決まらず、下位に低迷。レースに向け不安な走り出しとなった。
金曜夕刻に行われた公式予選では、24号車と23号車がQ1で終了。Q2でも3号車と12号車が5、6位と今ひとつの結果に。土曜夕刻に行われた300kmの決勝レースでは、12号車が繰り上がり3位を得たが、NISMOの2台はポイント圏外で24号車はドライブシャフトが折れスタートすらできなかった。この前半3戦の不振ぶりはNISMO開発陣を悩ませた。そして一度車両をバラし組み直し、セッティングも基本に戻すこととした。
第4戦富士は、サクセスウェイト(SW)なしのスプリントレースを2レースという初の試みだった。シリーズ中盤戦だがスプリントレースの魅力を見せるためにSWが非搭載(第5戦以降は通常)となり、予想では序盤戦で好調だった車両に利となり、不振だったZ勢は苦戦すると思われた。実際、Z勢では12号車の2レースともに5位が最高位となった。序盤3戦で苦戦した日産勢の結果は振るわないものとなったが、このレースではセッティングを過去に実績のあるものに戻し、中盤戦からのセッティングの方向性が見えて来たようだ。
第5戦鈴鹿は8月下旬、夏の300kmレース。これまでの4戦で上位となった車両のSWが増え、Z勢にも勝機が見えてくる。特に、鈴鹿は車両特性的にZにチャンスのあるコースだ。さらに前戦で確認したセッティングが良い方向に出て、予選でポールポジションこそSW0kgの16号車CIVICに譲ったものの、23号車が予選2位、3号車が3位、24号車が4位、SWが49kgとZ勢で最も重い12号車が5位と上位グリッドに並んだ。
決勝レースではピットワークで差を作った23号車が逆転し、トップに出るとそのままフィニッシュ。復活した千代/高星コンビがZに今季初優勝をもたらした。3位にも3号車が入り、ようやく日産ファンを喜ばせることができた。


第6戦はアクシデントが多いスポーツランドSUGO。全長が短く抜きにくいコースだけに予選の順位が重要だ。そして、ここで今シーズン一番とも言われる“名勝負”が展開された。主役となったのは24号車の松田と名取だった。
予選5位からスタートした松田が序盤の14周目までに2位まで順位を上げると、23周目にはトップを奪うオーバーテイクを見せた。26周目には再逆転を許し2位に順位を落とすも、好位置で名取に後半を託す。名取は3番手を走り、上位を伺う。レースも中盤、48周目に最終コーナーからホームストレートにかけて複数台によるクラッシュが発生。セーフティカー(SC)導入後、レースは中断となり、これで各車両の差はほぼなくなった。そしてレースは残り30分でSC先導で再開。
残り15分の激闘となり、直後の1コーナーで名取は2位へ。そしてトップの39号車GR Supra(サッシャ・フェネストラズ)を攻める。65周目の1〜2コーナーではコースをはみ出しトップとの差は2.3秒まで広がる。だが名取はすぐに差を詰めて、ファイナルラップの馬の背でアウト側から並びSPコーナーのインでは接触しながらオーバーテイク。そのままトップチェッカーを受けた。これが24号車KONDO RACINGにとっては9年ぶり、そして松田にとっては移籍後初の優勝で、自身の持つ通算最多勝記録を更新する25勝目、名取にとってはGT500初優勝(GT300では1勝)となった。


第7戦オートポリスは第2戦富士と同様の3時間レース。予選では4台のZがQ1を突破し、3号車の佐々木が2023年第4戦富士以来のポールポジションを獲得。佐々木はマシンから降りて号泣。23号車も2位でZがフロントローに並び、12号車は5位、24号車は9位と、このレースでも好結果が期待された。


しかし決勝は思い通りではなかった。スタート直後の混乱で12号車は他車と接触してペナルティで後退。連続の表彰台を狙っていた24号車は他車との接触で早々にリタイア。3号車は23号車とバトルを演じるも1コーナーのハードブレーキングでタイヤを痛め、ピットインを強いられてしまう。さらに23号車と3号車は車両にトラブルを抱えて、順位を落とした。結果は23号車が6位、3号車が7位に入賞したが、この結果により、最終戦を前にしてZ勢のチャンピオン獲得の可能性は消滅した。
オートポリスのレースを終えた4日後。NISMOと松田次生は、松田がSUPER GTから今季終了をもって引退することを発表し、最終戦もてぎ前の金曜日に記者会見(下記リンク)が行われた。

ここで松田はSUGOで自身の目標だった25勝を挙げたこと、体力とモチベーションの低下、SUGOでの名取の走りを見て若手ドライバーへの禅譲を考えたと、この結論に至ったと説明。終始和やかで清々しい会見で、松田自身は今後も他のカテゴリーではドライバーとして参加していくとした。
※【第8戦 もてぎ】松田次生選手が25年半におよぶSUPER GTからの“卒業”を報告
迎えたモビリティリゾートもてぎでの最終戦。開幕戦、第4戦の2レースと同様にノーウェイトで行われ、予選はQ1で24号車の名取が2位、4、5位に23号車と3号車、10位に12号車と全4台がQ2に進出。Q2でも3〜6位に23号車、12号車、3号車、24号車と上位に並んだ。これは中盤戦以降のセッティング変更、オートポリスで投入されたスペック2のエンジン、そしてNISMOの2台はブリヂストンタイヤへの理解が深まった結果だろう。
決勝では、結果的にチャンピオンを獲得する1号車GR Supraが優勝したが、12号車と23号車がトップの1号車を追い詰めるスリリングな走りを見せた。ただ12号車はレース後の再車検でスキッドブロックの厚み(最低地上高)違反で失格となった。それでも来季に向けて明るい材料が得られたレースとなった。
2025シリーズのドライバーランキングではNo.23 MOTUL AUTECH Zの千代勝正/高星明誠が7位(1勝)、No.12 TRS IMPUL with SDG Zの平峰一貴/ベルトラン・バゲットが10位、No.3 Niterra MOTUL Zの佐々木大樹/三宅淳詞が12位、No.24 リアライズコーポレーション ADVAN Zの松田次生/名取鉄平が14位(1勝)となった。2勝を挙げたが最終戦でのタイトル争いには加わることができない結果だったが、その中でも来季の活躍を期待させる戦いを中盤戦以降で見せた。
そして来季、2026シーズンのGT500クラスは3年間使用して来たモノコックが新しいものへの変更が許され、空力をはじめ大きな変更が可能となる。先に発表されたNISSANの2026シーズンGT500体制では、残念ながら3号車がラインナップから外れてGT500では2010年以来、16年ぶりの3台体制となる。ドライバーは24号車が名取と三宅という若手コンビになり、12号車と23号車はそのままのドライバーとなった。またSUPER GT引退した松田がNISMOの新監督に就任する。このように少数精鋭で戦うことになったNISSAN勢。来季は2022年の12号車以来の覇権奪還を、多くの勝利を挙げてくれることを期待したい。

※次回は「GT500クラス総集編:Honda CIVIC TYPE R-GTの2025年」をお送りします。